胡蝶蘭に適した鉢の大きさは？素材や形なども徹底解説！
鉢には、さまざまな大きさ、形、材質がありますが、胡蝶蘭の栽培にはどのような鉢が適しているのでしょうか。
贈り物でもらったり、購入したりした場合、胡蝶蘭を植え替えるときには迷ってしまいますよね。胡蝶蘭は、一般的な花とは少々異なり、何でも好きな鉢を選んで植えれば良いというわけではありません。
ちょっとした選び方のコツが必要です。そこで今回は、胡蝶蘭の鉢選びについて、大きさ、形、素材の観点からおすすめをご紹介していきます。
また、鉢を吊るして育てる方法、植え込み資材の選び方、植え替えの仕方にも触れていきます。
はじめに・覚えておきたい胡蝶蘭の基本
はじめに、胡蝶蘭を育てて管理していく上で、知っておくと良い、胡蝶蘭とはどんな植物なのかをおおまかに紹介しておきましょう。
花を上手に栽培するには、その花がどんな地域に生息していて、どんな環境を好むのかを知っておくことが重要です。
ここでは、胡蝶蘭の原産地、生息する環境についての基礎知識に触れていきます。
胡蝶蘭とはどんな植物？
| 植物名 | 胡蝶蘭（コチョウラン） |
| 学名 | Phalaenopsis aphrodite |
| 英名 | Phalaenopsis, Moth Orchid |
| 和名 | 胡蝶蘭 |
| 科名 | ラン科 |
| 属名 | ファレノプシス属 |
| 原産地 | 東南アジア |
胡蝶蘭は、ファレノプシス属（Phalaenopsis）に属する蘭の総称です。
ファレノプシス属のなかでも、特にファレノプシス・アマビリス（Phalaenopsis amabilis）や、ファレノプシス・アフロディーテ（Phalaenopsis aphrodite）の2種やその交配種が、園芸品種として一般に広く出回っています。
これらの蘭は、フィリピンから台湾まで広い地域に生息する着生植物（木や岩などの表面に張り付くように根を張って成長する植物）であることが知られています。
ちなみに、ファレノプシス（Phalaenopsis）という名前は、古代ギリシャ語で「蛾のような」という意味であり、胡蝶蘭の独特な花の形状を蛾に見立てたネーミングです。
和名の胡蝶蘭は、花を蝶に見立てて付けられたものであることを考えると、興味深い違いです。
なお、胡蝶蘭は多年草で、上手に管理してあげることで毎年花をつけてくれるだけでなく、何十年も成長する大変長寿な植物でもあります。
胡蝶蘭の原産地はどんなところ？
胡蝶蘭の原産地は、１年を通して高温多湿な熱帯地域です。そのため、日本で胡蝶蘭を栽培するにあたっては、冬場の低温には十分に気をつける必要があります。
また、気温が十分にある夏場であっても、強い日差しや冷房などによって空気が乾燥しすぎてしまい、胡蝶蘭にとって厳しい環境になってしまうこともあります。原産地と日本の気候の違いも意識しながら管理してあげることが大切です。
胡蝶蘭はどんな環境に生息している？
原産地では、胡蝶蘭は地面ではなく木や岩の表面に根を張って育っています。
こうした性質から、胡蝶蘭は、水分や肥料分をあまり多く必要とせず、風通しの良い環境を好む傾向にあります。
そのため、胡蝶蘭の栽培にあたっては、水や肥料の与えすぎに注意しつつ通気の良い環境を整えてあげることが大切になります。
胡蝶蘭の性質を覚えておくことは、育てていく上での大きなヒントになってくれることでしょう。それでは、これらを踏まえて、胡蝶蘭に最適な鉢選びの方法を見ていきましょう。
胡蝶蘭に適した鉢の選び方
まずは、胡蝶蘭に適した鉢の選び方の基本を見ていきましょう。
鉢選びで大切な要素として、大きさ、形、素材に注目してお伝えしていきます。
鉢の大きさ
先に触れたとおり、胡蝶蘭は土壌に根を張るのではなく、木の表面などに張り付くように根を伸ばして成長する植物です。
そのため、胡蝶蘭にはたくさんの土を入れられるような大きな鉢は不要で、株の大きさの割には小さな鉢で育てることが可能です。
また、鉢が大きすぎると余分な水分が鉢内に残りやすくなり、根腐れの原因になる場合があります。そのため、株の大きさに対して少々、小さめくらいの大きさを選ぶのがおすすめです。具体的には、４号鉢程度の大きさが１株を植えるのに適しています。
鉢の形
鉢の形は、観賞価値やインテリア性に直結するので、こだわって選びたいという方も多いでしょう。胡蝶蘭を植える場合、鉢内の通気性が悪くなるような形状の鉢は避けてください。
