つる性植物の女王・クレマチス|特徴や育て方、種類など

上品で美しい葉とつるを持つクレマチスは、「つる性植物の女王」の名にふさわしく、エレガントな佇まいの植物です。

今回は、そんなクレマチスについて、豊富にある種類や特徴、育てるコツやポイントなどを詳しくご紹介していきます。

つる性の植物は他の植物とは一味違う育て方なので、なかなか挑戦できないという方もいらっしゃるかと思いますが、タイプ別の育て方をマスターすれば、上手にクレマチスを育てることができますよ。

クレマチスの基本情報

まずはクレマチスの基本情報を見ていきましょう。

科・属 キンポウゲ科・クレマチス属
和名 風車(かざぐるま)、鉄線(てっせん)
英名 Clematis
学名 Clematis
原産地 ヨーロッパ、日本、中国、北アメリカ

 

クレマチスの特徴

クレマチスは、日本の「カザグルマ」と中国の「テッセン」、欧米の「インテグリフォリア」の3つの原種を使い、品種改良が進められたものです。

現在では、膨大な数の園芸品種が存在していますが、日本では「カザグルマ」「ハンショウヅル」「センニンソウ」などが原種に当たります。

 ナチュラルな雰囲気を持つ姿から、バラと一緒にイングリッシュガーデンに植えられることも多い植物です。

近くに生えている木や柵などにつるを伸ばして絡ませていくクレマチスは、大きなものは5m以上にも生長します。

つるの特性を生かして上手に誘引すれば、アーチ状などに美しく仕立てる楽しみもあります。

 アネモネなどと同じキンポウゲ科のクレマチスは、花びらに見える部分は萼で、実は花びらはありません。

クレマチスの咲き方は、大きく分けると「新枝咲き」「新旧枝咲き」「旧枝咲き」の3種類に分けられますが、これについては後述で詳しくご紹介したいと思います。

この咲き方により、剪定時の注意点も変わってくるので、クレマチスを育てるうえでは、咲き方のタイプを把握しておくことが重要です。

咲き方による3タイプ

クレマチスは花の咲かせ方によって、3種類のタイプに分けられます。

  •  新枝咲き
  • 旧枝咲き
  • 新旧枝咲き

 それぞれの咲き方について、詳しく解説していきます。

新枝咲き

新しく伸びた、新枝に花芽を付ける咲き方で、代表的なものにはビチセラ系、ベル形の花を咲かせるテキセンシス系やビオルナ系、インテグリフォリア系があります。 

剪定によって新枝に再び新しい花芽が付いていくので、年に数回、繰り返し花を咲かせてくれるタイプです。

旧枝咲き

前年に伸びた旧枝が休眠を迎えた後に、春になると枝を伸ばして、花を咲かせるタイプです。旧枝咲きには、つるがよく伸びるタイプのモンタナ系、香りが魅力のアーマンディ系、雌雄異株のフォステリー系、シルホサ系などがあります。基本として開花は年に1回で、「一季咲き性」になります。

新旧両枝咲き

新旧両枝咲きのタイプは、先ほど紹介した新枝・旧枝の両方の性質を併せ持っているタイプになります。前年の枝から伸びて花を咲かせつつ、剪定によって新しく伸びた枝から花を咲かせてくれます。新旧両枝咲きには、遅咲きの大輪系、長く花が開花するフロリダ系、アトラゲネ系などがあり、長い期間花を咲かせる「四季咲き」なども多く、新旧両方の良い性質を継いだハイブリッドタイプです。ちなみに、大輪系には「早咲き」「遅咲き」があって、早咲きは古枝に花芽をつけて、春になると開花するタイプになります。一方の遅咲きは、5月頃から咲き始めて、花が終わった後に剪定をするころに繰り返し咲くタイプです。

初心者には「新枝咲き+四季咲き性」がおすすめ!

これだけ種類やタイプがあると、育てる前からだいぶ難しそうに感じてしまいますよね。

どれを選べばいいの?と悩んでしまいますが、初心者向けとしては、剪定が簡単に済む「新枝咲きタイプ」をおすすめします。

「新枝咲き」であり、かつ「四季咲き性」のタイプを選べば、年間で繰り返し花を咲かせてくれるので、剪定によって美しい花を何度も楽しめますよ。もちろん、単純に見た目の好みなどで選んでも問題ありません。モチベーション高く育てられるように、自分のお気に入りの種類を探してみましょう。

クレマチスの基本的な育て方

たくさんの品種がある中で、さらに花の咲き方によりタイプが分かれるクレマチス。

ここまでが難しかったのだから、育て方も難しいんじゃ…?と腰が引けてしまいますが、クレマチスはコツさえ掴めば、持ち前の生命力の強さでぐんぐん育っていくので心配は要りませんよ。

