トロピカルで個性的なトケイソウ(時計草)|花言葉やその由来

個性的な花姿のトケイソウは、まるで時計のような花の形をしているので、一度見るとなかなか忘れられない草花です。

暑い時期に南国ムード満点な花を咲かせるトケイソウは、ぐんぐんつるが伸びていくので、グリーンカーテンとしても近年人気が高まっています。

今回は、トケイソウの花言葉や特徴、育て方などについて詳しくご紹介していきます。

 

トケイソウの基本情報

まずはトケイソウの基本情報を見ていきましょう。

科・属 トケイソウ科・トケイソウ属
和名 時計草(とけいそう)
英名 Passion flower
学名 Passiflora caerulea
別名 梵論葛(ぼろんかずら)、蛇の目草(じゃのめそう)
原産地 中南米

 

トケイソウの特徴

熱帯・亜熱帯地域が原産のトケイソウは、パラグアイの国花に指定されています。

トケイソウとはは、トケイソウ科・トケイソウ属に分けられている植物を総称する呼び名です。

ほとんどがつる性の品種で、草丈は30〜80cmくらいになり、伸ばしたつるの先には個性的でユニークな花を咲かせます。

品種は500種以上にも及ぶと言われており、ここに園芸品種も加えてくとさらに数が増えていくでしょう。

 

トケイソウの花の独特な形状は、花びらの内側に糸状のような「副花冠」が付くのが最大の特徴になっています。

残念ながら花は一日花なので朝に咲いて夜にはしぼんでしまうのですが、続々と新しい花を咲かせていくため、長く花を観賞できるのが嬉しいですね。

南国フルーツとして有名な「パッションフルーツ」は、トケイソウの仲間の品種のひとつです。花が終わってできた果実はそのまま生で食べたり、加工してジュースなどにもなっていますよね。

 

トケイソウはつる性の性質を活かして、あんどん仕立てにしたりグリーンカーテンや目隠しとしても使いやすい植物です。

熱帯地域の植物でありながら、耐寒性にすぐれている品種はマイナス15度まで耐えられるものもあるので、品種によっては屋外で冬越しも可能ですよ。

 

ユニークなトケイソウの花

トケイソウの最大の特徴は、何といってもユニークな花姿です。

先述のように、花の姿が時計の形によく似ているので、トケイソウと名付けられているほどです。

 

トケイソウの花は、萼片、副花冠、花弁、雌しべ、雄しべから構成されています。

花弁の内側にある、重なっている花びらのように見える部分は「副花冠」というもので、放射状についていたり、よれた糸のように広がっていたりしてとても個性的。

水平に開いている花びらが時計の文字盤を、3本に分かれている雌しべが時計の長針・短針・秒針を模しているようですよね。

 

トケイソウの名前の由来

時計にそっくりの花姿から和名ではトケイソウと呼ばれていますが、英名では「Passion flower(パッションフラワー)」と呼ばれています。

このパッションとは、通常の情熱を意味せず、「受難」を意味しています。

これは、キリスト教においての「キリストの受難」を意味しており、カトリック司祭たちが、トケイソウの花をキリストが十字架にかけられた姿に重ねたことが由来です。

 

時計として見るのでなく、5枚の萼と花びらがキリストの「10人の使徒」を、コロナフィラメントと呼ばれる副花冠が「茨の冠」を、3本の雌しべが「釘」を、子房柱は「十字架」を、葉は「槍」を表すと考えられ、トケイソウを「十字架上の花」と信じてキリスト教を布教したそうです。

司祭らの呼んでいたラテン語名で「キリストの受難」を意味する「flos passionis」が訳され、Passion flowerと呼ばれるようになりました。

 

学名である「Passiflora caerulea」は、ラテン語で「情熱の花」を意味する「flor della passione」と、ブルーを意味する「caerulea」が組み合わされた名前です。

 

トケイソウの効能

食べられる果実のパッションフルーツは、甘酸っぱいゼリー状の果肉が特徴です。

硬い皮を剥くと、ぷるぷるとしたゼリーのような果肉と種があり、この種にはビタミン、ミネラルを豊富に含んでいるため、果肉と一緒に食べます。スプーンでそのまま食べるのも良し、ジュースやフルーツソースにして味わうのもおすすめですよ。

