室内でもオリーブの木を育てたい。鉢植えで育てるポイントや管理方法
シルバーグリーンの葉が美しいオリーブは、観賞用以外にも果実やオイルなどの食用としても楽しめる植物です。
お庭などの屋外でしか育てられないと思われがちですが、育て方や管理方法にさえ気を付ければ、室内でもオリーブを育てられることをご存じでしょうか?
今回は、オリーブの木を室内で育てるうえでのポイントや、管理方法などについて、庭などの地植えでの育て方とあわせてご紹介していきたいと思います。
オリーブの基本情報
科・属 | モクセイ科・オリーブ属 |
和名 | 阿利襪(オリーブ)橄欖(かんらん) |
英名 | olive |
学名 | Olea europaea |
原産地 | 地中海沿岸 |
オリーブは一年中葉を落とさずに茂っている常緑樹です。どの季節でも美しい葉を楽しめるので、観葉植物としてとても人気があります。
乾燥地帯で育つ植物なので、とても乾燥に強く、多少水やりを怠っても枯れることはありません。
樹形が美しいオリーブは、みずみずしい緑色の葉ではなく、シルバーがかった葉色を持っているため、ナチュラルな色合いのお部屋やスタイリッシュなお部屋など、どんな雰囲気のインテリアにもマッチします。
自生地や地植えにオリーブはかなり高い樹高に育ちますが、観葉植物用では30センチほどのテーブルサイズのものや、150センチほどの高さまで、さまざまなサイズ展開で販売されてます。
実から作られるオイルは健康改善に効果的で、ピクルスなどの漬物としても楽しまれてます。
オリーブの品種
人気の高いオリーブには、およそ500種類以上にも及ぶ品種が存在していると言われています。自分の花粉で受粉して果実をつける「自家結実」をしますが、自家結実性は弱いです。
収穫の面から見ると、早くに実をつける「早生品種」と、実の収穫までに時間がかかる「晩生品種」、その2種類の中間ぐらいの塩梅で収穫可能な「中生品種」の3種類に分けられます。
早生品種には、薄緑色の丸みを帯びた葉を持つ「ネバディロブロンコ」、リンゴに似た形の実をつける「マンザニロ」、大ぶりな葉と楕円形の果実が特徴の「チプレッシーノ」などがあるので、オリーブの実を収穫したい方は早生品種を選んでみてはいかがでしょうか。
観賞用として人気の高い品種には、ハート型の実をつける「ミッション」があります。ミッションは日本でも流通数が多いので、比較的入手しやすいでしょう。
卵型の愛らしい葉がチャーミングな「ルッカ」は、横に広がって生長していく姿が見所のオリーブになります。
「コロネイキ」はギリシャ原産のオリーブで、小さく可愛い葉が人気です。同じくギリシャが原産の品種では、香りの良い「ハーディーズマンモス」も人気があります。
「アルベキーナ」は樹形が特に美しい品種で、すっきりとしたフォルムながらも葉がボリューミーに密集しているため、選定などで自分好みの樹形に仕上げていくのが楽しい種類になります。
やや入手が困難な希少種では、小さな実をたわわに実らせる「ワンセブンセブン」や、美しいシルバーグリーンリーフを持ち、たくさん実をつける「カヨンヌ」なども人気です。
オリーブは鉢植えでも地植えでも育てられる
銀色めいた美しい葉を持つオリーブは、その鑑賞性の高さから観葉植物の中でも特に人気のある品種です。
できた実からオリーブオイルやピクルスを作るなど、食用を目的として育てている人も多いでしょう。
降り注ぐ太陽のもとで育っているイメージが強いオリーブですが、実は鉢植えで育てていくこともできます。
お庭をお持ちで、寒冷地にお住まいではない方は、ぜひオリーブを地植えで育ててみましょう。自生するオリーブはかなり大きくなるので、お庭のシンボルとして植えられる方も多いです。
ただし、日本の冬の寒さには弱いので、寒冷地での地植えは向いていません。お住まいの地域によっては、鉢植えで管理されることをおすすめします。
【室内編】オリーブの育て方
オリーブを室内で育てていきたい場合には、鉢植えを購入しましょう。
先述したように、観賞用のオリーブはさまざまなサイズ展開がありますので、お部屋の大きさや置き場所のサイズ感にあわせて選ぶことができます。
水やり
乾燥地帯を原産地とするオリーブは、乾燥にはとても強いです。
水やりの頻度が高すぎると、過湿状態になって根腐れしてしまい、株が枯れる恐れもあります。とは言え、水分が不足しすぎても枯れてしまいますから、鉢土の状態をよく観察して水やりを行ないましょう。
コツは、土が乾いたことを確認してから水やりを行なうということです。その際は、鉢底から水が流れ出てくるほどにたっぷりと与えてくださいね。
水やりが終わったら、受け皿に溜まった水は必ず捨ててください。放置したままだと、鉢内が蒸れてしまい、根のダメージに繋がります。虫の発生リスクも高まるので、水やりと受け皿の処理はセットで行うよう癖付けましょう。