本来、土ではなく、木や、岩の表面に伸びている胡蝶蘭の根は、通気性が悪いことを嫌います。内部の通気性が悪い鉢で育てていると、根腐れを起こしやすくなり、それが原因で枯れてしまうこともあります。底に穴の空いていない鉢や、極端に深さのある鉢などは避けるようにしましょう。
鉢の素材
根まわりの通気性を好む胡蝶蘭の栽培では、鉢の素材がどのようなものであるかも、重要なポイントのひとつです。ここでは、代表的な鉢の材質を取り上げて、胡蝶蘭との相性を見ていきましょう。
素焼きの鉢
胡蝶蘭の栽培に最も適しているといわれているのが、この素焼き鉢です。
素焼き鉢は、表面が多孔質（目に見えない大きさの穴がたくさん空いていて、空気や水を通す）であり、鉢内の通気性が良好になる効果があります。
また、素焼き鉢の内壁には、胡蝶蘭が根を張りやすく、根の成長にも良いとされています。
プラスチックの鉢
プラスチック鉢も、胡蝶蘭栽培でよく使われる鉢です。
素焼き鉢に比べて、通気性は低くなりますが安価で重量も軽く、扱いやすいのが嬉しいところです。植え込み資材との組合せで、素焼き鉢と同等の通気性を確保することができます。また軽いため、鉢を吊るして栽培する方法にも向いています。
陶器の鉢
陶器の鉢は、胡蝶蘭栽培においてはあまり使われることはありませんが、インテリア性が高いため、胡蝶蘭を植えてみたいと思う方も多いでしょう。
陶器の鉢では、胡蝶蘭栽培で重要な鉢内の通気性が悪くなりがちです。
そのため、陶器を選ぶ場合は、鉢底の穴が大きめのものを選ぶ、植え込み資材を工夫したり、浅い鉢を選ぶようにしたりしましょう。
植え替える前に水苔とバークどちらを使うか決めて
鉢を選ぶ際に同時に重要なのが、植え込み資材に何を使うかを決めることです。
ここでは、胡蝶蘭栽培によく使われる水苔とバーク、それぞれの特徴をお伝えしていきます。
水苔の特徴
水苔とは、湿地に生息する苔を乾燥させた植え込み資材で、保水性に優れ、胡蝶蘭を始めとする着生植物の栽培に適しているとされています。
また、水苔はごく微量の養分を含んでいますが、これは養分の過多に弱い胡蝶蘭には丁度良く、施肥をすることなく栽培することが可能です。
水苔を使う場合は、鉢は素焼き鉢を選ぶと、保水性と通気性のバランスが取れるのでおすすめです。
バークの特徴
バーク（バークチップ）とは、樹皮を小石程度の大きさに砕いた植え込み資材で、通気性に優れ長持ちすることが特徴です。
水苔が２〜３年ほどで傷んでしまうのに対し、バークはより長期間使い続けることが可能です。胡蝶蘭は、頻繁な植え替えを嫌うので、植え替えずに使い続けられるバークは胡蝶蘭の長期栽培に向いています。
バークを使う場合は、鉢はプラスチック鉢がおすすめです。
鉢ごと吊るして育てる方法もある
軽量なプラスチック鉢に針金を通したり、ハンギング用の鉢を用いたりし、鉢ごと吊るして育てる方法があります。
また、胡蝶蘭をはじめとする着生蘭用のバスケットなども市販されているので、そうしたグッズを購入するのもひとつの方法です。
鉢ごと吊るして育てるメリット、デメリットは？
一風変わった栽培方法として、鉢を吊るして育てることも可能です。エキゾチックな飾り方ができるため大変人気のある育て方です。ここでは、鉢ごと吊るして育てるメリット、デメリットを紹介します。
吊るして育てるメリット
鉢を吊るすことで、通気性を好む胡蝶蘭には良好な環境を提供してあげることができます。
また、胡蝶蘭が空中で大きな花を咲かせる様子は圧巻で、目を引くインテリアになること間違いなしです。
吊るして育てるデメリット
鉢を吊るして育てる場合、置き場所や管理面では不便を被ることになります。
家庭によっては、鉢を吊るせる場所が限られてきますし、水やりなどの管理は、普通に鉢を置いている場合よりも少々手間になるでしょう。
吊るして育てる際の注意点
吊るして育てることで通気性が向上しますが、同時に乾きすぎてしまう場合がありますので注意しましょう。水やりのほかに、こまめに葉水（霧吹きなどで葉の表面に水を吹きかけること）をするなどして、空中の湿度を保ってあげるようにしてください。
植え替えに適した時期
新しい鉢と植え込み素材が決まったら、いよいよ植え替えです。ここでは、胡蝶蘭を植え替える上で覚えておきたい要点をお伝えしていきます。
植え替えは花が終わってから
胡蝶蘭の植え替えに適した時期は、花が終わった後の、暖かくなり始める４月〜５月ごろです。熱帯地域に生息する胡蝶蘭は、日本では春から夏にかけて生育が旺盛になり、根もよく伸びます。そのため、この成長期の前に植え替えをするのがおすすめです。
頻繁な植え替えは根を痛めてしまうのでNG