 

パッションフルーツは、トケイソウの仲間であるクダモノトケイソウ(果物時計草)の果実です。ちなみにパッションフルーツの実は、トケイソウの英名になぞらえて「Passion fruit(受難の果実)」と名付けられています。

 

また、トケイソウは欧米では沈静効果の高いハーブティーとして飲まれているようです。

現在では、葉に痙攣などを抑制する作用や不安を和らげる効果、高血圧を緩和する効果があると明らかになっています。

葉にはアルカロイド類とフラボノイド類が含まれており、これが神経伝達物質の分解を阻んで、鎮静効果をもたらすのだそうです。

しかし、アルカロイドを大量に服用すると、内臓が機能障害を起こして、めまいなどを誘発する恐れがあることも。子宮への刺激成分も含まれているので、妊婦が服用すると早産のリスクが高まる危険性も考えられるので注意してくださいね。

 

トケイソウの花言葉「聖なる愛」

トケイソウの花言葉は、英語で「holy love(聖なる愛)」「faith(信仰)」「religious fervour(宗教的熱情)」と付けられています。

かつてアッシジの聖フランチェスコが夢に見たという「十字架上の花」だと信じられたトケイソウは、やはり宗教的な背景を感じさせる花言葉ですね。

日本での花言葉も、「聖なる愛」「信仰」「宗教的熱情」と、英語の花言葉を訳したものになります。

 

トケイソウ主な種類

品種は400種以上にも及ぶトケイソウは、自分好みの品種を選ぶという楽しみもある植物です。

基本的には白と紫の花色のものが主流ですが、赤やピンクをした品種もあります。

観賞用品種と、食用品種がありますが、中でも人気のある品種をご紹介していきましょう。

 

パッシフローラ・アラタ

パッシフローラ・アラタは、トケイソウの代表的品種とも呼べるもので、白と紫をベースにした直径が7〜10cmと豪華で美しい花を咲かせます。

美しい花からは香水のような良い香りが漂うので、開花期には辺りが良い香りで包まれることでしょう。

冬の寒さと過湿環境には弱いので、鉢植えなどで室内管理をするのがおすすめです。

花が終わって結実すると、パッションフルーツよりも甘い実がいくつか収穫できます。

 

パッシフローラ・カエルレア

日本でいちばん多い品種が、この「パッシフローラ・カエルレア」です。

初心者にも育てやすく耐寒性にすぐれているので、関東地方では地植えをしてグリーンカーテンを作ったり、フェンスの目隠しに使われたりしている品種です。

日本でのトケイソウとは、一般的にはパッシフローラ・カエルレアのことを指します。

白い花びらの内側に紫、白、薄い青の細い副弁があり、色のコントラストが美しい花を咲かせてくれます。

花が終わると、オレンジ色の実を収穫することができますよ。

 

パッシフローラ・インカルナタ(チャボトケイソウ)

カエルレアと同じく、耐寒性にすぐれているのが「パッシフローラ・インカルナタ」です。別名では「チャボトケイソウ」とも呼ばれています。

パッシフローラ・インカルナタは、なんとマイナス15度まで耐えることができる驚異的な耐寒性を持っており、日本でも地植えで管理できますよ。

特に鎮静効果があるハーブとして知られており、ハーブティーとして楽しまれている品種です。

 

パッシフロラ・エドゥリス(クダモノトケイソウ)

「パッシフロラ・エドゥリス」は、先ほどご紹介したように、有名なパッションフルーツの実がなる食用としてすぐれている品種です。

副花冠が垂れ下がっているのがパッシフロラ・エドゥリスの特徴で、実は赤く熟していきます。

パッシフロラ・エドゥリスには、紫色の実ができるものと黄色の実ができるものとがあって、紫の種類は自家受粉を行なうため結実しやすい一方で、黄色の種類は他の木が近くにないと、なかなか多く実を付けません。

 

