切り花のスイートピーで春を感じよう。お手入れや長持ちのコツ
お花屋さんにスイートピーの花が並びだすと、春の訪れを感じますよね。
早春から店頭に並びだすヒヤシンスと共に、良い香りをお店いっぱいに漂わせてくれます。
2月頃から切り花として出回り始めるスイートピーは、まだまだ花が少ない冬の終わりに、暖かな春を連れてきてくれるお花です。
今回は、そんなスイートピーを切り花として存分に味わうための楽しみ方や、長持ちさせるお手入れ方法などをご紹介していきたいと思います。
できるだけ長く美しいスイートピーを楽しめるよう、この記事が参考になれば幸いです。
スイートピーの基本情報
まずはスイートピーの基本情報から見ていきましょう。
科・属 | マメ科・レンリソウ属(ラティルス属) |
和名 | 麝香豌豆(はこうえんどう)香豌豆(かおりえんどう)、麝香連理草(じゃこうれんりそう) |
英名 | Sweet pea |
学名 | Lathyrus odoratus |
原産地 | イタリア南部など |
スイートピーの特徴
マメ科のスイートピーはつる性の草花です。
春先になると、長い花柄の先に1〜4つほどのひらひらとした蝶のような花を咲かせます。
花色は淡い色合いのものが多く、ふんわりとした優しげな雰囲気が素敵なお花です。
パステル調の淡い色合いの他にも、発色の良いはっきりとした色合いや、落ち着いたシックなカラーや複色など、さまざまなバリエーションが登場したことで、アレンジメントの幅もぐんと広がりました。
春咲きのスイートピーが切り花で最も流通数が多いため、スイートピーは春にしか咲かないと思われがちですが、実は品種によって開花時期が異なり、夏咲きや冬咲きのスイートピーの他に矮性種もあります。よく香るものは春咲きのスイートピーです。
ちなみに夏咲きの品種は、「サマースイートピー」や「宿根スイートピー」の名前で流通しています。
スイートピーの花弁
花びらの大きさにはばらつきがあり、それぞれの花弁に名称があります。
いちばん後ろの「旗弁」という花びらがいちばん大きく、旗弁の手前にある両側に開くような2枚の花びらは「翼弁」と呼ばれています。
最も手前にあるいちばん小さな花びらは「竜骨弁」と呼ばれ、花弁2枚が合わさって袋状になっています。
スイートピーが受粉すると、この竜骨弁の中で種が作られるのです。
名前の由来
スイートピーの「Sweet」は、お花の甘やかで良い香りから由来しています。また、「Pea」はマメ科であるスイートピーの「豆」を指しています。
学名の「Lathyrus(ラティルス)とは、「極めて」を意味する「La」と、原動力という意味の「thyrus」を組み合わせてできた名前です。
スイートピーは薬として大変重宝されていたことが名前の由来になります。
スイートピーの豆には実は毒性があるのですが、たくさん食べなければ問題のない程度の毒性です。
和名では、麝香豌豆(はこうえんどう)香豌豆(かおりえんどう)、麝香連理草(じゃこうれんりそう)といった呼び名があります。英名と同じく、良い香りがすることとマメ科の草花であるのが名前の由来ですね。
スイートピーの花言葉
スイートピーの花言葉には、「門出」「別離」「やさしい思い出」「蝶のように飛翔する」があります。蝶が羽ばたいているような花の形から、「門出」や「別離」「蝶のように飛翔する」の花言葉が付けられました。
お花が出回り始める季節は、ちょうど卒業や送別のシーズンなので、新たな門出や出発を迎える方へのフラワーギフトとして引っ張りだこです。
スイートピーは色別にも花言葉を持っていて、ピンクが「繊細」「優美」、白には「ほのかな喜び」、黄色には「分別」「判断力」、紫には「永遠の喜び」の花言葉があります。
赤色には色別の花言葉がないので、スイートピー全体の花言葉に当てはめて考えるといいでしょう。
名曲から誕生した赤色の品種
松田聖子さんの歌った名曲に、「赤いスイートピー」という有名な曲があります。
この曲から、スイートピーという花の名前を覚えた方も多いのではないでしょうか。
しかし、この曲がリリースされた当時、実は赤色のスイートピーは生まれていなかったのです。厳密に言うと、赤い品種のスイートピー自体は存在していたのですが、曲からイメージされるようなきれいな発色の赤い品種は生まれていませんでした。
松田聖子さんの曲がヒットしたことにより、スイートピーというお花の認知が広まって、積極的な品種改良が始められたようです。人気アイドルの影響はすごいですね。
現在流通している赤色のスイートピーの品種には、「スカーレット」「キャンディポップ」「カルメン」「ムジカクリムゾン」などがあります。
ムジカクリムゾンは三重県の農家の方が、「赤いスイートピー」の曲イメージにあわせて品種改良されたもので、ラテン語で「音楽」の意味を持つ「ムジカ」と、「真紅」の意味を持つ「クリムゾン」を組み合わせたのが名前の由来です。
ちなみに、「赤いスイートピー」の発売日である1月21日は「スイートピーの日」とされています。
もはや芸術作品!「染めスイートピー」
青や緑、オレンジ、グレーやベージュなどが染色されている花色です。
このように染色されたスイートピーは、「染めスイートピー」と呼ばれています。
特におすすめしたいのが、「染め」ならではのアッシュ系のカラーリングです。
近年では染め方の技術がどんどん向上しており、すじの部分を上手に染めた、絞り染めのような絶妙なニュアンスカラーの染めスイートピーも販売されています。
スイートピーの甘い香りはそのままに、アッシュブルーやグレイッシュブラウンといった、くすみカラーのスイートピーも存在します。
染めによって花びらの花脈が浮かび上がっていくのですが、蝶の羽の模様にも見えてきて、芸術作品とも呼べるような仕上がりのものもありますよ。
ドライフラワーとは異なり、生花ならではのアンティークな色合いからセピアな雰囲気が生まれて、お部屋のインテリアがワンランク上がること間違いなしです。
切り花のスイートピーの日持ちは?
