胡蝶蘭の開花時期は?どれだけ花持ちがいいの?
春にはチューリップ、夏にはヒマワリといったように季節による旬のお花はありますが、胡蝶蘭が旬となる時期はいつなのでしょうか?
そこで今回は、胡蝶蘭の本来の開花時期やサイクル、開花調整方法などをご紹介していきあます。胡蝶蘭を好きな時期に開花させて、美しいお花を楽しみましょう。
胡蝶蘭の特徴から開花期を探る
「胡蝶蘭のお花をもう一度咲かせたい」「胡蝶蘭のことをもっと知って大切に育てたい」という方は、まず胡蝶蘭の特徴から学んでいきましょう。
育てているお花や植物の特徴や原産地、生息している環境を知ることは、お世話するうえでとても大切な工程です。
そもそもの生育環境が分かれば、開花の時期やサイクルなどを読み解くことにも繋がります。
胡蝶蘭の基本情報
和名 | 胡蝶蘭 |
科目 | ラン科 |
属性 | ファレノプシス属 |
英名 | Phalaenopsis, Moth Orchid |
学名 | Phalaenopsis aphrodite |
原産地 | 東南アジア |
耐暑性 | 強い |
耐寒性 | 弱い |
花色 | 白、ピンク、黄、紫、青、複色 |
胡蝶蘭は熱帯地方が原産
胡蝶蘭は、東南アジアを中心とした熱帯地方を原産地とするラン科の植物です。
直射日光の下ではなく、木漏れ日が差すような半日陰を好みます。
発見された当時の胡蝶蘭には、今のような美しい白さはなく、花びらの色はくすんだ茶色でした。明治時代に日本へ輸入された胡蝶蘭ですが、当時は今のように一般的に出回っておらず、上流階級の間だけで楽しまれる高価な植物として親しまれました。
現在では品種改良も進み、誰からも親しまれるお花となっています。
着生植物である胡蝶蘭
鉢植えでの姿がお馴染みの胡蝶蘭ですが、鉢に入っているものは土ではなく、植え込み材です。
本来、着生植物である胡蝶蘭は土に根付かず、周囲の木や岩の表面に根付いて育つ植物です。土を必要としない胡蝶蘭のために、植え込み材を鉢に使うことで、できるだけ本来の生育環境に近づけています。
胡蝶蘭独特の曲がりくねってうねうねとしている根は、土に根付かない胡蝶蘭が、湿度の高い生息地で空気中の水分を少しでも多く取り入れようとして発達した姿です。
特徴的である肉厚な葉や花びらも、一生懸命に取り入れた水分や養分を蓄えておくために厚みがあります。
過酷な環境下を生き抜いてきた胡蝶蘭は、上品な花姿からは思い浮かべにくい、強い生命力を持つお花です。
そんな胡蝶蘭の寿命は、丁寧にお手入れをすれば50年以上にもなると言われています。
胡蝶蘭の開花時期はいつ?
まずは、胡蝶蘭の生きてきた環境や歴史についてお分かりいただけたかと思います。
繊細そうな見た目からは想像もつかないパワフルさを持っているのですね。
胡蝶蘭の中には8ヶ月も開花を楽しめる品種や、咲き始めと咲き終わりで花の色が変化する種類もあります。
同じ胡蝶蘭の中でも、品種によってはさまざまな違いを楽しめるのも特徴です。
一年を通して開花した状態で手に入る胡蝶蘭ですが、本来の開花時期はいつ頃なのでしょうか?
