オリーブの耐寒性は?日本に適している品種や栽培のポイント
オリーブは地中海沿岸の気候を好むため、寒さには弱いのではないかと思う方も多いのではないでしょうか。しかし日本でも栽培できるオリーブは、60種類以上あるとも言われています。そのため日本でも、品種によっては育成することが可能です。本記事では、日本で栽培しやすいオリーブの品種や冬越しのポイントを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
オリーブって何?
オリーブの木は、庭に植えると幸福が訪れると言われています。鑑賞用として植えてみたい方や、シンボルツリーとして設置したいと考えている方も多いのではないでしょうか。
オリーブの実は食用油(オリーブオイル)の他にも、女性用のスキンローションとしても親しまれています。以下ではオリーブの基本情報や、特徴などをまとめてみましょう。
基本データ
科/属 | モクセイ科/オリーブ属 |
英名 | Olive(オリーブ) |
原産地 | ギリシャ/イタリア/スペインなど(地中海地方) |
開花時期 | 5~6月 |
実の収穫 | 9~10月 |
花言葉 | 知恵/安らぎ/平和 |
誕生花 | 5月26日 |
オリーブは、モクセイ科の常緑高木に分類され、旧約聖書の中の「ノアの箱舟」やギリシャ神話にも登場しています。逸話だけではなく、古代エジプト文明として知られるハムラビ法典にもオリーブの木が刻まれています。以上のことからオリーブは、約8000年以上前から存在していたと考えられている植物です。
特徴
1年を通してツヤのあるシルバーグリーンの葉を維持するオリーブの木は、ハイセンスな見た目からインテリアやガーデニングでも人気があります。種類により雰囲気が異なるので、自分好みの品種を選べるところも魅力ではないでしょうか。樹高は2m以上になるものが多く、中には10mを越えるものも存在します。上手に育てると5~6月頃に白やクリーム色の花を咲かせ、秋には果実を付けるでしょう。
また、コンパクトなサイズを選べば、お部屋のインテリアとして飾ることも可能です。オリーブの木は、育て方に大きな違いはなく、ほとんどの品種は日光を好むため、室内で育成する場合も明るい窓際に置くのが良いでしょう。
樹形
オリーブの樹形は大きく分けると「開帳型」と「直立型」に分類できます。開帳型は、枝が横に広がって伸びていき、直立型は幹が上に向かってまっすぐに伸びていきます。庭のシンボルツリーにはスマートな直立型が人気です。一方開帳型は、プライバシーを守るための庭の目隠しにも向いています。ただし、剪定次第では、自分の好みのフォルムに仕立てることも可能です。
花言葉とその由来
オリーブは幸せを運ぶ木と言われており、花言葉には「平和」「知恵」の意味が秘められています。以下で花言葉の由来を詳しく説明していきましょう。
平和
平和の花言葉は、旧約聖書のノアの箱舟の物語と深く関係しており、人々の悪行に怒った神が大洪水を起こして、人間界を一掃しようとした話に由来しています。物語の中で、神は善良なノアという少年だけに箱舟を作り、家族と動物と共に逃げるように伝えました。洪水は何日も続き地上のすべてを流しましたが、神の言いつけを守ったノアたちは生き延びることができました。ある日、洪水が収まったかどうかを知るためにノアは鳩を放ちます。戻ってきた鳩がくわえて来たオリーブの木の枝を見て「平和」が戻って来たことを知ったノアは、再び地上に戻ることができました。
知恵
オリーブのもう1つの花言葉である知恵は、ギリシャ神話がルーツになっています。海の神であるポセイドンと知恵の女神アテナは、ある都市の守護神になるために争っていました。
2人の争いを知った最高神のゼウスは、生活をする人々に役立つものを差し出した方に支配権を与えることにしたのです。ポセイドンは戦いに有利な馬を与え、アテナはオリーブを選びました。オリーブは活用次第で燃料にも薬にも食べ物にもなり、知恵のある贈り物をしたアテナが勝利しました。
オリーブ/耐寒性がある品種
オリーブは地中海地方原産のスタイリッシュな常緑高木で、リゾート風のオシャレな雰囲気を演出できるのが魅力です。しかし寒さには弱く、日本では育成しにくいのではないかと不安に思っている方も多いのではないでしょうか。以下では、日本でも育てやすい比較的耐寒性がある品種を紹介します。
フラントイオ
イタリア原産のフラントイオは、寒さに強く-10℃までの気温に耐えることができます。生育は遅めで果実も小さめではありますが、適応性が強いのでおすすめです。樹高は地植えの場合3~6m、鉢植えの場合は1~2mくらいに生長します。初心者の方にも育てやすい品種です。
果実の収穫時期は9~12月でピクルスや塩漬けにして楽しむこともできます。常緑樹ですが、春と秋に落葉し、葉が生え変わる秋~春までの間は特に葉が少なくなるでしょう。
