自由度の高いインテリアグリーン!コウモリランの特徴や性質、花言葉
最近はおしゃれなお店でも見かけることが多いコウモリラン。人気の理由は、個性的な見た目や、鉢や板、ハンギングといった、さまざまな方法で育てられる自由度の高さにもあります。
今回は、そんなコウモリランの特徴や性質、育て方や花言葉など、コウモリランの魅力をたっぷりとご紹介していきます。
コウモリランの基本情報
まずはコウモリランの基本情報からご紹介します。
科・属 | ウラボシ科・ビカクシダ属 |
和名 | 麇角羊歯(ビカクシダ) |
英名 | common staghorn fern |
学名 | Platycerium bifurcatum |
別名 | ビフルカツム、プラティケリウム |
原産地 | インドネシア、オーストラリア |
コウモリランは樹木の幹に着生する着生シダ植物です。
原産地はインドネシアやオーストラリアなどの熱帯地域で、日光を好みます。
コウモリランの特徴
ウラボシ科であるコウモリランは、他の樹木や石などの表面に着生するシダ植物です。
自生する原産地は熱帯地域で、株が群生してひとつの木にたくさん生えていたり、枝の一角がコウモリランに覆われた光景を見ることができます。
原産地で群生して育っているコウモリランは、なかなかの迫力がありますよ。
何十年にも渡り育ってきた大きなコウモリランは、優に人間の丈を飛び越える高さにもなります。
シダ植物には珍しい胞子葉
コウモリランの特徴のひとつに「胞子葉」が挙げられます。「胞子葉」とは、その名のとおりに、胞子が付いた葉のことを指し、コウモリランの胞子は「胞子のう」という胞子が含まれた部分が葉に付いています。
つまりは、胞子のうが付いている葉のことを「胞子葉」と呼ぶのです。コウモリランの葉には、胞子が付いていると考えれば分かりやすいかと思います。
この胞子葉は、鹿の角のような形であるため、麇角羊歯(びかくしだ)とも呼ばれるようになりました。
シダ植物の中で胞子葉を持っている品種はほぼありませんので、コウモリランは大変貴重な存在です。
コウモリランの貯水葉
コウモリランの特徴として、葉の付け根に付いている「外套葉(がいとうよう)」または「貯水葉(ちょすいよう)」と呼ばれる、大変重要な役割を果たす葉があります。
初めは青緑色の葉ですが、生長につれて茶色く変化していきます。
枯れ葉のような色ではありますが、落ちることのない葉で、この貯水葉からすぐ下にコウモリランの根が出ます。
この外套葉は、コウモリランの生育において大変重要な、
①水を貯える
②着生する
③栄養を集めて与える
これら3つの役割を果たす部分です。
「貯水葉」という字そのもので表すように水分を蓄えておく貯水組織ですが、他の樹木に絡みつくことも、貯水葉の仕事となっています。
コウモリランは他の植物に着生することで生きていく植物ですから、外套葉の役割は生命の維持に関わるかなり重要なポジションです。
もうひとつ、自分の株に栄養を集めてきて与えるという役割も果たします。
コウモリランは、鳥の糞や虫の死骸、落ち葉などから栄養を集め、コウモリラン自身の持つ細菌によって、それらの餌を分解する植物です。
貯水葉は上向きに広がっていくような形をしているため、上から降ってくるものや落ちてくるものをキャッチしやすい形状なのです。
この貯水葉は、でこぼこと波打つ葉が美しい品種もあり、コウモリランの見所のひとつと言えます。
さまざまな役割を果たす葉であるため、貯水葉や外套葉以外にも、用途に応じた多様な呼び名が存在しているのです。
コウモリランの名前の由来
コウモリランは、垂れ下がっている大きな葉が特徴的です。その様子をコウモリになぞらえ、「コウモリラン」と名付けられました。
ぎざぎざとしたフォルムで左右に大きく広がる姿は、確かに羽ばたくコウモリに似ていますよね。
名前にランと入っているので、同じ着生植物であるラン科の胡蝶蘭のように、美しい花を咲かせるのかな?と思いますが、コウモリランはランの仲間ではありません。シダ科の植物で種子をつけず、胞子で繁殖します。
株を分けて増やせるという点は、コウモリランもコチョウランも共通していますね。花を咲かせないのもコウモリランの特徴のひとつです。
もうひとつの呼び名には「糜角羊歯(びかくしだ)」があります。
胞子葉が糜角のような形をしているために名付けられた名称です。
「糜角」とは「なれしかの角」という意味を指しており、「なれしか」とは大鹿のことを表しています。大鹿はトナカイの一種で、ヘラジカなどが含まれます。
その角を見てみると、トナカイのように立派な角を持っていて、その形はコウモリランの垂れ下がった葉にそっくりなのです。どちらかと言えば、コウモリランの呼び名のほうが使われやすい傾向にありますが、ビカクシダの名前もよく見かけます。
どちらの呼び名が正しいの?と思いますが、どちらも正しいので、自分の中の好みでしっくりくる呼び名を選べばよいでしょう。
