よく似ている梅・桃・桜|見分け方やそれぞれの違いは?

3月のひな祭りシーズンにどちらも花を咲かせている、梅と桃。

違う種類だとは分かっていても、どうにも見分けがつきづらいお花です。さらに桜が加わると、どれがどの花か分からない!なんてことも……。

 

どれも春を彩る桃色のお花たちですが、一体どのポイントで見分ければ良いのか、道端や公園で見つけたときには、どこを観察すれば見分けられるのかについて、今回はご紹介していきたいと思います。

 

桃・梅・桜の見分け方

春に咲くピンク色のお花といえば、桃・梅・桜ですが、実はこの3つはいずれもバラ科・モモ亜科に入る樹木なのです。どうりで姿や花が似ているわけですね。

 

非常に似ているこの3本の木ですが、やはり明確な違いがあって、その違いを覚えてよく観察してみれば、簡単に見分けることができます。

いくつかのチェックポイントのうち、違いを大きくざっくり分けるのであれば、

 

  • 見た目
  • 開花時期
  • 香り

 

の3つが重要なポイントになります。

花びらの形や幹の質感、葉をつける時期にもそれぞれに違いがあります。

 

どれも春を彩る桃色のお花たちですが、一体どのポイントで見分ければ良いのか、道端や公

園で見つけたときには、どこを観察すれば見分けられるのかについて、今回はご紹介してい

きたいと思います。

花の種類が見分けられると、お花見やちょっとした散歩も少し楽しくなるかもしれません。それでは見ていきましょう。

 

桃・梅・桜の基本情報

それぞれの見分け方について深く掘り下げていく前に、まずは桃・梅・桜の3本の樹木につ

いて、基本的な情報や花言葉などを知っておきましょう。

桃(もも)

科・属 バラ科・サクラ属
和名 桃(もも)
英名 Peach blossom
学名 Amygdalus persica(Prunus persica)
原産地 中国中北部
花言葉 「チャーミング」「気立ての良さ」

「私はあなたのとりこ」「天下無敵」

 

桃は中国原産の落葉高木で、ひな祭りの飾り花としても馴染み深いお花です。

春に可愛らしい花を咲かせた後には、みずみずしい果実を作ります。

花には、一重咲きや八重咲きがあり、花色にはピンクや白、赤などが見られます。

開花時期は3月の後半から5月と、ソメイヨシノよりも早く咲き始めるのが特徴です。

花が美しく鑑賞性の高い品種はハナモモ(花桃)と呼ばれており、観賞用の花木とされています。対して、食用の実を作る目的で育てる桃は、「実桃(みもも」といいます。

夏に果実を付ける桃は、お尻から熟していくため、果実の上を触ってみて柔らかければ食べ頃のサインです。

「桃栗三年柿八年」のことわざにもあるように、桃は地植えや鉢植えで実を作るまでに3年はかかります。

実桃は、桜のように一重咲きの種類が多く、花桃は八重桜のように八重咲きの品種が多いという特徴があります。

 

ひな祭り用の切り花として使われているのは「矢口(やぐち)」という品種で、明るく大輪の桃色の花がとてもきれいな種類です。

花桃の品種には枝垂れ品種のものや、樹高が1mほどにしかならない、鉢植え向きの品種などもあります。

 

日本神話に登場するイザナギノミコトが、黄泉の国で鬼に追われたときに、近くにあった桃の実を投げて鬼を追い払い生還したという話から、魔除けや厄除けの力があるとされ、ひな飾りに使われています。また、このエピソードから「天下無敵」の花言葉も付けられました。

 

梅(うめ)

科・属 バラ科・サクラ属
和名 梅(うめ)
英名 Japanese apricot,Ume
学名 Prunus mume
原産地 中国
花言葉 「気品」「忠実」「忍耐」「高潔」

初春のまだ冬の寒さが厳しく残る時期に花を咲かせる梅は、桃や桜に先駆けていちばんに開花します。梅の花が咲き始めると、やっと冬が終わるんだなと、春の訪れを感じますよね。