レッチーノ
レッチーノは、寒さにも暑さにも強く育てやすい品種で、病害虫にも強いので初心者の方におすすめです。樹形は開帳性で樹高は地植えでは3~5mほど、鉢植えでは1~2mほどになります。小さなシルバーグリーンの葉をたくさんつけるので、観賞用としても優れています。
ただし、生長のスピードが早いので、定期的な剪定が必要です。5~6月にはクリーム色の花をたくさん咲かせます。果実は黒い卵型で、ピクルスにすると美味しいでしょう。
アルベキナ
アルベキナはスペイン(カタルーニャ州)原産のオリーブの希少な品種です。開帳型で果実は小粒ですが、オイルとしては最高品質と言われています。そのため、オイルを抽出するために栽培されることが多いようです。
有名なオリーブオイルの多くがアルベキナから取り出されていると言われており、濃厚でソフトな風味を持ち、パンに塗って食べても美味しいとされています。
葉は刈り込むと密になるので、こんもりとした感じが好みの方は適切にお手入れしてください。下側の葉は日陰になりやすいため、透かし剪定をしてあげましょう。
ミッション
カリフォルニア原産のミッションは、直立型でスマートな樹形がポイントです。耐寒性も強く、あまり手入れをしなくてもまっすぐに生長します。細長くクールなグリーンの葉の裏側はシルバーがかった白色なので、風に吹かれて葉が揺れるとキラキラ光り美しく、価格がお手頃なのも魅力です。室内での栽培にも向いているでしょう。
コロネイキ
ギリシャ原産のコロネイキは、乾燥や寒さに強い品種です。−3℃までの気温には耐えられていると言われていますが、冷涼地では寒さ対策が必要になります。ギリシャでは栽培の50%以上が、コロネイキと言われており、りんごのようなフルーティな香りと、口当たりの良い滑らかさがコロネイキのオリーブオイルの魅力です。また、花粉が多いので受粉樹としても活用されています。
日本で栽培されているオリーブの主な品種は?
オリーブの種類はたくさんあり、日本の小豆島(香川県)では約60種類が栽培されています。小豆島は日本国内のオリーブの生産量が第1位で、全国シェアは93%以上です。以下では小豆島で栽培されているオリーブで、特に育てやすいものを抜粋してみました。
マンザニロ
マンザニロはスペイン原産のオリーブで、りんごのような形の実を付けます。樹形は開帳型でボリュームがあり、大きめの果実は深い緑色から完熟すると黒に変化します。味も格別でフルーティな味わいとワインのような旨味が魅力です。塩漬けやオイル漬けにして楽しむことができるでしょう。
寒さにはやや弱いですが、晴天が多く乾燥した場所であれば−5℃くらいまでは耐えられるようです。
ルッカ
ルッカはイタリア原産で、耐寒性が強く高い適応力を持っています。葉の緑色が濃く美しく病害虫にも強いことから、初心者の方が初めて育成するオリーブとしてもおすすめです。
小豆島ではオイル用として栽培していますが、塩漬けにしても美味しく頂けます。長く放置すると野性的な見た目になるので、2年に1度くらいは剪定してください。寒さには強いのですが、雪や霜には注意が必要なので、寒冷地では根元をガードするなどの対策は欠かせません。
香オリ3号
香オリ3号は、香川県で育成された新品種です。日本では初めて登録されたもので、オイルの他に加工用として活用されています。香オリ3号は他のオリーブと比較すると炭疽病に強く、新しいブランドとして注目されています。
ひなかぜ
ひなかぜは香オリ3号と同様、日本で育成されたオリーブになります。寒さにも暑さにも強いので、非常に育てやすく、初心者の方にもおすすめの品種です。他と比べると生長も早く、20cmほどの苗木が半年後には1mくらいになり、樹勢が早く分岐も多いです。ただし、実が付くのは遅いので、観賞用や庭のシンボルツリーに向いているでしょう。
オリーブ/育成のポイント
年間を通して緑の葉を維持してくれるオリーブは、とても人気があります。新築祝いや開店祝いなどに、チョイスする方も年々増えています。オリーブが1本あるだけで、爽やかなリゾート気分が味わえるので、育ててみたいと思っている方も多いのではないでしょうか。
以下では、オリーブを上手く育てるポイントをご紹介しましょう。
太陽の光を当てる
オリーブの生育は、日照時間が長いほど良くなると言われています。ただし、直射日光ではなく、光量の多さになります。特に、幼木や室内で育成する場合は、直射日光は避けた方が良いでしょう。まだ幼いオリーブの木は大変デリケートなので、すぐに葉焼けを起こしてしまいます。
オリーブは太陽の光がないと生長しないため、1日6時間以上は明るい場所に置いてください。ただし、真夏の強い日差しに当てると葉が傷んでしまうことがあるため、朝や夕方の柔らかな日差しに当てましょう。屋外の場合は、日陰を作ってください。
2本以上育てるのがおすすめ
