気になるコーヒーの木のお手入れ。剪定(せんてい)を成功させるためのコツと手順
コーヒーの木(和名:コーヒーノキ)はコーヒー豆のもととなる種子のとれる木で、飲料となるコーヒーの商品作物としてだけでなく、常緑で、深い光沢のある葉を持つ観葉植物としても流通しています。
比較的育てやすく、一年中緑を楽しめるだけでなく、ジャスミンに似た香りのする、白くてかわいい小さな花を咲かせたり、赤や黄色の実をつけます。
この実は、量的にはわずかなものの、甘みがあって食べることができ、中の種はコーヒー豆として利用できます。
観葉植物として見て楽しみ、癒やされるだけでなく、収穫の楽しみのあるコーヒーの木。
今回は、このコーヒーの木の剪定(せんてい)についてお伝えします。
なぜ剪定(せんてい)するのか? 剪定(せんてい)の必要性
コーヒーの木はそれほどマメに剪定(せんてい)を行わなくても樹形のバランスがまとまる木ですが、それでも、放ったらかしにしておくのはコーヒーの木にとってよくありません。
コーヒーの木にかぎらず、剪定(せんてい)は、単に樹木の形を整え、見た目をよくするためだけのものではないからです。
そこでまず、剪定(せんてい)とはなにか、そして剪定(せんてい)の役割・必要性について述べてみたいと思います。
剪定(せんてい)とは何か?
剪定(せんてい)は枝を切ることによって見栄えを整え、風通しや採光をよりよくするためのお手入れです。
植物の多くは日の光を求めて枝を伸ばし、葉を茂らせます。
元気よく成長するのはいいことですが、枝や葉のつきかたにばらつきがでて不格好になったり、枝を茂し過ぎてジャングルのようになると、風通しが悪くなり、日の当たらないところがでてきたりし、病気や枯れる原因となることがあるでしょう。
選定(せんてい)をすることで病害虫を防ぎ芽の生育を促したり、花や実のつき、枝や株を元気にするといった目的も伴っています。
剪定(せんてい)をする必要性、目的をのべるならば、次の3点に要約できるでしょう。
- 大きさ
- 外見を整える
- 成長を促進させる
- 病気や害虫から守る
しかし、剪定(せんてい)について知りたいと思ってネットで調べてみると、「切り戻し」や「摘心(ピンチ)」といった言葉に出合って、何がどう違うのかよく分からないと戸惑った人もいるのではないでしょうか。
「刈り込み」とか「刈り上げ」、「透かし剪定(せんてい)」といった言葉も出てきます。
どれもみな、「切り取る」という行為を指し、広い意味での「剪定(せんてい)」ですが、それぞれの目的とか切り方(あるいは切る位置)の違いによって言い方が違うのです。
それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
切り戻し
「切り戻し剪定(せんてい)」とも言い、枝の途中、だいたい二分の一から三分の一あたりで切ります。
枝の途中ならどこでもいいというわけではなく、新芽のすぐ上を切るのがポイントです。
そうすることで、それまで新芽を通り越して先へ行っていた養分が新芽にも行き渡り、新芽が成長するのを助けます。
また、樹木の大きさを決まった大きさにキープしたいときもこの剪定(せんてい)を行います。
切り戻しを行うことで、枝を若返らせ丈夫にする効果もあります。
切り戻しは、新芽の成長を促し、枝や花の数を増やしたいときにも行う剪定(せんてい)の一つですが、無計画に切り過ぎると、枝の数が増えて樹形が悪くなり、花や実のつき具合も悪くなる原因となるので注意が必要です。
なお、「切り戻し」という言葉は、切り花においても使われます。
こちらは茎の切断面の鮮度が落ちることで水の吸い上げが悪くなるのを避けるために行うものです。
こまめに茎の一番下を切る(切り戻しをする)ことで、花を観賞できる期間をのばすことができます。
透かし剪定(せんてい)
「枝抜き剪定(せんてい)」とも言います。
人の手を加えなければ枝は数も増え、伸び放題です。
そこで、不要と思われる枝を一本ずつ剪定(せんてい)バサミで根元から切って、枝どうしの間隔を少しだけあける(透かす=枝の密度を減らす)ことで、風通しや日当たりを改善する剪定(せんてい)方法です。
増えすぎた枝を切るだけでなく、伸び過ぎて長くなった枝を切ったり、枯れた枝を切って間引くことも透かし剪定(せんてい)といいます。
風通しや日当たりもよくなるので、結果的に樹木の健康や成長の助けに。
先に紹介した「切り戻し」は、枝の途中から切るのに対して、こちらの「透かし剪定(せんてい)」は枝の根元から切る違いがあります。