また、夏場の水やりは日光が強く温度の高い時間を避け、涼しくなった夕方頃に行ないましょう。鉢内の水分が高温になることで、根が傷んでしまいます。
水やりとあわせて、霧吹きなどで葉に水を吹きかける「葉水」を行なうと、植物の温度が下がっていくのでおすすめです。
置き場所
日光を好むオリーブには、日の差し込む明るい場所が適しています。
暗い廊下や部屋の隅などで育てていると、葉に元気がなくなり幹や枝もどんどん細くなっていってしまい、インテリアとしての魅力も減少してしまうので、日当たりの良さは必須です。
また、管理温度についても注意しましょう。品種によっても異なりますが、オリーブはマイナス3度以下の環境にさらされると、株が枯れてしまいます。
ベランダなどで管理している場合には、冬になったら忘れず室内へ取り込んでおきましょう。
肥料
オリーブに肥料を与えることで、株の生長を助けてくれます。
おすすめは、長くじんわりと効果が持続していく緩効性タイプです。株元から少し離した場所に置き、1〜2ヶ月おきに与えてください。
肥料の適期は、2〜3月頃(花が咲く前)6月頃(花が落ちた後)、10月頃(実の収穫後)です。
開花する前の3月には、置き肥をあわせて即効性の液体肥料を与えるのもおすすめですよ。
剪定
観葉植物の剪定作業には、樹形を整えるだけではなく、密集した枝や葉をカットすることで通気性を上げ、枝全体に日光を当てる効果や、病気や害虫のリスクを下げる効果があります。
基本的に、まだ3年以上経っていないオリーブには剪定の必要がありませんが、樹形や見栄えを良く整えたいときには剪定を行いましょう。
剪定の適期は生育期である5〜12月頃です。新しく伸びた枝を剪定してしまうと、次の年に花が咲きにくくなり、実がつかない恐れもありますので、実の収穫を楽しみにしている人は注意して剪定してください。
鉢植えは「挿し木」で増やす
剪定で切り落とした枝は、「挿し木」用の挿し穂として使い、オリーブを増やしていくことができます。挿し穂には、新芽がついている若い枝を選びましょう。
【挿し木の手順】
(1)10センチほどの挿し穂を用意して、切り口を斜めにカットしましょう。
(2)発根しやすくするために、数枚だけ葉を残して切り落とします。
(3)水を入れたコップなどに挿し、1〜2時間ほど漬けておきます。
(4)挿し木用の土に挿し穂を挿し、たっぷりと水を与えましょう。
(5)発根が確認できるまでは、風通しの良い日陰で管理します。
結実のコツ
自生しているオリーブは、虫による受粉や、風に運ばれての受粉が主になります。
オリーブは自家受粉しにくいので、結実の確率を高めたい場合には、開花が同時期頃の2品種以上のオリーブを育てるのがおすすめです。これらを近くで育てることによって、受粉の成功率がぐんと高まります。
ただし室内だと風や虫などの花粉を運ぶものがないため、「人工受粉」の方法も手段のひとつです。
【人工授粉の手順】
(1)まず1品種の花粉をコップなどに採取します。
(2)別の品種の花に、集めた花粉を筆などのやわらかい素材を使って付けるだけです。
もうひとつのコツとして、寒さにさらすというのもポイントです。寒さに強くないオリーブを寒い環境下にさらして大丈夫なの?と思いますが、オリーブには「気温10度以下の状態が10日以上ないと花が咲かない」という性質があるのです。
室内管理の場合は、天気が良く比較的暖かい日を狙って、外に出しましょう。
突然寒すぎる環境下に出してしまうと、株が寒さに慣れ切らずに枯れてしまうので、徐々に寒さに慣れさせていくのがポイントです。
植え替え
鉢植えで育てるうえでは、鉢に対して株が大きく生長しすぎたら、植え替え作業を行なう必要があります。生長スピードにもよりますが、1〜2年に1度、定期的に大きな鉢へ植え替えましょう。
オリーブの樹形の性質上、大きくなりすぎると倒れやすくなってしまうので、株のサイズに見合った鉢で安定させてあげてください。
植え替え作業は、真夏や炎天下、冬を避けて、4〜6月頃に行ないましょう。
【植え替えの手順】
(1)鉢から株を取り出して、根をやさしくほぐしていきます。
(2)一回り大きな新しい鉢に、鉢底ネット、鉢底石を敷き、3分の1ほど土を入れます。
(3)株をやさしく入れて、隙間を埋めるように土を足しましょう。
(4)株を安定させたら、水をたっぷり与えておきます。
(5)しばらく風通しの良い日陰で管理して、植え替えのダメージから株を回復させます。
【地植え編】オリーブの育て方
さて、ここまでは鉢植えのオリーブを室内で育てる方法についてご紹介してきました。
地植えのイメージが強いオリーブですが、その美しい葉をいつでもお部屋で楽しめるのは嬉しいですよね。
