古くから、世界中で多くの人々に愛されて続けているバラ。最も人気のあるお花と言えるのではないでしょうか。現在、バラは品種改良がなされ多くの種類が存在しますが、原種は150～200種ほどと言われています。また、バラのルーツは未だ判明されていません。現在わかっているのは、バラの原種は北半球にのみ存在し、南半球では見つかっていないこと、植物の遺伝的な変異の状況からヒマラヤの渓谷や麓が生まれ故郷である可能性が高いことです。

最も古いバラは、3千万年前の化石から見つかりました。人類が誕生する以前より、北半球のさまざまな地域にバラが生息していたようです。

歴史上で始めてバラが登場するのは、紀元前3,000～1,500年頃にエーゲ海のクレタ島で栄えたミノス（ミノア）文明にまでさかのぼります。この時代に建てられたクノッソス宮殿紀で発見された壁画に、バラが描かれているのを発見されたのです。

紀元前1200～1100年ころには、ペルシアにてバラの栽培が行われていたようです。さらに、バラを観賞用として育てるだけでなく、薬用や香料として使われてきました。古代エジプト・プトレマイオス朝の女王クレオパトラ（在位：紀元前51～30年）も、高価なローズオイルを愛用していたと言われています。

アジアでは、紀元前500年頃の古代中国・周王朝において、宮殿でバラが栽培されていたという記録が残っています。

このように、紀元前より栽培されていたバラですが、一般的に出回ってきたのは西暦300年ごろのローマ帝国時代以降のようです。

現在のアジアや中東などで栽培されていたバラがヨーロッパに広まったのは、西暦700～800年頃と言われており、スペインにまで広がりました。また、1000年から1200年頃には、東方へ遠征していた十字軍が、バラの新種をヨーロッパに持ち帰り、広めたとも言われています。

1400年頃になると、ヨーロッパでは盛んにバラが栽培されるようになりました。バラ栽培に最も貢献したとされているのが、ナポレオンの第一妃・ジョセフィーヌです。1802年、ジョセフィーヌは広大なバラ園をつくり、世界中からバラを集め栽培しました。そのコレクションは250種類にものぼり、図譜として残されています。

このバラ園で働いていたA.デュポンは、世界で初めて人口交雑によって新種のバラを作り出した人物です。彼によって25年の間に2500種類もの新種が生まれたため、現在のバラの基礎を作ったと言えるでしょう。

1900年代ころになると、中国で栽培されたバラがヨーロッパに導入され、さまざまな交雑が試みられました。その結果、「ハイブリット・ティーローズ」「ハイブリットパーペチュアルローズ」が生まれ、そこから枝分かれしてさまざまな新種が生み出されるようになりました。

近年においてバラ業界に新風を巻き起こしたのが、人口交雑で生まれた「イングリッシュ・ローズ」です。1970年代にデビッド・オースティンがオールドローズに新種のバラを交雑させて創り出しました。

歴史をひも解くと、バラは古くから多くの人々に愛されてきたことがわかります。バラの花束をいただいたら、美しい姿を眺めながら、悠久の歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。