他にも、「パッシフローラ・インセンス」というインカルナタとキンニカータの交配で作られたマイナス8度まで耐えられる品種や、マイナス5℃くらいには耐えられる「アメジスト」、赤味が買ったオレンジ色の花が美しい「ピレシー」や、真紅の花を咲かせる「コッキネア」などがあります。

 

グリーンカーテンにもおすすめ!トケイソウの育て方

トケイソウはつる性の性質を持ち、葉はつやがあり大きいのでグリーンカーテンとしても優秀な植物です。

耐寒性にすぐれた品種も多くあるので、庭植えでも育てやすいですよ。

グリーンカーテンとしてお馴染みのゴーヤからちょっと気分転換をしてみたいと思ったら、トケイソウを育ててみましょう。

ここからは、トケイソウを育てるうえでの基本について、お世話の項目ごとにご説明していきます。

 

非常に品種が豊富で品種によって差があります。自宅で育てる場合は、耐寒性の有無などを事前に確認した方がいいでしょう。露地で越冬可能なものはフェンスやトレリスに絡ませると初夏から夏にかけて花を楽しむことが出来ます。挿し木で簡単に増えるのも特徴で、折れた枝や地面に下垂した枝から根付くこともあります。

置き場所

トケイソウは風通しと日当たりが良好な場所を好みますので、庭植えの際には良く日が当たる場所を選びましょう。

日光が不足するとひょろひょろと間のびして花つきや葉色も悪くなってしまいます。

 

熱帯地域の植物なので暑さには強いのですが、日本の寒さには弱いです。

お話したように、品種によっては気温がマイナスに達しても耐えられる種類がありますので、お住まいの地域や環境によって適した品種を育てましょう。

苗選び・土作り

また、土は排水性にすぐれている水はけの良い土を好みます。

地植えの場合には土を少し盛って高さを作っておいたり、粘土質の土には腐葉土や堆肥で改良をしておいたり、水はけを良くする工夫をしておきましょう。

 

鉢植えでは、市販されている草花用の培養土を使ってください。

トケイソウの苗はホームセンターなどでも販売されています。

苗は、株元から枝が力強く伸びていて、節間が短く引き締まっているものを選び、下葉が変色しているものは避けましょう。

春か秋の気温が穏やかな日に植え付け作業を行って、日当たりの良い場所で管理します。

植え付けた直後には、水をたくさん与えてください。

深く植え付けすぎると枯れてしまう恐れがありますので、浅めに植え付けてくださいね。

 

水やり

トケイソウの水やりは、土が乾いたことを確認したら、鉢底から水が流れ出るほどにたっぷりと与えましょう。生育期に水分が不足すると、花つきや葉つきが悪くなってしまうので、水切れに注意します。

地植えでは降雨に任せ、特に水やりに必要はないのですが、土がからからに乾いている場合や乾燥している時期には適量の水を与えましょう。

水やりの際は、株元に向かって与えるようにして、葉や茎などにかからないようにします。

 

真夏の水やりは、必ず気温の低い朝か夕方に行なうよう心がけてください。

鉢土内で与えた水の温度が急上昇してしまうと、根や株が深刻なダメージを受けてしまいます。土が蒸れることで根腐れを起こす可能性もありますので、気を付けましょう。

葉や茎が元気なく垂れ下がってきたら水が不足しているサインですので、特にたっぷりと水を与えてください。

 

冬季の水やりは、真夏とは反対に温かい時間帯に水を与えます。

夕方などの遅い時間帯に水やりをすると、鉢内で水の温度が下がっていき、凍結する危険があるので注意してください。

また、秋からは生育スピードがゆるやかになっていくので、水やりの頻度を徐々に減らしていきます。

 

肥料・仕立て方

肥料は、生育期である春から秋の間に、緩効性の化成肥料を1〜2カ月に1回くらい株の周りに置きましょう。

 

トケイソウはつる性の植物なので、鉢植えでは支柱を立て、地植えでは近くにつるを絡めやすいフェンスなどがある場所を探して植えてください。

つるが絡まることにより、株の生長が上手くいかずに花が咲かなくなるので、支柱は必ず必要です。

つるを上手に誘引していく必要があるので、春以降の生育期には1〜2週間に1回ほど、伸ばしていく方向に麻ひもなどでゆるく固定します。伸びすぎた長いつるは、剪定で調整して構いません。