続いてご紹介する地植えでは、とても高い樹高に育ってくれるオリーブを、大きく立派に育てていきたいと考えている方に適しています。
地植えの植え付け
冬の寒さにさらされなければ、花や実をつけないオリーブですが、霜や積雪には弱いです。
東北地方や甲信越地方では、地植えで育てていくのはあまり向いていませんので、鉢植えでの管理がおすすめです。
地植えの場合には、株が10メートル以上にも生長することを見越して、周囲のスペースに余裕を持った植え付け位置を決めましょう。
【植え付け手順】
(1)植え付け位置を中心に、腐葉土や堆肥を混ぜて土を耕します。
(2)水はけを良くするため、庭土が粘土質の場合には広く深めに耕していきます。
(3)植え付ける株のサイズに合わせた穴を掘りましょう。
(4)周囲よりやや高めに土を盛ったら、くぼみを中心に作り、株を植え付けます。
(5)手で株を押さえながら、周囲の土を戻していきます。
(6)根が浅く風などで倒れやすいので、支柱で固定しておきます。
(7)植え付け後は、ホースなどでたっぷりと水やりをしましょう。
地植えのオリーブを上手に冬越させるためには、凍結対策が重要になってきます。
霜がつかない場所に植え、根元に藁を敷くなどの防寒対策を施しましょう。
水やり
鉢植えのオリーブは、一般的な観葉植物の水やり同様に、土が乾いてからたっぷりと水を与えるのが基本です。
しかし地植えの場合には、降雨に任せておけば事足ります。乾燥しやすい夏の間は、水切れを起こさないように注意して、必要に応じて水を与えましょう。
このとき、気温の高い日中には水を与えず、夕方などの涼しい時間帯に水やりを行なってください。
肥料
地植えの場合も、鉢植えと同様に、2〜3月頃(花が咲く前)6月頃(花が落ちた後)、10月頃(実の収穫後)が適期になります。
ただし地植えの場合には、植え付けてから間もなく肥料を多く与えてしまうと、養分過多による「肥料焼け」を起こしてしまうので注意が必要です。
植え付け後に肥料を与える場合には、植え付けてから2週間〜1カ月後を目安にして与えてください。
有機肥料がおすすめですが、緩効性の化学肥料も使うことができます。
剪定
地植えのオリーブは、育ててから3年以上を目安に剪定が必要です。
オリーブの剪定適期は3回あります。
まずは1〜3月の休眠期間中です。冬を終えて新しい芽が芽吹いていく春に向けて、大きく育っている枝を剪定しましょう。実を収穫したいときには、枝の先にある成長点を残しつつ剪定します。
次の適期は3〜4月で、休眠期間中に剪定した箇所で気になる場合に行います。
株元から伸びている枝はとても生長が早く、どんどん養分が持っていかれてしまうので、剪定しておくのがベターです。
生育期にあたる5〜12月には、樹高か崩れてきたなと感じたときだけ剪定を行なうくらいで構いません。生育期に若い枝を切ってしまうと、収穫できない場合があるので気を付けてくださいね。剪定の切り口が大きいときは、癒合剤を塗布すると回復が早まります。
地植えは「太木挿し」で増やす
地植えのオリーブは、太めの枝を土に挿す「太木挿し」という方法を使って増やしていくことができます。
鉢植えの増やし方でご紹介した「挿し木」の方法よりも遥かに成功率が上がるので、オリーブをどんどん増やしていきたいと考えている方は覚えておくと便利です。
【太木挿しの手順】
(1)直径が5センチ以上で長さが30センチ以上ある健康な枝を選びましょう。
(2)大きめの鉢に鉢底ネットを敷いておき、土を入れましょう。
(3)土から2〜3センチほど、枝が出るくらいの深さまで枝を挿します。
※枝の上と下を間違えて挿さないように注意してください。
(4)土を抑えて枝を安定させたら、たっぷりの水を与えましょう。
(5)太木挿し後は、風通しが良く、日当たりも良好な場所で管理してください。
(6)1〜2ヶ月程で新芽が確認できるようになります。
(7)3〜5年で結実するほどの大きさにまで育つので、苗を植え付けましょう。
結実のコツ
鉢植えでの室内管理時と同じく、地植えでも「開花時期の近い2品種以上のオリーブを近くで育てる」「寒さにさらす」の2点がキーポイントとなってきます。
開花の時期を品種別に見ていくと、有名な品種ではマンザニロ→ルッカ→ネバディブロンコ→ミッションの順に開花していくので、この順番で隣り合わせになっている品種同士を一緒に育てることで、結実の確率は高まるでしょう。
オリーブは風や虫に花粉を運んでもらって受粉するので、上手に虫を呼び込むのも受粉のコツです。オリーブの側に他の植物を植えておくと、虫が寄ってくるのでオリーブの木に立ち寄りやすくなり、受粉の成功率が上がります。
オリーブに起きやすいトラブルは?
