秋の七草の種類|由来や覚え方、花言葉は?

皆さんは、「秋の七草」を7種類すべて挙げられるでしょうか?

七草粥としておなじみの「春の七草」は覚えているけど、秋の七草はいまいちピンとこない……という方は多いかと思います。

今回は、そんな秋の七草について、7種類それぞれの特徴や花言葉、七草となった由来や覚え方などをご紹介していきます。

 

七草粥として有名な春の七草

春の七草は、季節になるとスーパーなどに食材として陳列されているので、なんとなく知っているという方も多いのではないでしょうか。

ちなみに春の七草とは、「セリ」「ナズナ」「ゴギョウ」「ハコベラ」「ホトケノザ」「スズナ」「スズシロ」の7種類を、無病息災を祈って七草粥として食べる風習です。

また、七草粥を食べる時期は、お正月の後ですから、年末年始で豪華な食事をたっぷりと食べて、お疲れの胃や内臓を労わるという意味合いもあります。

 

秋の七草には薬用効果がある

秋の七草とは下記の7種の草花です。

 

(1)オミナエシ

(2)ススキ

(3)キキョウ

(4)ナデシコ

(5)フジバカマ

(6)クズ

(7)ハギ

 

では、秋の七草も春の七草のようにお粥にしていただくのかといえば、実はそうではありません。秋の七草は食用としては不向きなものばかりです。

平安時代の貴族たちは、秋の七草が咲く頃に、花野を歩いて歌を詠み、季節の移ろいを感じていました。つまり秋の七草とは、自然の中に佇む美しい姿を楽しんで、情緒を感じるためのものです。この7種類は薬用効果があるという共通点を持っています。

 

秋の七草の由来

秋の七草は、万葉集にある山上憶良(やまのうえのおくら)という歌人の詠んだ、2首の歌に基づいています。

 

まず1首目は、

「秋の野に 咲たる花を 指折り(およびをり)かき数ふれば 七種(ななくさ)の花」

という五・七・五・七・七で詠まれた短歌で、「秋の野に咲いている花を指折り数えれば7種ある」という意味になります。

 

2首目では、1首目の歌で挙げた7種類の草花について詠んだ、

「萩の花 尾花 葛花 瞿麦の花 姫部志 また藤袴 朝貌の花」

という五・七・七・五・七・七の旋頭歌です。旋頭歌は、万葉集などによく見られ、五七七を2回繰り返した6句からなる和歌の形式になります。

 

2首目では旋頭歌のリズムに乗せて、「萩の花=ハギ」「尾花=ススキ」「葛花=クズ」「瞿麦の花=ナデシコ」「姫部志=オミナエシ」「藤袴=フジバカマ」「朝貌=キキョウ」の7種類の草花の名前を詠んでいます。

最後の「朝貌の花」はアサガオ、ヒルガオ、ムクゲなど他の花であるという説もありますが、最も有力な説ではキキョウだとされます。

 

秋の七草を覚えてみよう

春の七草はなんとなく覚えていても、秋の七草はなかなか名前が出てこない……という方も多いのではないでしょうか。続いては、秋の七草の覚えやすい暗記方法をご紹介します。

日本の秋を代表する7種類の草花をそらんじて、秋の訪れを肌や目で感じてみてはいかがでしょうか。

語呂合わせ

いちばんポピュラーで簡単な覚え方が、草花それぞれの頭文字を繋いだ語呂合わせで覚えるという方法です。

有名な語呂合わせでは、「おすきなふくは?(お好きな服は?)があります。

それぞれ、

  • お=オミナエシ
  • す=ススキ
  • き=キキョウ
  • な=ナデシコ
  • ふ=フジバカマ
  • く=クズ
  • は=ハギ

の頭文字をとっています。

 

やや現代的な新しい覚え方では、「はすきーなおふくろ(ハスキーなお袋)という斬新なものもあります。

それぞれ、

  • は=ハギ
  • す=ススキ
  • き=キキョウ
  • な=ナデシコ
  • お=オミナエシ
  • ふ=フジバカマ
  • く=クズ

の頭文字を並べています。

小さなお子様や学生さんなどは、「ハスキーなお袋」の覚え方のほうが楽しく覚えることができるかもしれませんね。

 

「5・7・5・7」に区切って覚える

続いてはリズムに合わせて覚える方法です。

旋頭歌の「萩の花 尾花 葛花 瞿麦の花 姫部志 また藤袴 朝貌の花」は、五・七・七・五・七・七のリズムで詠まれている歌ですが、これを「ハギ・キキョウ/クズ・フジバカマ/オミナエシ/オバナ・ナデシコ」の順番で、5文字・7文字・5文字・7文字に区切りよく並べて、「5・7・5・7」のリズムに乗せて覚えます。

リズムや調子をつけて何度も口ずさんでいると、歌詞のようにしてすんなりと覚えられますよ。

 

秋の七草と花言葉

続いては、7種類ある秋の七草について、それぞれの植物の特徴や名前の由来、花言葉などをひとつずつ詳しくご紹介していきましょう。

 

オミナエシ

科・属 オミナエシ科・オミナエシ属
和名 女郎花(おみなえし)、血目草(ちめぐさ)、粟花(あわばな)
英名 Golden lace, Scabious patrinia, Yellow patrinia
学名 Patrinia scabiosifolia
原産地 日本、中国、東シベリア
花言葉 「美人」「はかない恋」「親切」