淡いパステル調の色合いを持ち、甘く匂いがやさしく香るスイートピーは原種に近く、切り花としてはそこまで日持ちしません。
日持ちを重視される方は、生花店などで切り花を買うときに、お店の人にどれぐらいの花もちか聞いておきましょう。
3〜4日で終わってしまうスイートピーもあれば、1週間〜10日ほど咲いてくれるものもありますよ。
ちなみに、染めスイートピーは日が経っていくと染色された花色が徐々に薄くなっていきます。
スイートピーは湿気に弱い
柔らかく繊細な花弁を持っているスイートピーは、湿度が高い日に箱詰めで配送されたものだと傷みやすく、日持ちも短くなってしまいがちです。
お花屋さんによっては、雨天の場合にはスイートピーの仕入れを控えるお店もあるほど。ですので、スイートピーを買いに行く日は、雨の日と雨が降った後は避けておくと無難でしょう。
基本的には持ちが良いお花なのですが、だんだんと春に近づいて気温が上がっていくにつれ、冬の名残がある時期と比較すると傷みは早くなってしまいます。
花弁が薄いスイートピーは、冷暖房の風が直接当たると特に傷みが早くなってしまうので、飾る場所には注意してくださいね。
切り花のスイートピーを長持ちさせよう!
繊細で可憐なスイートピーは儚げな感じがあって長持ちしない気がする……と思われる方もいらっしゃるでしょう。
短命に思われがちなスイートピーの切り花も、お手入れ方法をしっかりすれば、良い香りと可愛らしい姿を長く楽しめますよ。
ここからは、スイートピーの切り花をできるだけ長持ちさせるテクニックについて、詳しく解説していきたいと思います。
細口の花瓶があるとベスト
切り花で流通しているスイートピーは、ほとんどに葉がなく、茎のみの姿です。
そのため、スイートピーだけで花瓶などへ生けるときには、細口の花器を用意できると茎が安定するので良いでしょう。
茎の切り口はまっすぐに
スイートピーの茎はとても細いので、一般的な切り花のように切り口を斜めにしてしまうと、茎の内部が潰れて水を吸い上げにくくなります。
茎を持つ際には強い力れ圧迫しないよう心がけ、清潔で切れ味の良い花バサミなどでまっすぐにカットしましょう。
購入時にすでに開花しているスイートピーには特に栄養剤などは必要ありませんが、切花鮮度保持剤などを混ぜておくと、水質を清潔に保ってくれる効果によって長持ちしやすくなりますよ。
花瓶の水は「浅水」に
水に浸かっている部分の茎は腐敗しやすいので、水嵩は花瓶の半分以下か、なるべく浅めの嵩で生けてください。
あまりに水の量が少なすぎると、翌日以降の水替えまでに水がなくなってしまったり、花瓶が安定せずに倒れてしまったりする可能性もありますので、ほどほどに水を入れておきましょう。
枯れた花は取り除こう
スイートピーの花は、下から順番に開花していく性質を持ちます。つまり、下側から順にお花が枯れていきますので、咲き終えてシワシワとしてきたものや、花弁が透けてきたものは、こまめに取り除いておきましょう。
下に向けてやさしく引っ張るように摘み取ると、上手に取り除けますよ。
枯れたままお花を放置しておくと、花の寿命を縮めてしまう「エチレンガス」が放出されてしまいます。
スイートピーのお花は、このエチレンガスの影響を特に受けやすいです。上で咲いているお花はまだまだ見頃のはずなので、他のお花が早く枯れてしまわないよう、花がらはこまめに摘み取りましょう。
湿度に注意して飾る
切り花の置き場所は、風通しが良く、涼しい場所に飾りましょう。
冷暖房の風が直接当たるような場所に置いていると、傷みが早まりますので避けてください。
また、先述したようにスイートピーは湿度に弱いお花です。
キッチンやお風呂場といった水回りなど、湿度の高い場所を避けて置くと長持ちしますよ。
スイートピーの楽しみ方やおしゃれな飾り方
切り花のスイートピーのお手入れ方法は、覚えてしまえばとても簡単です。
続いては、スイートピーをもっと楽しむためのアイディアをいくつかご紹介していきたいと思います。
甘い香りを楽しもう
