花の水揚げとは?自宅でできる水揚げ方法や花を長持ちさせるコツを紹介

花屋さんで購入した花をより長く楽しむためには、それぞれの植物にあった水揚げ方法を選ぶことが大切です。

正しい方法で水揚げしてあげれば、一度元気がなくなってしまった花でも、再び水を吸い上げ、復活することもあります。

今回の記事では、「贈り物にもらった花束があっという間に枯れてしまった」「花の頭が下がっているけれどどうしたらよいかわからない」という人のために、花の水揚げ方法を紹介します。

花の種類に応じたやり方や、大きな枝ものの水揚げ方法などを知って、美しい花を長持ちさせましょう。

花の水揚げとは?

花の水揚げとは、花の茎の切り口を切り戻したり、時には割ったり叩いたりして水を吸い上げやすい状態にするための方法のことを指します。

水不足で元気がない状態を「水が下がった」状態と言います。水が下がった状態を避けるため、水を吸い上げやすい状態にするのです。

切り花は、本来ならばあるはずの根から水を吸い上げることができないため、茎の切断面から水を吸い上げます。うまく水を吸い上げられないと、お花や葉から蒸散といって水分が空気中に出ていってしまい、次第に水不足になってしまいます。

切り花に水揚げが必要なのはなぜ?

水揚げとは、花が水を吸い上げやすいように処理することを言います。

花は、本来大地に張った根から水を吸い上げて生きていますが、花屋さんに並んでいる切り花は、根が切り取られた状態です。

切り花にとって、水を吸い上げられるのは、茎の断面のみとなるので、その限られた部分をできるだけ水を吸い上げをしやすい状態に処理してあげましょう。

花の水揚げのタイミング

花屋さんでは、花が入荷したタイミングで水揚げを行っています。

自宅で再び水揚げを行いたいタイミングを紹介します。

花を長時間持ち歩いて自宅に持ち帰ったとき

花が水から離れている時間が長かった場合は、生ける前に水揚げを行いましょう。

持ち帰った花の元気がないとき

持ち帰った花や葉の元気がない場合に、水揚げを行うと効果的です。

飾っていて、花色は美しいのに元気がないとき

花が茶色くなったり、花びらが落ちてきた場合は枯れているサインです。しかし生けてから日が浅く、花色が美しい状態で、花の元気がない場合は水揚げを行うことで、再び元気な姿に戻ることがあります。

花の水揚げに必要な道具

自宅で水揚げを行う場所は、キッチンや洗面所のシンクやお風呂場などがおすすめです。

大きなバケツがない場合、自宅に生ける程度の花の量であれば、上部を切り取った大きめのペットボトルや牛乳パックなどでも代用できます。

使用する水は水道水で問題ありません。以下の項目で、花の水揚げに必要な道具を解説していきます。

ハサミ

水揚げに使うハサミは、切り花用の花鋏(はなばさみ)が使いやすいです。

花鋏は工作などで使うハサミに比べると、切れ味が良く、茎の中の導管(水を吸い上げる管)を潰さずに切ることができます。

また、一般的なハサミに比べて錆びにくく作られているのも特徴的です。

花鋏を使う際は、バクテリアの発生を防ぐために、清潔なものを用意しましょう。

また使用後は水気をふき取り、清潔を保つことで錆などを防ぎ、長く愛用することができます。

ハサミの消毒方法

ハサミは使用する前に必ず消毒しておきましょう。以下の方法で自宅でも消毒することができます。

  • 熱湯で煮沸消毒するかライターやコンロで焼いて消毒する
  • ハイターに浸けるかアルコール消毒を行う

花の水揚げに必要なその他の道具

花の水揚げに必要なその他の道具は以下の通りです。

  • バケツや洗面器など大きめの容器
  • 新聞紙(湯上げや深水を行う場合)
  • セロテープ(湯上げや深水を行う場合)
  • フローリストナイフ(枝ものを水揚げする場合)