続いては、クレマチスの育て方の基本的な部分をご紹介していきます。

苗選び

クレマチスの苗は、春先と秋頃に園芸店やホームセンターで販売されます。

なかでも、室内で育てるクレマチスには、フォステリー系がおすすめです。

枝があまり伸びていかないので、鉢やハンギングでの管理など、支柱を使わなくてもコンパクトにクレマチスを育てられる、鉢植え向きの種類になります。

 1年生の苗は、開花までには2年以上かかるので、初心者の方は開花までが早い、2年生以上の苗を購入すると良いでしょう。

苗は、鉢底から根が覗いており、太くてしっかりしている根のもので、葉色が鮮やかで健康的な株を選んでください。

植え付け

クレマチスの種類と植え付け準備ができたら、苗植えを行ないましょう。

苗の時点ではつるが伸びていないので、他の植物と違いが分かりませんが、生育期を迎えるとつるがあちこちに伸びていきます。

アサガオの鉢植えのように、あんどん仕立て用の支柱につるを絡ませていくことで、美しい花をたっぷりと咲かせてくれます。

 

地植えで育てる場合には、風通しと日当たりが良好な場所で、かつ近くにアーチやフェンスなどのつるが絡みやすい位置に植えましょう。

 

【植え付けの手順】

(1)鉢底ネット・鉢底石を敷いた鉢に、3分の1ほど土を入れます。

(2)ポットから苗を取り出し、土をやさしくほぐして落としましょう。

(3)中心になるよう苗を置いて、苗の高さを調節しながら深植え気味に植えます。

(4)隙間をすべて土で埋めたら、鉢底から流れ出るほどたっぷりと水やりをします。

(5)あんどん支柱を鉢の周りに立てておきましょう。

置き場所

日当たりがよく、風でさやさやと葉が揺れる程度の環境がベストですが、あまり風当たりが強すぎないよう注意しましょう。

つるは光を求めて生長していくので、日が当たる場所で育てると生長が早まります。

日光が不足すると、ひょろひょろと弱々しくなり、花を咲かせない場合があるので、最低でも1日に5時間ほどは日光浴させると良いでしょう。

水やり

水切れを起こすとクレマチスは枯れてしまうので、土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えてください。

鉢植えでは、鉢底から水が流れ出るほど、メリハリをつけた水やりを行ないます。

季節や気温によって吸水力は変化するので、決めた曜日や定期的な日数などで水やりをせず、必ず土を観察して乾いたことを確認する癖を付けましょう。

 

鉢の受け皿に溜まった水は、放置すると鉢内の湿度が上昇して株が蒸れてしまうので、水やり後は受け皿の水を捨てるまでをセットにして、こまめに捨ててくださいね。

 

つぼみから開花までには、特に水を多く必要とするので、たっぷりと与えましょう。

開花直前に水が不足すると、せっかくのつぼみが開かない恐れもあります。

室内向けのフォステリー系は多湿が苦手なので、水を与え過ぎないよう注意が必要です。

とくに花の咲いている間は、乾かし気味に管理します。

庭植えでは、根付いて安定すれば水やりは要らず、降雨に任せていて良いのですが、晴天が続いたり、葉がしおれていたりしたら、適宜水やりしてください。

肥料

クレマチスに定期的に肥料を与えれば、花が咲きやすくなるので積極的に与えます。

 10月と3月に肥料を与え、以降は2ヶ月に1回ほど置き型の肥料か、10日〜2週間に1回ほど液体肥料を与えましょう。

 クレマチス専用の緩行性化成肥料も販売されているので、使ってみるのもおすすめです。

花芽が出てきたら、開花するまで1週間〜10日に1回ほど希釈した液体肥料を水やり代わりとして与えていきます。

緩効性肥料は、真夏を除く1〜2ヶ月に1回ほど、液体肥料は月2~3回ほどを目安にして与えていきます。

剪定

花に元気がなくなってきたら剪定を行いますが、クレマチスのタイプによって、剪定時期や箇所が異なります。

間違った時期につるを切ると、花芽を切ったり損傷を与えたりするので、自分の育てているタイプを把握しておきましょう。

長いつるを誘引するだけでなく、全体の形を整えるのもクレマチス栽培には大切な工程です。剪定のポイントをしっかりと抑えてしまえば、ほとんどクレマチスのお世話についてマスターできたと言えるでしょう。

間違えやすいポイントですが、美しい花を咲かせるために頑張って覚えてくださいね。

 

【新枝咲き】

剪定時期:2〜3月、花が咲き終わった5〜8月

 

冬の剪定は、生え際から2〜3節上でばっさりと切り落としましょう。

新しいつるが生えて春から秋に花を咲かせます。

だいたいの花が咲き終わった頃に、つるの先を切り揃えて形を整えることが大切です。

 

【旧枝咲き】

剪定時期:4〜5月の花が咲き終わった後

 旧枝咲きは、まだ新しい花芽ができない頃がいちばん剪定に適している時期です。

前年のつるを残さないと翌年の花が咲きませんので、古いつるを必ず残します。

花の下から5cmほどで切り落としましょう。

 