切り戻しが枝を増やすことを目的にしているのに対して、透かし剪定(せんてい)では枝を間引き、増えすぎた数を適切な密度に調整することを目的としている点にも違いがあるので覚えておきましょう。
摘心
摘心は「てきしん」と読み、「摘芯」と表記されることもあります。
茎や枝の先端から芽が出ている場合、その枝や茎をカットして先端の芽を摘むことで、茎や枝の側面から出ているわき芽が育つようにする剪定(せんてい)方法の一つです。
植物は茎の先端や葉元、枝元から新しい芽を出して、それがまた枝や茎になりますが、先端から出ている芽を優先的に育てようとする性質があります。
そのまま放っておくと、先端の芽にだけ養分が行き、花もその先にしかつけなくなります。
逆を言えば、先端の芽を摘めば、他の芽(わき芽)に養分が行き渡るようになるということです。
わき芽が良く育ち、枝数が増え、枝の数が増えることで、結果的に花や果実も増やせ、ボリューム感のある株に仕立てることができます。
「摘心」と「切り戻し剪定(せんてい)」は切ることで新芽を成長させる点で似ていますが、「摘心」が枝や茎の先端の芽の近くを切るのに対し、切り戻しは枝の途中から切るため、「切る場所」に違いがあります。
また、摘心が先端の芽を切ることで、わき芽を成長させ、枝や花の数を増やし、ボリューム感をもたせることを目的とするのに対し、切り戻しは枝数を増やすためにも行いますが、その目的は好みの樹形にするためのものであり、樹形の大きさを一定に保たせたり、枝を若返らせ、丈夫にするためにも行い、目的や役割に違いがあります。
また、行う時期にも違いがあり、摘心は新芽が次々に出てくる時期を選んでするのに対し、樹木の切り戻しはとくに時期を選びません。
刈り込み、刈り上げ
「刈り込み」は「刈り上げ」ともいい、刈り込みバサミなどで枝葉の表面全体を刈り揃え、目的の形に整える作業を言います。
生垣などで、枝や葉が刈り取られて四角っぽくできあがったものや、庭木で大きなボール状にできあがった樹木を見たことがあると思いますが、他の剪定(せんてい)と違い、芽の有無や方向を気にせず、表面をそろえて、全体の形を整えるだけなので、手間もそれほどかからず、短時間で済ませることができます。
剪定(せんてい)の種類についての概要を押さえたところで、いよいよ本題である「コーヒーの木の剪定(せんてい)」について移りたいと思います。
コーヒーの木の剪定(せんてい)時期
コーヒーの木はゆっくり成長し、おのずと樹形も整うので、こまめに剪定(せんてい)する必要のない木です。
しかし、そのままにしておくと、他の樹木と同様で余計な枝や葉が増えて不格好になったり、風通しも悪くなるので、伸びすぎて目立つ枝があったり、絡んで邪魔になっている枝があれば剪定(せんてい)し、枝や葉が増えて風通しが悪くなりそうだと思われるときも剪定(せんてい)します。
つまり、剪定(せんてい)のタイミングは、時期というよりも、その時その時の状態(枝葉が茂り過ぎていないかとか風通しが悪くなっていないかとか)で判断します。
切るときは枝の根元から切り、枝の数を間引いて風通しを良くする透かし剪定(せんてい)を行います。
一方、枝の途中、新芽のすぐ上を切って、新梢となる新芽を育てて、望む樹形にする切り戻し剪定(せんてい)を行う場合は、4月~5月あたりがお勧めです。
また、主幹となる木の根元から生えている「ひこばえ」や、幹から出ている「胴吹き」は、そのままにしていると、養分がとられ、主幹となる木の方の成長を阻害するため根元から切ります。
コーヒーの木の剪定(せんてい)にあたって用意すべき道具
剪定(せんてい)を行うにあたって事前に揃えておきたい道具には次のようなものがあります。
剪定(せんてい)バサミ
不衛生なハサミを使うと切り口から雑菌が侵入し枯れる原因にもあるため、ハサミは清潔なものを使うようにしましょう。
刃の先端で細い枝を切り、太い枝は刃の真ん中あたりで切ります。
だいたい直径2cmくらいまでの太さの枝を切るのに適している道具です。
剪定(せんてい)用のノコギリ
剪定(せんてい)バサミでは切れない太い枝を切るときに使います。剪定(せんてい)バサミ同様、清潔なものを使用しましょう。
木工用のノコギリではなく、ノコを引いた時の木屑が目に詰まらないよう、生木を切るために歯に工夫がされている剪定(せんてい)用のノコギリを使います。
刃の長さはだいたい25~45cmほどあるのが一般的で、初めての人は短いほうが扱いやすいでしょう。