水揚げ前の花の処理方法の手順

花屋さんから持ち帰った花は、水揚げ処理がされた状態です。

花の状態を観察し、必要があれば以下の処理を行いましょう。

ギフトの場合はラッピングをすべて外す

ラッピングされた状態では、花が蒸れやすくなります。

ギフトでいただいた花は、なるべく早い段階でラッピングを外してあげましょう。

根元を輪ゴムやラフィアで束ねてある場合は、輪ゴムやラフィアも外しましょう。

保水ゼリーは洗い流す

花屋さんによっては保水ゼリー(エコゼリー)と呼ばれるゼリー状の水で保水している場合があります。

水揚げ前に、流水で保水ゼリーを洗い流してあげましょう。

銀紙と吸水ペーパーで保水がされている場合は、優しく取り外します。

余分な葉や蕾を取り除く

葉が水に浸かると腐りやすく、水が汚れやすくなります。

花瓶の水に浸かる部分の葉は取り除き、バランスを見ながら多すぎる葉は減らしてあげましょう。

また、硬い蕾や小さな蕾は取り除きます。

葉や蕾を減らすことで、花の開花にエネルギーを使うことができるので花を長持ちさせることができます。

特に葉が大きい花(アジサイやシャクヤクなど)は、葉から水分が蒸発するので葉を減らした方が長持ちします。

おしべを取り除く

ユリなど、おしべに花粉を持つ花は、開花にエネルギーを残すためにできるだけ早い段階で花粉を取り除きます。

花粉の入った袋(葯=やく)が弾けると、花びらが汚れてしまうだけでなく、花の日持ちも短くなってしまいます。

手やピンセットでそっとつまむようにして取り除き、受粉を防ぎましょう。

切り花の水揚げ方法と4つの種類

切り花の水揚げ方法は主に以下の4種類です。

方法 適した花
水切り どんな花にも使える水揚げの基本

バラ、チューリップ、カラー、ダリアなど

水折り 茎の繊維が多い花

カーネーション、リシアンサス、菊など

湯揚げ 茎に毛が生えた花

ひまわり、ガーベラなど

スカビオサやハーブなどの草花

焼き揚げ 会場装花などで切り花を使う場合

水切り

水の中に茎を沈め、水中で茎の下から数センチを切る方法です。

どんな花にも有効で、もっとも簡単な水揚げ方法と言えるでしょう。

水中で茎を切ることで、茎の中に空気が入るのを防ぎ、水圧で給水を助けることができます。

茎が硬い花(バラ、ユリ、アリストロメリア、ランなど)は茎を斜めに切ると断面積が広くなり給水を助けてくれます。

茎が柔らかい花(ガーベラ、ひまわり、チューリップなど)は中の導管がつぶれやすいので、優しく水平に切ると良いでしょう。

また、ブルースターやポインセチアなど茎を切ったときに白い液体の出る植物は、水切りの際に綺麗に洗い流します。

液に触れるとかぶれることがあるので、肌が弱い人は注意して扱いましょう。

水折り(手折り)