お花は良い香りがするものが多いですが、香りが強すぎるとプレゼントなどに敬遠されがちになり、実はあまり流通していません。
スイートピーのように、強すぎず弱すぎもせずに適度な存在感のあるちょうど良い香りのお花にはなかなか巡り会えないものです。
春咲きのスイートピーは、良い香りがするお花が多いので、ぜひ香りも楽しんで飾ってみてください。
シンプルな一輪挿しで楽しむのも良いですが、せっかくですから何本かのスイートピーをまとめて飾って、甘やかな香りを存分に味わってみましょう。
アレンジメントではメインのお花を飾る花材として出番の多いスイートピーですが、豊富なカラーを取り入れた、スイートピーオンリーのカラフルな花束を作ってみてもいいですね。
さらに香りも増すので、部屋中がスイートピーの爽やかながらも甘い春の香りに包まれそうです。
長短の変化でおしゃれに
スイートピーの長い茎を生かして、何本かのスイートピーを長短でメリハリをつけて飾れば、花に動きが生まれて、ただ花瓶に挿すだけなのにとてもおしゃれな印象になります。
すべてを短めの長さで揃えてラウンドブーケのように短くまとめると、今度はコンパクトで丸みを帯びた可愛らしい印象にもなりますよ。
飾る部屋の雰囲気や飾る場所にあわせて、茎の長さを変えてみてくださいね。
ニュアンスカラーを無造作に飾る
染めスイートピーには、くすみ系などのニュアンスカラーが豊富です。ややアンニュイな雰囲気も漂うくすみカラーを何本かまとめてさっと飾るだけでも、ナチュラルかつアンティークな佇まいになります。
スイートピーは1本あたりの単価が150〜200円ほどと比較的安価なお花なので、自宅に飾るお花として手軽に入手できるのが嬉しいポイントですよね。
飾るときには、湿気が苦手なスイートピーの花が蒸れないよう、ふんわりと広げるように生けましょう。
他の花材との相性を楽しむ
スイートピーだけふんわりと飾るのも素敵ですが、他の花材と組み合わせるのも楽しいですよ。同じ春のお花であるチューリップやヒヤシンスなどとも相性が良いので、いろいろと自分でアレンジしてみましょう。
おすすめは枝物と、スイートピーのようにひらひらとしたフリルのような花弁を持つ花材です。
枝物で動きを出しつつ、スイートピーと似た雰囲気を持つお花をあわせて飾ることで全体のバランスが上手にまとまりますよ。
花器と一緒に楽しむ
スイートピーは茎が細いため、細口の花器が適してます。ぴったりな花瓶がない場合には空き瓶などを使うこともありますが、そのまま飾るのはなんだか味気ない気がしますよね。
そんなときには、100円ショップなどでスイートピーの花色に合わせたリボンを買ってきて、瓶の口に結んでみてはいかがでしょうか。
例えば、紫のスイートピーを飾るのであれば、パステルカラーの紫色のリボンを結んでみます。たったそれだけで全体に統一感が生まれますし、何より一気に可愛くなりますよ。
とても安く済むお手軽なアレンジ方法なのでおすすめです。
単価が安く「1本巻き」も人気
スイートピーの出回る時期は、卒業式シーズンです。
小学校などの卒業式では、お花を一本ずつラッピングした「1本巻き」の注文が多くあります。何のお花でも良い1本巻きですが、数十人単位の子ども達1人1人に手渡すとなると、やはり気になるのがご予算ですよね。
さらに色の展開も豊富ですから、クラスごとに色を変えて注文したり、男の子と女の子で色を変えたりといったオーダーも多くあります。
まとめ
今回は、春の香りのひとつでもあるスイートピーについて、品種や花色、切り花のお手入れ方法や、おしゃれな飾り方などをご紹介してきました。
甘い香りと共にやってくるスイートピーを店頭で見かけると、やっと春が来るんだなと嬉しくなってしまいますね。
ふわりとした花びらはとても繊細で、眺めているだけでやさしい気持ちになれます。
切り花のスイートピーは、茎をまっすぐにカットして、浅めの水に生け、湿気や乾燥を避けた風通しの良い場所に飾ると長持ちしてくれます。
湿気が苦手なお花なので、雨天当日やその前後には購入を控えると良いでしょう。
春らしいスイートピーを、良い香りと共にお家に飾って長く楽しんでくださいね。