【新旧枝咲き】

剪定時期:2~3月、5~8月

新旧枝咲きは、春と秋に剪定を行ないます。

春につるの先端を5cmほど切り揃えたら、5〜8月の花が7割以上咲き終えた頃に、春と同じく5cmほど切って調整してください。

 

【四季咲き】

四季咲き品種は、花が咲き終えた後に剪定すると、後から伸びたつるに花芽が付いていきます。つる全体の半分〜3分の1ほどを残して、早めの剪定を心がけると、年数回は花を楽しめるでしょう。

 

【花がら摘み】

花の色がくすんできたり、雄しべが落ち始めてきたりしたら、花首から切り落としましょう。枯れるまでそのままにすると種を作り始めるので、開花にエネルギーが回り切らず、株が弱ってしまいます。

仕立て

つる性のクレマチスのような植物は、こまめな誘引によってつるを調整することが美しいお手入れでは重要です。

つるが混み合ってしまうと、日光が行き渡らずにまんべんなく育たなかったり、蒸れによって病気や害虫被害も考えられます。

つるを絡ませる誘引は、見た目の美しさだけではなく株の健康を保つためにも欠かせない作業なのです。 鉢植えの場合は、あんどん支柱へとつるを誘引していきます。

支柱に絡ませていくだけなので、かなり簡単です。

上手く絡まない場合には、麻ひもや誘引用のテープなどでゆるめにつるを結んであげましょう。S字状やらせん状など、どんな形状でも構わないので、とにかく枝と枝が重ならないようにして、誘引方向をしっかり決めて絡ませるのがポイントです。

植え替え

クレマチスの植え替えは、1年中作業ができますが、猛暑日や厳冬期は避けて行なうのが基本ルールです。

クレマチスは根のダメージに大変弱いので、植え替え時は特に丁寧に作業してください。

鉢内での根詰まりを防ぐために、鉢植えは2〜3年ごとに大きな鉢へ植え替えましょう。

鉢底から根が飛び出ていたり、土に水が染み込まなかったり、生長しすぎてバランスが崩れてきたりしたときも植え替えのタイミングです。

 

【植え替えの手順】

  1. 一回り大きな鉢に鉢底ネット・鉢底石を敷き、半分ほど土を入れておきます。
  2. 株をやさしく取り出したら、新しい鉢土の上へ置きましょう。
  3. 根元から2つ目の葉まで隠れるくらいに深植えしてください。
  4. 株の大きさや長さに合った支柱を設置します。
  5. たっぷり水やりをしたら、緩効性化成肥料を置きましょう。

 

鉢植えも庭植えも、植え付けではつるを1〜2節分埋めて深植えをするのが、クレマチスの植え替えや植え付けでは基本になります。

クレマチスの増やし方

クレマチスは、4〜7月頃までの間に「挿し木」で増やすことができます。

お庭のピンポイントにクレマチスを育てていきたいときや、室内用の株が欲しいときなどには、挿し木はもっとも簡単な増やし方ですので、慣れたらぜひ挑戦してみてくださいね。

挿し木

挿し木の手順は以下の通りです。

  1. 今年伸びた新しいつるの、堅い部分を10〜15cmほど切り取ります。
  2. 先端の葉を2〜3枚残して残りは取り除きましょう。
  3. 清潔な鉢土に割り箸などで埋める分の穴を空けておきます
  4. 挿し穂のつるを5cmほど土に埋めて、たっぷり水を与えます
  5. 半日陰の場所で管理して、土が乾燥しないよう注意しながら水を与えましょう
  6. 2ヶ月ほどで発根するので、株が安定したら鉢へと植え替えます

 

発根しないつるもありますので、何本か挿し穂を用意しておくと良いでしょう。

つる伏せ

もうひとつ、「つる伏せ」という増やし方もあります。これは、親株と繋がった状態のままで、節から発根させて子株を作るという方法になります。

 ツル伏せの手順は以下の通りです。

  1. 挿し木と同じく4〜7月頃に、今年にかけて伸びたつるを2節ほど土に埋めましょう。
  2. 次の春に、土から出たつるをそっと引っ張り、根付いていれば発根している証です。
  3. 親株と繋がっているつるを切り離して、別の鉢へ植え付けます。

まとめ

今回は、つる性植物の女王・クレマチスについて、育て方や品種、性質などについて詳しくご紹介してきました。

 クレマチスはつるの性質を活かして、お庭のアーチやフェンスに絡ませれば、おしゃれなガーデン演出ができるのでとても人気のある植物です。

バラと一緒に植えるのもポピュラーなので、お庭にバラがある方はクレマチスを育ててみてはいかがでしょうか。

花の咲き方によって剪定などのお手入れ方法が異なりますので、自分の育てているクレマチスのタイプをきちんと把握しておき、適切なお世話を心がけましょう。

 

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