こまめに誘引をしてバランスよく生長させるのが、トケイソウの魅力である美しい花を咲かせる最大のポイントになります。

 

生育期にはぐんぐんつるが伸びていき、気付かないうちに絡まってしまうこともあるので、こまめに観察して誘引してあげましょう。

最初の誘引が上手くいけば、以降は自然とその方向へと伸びていきますので、グリーンカーテンやフェンスの目隠しとして充分な効果を発揮してくれるはずです。

鉢植えでは、あんどん支柱などでつるを誘引しましょう。

 

剪定

トケイソウの剪定は、伸びすぎていると感じたら、適宜剪定で調整しましょう。

枯れたつるなどは取り除いておき、元気なつるも先から3分の1ほど切り落としておきます。つるの切り口からは左右に新芽が出て数が増えていくので、ボリュームアップできるのです。

何年も育っている株は、春先に強め剪定で樹形や全体のバランスを整えておきます。

また、葉が伸びすぎて日陰になる部分ができたり、混み合い過ぎて風通しが悪くなったりするのも良くないので、こまめに剪定をして整えておきましょう。

 

一日花ながらも、次々に新しい花を咲かせるトケイソウは、咲き終えた花がらを早めに摘み取っておくことで、種を残そうとさらに花つきが良くなり、長く楽しむことができますよ。

咲き終えた花が残っていると、種を作るために株が消耗していきますので、比例して花の数も減ってしまうのです。

植え替え

鉢植えのトケイソウは、生長スピードが早く根詰まりも起こりやすいため、1〜2年に1回のペースで植え替え作業を行ないましょう。

植え替えは、春先から真夏を迎える前までに行なうのがベストです。

 

 植え替えの手順は以下の通りです。

  1. 植え替え前は水やりを控え、乾燥させた状態で行ないます。
  2. 株を取り出したら、根を傷つけないよう優しくほぐして古い土を落としましょう。
  3. 傷んだ根や古い根は清潔な刃物で切り落とし、根を整理してサイズダウンします。
  4. 新しい鉢に3分の1ほど土を敷いて、株を置き、周りを土で埋めていきましょう。
  5. たっぷりと水を与えたら、風通しの良い半日陰で管理して株を休ませます。

※さらに大きく育てていきたい場合は、サイズダウンは不要です。

 

増やし方

繁殖力の強いトケイソウは、「挿し木」で簡単に増やしていくことができます。

真夏や猛暑日を避けた、春先から夏前頃が適期になります。

挿し木で増えたものは、元の株のクローンですので、同じ花が咲くというメリットがありますよ。

 

挿し木の手順は以下の通りです。

  1. 若く元気のあるつるを10〜15cmほど切り取っておきます。
  2. 器に水を入れておき、つるを挿して半日ほど吸水させましょう。
  3. 清潔な草花用の培養土などをポットやトレイに入れておき、つるを挿します。
  4. 土が乾燥しないようたっぷりと水やりをして、半日陰で管理します。
  5. 1カ月ほどで発根しますので、根が安定してきたら鉢などに植え替えましょう。

まとめ

今回は、個性的な花姿であるトケイソウについて、花言葉の由来やエピソード、育て方などについてご紹介してきました。

 ユニークな姿なので、フラワーギフトとしては贈る相手を選ぶ必要があるかもしれませんが、ギフトに個性を出したいときや、ユニークなものが好きなお相手にはきっとぴったりでしょう。

また、「聖なる愛」という花言葉は、恋人やパートナーなど、大切に想う相手へを愛する気持ちを込めやすい美しい花言葉です。

 歴史的な背景から厳かな雰囲気を持ち合わせていますが、花からはとても良い香りがすることと、真夏の暑い中でも次々と新しい花を咲かせてくれる力強さは、育てる楽しみもひとしおです。

グリーンカーテンにも適しているので、この夏からはトケイソウのカーテンを取り入れてみてはいかがでしょうか。

大切なあの人にお花を送ってみませんか?