温室栽培での開花調整
原産地である熱帯地方で自生している胡蝶蘭が開花している時期は、日本だと1~5月にあたる時期だと考えられます。
ただし、1月や2月はまだまだ春には遠く、冬の寒さが厳しい季節です。
熱帯地方で暮らす胡蝶蘭に、氷点下を切ることもある日本の寒さはとても辛くて厳しいものになるため、日本における胡蝶蘭の開花期は4~5月頃の春となります。
しかし冠婚葬祭での贈答品としての汎用性が高いことや、ビジネスシーンでも利用できるニーズの高さから、通年入手できるように栽培が進み、開花の時期が調整されるようになりました。
胡蝶蘭の開花調整の歴史
そもそも、日本ではまだ温室栽培が進んでいない1960年代までは、胡蝶蘭の開花季節は決まっていましたが、1970年代を迎え、ブライダルブーケなどで胡蝶蘭の需要が高まるにつれ、開花調整の研究が始まりました。
大学などで研究された胡蝶蘭は、高温の環境では開花せずに、株を低温環境に移してあえて温度差を生じさせることで開花が進んでいくと判明。
そして、いよいよ温室栽培による開花の調整が主流となり、1980年の後半頃には、現在のように一年を通して、いつでも開花した状態での美しい姿の胡蝶蘭を入手できるようになったのです。
80年代から使われている温度差によって開花が進む性質を利用した方法は、現在においても変わらず使われており、同様のメカニズムを利用して、胡蝶蘭の開花をコントロールして栽培されています。
四季で見る胡蝶蘭の開花サイクル
胡蝶蘭の歴史を知ることで、開花が温度差によって促進されるということが分かりましたね。
つまり、日本の環境で育っている胡蝶蘭の開花サイクルには、「温度の差」が深く関わってくるのです。
四季に応じて気温が変化する日本においては、胡蝶蘭はどのようなサイクルで生長しているのでしょうか。
次は、日本の四季ごとの変化で見る、胡蝶蘭の開花サイクルについてお伝えしていきます。
春の胡蝶蘭
胡蝶蘭の開花サイクルを四季で考えていくと、厳しく辛い冬の寒さが終わり、暖かくなった春に胡蝶蘭の花芽が伸びてきて、開花が促進されていくことになります。
春を迎えた胡蝶蘭の株は、すでに美しい花を咲かせているか、冬が明けてからまだゆっくりと休んでいる状態です。
春の胡蝶蘭の管理では、水やりの回数を抑えて乾燥気味にして、管理温度が18℃を切らないように注意していきます。
まだまだ乾燥もしやすい時期ですから、霧吹きなどで葉水をかけて、葉からも水分を吸収できるようにお世話すると良いでしょう。
3~5月になると、胡蝶蘭がいよいよ開花してきます。
開花してきたら、水やりは乾かし気味ではなく、植え込み材が乾いたことを確認してから水をあげるように頻度を少し増やしましょう。
あまり水をやりすぎると、開花期間が短くなってしまいますので、水の量には注意が必要です。
夏の胡蝶蘭
夏頃を迎えると、春から咲いていた胡蝶蘭の花が咲き終わっている頃かもしれません。
花を咲かせ終えた胡蝶蘭は、花茎を根元の近くでカットして、株に栄養を蓄えやすいようにする手助けをします。
植物にとって、開花とは大変な重労働になるので、胡蝶蘭は長く咲いていた分、じっくり株を休ませてあげる必要があります。
基本的には肥料が不要である胡蝶蘭ですが、株を養生させるこの時期に関しては、薄めた肥料を与えるのもおすすめです。
夏場は乾燥するため、春よりも水やりの頻度が上がり、胡蝶蘭をお世話していく四季の中ではいちばん水を与える季節です。
また、日本の夏は温度が高いので、胡蝶蘭には嬉しい湿気でもあります。
根からも空気中の水分を吸収する胡蝶蘭は、伸ばした根で水分を取り入れ、ぐんぐんと株を生長させていきます。
株が健康的で元気であるほど、開花する花の数も増えるので、たくさん花を咲かせて豪華な花姿にしたい人は、夏季の生長期を利用して重点的に胡蝶蘭を生長させましょう。
秋の胡蝶蘭
涼しくなる秋を迎えた胡蝶蘭は、切った花茎から新芽を生やしていきます。
茎が伸びて長くなったら、支柱などを挿して茎を固定し、胡蝶蘭の生長を支えましょう。
茹だるような暑さが終わり、涼しくなってくる秋には、胡蝶蘭は「花芽分化」といって、花になるための芽を作ることに注力します。
1ヶ月ほど経つと、花になるための花芽が目に見えて分かるほどに伸びているのが分かるでしょう。
冬は胡蝶蘭が生長を休める休眠期に入りますので、肥料は不要です。
冬を迎える前に、鉢に置き肥などを置いたままにしておくと、栄養過多状態によって根詰まりを起こす可能性があります。
冬を越える準備として、秋の終わり頃までには必ず肥料を取り除いておきましょう。
冬の胡蝶蘭
室内で育てる胡蝶蘭は、花芽を秋に作ります。
冬の寒さに耐え忍ぶために休眠状態に入り、暖かくなった春に花芽の生長へと再び取り掛かって、春には開花させるというサイクルで動いているからです。
日本の寒さには弱い胡蝶蘭ですから、冬は休眠期に入って生長がほとんど止まり寒さに耐えるため、春から秋と比較すると、水分をあまり必要としなくなります。
植え込み材が渇くのも、体感的にだいぶ遅くなります。
冬場の水やりは、植え込み材が乾いてから2~3日後を目安に、特に乾燥気味にさせるよう意識して育てましょう。