菊やカーネーション、リンドウなど、繊維の多い茎を持つ花に有効な方法です。

水中で茎の下から数センチのところを折って繊維の断面積を広くし、吸水を助けます。

切りたい場所に親指を立てるようにしてパキっと一気に折り切るのがコツですが、切れない場合はねじり切る用にします。

水中で折るのが難しい場合は、折った後できるだけすぐ水に浸けて吸水させましょう。

湯上げ

湯上げとは、茎の下数センチをお湯に浸け、一度真空状態にすることで花の給水を助ける水揚げ方法です。

ひまわりやガーベラなどに有効な方法で、水が上がりづらい茎の細い草花の水揚げにも役立ちます。

花を湯気から守るために、必ず新聞紙を巻いて作業を行いましょう。

湯上げの方法

1.複数の花を湯上げする場合は、頭を揃えた状態で輪ゴムでまとめます。

2.花に湯気が当たらないように、1/3程度を新聞紙で巻き保護しましょう。

このとき、蒸気が花に上がるのを防ぐため、新聞紙の下部分をしっかりと茎にセロテープなどで巻き付けます。

3.茎の下数センチを90度以上のお湯に、色が鮮やかになるまで(10〜20秒程度)浸けます。

4.すぐに水の入った容器に移し替え、2時間程度水揚げしましょう。

上手く湯揚げできていれば、湯に浸けた部分が変色しているはずです。

変色した部分を切り落としてから、花瓶などに生けましょう。

焼き揚げ

焼き上げも、湯揚げ同様に、切り口を真空状態にすることで給水を助けます。

また切り口が燃えて炭化することでも給水が良くなり、水の腐敗防止にも役立つ方法です。

湯揚げと同じ方法で花を保護し、茎の先端が真っ黒になるまで焼きます。

火に対して茎を寝かせるようにして焼くと花に蒸気が当たるのを防ぐことができます。

先端が炭になったら素早く水に浸けましょう。

茎が炭になるまで焼くと焦げ臭いにおいがするので、家庭で行うのは難しい方法ですが、ホテルや会場装飾に使う際に行われることがあります。

枝物の水揚げ方法

方法 適した枝物
割り(十文字切) どんな枝にも使える水揚げ方法
叩き(潰す) 細い枝もの、ユキヤナギやヒペリカムなど
裂く 太い枝ものや表皮が厚い枝もの
裂いて中の綿を取る ライラック、アジサイなど

割り(十文字切)

枝もの全般に有効な水揚げ方法です。

枝の先端に、縦にハサミを入れて、枝を割るようにすることで断面積を広げます。

太い枝ものであれば、さらにもう1回、十文字になるようにハサミを入れましょう。

太い枝や硬い枝は、横に切るのは難しいですが、縦方向であれば比較的簡単に割りを入れることができます。

叩き(潰す)

枝が細く、縦に割りを入れるのが難しい場合に有効的な方法です。

枝の先端2〜3cmほどのところを、ハンマーなどで叩き潰します。

力加減を調節しながら、枝の繊維をほぐしてあげるようなイメージで潰しましょう。

枝もの全体に使える水揚げ方法なので、スモークツリーやスノーボールの水揚げが悪い場合にも試してみてください。

また、切り花のクレマチスのような硬く細い茎を持つ花の水揚げにも効果的です。

裂く(裂いて中の綿を取る)

枝にナイフを斜めに入れ、表面の皮をはぎ取るイメージで裂く方法です。

表皮の分厚い皮をはぎ、中にある導管を露出させることで、直接吸水を促す効果が期待できます。

また、アジサイやライラックは枝の中にある綿を取り除くことで、水揚げが良くなります。

斜めにナイフを入れたあと、ナイフやハサミの先端を使って、白い綿を取り除いてあげましょう。

水揚げ後の花の管理方法

水揚げ処理をした後の花は、しばらく水に浸けておきます。

茎の中に空気が入らないように、水揚げ後はできるだけすぐ水に浸けてあげましょう。

ここからは、水揚げ後の花の管理について解説します。

水揚げの後は最低1時間~半日は水に浸けておく

水揚げした後は、そのまま水を張った桶やバケツで浸け置きをします。

茎が空気に触れてしまうと、水を吸い上げる力が弱まってしまうので、水から上げないことが大切です。

水揚げ前の花の状況に応じて、水が揚がるまでの時間に差があります。目安は以下の通りです。

  • 元気な状態からの水揚げ 1時間ほど
  • 元気がない花の水揚げ 2、3時間~半日
  • 水が下がっている場合の水揚げ 一晩

水替えを行う

水揚げ後、花瓶などに生けた花は、数日に1度新鮮な水に交換することで長持ちします。

気温の高い夏場は、水が腐りやすいので水替えの回数を増やしましょう。

水替えを行うときは、花瓶についたぬめりも洗剤で綺麗に洗い流してから新しい水を入れることで、バクテリアの発生を防ぐことができます。

水替えの季節ごとの頻度の目安は以下の通りです。

春・秋 2~3日に1回
できれば毎日

ひまわりなど水が汚れやすい花は、朝晩2回替えても良い

3~4日に1回

茎の切り戻しを行う

水を交換する際に、茎の先端を1cmほど切って新しい導管を出すことでも長持ちの効果が期待できます。

切り戻しの方法は、水切りの際の手順と同様です。

花の水揚げにふさわしい水の量

水揚げ後は、花の種類ごとにふさわしい量の水に生けましょう。

切り花は、茎の先端からしか水を吸い上げることができないので、基本的には浅水の方が長持ちします。

花瓶の底から3〜5cm程度が水に浸かる状態が目安です。

特に茎が柔らかい花は、水に浸かる部分が多いと茎がすぐに腐ってしまいます。

ただし茎が硬く、水の吸い上げが良いバラなどは、深水にして水圧をかけることで吸水を促す効果があるとされています。

使用する水は、水の中の雑菌を増やさないために、塩素(カルキ)が含まれている水道水がおすすめです。

浅水を好む花(花瓶の底から3~5cm程度)