刃を柄のなかに収めることのできる折り畳み式と固定式があり、折り畳み式は鞘がいらず収納にも場所をとりませんが、非折りたたみ式のほうが持ちやすく、力を入れやすい利点があるので、たくさんの枝を切らなければならない場合や力を必要とする枝に対してはこちらが向いています。
また、刃は直線的なものと、カーブしたものがあるので使い分けるのが良いです。
板のように平らでまっすぐなものは直刃がむいてますが、枝のように丸みのあるものには曲刃が向いています。
選定(せんてい)する予定の木に合わせて道具を使い分けましょう。
軍手などの作業用の手袋
グリップのあるもののほうが手がつかれません。また、剪定(せんてい)中に手を怪我しないためにも、手袋は着用しましょう。
癒合剤
切り口からの乾燥や、雑菌等の侵入を防ぐためにぬります。
ケースバイケースですが、基本的に剪定(せんてい)したすべての枝の切り口にぬる必要はなく、切り口が大きければそれだけ回復にも時間がかかるので、切断面の大きなものや弱っている枝を優先的にぬりましょう。
脚立
コーヒーの木を鉢植えではなく庭木として育てている場合は、樹高があれば、脚立も必要です。
脚立は、一段が一尺(約30cm)で、3尺(約90cm)から14尺(約4m)くらいの高さまでのサイズがありますが、一人でも安全に作業できる高さとしては、3尺~6尺くらいまでのサイズが持ち運びも楽で扱いやすいでしょう。
それ以上の高さになると、脚立を誰かに支えてもらったり、ヘルメットを着用するなど、安全対策を十分に講じる必要があります。
掃除道具(熊手、竹ぼうきなどの箒、箕(み)、ごみ袋)
庭木として育てている場合、掃除道具として、熊手(レーキ)、竹ぼうきなどの箒、箕(み)、ごみ袋などをあらかじめ用意しておくとよいでしょう。
剪定(せんてい)で切り落とした枝や葉をかき集めるのに、熊手や竹ぼうきを使い、箕で集め、用意したごみ袋に入れてください。
室内で、鉢植えとして育てている場合は、新聞紙を敷き、剪定(せんてい)したい鉢植えをその上に置いて剪定(せんてい)し、剪定(せんてい)したあとに鉢植えを移動すれば、新聞紙と一緒に剪定(せんてい)で出たごみを捨てることができます。
剪定(せんてい)する枝はどれで、切る位置はどこ?
コーヒーの木の剪定(せんてい)は、「切り戻し」と「透かし剪定(せんてい)」がメインになりますが、すでに剪定(せんてい)の種類のところでも述べたように、切る位置(場所)としては、切り戻し剪定(せんてい)が枝の途中(真ん中か、三分の一あたり)、新芽のすぐ上で切り、透かし剪定(せんてい)では枝の根元から切ります。
しかし、どこを切るのかはわかっても、どの「枝」を切るのか悩むところです。
切り戻し剪定(せんてい)も、透かし剪定(せんてい)も、余分な枝、不要となった枝を切るという点では同じです。
剪定(せんてい)の対象となる枝のことを、「忌み枝(いみえだ)」とか「不要枝(ふようし)」といいますが、それは以下に挙げるような枝になります。
徒長枝(とちょうし)
他の枝と比べて目立って突き出たように伸びている枝で、花芽もつきにくく、養分が無駄に使われ、樹形を乱す要因にもなるため剪定(せんてい)します。
剪定(せんてい)は枝の根元からしますが、木全体の枝が少ない場合は、三分の一程度の長さで切ります。
からみ枝
他の枝にからみついて伸びている枝で、枝の根元から切り取ります。
交差枝(こうさえだ)
他の枝(残すべき枝)に重なるように伸びている枝で、風で枝がゆれたときに互いに擦れてダメージを受けることがあるため、樹形にとってバランスの悪いほうを枝が接触しない位置まで切り戻しするか、根元から切るかします。
逆さ枝(内向枝、返り枝)
枝は通常、木の幹(主幹)から出て、幹から離れるように伸びていきますが、逆に幹に向かって伸びている枝を「逆さ枝」といい、樹形を悪くするもとになるので枝の根元から切ります。
下がり枝(垂れ枝)
下(地面)にむかって生えている枝で、見栄えを悪くするので枝の根元から剪定(せんてい)します。
立(ち)枝
横へ伸びず、真上にむかって伸びた枝で、これも樹形を悪くするので枝の根元から切ります。
車枝(くるまえだ)
同じ場所から複数の枝が出て、車輪状にのびているものを指し、日当たりや風通しを悪くするため全部、もしくは一、二本を残して剪定(せんてい)します。
平行枝(へいこうえだ)