無事に寒い冬を越せれば、美しい開花が待ち遠しい春がやってきますよ。
胡蝶蘭の開花を調整してみよう
胡蝶蘭の開花サイクルについてお分かりいただけたかと思います。
1~3ヶ月という長い間、美しい花を咲かせてくれる胡蝶蘭は、お花の持つ開花サイクルの仕組みを利用すれば、開花のコントロールが可能です。
日本の環境下における胡蝶蘭の開花時期は4~5月頃の春になりますが、温度管理によって開花調整をすれば、2~3月頃や、夏や秋などにもお花を楽しむことができるというわけです。
胡蝶蘭を育てるうえでは、開花時期を調整するのも楽しみのひとつだと言えるでしょう。
それでは、実際に好きな時期に胡蝶蘭を開花させるために必要となる、具体的な調節方法についてご紹介していきます。
胡蝶蘭は室内で育てよう
日本の気候を、胡蝶蘭が好む熱帯地方に寄せることはできませんよね。
しかし室内環境であれば、ある程度温度をコントロールしやすくなります。
胡蝶蘭の開花調整をするうえでの、室内管理における注意点としては、
- 室温を18℃以上に保つ
- 一定の湿度を保つ
- 水を与え過ぎない
この3点が重要なポイントになるでしょう。
湿度については、60~70%が理想です。
人間が過ごしやすい環境は、胡蝶蘭にとっても過ごしやすくなります。
湿度管理が難しいときには、葉水で水分補給させましょう。
付け加えておくと、ギフトなどでいただいた胡蝶蘭については、1株ごとに植え替えて、1鉢に1株で管理できるとベストです。
1株ごとに分けておくことで、より柔軟な温度管理ができるようになります。
そして冬場の温度管理には、暖房器具の風などが直接鉢に当たらないよう注意が必要です。
暖房などの風は、胡蝶蘭の水分を著しく奪います。
湿度を好む胡蝶蘭には、とても辛い環境になってしまいます。
また、胡蝶蘭が枯れる最大の原因に根腐れがありますから、水のやりすぎには充分気を付けてください。
強すぎる日光は葉焼けを起こしますので、自生する胡蝶蘭の好むような、木漏れ日が差す程度の明るい日陰に置いて管理しましょう。
好きな時期に胡蝶蘭を開花させる
胡蝶蘭は、湿度を適した状態とあわせて最低温度を保てば、株の生長が促進されるため、花を咲かせるための芽を作ることに注力する、花芽分化に進みません。
つまり、咲かせたい時期に合わせるためには、開花させたい4~5ヵ月前にあたる時期から、管理する最低温度を平均20℃程度上げて、花芽分化を促進させていきます。
- 株の生長期間を長引かせて花芽分化を遅らせる
- 冬場の休眠期間を削って花芽分化を促進する
- 冬場の休眠期間を延ばして、花芽分化を遅らせる
といったように、さまざまな調節方法を用いて、開花時期をコントロールできます。
ただし、あまり株の生長期間が少なすぎると、せっかく開花しても胡蝶蘭の花数が少ない状態になってしまうので、株についてはじっくりと生長する期間を設けるのがおすすめです。
冬の終わりから咲かせるには
まだ冬の名残がある2月頃に前倒しをして咲かせたいならば、平均温度が10℃以下となる冬の環境から脱却する必要があります。
つまり、冬に休眠期を迎える胡蝶蘭の株の生長が止まらないよう、暖かい置き場所で管理して、冬の間でも花芽を生長させていけば良いのです。
この方法で冬場の温度管理をすれば、2月頃には少しずつ花開きはじめるでしょう。
初夏に咲かせるには
日本での胡蝶蘭の開花期が終わる、5月以降に開花させたい場合には、休眠期間を延ばしていきましょう。
胡蝶蘭がまだ冬だと錯覚するように、10℃以下の平均温度で管理して、花芽の生長をストップさせるのです。
3月頃までは休眠状態であった温度から、花芽分化に適した温度になれば、止まっていた花芽の生長がどんどん進んでいきますので、5月頃から少しずつ開花していくでしょう。
温室以外では正確な開花調整は難しい
胡蝶蘭の生育温度を管理して、開花調整をするというのは、理屈としては説明しやすいのですが、実際に一般のご家庭で温度を管理するとなると、なかなか難しいものです。
住んでいる地域や、鉄筋や木造といった家の構造によっても、温度は異なってきます。
ただし、暖かいリビングに比べると、廊下や玄関などは冷え込みますよね。
そういった家の中の温度差を利用して、開花時期を上手に調整するのも、胡蝶蘭を育てていくうえでの醍醐味のひとつでしょう。
もし、胡蝶蘭の鉢をいくつか育てている方でしたら、それぞれの鉢によって開花を調整させれば、ひとつの鉢が咲き終えたら次の鉢が開花する、といったように、通年花が咲いている胡蝶蘭を楽しむこともできますよ。
胡蝶蘭を育てている方は、ぜひ一度開花調整にチャレンジしてみてくださいね。
まとめ
今回は、胡蝶蘭の花を好きな時期に咲かせられるように調整する方法や、開花のサイクルなどをご紹介しました。
胡蝶蘭の株をいくつか持っている人は、株ごとに開花時期をずらして、通年お花を楽しむこともできます。
ご自宅での温度管理では、温室栽培ほどの正確さはないものの、胡蝶蘭が開花する仕組みを知ることで、上手な開花のコントロールができるはずです。
開花調節は胡蝶蘭を育てる楽しみのうちでもありますから、ぜひ一度チャレンジしてみてくださいね。