香りの主成分がジャスミンやクチナシと同じなので、梅を含むこれらの花は似た香りがします。

 「花よし・香りよし・果実よし」の三拍子が揃っている梅は、突然変異が起こりやすく、同じ木でも花色の違う花を咲かせることがあるため、ひとつの木に紅白の花を咲かせる場合もあります。この紅白カラーから、縁起物の「松竹梅」のひとつとされる花木です。

 

観賞用として美しい花を咲かせる品種は梅(うめ)と呼び、花の後にできる果実は食用としては不向きになります。食用向きのものは「実梅(みうめ)」と呼び、こちらは梅干し、梅ジャム、梅酒などの食品に加工しやすい果実が作られます。

 

先ほどご紹介した、「桃栗三年柿八年」のことわざには実は続きがあって、「梅は酸(す)いとて十三年」と続いています。

鉢植えや地植えで育てる梅は、実を作るまでに13年もかからないのですが、美味しい実梅を作るには剪定や芽摘みなどのお手入れが欠かせず、物事が成就するまでにはそれ相応の年月を必要とするという意味です。

他にも、「柚(ゆず)は九年の花盛り」「枇杷(びわ)は九年でなりかねる」という言葉が続くこともありますよ。

 

桜(さくら)

科・属 バラ科・サクラ属
和名 桜(さくら)
英名 Cherry blossom
学名 Cerasus
原産地 日本、中国、朝鮮半島、ヨーロッパ、北米
花言葉 「精神美」「優美な女性」「純潔」

 

日本の代名詞とも呼べる桜の花は、白や薄い桃色、濃い桃色などの花色があり、一重咲きや八重咲きのものがあります。

自生種だけでも15種類はあり、さらに園芸用に改良された品種を加えると300種以上にも及びます。

 

ご家庭のお庭や公園、街路樹としても植えられている、日本人には馴染み深い樹木ですね。桜の開花宣言にも使われている代表的な桜は、ソメイヨシノ(染井吉野)です。

東京都豊島区を発祥とする、れっきとした国産の品種になります。

濃い桃色の花を咲かせる「河津桜(かわづざくら)」はソメイヨシノよりも早咲きで、2月の終わり頃から咲き始めます。

また、近年の研究では、桜のルーツを辿ると、原産地はネパールではないかということが明らかになっています。

桜の香りの成分は、バニラやアーモンドなどに含まれる甘い香りで、少しバラの匂いにも似ています。

しかしソメイヨシノなどのポピュラーな桜の香りは、近付いても香るかどうかというくらい弱いので分かりにくいかもしれません。

 

桃・梅・桜を見分ける8つのポイント!

とても似ている桃・梅・桜の3種類ですが、実ははっきりとした違いがあります。

そこで、桃・梅・桜を見分けるポイントを8つまとめてみました。

このポイントさえ覚えてしまえば、3種類の見分け方は簡単ですので、足を止めてゆっくり観察して、見極めてみてくださいね。

 

違い①:開花時期

桃・梅・桜の基本的な部分を抑えたところで、さっそく見分け方やそれぞれの違いについてご紹介していきましょう。

まず初めに挙げられる違いとして、開花時期があります。

ここ最近では、気温の寒暖差や変動などによって咲く時期がずれ込むこともあり、本来の花の開花時期を忘れてしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

桃・梅・桜は春の数ヶ月ほどをかけて、日本を北上するように開花していきます。

 

この3本の中では、まずは梅から開花していきます。

開花期は、1月下旬〜4月下旬ですが、品種により12月の半ばにはすでに開花していることもあります。先駆けて咲く早春の花である梅は、桃や桜が咲いていない時期に白や桃色の花が咲いていれば、それは梅だと判断しても良いでしょう。

 

続いて、桃の花がソメイヨシノよりもやや早く開花していきます。

開花時期は桜とだいたい同じくらいではありますが、少しだけ桃の花のほうが早いと覚えておきましょう。

開花時期は3月中旬〜4月下旬頃ですが、寒暖差や地域の差によって、ソメイヨシノとほとんど同時期に開花する場合もあります。

 