胡蝶蘭は、根のダメージに非常に弱い植物です。そのため1年に2度以上植え替えをするのは避けましょう。また、植え込み資材が傷んでいなければ、数年間植え替えせずに育てていても構いません。
根腐れした場合は早急に植え替えを！
胡蝶蘭の植え替えは、基本的に春に行いますが、根腐れを起こしてしまった場合は、時期を問わず早急に植え替えを行う必要があります。
胡蝶蘭は、根腐れを起こすと、葉がシワシワになったり、根が黒く変色したりします。こうした兆候が見られたら、根腐れの可能性が高いので、早めの植え替えを検討しましょう。
胡蝶蘭を植え替える際に必要なもの
胡蝶蘭の植え替えには、以下のものを用意します。
- 鉢
- 植え込み資材
- 鉢底石
- 消毒したハサミとピンセット（火で軽く炙るか、熱湯に浸けましょう）
鉢底石の代わりに発泡スチロールが便利
鉢底石は、鉢内の通気性を向上させるので胡蝶蘭を植える際にはぜひ、用意したいアイテムですが、鉢の重量が重くなってしまうのが難点です。
そこで、鉢の重量を軽く押さえたい場合は、一片3〜5センチ程度のサイコロ状に切った発泡スチロールを使うのがおすすめです。
植え替えのやり方
①古い鉢から胡蝶蘭を引き抜きましょう。
まず鉢から株を優しく取り出します。株を傷つけないように慎重にゆっくり取り出します。鉢の内壁に胡蝶蘭の根が張り付いていることがあるので、力ずくで引っ張らないようにしてください。
②古い植え込み材を慎重にピンセットで剥がす。
株を引き抜いたら、根まわりに付いている古い水苔やバークを傷つけないようにピンセットでゆっくり取り除きます。
③健康な根を残して、傷んだ根をハサミで切り落とします。
茶色くカラカラになっている根や、黒く変色し柔らかくなっている根は、ハサミで切除します。
④水苔の場合
水苔で植える場合は、水に浸けて絞った水苔で根まわりを包み、新しい鉢に水苔ごと押し込むようにして植えます（根を傷付けないようにやさしく押し込みます）株を上に持ちあげても鉢が落ちなければ大丈夫です。
⑤バークの場合
バークの場合は、鉢にバークを敷き詰め、その上に固形肥料を入れます。固形肥料の上にさらにバークを入れてから胡蝶蘭を入れます。このとき、肥料が根に直接触れないように注意して入れます。割りばしなどを使用して隙間のないようにバークを詰めていきます。最後にバークを上に敷き詰めて植え替えをします。
植え替え後の胡蝶蘭の育て方
植え替えは株も体力を使うものなので、植え替え後の胡蝶蘭はとてもデリケートな状態です。
植え替えの後は普段以上に管理に気を使ってあげましょう。
温度
植え替え後の胡蝶蘭は、非常にデリケートなので、温度管理には普段以上に気を配りましょう。最低でも15度を下回らないよう、暖かい場所で管理します。
また、新しい鉢にしっかり馴染むまでは、葉水などで空中湿度を高く保ってあげると効果的です。
置き場所
胡蝶蘭は強い光に弱いため、直射日光の当たらない場所で育てるのが基本です。
植え替え後は更にデリケートであるため、より暗めの場所で様子を見てから、元の場所に戻すのもひとつの方法です。
水のやり方
植え替え後、2週間程度は水をやらずに管理します。着生植物である胡蝶蘭は根まわりの乾燥に強いので、この2週間で鉢内がカラカラになってしまっても枯れてしまうことはありません。2週間経ったら、少しずつ水を与え始め、徐々に通常の管理に戻していきましょう。
なお、水を与えない２週間でも葉水を与えて空中湿度を保っておくことは有効です。
胡蝶蘭の鉢の選び方
最後に、胡蝶蘭の鉢の選び方の大事なポイントは以下のようになります。
- 胡蝶蘭の鉢は株に対して小さめでOK
- 通気性が良い形の鉢を選ぶ
- 素焼き鉢とプラスチック鉢がおすすめ
- 素焼き鉢なら水苔、プラスチック鉢ならバークで植える
- 植え替えは４〜５月に行う
これらを押さえておけば、あなたの好みの鉢に胡蝶蘭を植えて楽しむことができます。
好きな鉢に植えられた胡蝶蘭には、一層愛着が湧きますし、来年の花がもっと待ち遠しくなるでしょう。
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まとめ
今回は、胡蝶蘭を育てる際に適した鉢から植え替えの方法までご紹介しました。鉢の大きさや、素材に関しても素焼きやプラスチックなどさまざまな種類がありますが、どういったものが胡蝶蘭に適しているか分かったと思います。
胡蝶蘭を植え替えようと考えている方は、この記事を参考に、適した鉢を用意して正しい方法で植え替えをしてくださいね。また、植え替え後の胡蝶蘭は非常にデリケートな状態。植え替えが終わった後は、いつも以上に管理には気をつけてあげましょう。