ここまでは、鉢植え・地植え別にのオリーブの育て方についてご紹介しましたが、育てていくうえで、もしオリーブに元気がなくなってしまったら、どうすればいいのでしょうか。
ここからは、オリーブによく見受けられるトラブルの原因や、その解決方法についてご紹介していきたいと思います。
葉先が枯れてしまう
オリーブの葉の先が枯れていたり変色していたら、水切れを疑いましょう。
特に鉢植えの場合には、水切れが原因であることが考えられます。まずは、たっぷり水を与えて、風通しの良い場所で経過観察してみましょう。しばらくすると葉が元気を取り戻すかもしれません。
水切れに気を付けるあまりに水を与えすぎてしまうと、今度は根腐れの原因になりますので、適量の水を与えるよう注意してくださいね。
もし根腐れを起こしているようであれば、反対にしばらく水やりを控えておきます。それでも状態が良くならないときには、重症になる前になるべく早く株を鉢から出して、傷んだ部分の根を取り除きましょう。
地植えのオリーブの葉先が枯れる原因としては、土にマグネシウムが不足しているか、酸性化が考えられます。弱酸性の雨が土に染み込んでいくことにより、土が酸性寄りになるのです。オリーブはアルカリ性の土を好む性質なので、酸性よりになると、葉に元気がなくなってきます。この場合には、株元に石灰を撒くか、オリーブ専用の用土に変えてみましょう。
害虫・病気
オリーブには、4〜10月頃にマイマイガ、カイガラムシ、アブラムシ、カメムシなどの害虫がつきやすいです。
春先から現れるマイマイガという毛虫は、特にオリーブにつきやすい害虫です。あちこち木を食べてしまうので、発見したら殺虫剤で早急に駆除しましょう。
幹に白っぽい部分が見受けられたら、マイマイガの産みつけた卵でしょう。卵の量が多いので、見つけ次第すぐに駆除する必要があります。
ただし、実の収穫予定がある際には殺虫剤は控えたほうが無難です。
かかりやすい病気には、カビが原因の「オリーブ炭疽病」があります。
葉の表面に褐色の斑点が確認できたら、オリーブ炭疽病にかかっているので、病気の葉をすみやかに取り除き、殺菌剤を散布してください。
放置しておくとカビがどんどん広がっていき、広範囲に及べば株が枯れてしまいます。
オリーブ炭そ病は、高温多湿の環境下で発生しやすいため、日頃の予防として混み合った枝や葉を剪定で切り落として風通しを良くしておくことや、葉水で乾燥を防ぐことが予防に繋がります。
まとめ
今回は、オリーブの鉢植え管理・地植え管理方法について、育て方やコツ、注意点などをご紹介してきました。
庭に植えてある印象の強いオリーブですが、室内で鉢植えによって育てることも可能です。
大きく育てていきたい場合には、地植えでぐんぐん生長させましょう。
ただし地植えは、東北などの寒い地方では不向きですので、お住いの環境にあわせた方法でオリーブを育ててみてくださいね。日頃の予防としては、混み合った枝や葉を剪定で切り落として風通しを良くしておくことや、葉水で乾燥を防ぐことが害虫予防に繋がります。
涼しげで爽やかな、どことなくアンティーク感のただようおしゃれなオリーブを、ぜひインテリアグリーンやお庭のシンボルツリーとして楽しんでくださいね。