オリーブは1本でも果実を実らせることができますが、2本以上植えると実をつける確率が向上します。そのため、果実を楽しんでみたいと思っている方は、2本以上植えるのがおすすめです。2本以上植える場合は、違う品種を植えるのがポイントです。ただし、オリーブが受粉しやすい相性もあるので、後述するオリーブの相性も参考にしてください。
また、1本でも果実が付きやすい自家結実性の品種もあり、ご紹介したルッカ・フラントイオ・アルベキナの他、セントキャサリンが該当します。
ピクアル
ピクアルは、スペイン原産のオリーブで耐寒性にも優れているため、世界中で育成されている人気の品種です。結実するとグリーンの実と赤紫色の実を付けます。樹形は直立型でまっすぐに生長するため、限られたスペースでも育てることができます。
オヒブランカ
大きめの銀葉が美しいオヒブランカは、スペイン原産のオリーブです。直立型で樹形もまとまりやすいため、シンボルツリーとしても人気があります。寒さや病害虫にも強い点もポイントで地植え・鉢植えどちらでも楽しめます。
オリーブ/冬越し対策
地中海原産のオリーブは暖かい場所でよく育つイメージがありますが、適応力がある品種も多く冬季の寒さにもある程度は耐えられます。しかし、寒さに強いとは言っても、雪や霜に当たることで弱ってしまう可能性もあり、冬の管理には注意が必要になります。ここではオリーブの冬越し対策を詳しく解説していきましょう。
置き場所
オリーブは屋外でも育てることが可能なため、関東から北側にお住まいの方で地植えにしたい場合は、寒さに強い品種を選ぶようにしましょう。地植えする場合は、なるべく南向きの日当たりが良い場所に植えてください。日当たりが悪いと実が付きにくくなります。
鉢植えの場合は、冬は室内で管理するのがおすすめです。ただし、寒さが不足した場合、花芽の形成が不完全になり、花付きが悪くなる可能性もあります。オリーブに花や実を付けるためには、0℃程度の寒さが必要です。
水やり(冬季)
鉢植え
週に1度が目安です。表土が乾いているか確認して、乾いていたらたっぷりと水を与えてください。夜になると急に冷え込むことがありますので、日中の暖かい時間にあげるようにしましょう。
地植え
特に水やりの必要はありません。ただし、植え付け直後や夏場の雨が何日も降らない時は水やりしてください。根元だけでなく、枝が広がる範囲にも水を与えましょう。
剪定について
オリーブの太い枝をカットするなどの強めの剪定は、2月下旬~3月の寒い時期に行うのが良いでしょう。訪れる春に向けて、伸びた枝や混雑した枝をカットすることで、光を十分に吸収できるようになります。樹形を整えるための簡易的な剪定はいつ行っても構いません。
植え替え
オリーブの植え替えに適してた時期は3~4月です。目安は2年に1度程度で、鉢が狭くなってきたと感じたら一回り大きな鉢へ植え替えを行ってください。植え替えをしないと鉢の中で根が広がり、根詰まりの原因になります。根詰まりすると、水の流れが悪くなり養分の吸い上げや酸素の吸収もできなくなります。植え替えは、少し暖かくなってきた時に行いましょう。
防寒対策
オリーブを栽培をする際には、寒冷地では寒さ対策が必須です。冬が近づいたら根元に藁などを敷き対策するのがおすすめです。霜よけネットなどを活用することで葉へのダメージを防ぐことができます。寒波が予想される時は、保湿シートなどを利用し、風や寒さからオリーブの木を守りましょう。
オリーブの相性について
先述したように、オリーブには品種によって受粉しやすい相性があります。組み合わせにより、実が付きやすくなったり付きにくくなったりします。ここでは相性のいい組み合わせを紹介しましょう。
相性がいい品種 | |
ミッション | ネバディロブランコ |
ルッカ | ネバディロブランコ/マンザニロ |
レッチーノ | マンザニロ/フラントイオ |
ペンドリーノ | フラントイオ/モライオロ |
マンザニロ | アスコラーナテレーナ/セビラノ |
上記以外にも受粉しやすい組み合わせもあります。オリーブは自家受粉しない品種が多いので、相性がいい他のオリーブを近くで栽培するのが良いでしょう。
耐寒性があるオリーブを育ててみよう
今回は、日本で栽培しやすいオリーブの品種や冬越しのポイント・相性などをご紹介しました。地中海沿岸で誕生したオリーブは、寒さには弱いイメージがありますが、耐寒性に優れた品種も数多く存在しているため品種によっては育てやすいです。寒さに強い品種を選ぶことで、四季を通してオリーブの栽培を楽しむことができるでしょう。ぜひ、この機会にスタイリッシュでオシャレなオリーブの木を育ててみませんか。コンパクトに育てたい場合は、こまめに剪定をして樹形を整えましょう。また、オリーブとハーブ類と寄せ植えすれば、一気に地中海風のガーデンになりおすすめです。