そして最後に、桜の開花時期は3月中旬〜5月上旬です。

もっとも早く開花するのは沖縄などの温かい地方で、北海道はいちばん遅く桜が開花します。

 

違い②:花びらの形

違い②:花びらの形
桃(もも) 楕円形で花びらの先端が尖っている
梅(うめ) 花びらが丸みを帯びている
桜(さくら) 楕円形で花びらの先端が二股に割れて、ハート型になっている

梅は品種が多くあるため種類によって若干異なりますが、多くは丸い花びらを付けています。

 

違い③:花の付き方

違い③:花の付き方
桃(もも) ・枝全体に咲いている。

・緑色の軸が短い。

・さまざまな方向を向いて咲く。

梅(うめ) ・枝の付け根側に多い

・緑色の軸がない。

・茶色い枝にへばりつくようにして咲く。

桜(さくら) ・枝の先端寄りに多く咲く。

・緑色の軸が長い。

・下を向くように咲く。

花全体を眺めてみると、このように花の付き方が異なります。

桃は、同じ付け根から花が2つ、上下左右あらゆる方向に咲きますが、梅は同じ付け根から1つの花しか咲きません。

 

違い④:花と枝

違い④:花と枝
桃(もも) ・花枝がなく、直接枝に花がつく。

・花芽2個と葉芽1個が同じ箇所から出ている。

梅(うめ) ・花枝がなく、直接枝に花がつく。

・花芽は1個ずつ

桜(さくら) ・枝に花枝がつき、複数の花が房状につく。

・花芽は2個以上

梅と桃は花芽の数が違うので、梅は花が散らばるように咲き、桃は花が固まるように咲きます。

桃と梅の違いでは、葉が花と同時に出ているのが桃だという決定的な違いが分かるでしょう。

違い⑤:幹の様子

違い⑤:幹の様子
桃(もも) ・幹肌は白っぽい

・撫でるとつるつるしている

・斑点模様がある

・幹の樹皮に横縞がうっすらと入っている

梅(うめ) ・幹肌は黒ずんでいる

・比較的ざらついている

・幹の樹皮はゴツゴツとした不揃いの割れ目がある

桜(さくら) ・幹肌は赤茶色

・幹の樹皮にゴツゴツとしたイボのような横縞模様がある

桃の枝は、若い枝は似た色や形をして見分けにくいため、太い幹で確認してみてください。桜よりも目立ちませんが、幹の樹皮に横縞が薄く入っているのが分かります。

また、桜の幹にはたくさんの穴が空いているので、試しに幹を叩くと梅や桃と比べて軽い音がしますよ。

 

違い⑥:葉の付き方

違い⑥:葉の付き方
桃(もも) ・花と葉は同時に咲く
梅(うめ) ・花が終わって葉が出る
桜(さくら) ・花が咲き終わり、初夏にかけて葉が茂る

桜は、花が終わってから葉が出るのは主にソメイヨシノなどの品種で、葉と花が同時に出るのは大島桜、八重桜、里桜などの品種もあります。

 

違い⑦:つぼみの形状

桃・梅・桜はつぼみの形状も異なりますので、つぼみのままでも比較的簡単に見分けることができます。

 

違い⑦:つぼみ
桃(もも) ・丸みがある
梅(うめ) ・まんまる
桜(さくら) ・細長い

つぼみの状態だと、桃の花も丸みがあるので分かりにくいですが、開き出すにつれて花びらが長くなってくため判別できますよ。

他には、次の花芽の個数や葉の有り無しによって見分けることができるでしょう。

違い⑧:葉の形

違い⑧:葉の形
桃(もも) ・長い楕円形
梅(うめ) ・楕円形

・縁がギザギザしている

桜(さくら) ・大きめの楕円形

・縁がギザギザしている

桜と梅は似ているので区別しにくいですが、葉の形は桃だけ長いので、違いが明らかですね。

ちなみに、桃の葉にはタンニンが含まれているため、湿疹などを抑える効用があります。

そして桜の葉ですが、桜餅を包んでいるお馴染みのあの葉は、「大島桜」の葉が使われており、ソメイヨシノの葉ではありません。

 