ちなみに、コウモリランの学名はPlatycerium(プラティケリウム)と読み、品種の名称として使われています。
コウモリランの花言葉
コウモリランの花言葉には「信頼」「助け合う」「魔法」という、何とも素敵な言葉が並んでいます。
「信頼」「助け合う」の花言葉は、着生植物であるコウモリランの生態から付けられた言葉だと言えるでしょう。他の樹木などの助けがなければ、コウモリランは着生して生きていけません。
単体で生きるのではなく、他の樹木の存在があるからこそ、コウモリランは生命を繋いでいけるのです。あくまで着生植物であり、ガジュマルのような寄生植物ではありませんので、まさしく助け合いや共存、信頼と言った言葉がぴったりですね。
「魔法」の花言葉は、コウモリランが生きるうえでは欠かせない、何役もこなしてしまう魔法のような葉を持つことから由来しているのかもしれません。
どの花言葉も、健気な生き方をするコウモリランを表すような、前向きな花言葉ですね。
コウモリランの品種・種類
ここまでは、コウモリランの生態や特徴、花言葉についてご紹介してきました。コウモリランは全18種類の原種が存在し、交配種による改良も行われています。
品種によって葉色や形、大きさが異なっており、品種それぞれが原産地の環境に合わせて生きる適応力を持っているのも、コウモリランの魅力のひとつです。
続いては、コウモリランの品種について、それぞれの特徴などをご紹介していきましょう。
プラティケリウム・ビフルカツム
「プラティケリウム・ビフルカツム」は、コウモリランの中で最もポピュラーな品種です。
耐暑性・耐寒性共に優れており、お世話が簡単であることから、インテリアグリーンや園芸用として、多く流通している人気種です。
プラティケリウム・ウィリンキー
「プラティケリウム・ウィリンキー」は、細長い胞子葉を長く垂らした姿が個性的です。
ウィリンキーの胞子葉は白色ですが、光の当たり具合や角度によっては、銀色を帯びたシルバーホワイトに見えるのが美しいです。
乾燥に強く、強い繁殖力が自慢の品種で、かなり育てやすいコウモリランと言えるでしょう。
プラティケリウム・スペルブム
「プラティケリウム・スペルブム」は、ここまでご紹介してきたコウモリランの品種の中でも大型品種。日本の環境下にも適応して、四季の寒暖差にも耐えられる強さがある品種です。「スペルブム」とは、気高い、上品といった意味を持っています。
プラティケリウム・エレファントティス
「プラティケリウム・エレファントティス」の外套葉には切れ込みが入っておらず、その形がゾウの耳に似ていることから付けられた名前です。熱帯雨林の中でも、やや乾燥した場所に自生しています。
先にご紹介したスペルブムは、日本の寒さにも耐えられる適応力があるとお伝えしましたが、エレファントティスはコウモリランの中でも取り分け寒さに弱い品種です。
日本の気候には向いておらず、国内で育てるのは難しい品種になります。
おしゃれなコウモリランを育ててみよう!
コウモリランはもともとが生命力の強い植物ですから、育てるうえではとても易しい観葉植物です。
ここまでご紹介してきたコウモリランの持っている特性や、自生している環境などを踏まえておけば、育て方のコツを抑えたも同然です!
それでは最後に、コウモリランを育てるうえでのポイントをそれぞれ解説していきましょう。
置き場所
コウモリランは、本来は熱帯の暖かい地域で育つ観葉植物です。
コウモリランにとっては日本の寒さは厳しいものですから、なるべく暖かい場所で管理しましょう。
目安としては、管理する場所の気温が10℃以下にならないよう気を付けてください。
コウモリランは、気温が10℃以下になると生長が止まってしまいます。
5℃以下の環境に長く晒されると、最悪の場合株が枯れてしまいますので、低温には注意して管理してくださいね。
春から秋の間であれば屋外でも管理できますが、直射日光が苦手なので、置き場所には充分注意して、心配な場合には遮光ネットを使うなど、対策を講じておきましょう。
適度に日光を浴びせると、健康な株に育てていくことができますよ。
水やり
コウモリランの水やりは、季節によって調節することを意識します。
春から秋にかけての生育期は、土や水苔が乾いたら水を与えましょう。
水やりの際には、鉢底から水が溢れ出てくるほどに、たっぷり与えてメリハリを付けるのがポイントです。
土や水苔が乾ききっておらず、まだ鉢内に水分がたくさん残っているうちに水を与えると、根を腐らせてしまう恐れがあります。
多少乾燥気味に育てるような気持ちで、水やりの前には土などの乾き具合を必ず確認してくださいね。
特に乾燥が気になる時期には、霧吹きなどで葉に水を吹きかける「葉水」を行なうのも効果的です。
葉からも水分を吸収してくれるので、コウモリランの水分不足を解消できます。