浅水を好む花(花瓶の底から3~5cm程度)は以下の通りです。

  • ガーベラ、ひまわりなどの茎に毛が生えた花
  • ラナンキュラス、チューリップ、カラーなど茎が柔らかい花
  • 菊など茎が腐りやすい花

深水を好む花(花瓶の半分ほど)

深水を好む花(花瓶の半分ほど)は以下の通りです。

  • 茎が硬く、水の吸い上げが良い花
  • バラ、アジサイ、シャクヤクなど
  • ライラックや枝もの全般

花の元気がないときにできること

水替えを行っていても花の元気がないときには以下の原因が考えられます。

状況に応じて、適切な方法で対処しましょう。

・導管が詰まって給水できていない

→水切り、水替えを行う

・開花に必要なパワーが足りない

→切り花用の鮮度保持剤を使う、余分な葉や蕾を外す

・花色が綺麗なのに元気がない、花の頭が下がっている

→深水に浸ける

切り花用の鮮度保持剤(延命剤)を使う

花の元気がないときだけでなく、蕾がなかなか開かないときにも有効な方法です。

切り花用の鮮度保持剤は、切り花の栄養剤、フラワーフードなどという名前で園芸店やホームセンターで販売されています。

花屋さんで花を購入すると、小さなパックが付いてくることもあります。

鮮度保持剤に含まれる成分は、主に以下の2つです。

  • 水からでは補えない栄養素
  • 菌の増殖、水の腐敗を防ぐ成分

切り花を長持ちさせるだけではなく、花色やツヤを保ったり、蕾を咲かせたいときにも効果的です。

水に薄めて使うタイプの物が多いので、パッケージの表記に従って適量を使用しましょう。

深水に浸ける

深さのある容器に水を張り、その中に1〜2時間ほど花を浸けることで吸水させる方法です。

花の頭が下がってしまった植物も、深水に浸けておくと復活することがあります。

長い間浸けたままにしておくと茎にダメージを与えてしまうので、水が揚がったあとは適切な量の水を入れた花瓶に移してあげましょう。

深水の方法

  1. 花の上部を保護するために、新聞紙でしっかりとくるみます。
  2. 茎の下半分は、新聞紙から出した状態で、新聞紙の根元をセロテープなどで巻いておきましょう。
  3. 一度水切りした花を、深水に浸けます。花の下から10cmほどのところまで、しっかり深く、水に浸けるのがポイントです。
  1. 数時間浸けたままにして、水が揚がったら新聞紙を外して花瓶に生けます。

花が枯れているのかわからないときは?

花の水が下がっているのか、枯れているのか見分けが付かないこともあります。

枯れ始めのサインに早めに気づけると、水切りや深水なので花が復活する可能性が高まります。花の種類や管理方法によって日持ちが異なるので、以下のポイントを確認してみてください。枯れ始めのサインは以下の通りです。

  • 花の付け根が変色している、柔らかくなっている
  • 花の中心の部分の鮮度が落ちている(ひまわり、ガーベラなど)
  • 花びらが抜け落ちている(ガーベラ、バラ、ダリアなど)
  • 先端から変色している(ランやアンスリウムなど)

花が変色していないにも関わらず元気がない場合は、枯れているのではなく水が下がっているだけという可能性があります。

水切りしても復活しない場合は、深水や花の種類によっては湯揚げなどを試してみてください。

種類に合った水揚げ方法を選んで、花を長く楽しもう

花は、正しい水揚げ方法を行うことでより長く楽しむことができます。

切り花は生き物なので、寿命はありますが、花の状態によっては水揚げすることで再び元気な姿を見せてくれることもあるでしょう。

ぜひ花と向き合い、水切りや水替えなどのお世話をする時間も楽しんでみてくださいね。

 

大切なあの人にお花を送ってみませんか?