ことわざ「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」

「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」ということわざの意味は、「桜は切らないほうが良いが、梅は切ったほうが良い」というものです。

実はこのことわざも、木を見分けるうえでのヒントになります。

 

桜は、枝を切ってしまうと、そこから雑菌が入って腐りやすいという繊細な性質を持っています。特にソメイヨシノには、腐朽菌が入って幹が腐ると、幹の内部が空洞になってしまうため、剪定にはとても注意が必要なのです。

 

全体的な見栄えも悪くなってしまうので、「切らない方が良い」ですし、誤って枝を折るのも良くありません。

 

一方の梅ですが、枝を切っても梅には強い回復力があり、太い枝を切っても意外と大丈夫なのです。かえって剪定することにより、切り口から新しい小枝が伸びていき、花芽がたくさん形成されていきます。

剪定によって枝全体の混み合った部分がなくなれば、日当たりが良くなって、栄養が行き渡りやすい…と、良いことづくめなのです。

梅は、前年の枝には花芽を付けないという性質も持っているので、放っておけば花の数は減ってしまうし、樹形のバランスが崩れて見栄え悪くなってしまうし、害虫も発生しやすくなるため、「梅切らぬ馬鹿」に繋がるわけです。

 

ただし、梅も剪定の適期や箇所があります。

丈夫だからと言って、ルールを守らずにやみくもに剪定しては、花芽がつかなくなってしまうでしょう。

 

桜の剪定が難しいことから生まれた、「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」ということわざですが、花に対してだけではなく、人に対しても、「個人の個性に応じた面倒を見ることが大切だ」という人生の教訓としての意味合いでも使われています。

桃・梅・桜と似ている杏(あんず)

桃・梅・桜の木に大変よく似ており、中でも梅に酷似する樹木に、杏(あんず)があります。

杏の丸い花びらは梅の花びらとよく似ています。

見分けるポイントとしては、杏は樹皮に縦方向の模様が入っていることです。

それが見分ける目印になります。もうひとつ、花のつき方にも決定的な違いがあり、1節に1つの花が付いているのが梅、1節に複数の花が咲いているのが杏になります。

 

最後におさらい

ここまでご紹介してきた桃・梅・桜を見分けるポイントをまとめてみました。

最後におさらいしてみましょう。

 

【桃・梅・桜の見分け方まとめ】

開花時期 一般的に、梅→桃→桜の順で開花する。
花びらの形 桃:楕円形、先端が尖っている

梅:丸みがある

桜:楕円形でハート型

花の付き方 桃:枝全体にさまざまな方向を向いて咲く/軸が短い

梅:付け根側に多く、枝にへばりつくように咲く/軸がない

桜:先端寄りに下を向いて咲く/軸が長い

花と枝 桃:枝に直接花が咲く/花芽2個+葉芽1個が同じ所から出る

梅:枝に直接花が咲く/花芽1個

桜:花枝があり花が房状につく/花芽2個以上

幹の様子 桃:白っぽい幹肌でつるつる/斑点模様/横縞がうっすらある

梅:黒ずんだ幹肌でざらざら/樹皮はゴツゴツで割れ目がある

桜:赤茶色の幹肌でゴツゴツ/横縞模様がある

葉の付き方 桃:花と葉が同時に咲く

梅:花が終わり葉が出る

桜:花が終わり初夏に葉が出る

つぼみの形状 桃:丸みがある

梅:まんまる

桜:細長い

葉の形 桃:長い楕円形

梅:ギザギザした楕円形

桜:大きめのギザギザした楕円形

 

いずれかの樹木を見かけたときには、これらの違いを思い出しながら、どの花なのかを当ててみてくださいね。

 

まとめ

今回は、春を彩るピンク色のお花たち、桃・梅・桜の見分け方についてご紹介してきました。これでもう、お花を見かけても見分けられるようになったのではないでしょうか。

いずれもバラ科サクラ属の仲間なので、とてもよく似た姿をしていますが、花びらの形や花の咲き方や、つぼみや葉の形状、幹の形などに明白な違いがあります。

 この記事を参考に、春の訪れを楽しんでくださいね。

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