季節ごとの水やりのタイミングとしては、冬の水やりは、土や苔が乾燥したのを確認した2〜3日後に水を与えるのがベストです。冷え込む夕方から夜を避けて、暖かい日中のうちに水やりをしましょう。
反対に、夏場は午前中に水やりをすると鉢内で温度が上昇してしまいます。
暑さが引いてきた夕方から夜に、お水をたっぷりと注ぐようにしましょう。
肥料
コウモリランを育てるうえで肥料は不要ですが、使ってはいけないわけではありません。
もしも肥料を与える場合には、春から秋の生育期の間に与えます。
2〜3カ月に1度のペースで、貯水葉の裏側や鉢の端などに緩効性の置き肥を与えましょう。液体肥料の場合には、10日〜2週間に1回のペースで与えます。
冬のコウモリランは生長がほとんど止まるため、肥料を与えると栄養過多によって根詰まりを起こす危険もあります。
冬場には肥料を与えないよう、充分注意してくださいね。
植え替え・剪定
コウモリランには、こまめな剪定はそこまで必要ありません。
古くなってきた葉や、枯れてきた葉に気が付いたタイミングで切り取る程度の心構えで大丈夫です。
ただし、枯れてきた胞子葉を取り除くときに、葉の表面にある産毛のような胞子まで取ってしまうとコウモリランの種子ができなくなりますので、うっかり取ってしまわないよう、作業時は注意してくださいね。
植え替え
コウモリランの植え替えに適した時期は、生育期である5〜8月の間になります。
夏場は、猛暑日や日中の炎天下を避けて作業を行ってください。
植え替えのタイミングとしては、2〜3年に1回のペースで問題ありませんが、根が成長しすぎていたり、コウモリランが窮屈そうであれば、早めに植え替えてあげるといいでしょう。
コウモリランの植え替え方法として、板に着生させる板付けや、ハンギングが特に人気のあるテクニックです。
ここからは、鉢植え・板付け・ハンギングの3つの手法ごとの、コウモリランの植え替え手順について解説していきます。
【鉢植え】
①コウモリランの株を慎重に取り出したら、根を優しくほぐしながら土を落とします。
②水苔を丸めて作った苔玉にコウモリランの根を被せ、周りを水苔で覆っていきます。
③鉢底に鉢底石や軽石などを敷き詰めたら、苗を植えます。
④鉢を水中へ沈めて水苔が充分な水を吸ったら、鉢を出してしばらく半日陰で管理します。
【板付け】
①ヘゴ板にワイヤー用の穴を数ヶ所空けておきます。
②ヘゴ板に株を置いて固定する向きを決めます。
③板に株を置き、水苔を軽く絞りながら株周りを巻いていきます。
③ワイヤーや麻紐などで水苔が落ちないよう株を固定していきます。
④ヘゴ板ごと水中へ沈めて水苔が充分な水を吸ったら、板を出してしばらく半日陰で管理します。
【ハンギング】
①水苔を丸めた苔玉で根が覆われた状態のまま水に沈め、水苔を吸水させます。
②苔玉を覆っているワイヤーなどにハンギング用の紐を掛けます。
増やし方
コウモリランの増やし方には、「株分け」と「胞子」の2種類があります。
植え替え時期と同じく、5〜8月の生育期に行なうのがおすすめです。株を増やすとなると難しく感じてしまいますが、手順を知ると案外簡単な作業ですので安心してくださいね。
それでは、株分けと胞子、それぞれの増やし方についてご紹介します。
【株分け】
①子株を親株から切り離します。胞子葉を中心にして周りに円を描くように切り離すのがコツです。胞子葉が傷つかないよう細心の注意を払い、丁寧に切り離しましょう。
②水苔を板に敷き、その上に株を置いて、板にワイヤー用の穴を開けます。
③穴にワイヤーなどを通し、株を板に固定させます。
※傾けても株が落ちてこないぐらいに固定されていれば問題ありません。
【胞子】
①葉裏の胞子をスプーンなどで削り取り、削った胞子を新聞紙や容器などに移します。
②蓋などがある容器に湿り気のある土を敷き、先ほど採取した胞子を蒔きます。
③容器に蓋をして、湿度を保てるよう、明るい日陰で管理します。
※定期的に霧吹きなどで土を湿らせて、乾燥しないよう注意しましょう。
コウモリランでワンランク上のインテリアを楽しむ
着生植物のコウモリランは、定番の鉢植え以外にも、板付けやハンギングといった手法で楽しめます。
ハンギングで空間を活用できると、スペースを効率的に使えるようになりますし、インテリアの立体感も生まれます。一歩踏み込んだワンランク上のインテリアテクニックとして、インテリアの幅が広がりますよ。
コウモリランは自由度の高いインテリアアイテムとしても大変優秀ですから、ぜひご自宅で育ててみてくださいね。
まとめ
今回は、インテリアグリーンとして人気のある、着生植物のコウモリランについてご紹介しました。驚きの生態を持つコウモリランには、性質にちなんだ素敵な花言葉がありましたね。
独特な姿を楽しみつつ、育てやすさも抜群なコウモリランをぜひ育ててみませんか?扱いに慣れてきたら、ぜひ株分けや胞子でコチョウランを増やして楽しんでみましょう。