幹から直接出ている主枝(しゅし)に並行するように後から出て伸びた枝で、そのままにすると日当たりを悪くしたり、他の枝の成長の邪魔になるので枝の根元から切り取ります。
ふところ枝
幹から内側に向かって出ている枝で、位置的に風通しが悪く日も当たりにくいため、害虫の発生源になりやすく早めに根元から切ります。
ひこばえ
木の幹の根元から不規則に出てくる細い枝で、できるだけ全てを切り取ります。
胴吹き(幹吹き)
胴吹き枝とも言います。樹幹から突然出てくる細い枝で、木の上に行く養分を奪うため枝の根元から切り取ります。
枯れ枝
病気等で枯れてしまっている枝は根元から切り取ります。
剪定(せんてい)の手順・方法
剪定(せんてい)すべき枝や位置のわかったところで、では、剪定(せんてい)の進め方、手順についてお伝えしたいと思います。
1.剪定(せんてい)バサミや剪定(せんてい)用のノコギリ、脚立、作業用の手袋、掃除道具、ごみ袋等、剪定(せんてい)するにあたって必要な道具を用意する。
2.コーヒーの木全体をよく見て、全体から飛び出している枝や忌み枝がないか確認する。
3.ある程度大きさを抑えたいとか、樹形を整えたい場合は、枝を途中(半分か三分の二程度)のところで切る(切り戻し剪定(せんてい))。
4.枝葉が茂り過ぎて風通しや日当たりが悪くなっているようであれば思い切って枝の根元から切って枝数を減らし、風通しをよくする(透かし剪定(せんてい))。
5.その他、各忌み枝の対処法に沿って切っていく。
6.剪定(せんてい)で出た枝葉をかき集め、ごみ袋へ入れて各自治体の指示に従って処分する。
剪定(せんてい)したなら挿し木にもチャレンジしてみよう
もしも、コーヒーの木を増やしたいと思っているなら、新たに鉢植えを買うのではなく、剪定(せんてい)した枝を使って挿し木にして増やしてみるのも一つの手です。
といってもコーヒーの木を挿し木で増やすのは簡単ではないのか、コーヒー豆の産地では挿し木はあまり行われていないようです。
しかし、難しくはあっても、原理的には「不可能」ではないため、チャレンジしてみるのもよいでしょう。
挿し穂は、あまり長いと発根しにくくなるため、10cmくらいの長さにカットします。
切り口は断面積を大きくし、水を吸いやすいようにV字や斜めにカット。この時、断面がギザギザにならないように注意をして下さい。
たくさんの葉がついてると蒸散作用により乾燥しやすくなるため、数枚残す程度にして後は全て切り取ります。
数時間、水の入ったコップに切り口をつけて十分、水を吸わせます。
3号(鉢のサイズに使われる「号」は長さの単位「寸」と同じです。1寸=約3cm)くらいの鉢の底に鉢底ネットを敷き、軽石、挿し木用の土を順に入れます。
あらかじめ枝を挿すための穴を指であけておき、切り口に発根促進剤つけて土に挿します。
挿したら、水をたっぷりあげて終了です。
挿し木の時期としては、コーヒーの木の成長が活発な5月~8月がお勧めです。
剪定(せんてい)する時間や自信がない場合は?
剪定(せんてい)について、その必要性や目的、用意すべき道具や時期、手順について説明してきましたが、なかには、「失敗して枯らしてしまったらと思うと不安だ」、「十分な時間がない」という方もいるかもしれません。
そのような場合は、無理に自分で剪定(せんてい)せず、業者に任せるという手もあります。
業者に頼めば、道具を自分で準備する必要もありませんし、剪定(せんてい)で出た枝や葉の処分もやってくれます。
料金体系としては、一般的に二通りあり、職人さん一人あたりの工賃で計算する場合と、庭木の本数(一本につきいくら。あるいは高さ)で計算する場合があります。
予算のオーバーにならないためにも、ネットなどで料金相場を調べ、気になる業者数社からから見積もりをとってよく吟味した上で頼むようにしましょう。
まとめ
コーヒーの木は定期的に剪定(せんてい)を行う必要のない木ですが、それでも大きくなりすぎたり、枝葉が増えすぎたときには剪定(せんてい)が必要になります。
剪定(せんてい)は、木の外見を整えるだけでなく、風通しをよくしたり、成長を促し、病気や害虫から木を守るために行うものです。
濃い光沢のある緑の葉をしたコーヒーの木は、それだけでも十分目を楽しませてくれるたたずまいですが、適切な剪定(せんてい)のもとに育てていけば、うまくいくと白い花を咲かせ、コーヒー豆のもととなる種を抱く赤い実を成らせ、収穫の楽しみも与えてくれるでしょう。
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