漢字では「女郎花」と書くオミナエシは、女性を思い浮かべるような艶やかな姿が美しく、紫式部が愛でた花として源氏物語にも登場します。

大変見た目の美しいオミナエシなのですが、花からはちょっと独特な香りがして、かなり好みが分かれるお花です。その匂いは「腐った醤油」にも例えられますが、なぜ美しい花の姿からこのような匂いがするのかというと、受粉を手伝う虫としてハエを誘き寄せるためなのです。一般的に花が受粉を助けてもらう虫にはハチなどで、虫が好む甘い香りを漂わせて誘き寄せますが、オミナエシはハエを利用して受粉を行います。ハエが好む香りを漂わせるので、人にはあまり好まれていないのですね。

オミナエシの花名は、昔の日本での食生活に由来すると言われています。古くの日本では、男性がもち米のご飯を食べ、女性は粟ご飯を食べていました。白いもち米のご飯は「男飯(おとこめし)」、栗ご飯を「女飯(おみなめし)」と呼ばれており、この女飯という呼び方が徐々に変化していき、オミナエシになったのではないかという説が有力です。

男飯(おとこめし)が語源となり変化していった「男郎花(おとこえし)」という、オミナエシと対になるような白い花もあります。

 

ススキ 

科・属 イネ科・ススキ属
和名 薄・芒(すすき)、尾花(おばな)、萱・茅(かや)
英名 Silver grass, Eulalia
学名 Miscanthus sinensis
原産地 東アジア
花言葉 「活力」「生命力」「心が通じる」

川べりや草原などで秋風に吹かれてさやさやと揺れるススキは、お月見に飾る草としてもおなじみです。

由来となった歌では尾花(おばな)と読まれていますが、これはススキの穂が風に揺られてなびいている様子が、動物のしっぽ=尾のようであることが由来です。

尾花というと、「幽霊の正体見たり枯れ尾花」という例え言葉を耳にしたことはないでしょうか。これは、幽霊だと思って怖がっていた正体は枯れたススキの姿であったという意味で、恐怖や疑心を持って風景や物事を見ると、何てことのないものまで恐ろしく感じられる、もしくは恐ろしさを感じていても、正体が分かれば大したことはなかった、という例えです。この例えは、江戸時代の俳人である横井也有が詠んだ句だと言い伝えられています。

茅葺屋根の材料として使われていることから、「萱・茅(かや)」の和名もあります。

 

少し寂しげな印象のあるススキですが、生命力が大変強い植物なので、花言葉には「活力」「生命力」といったエネルギッシュな言葉が並びます。丈夫なススキはガーデナーに人気があり、特に海外ではオーナメンタルグラスとして高い人気があります。

ススキの特徴でもある銀色に光っている穂は芒(のぎ)という部分で、この芒が風に運ばれていくことで種が遠くへと飛んでいき、繁殖していきます。種以外に地下茎からも繁殖していく、繁殖力の強い植物です。

 

薬用としてのススキは利尿や解毒作用があるため、風邪などにも効果的です。ただしススキは、花粉症などのアレルゲン植物に含まれているため、イネ科系のアレルギー症状が出る方は、秋口にはあまり近づかないよう注意しましょう。

 

キキョウ 

科・属 キキョウ科・キキョウ属
和名 桔梗(ききょう)
英名 Balloon flower
学名 Platycodon grandiflorus
原産地 日本、中国、東アジア
花言葉 「永遠の愛」「変わらぬ愛」「気品」「誠実」

青紫色の趣のある花姿で、しとやかな存在感を放つのがキキョウです。七夕の頃にはもう咲いているので、花が星の形をしていることから七夕に飾る花としてもおなじみです。着物や浴衣の花柄として描かれることも多く、日本人にはなじみ深い花ですね。

薬用としてのキキョウは、去痰と排膿作用があり、喉の痛みを和らげる効果があります。

一重咲きがポピュラーですが、八重咲きのものも登場しており、花色も白や薄紅色などが楽しめます。分かれた茎先にいくつも花を咲かせるので、一輪だけ飾っても十分なボリュームがあります。

英名では「Balloon flower(バルーンフラワー)」とも呼ばれていますが、これはキキョウのつぼみが五角形にふんわりと膨らむため、その様子を紙風船に例えたことに由来しています。

 

ナデシコ 

科・属 ナデシコ科・ナデシコ属
和名 撫子(なでしこ)、大和撫子(やまとなでしこ)、常夏(とこなつ)、形見草(かたみぐさ)、日暮草(ひぐれぐさ)、懐草(なつかしぐさ)
英名 Dianths, Gillyflower
学名 Dianthus superbus
原産地 アジア、ヨーロッパ、北米、アフリカ
花言葉 「無邪気」「純愛」

約300品種以上も存在するといわれるナデシコは、一般的にはカワラナデシコを指しており、ナデシコとはナデシコ属の植物を総称する呼び方です。

実は、母の日のフラワーギフトとして有名な「カーネーション」の元になった花でもあります。

由来となった歌では「瞿麦(くばく)の花」と詠まれていましたが、これはナデシコの漢方名です。開花した状態のナデシコの、地上に出ている部分の全草を乾燥させると、生薬として使うことができます。

漢字では「撫子」と書きますが、これは「撫でて愛でたいかわいい子」という意味合いがあり、糸状の細やかな花びらが美しいナデシコは、かわいらしくはんなりとした女性を例える花としても有名です。

雅な女性を例える「大和撫子(やまとなでしこ)」とは、中国から持ち込まれた渡来種の「唐撫子(からなでしこ)」と区別するために、日本の在来種を「大和撫子」と呼んだことが始まりです。また、夏から秋にかけて長い期間咲いていることから、「常夏(とこなつ)」という呼ばれ方もされていました。

平安時代では「瞿麦合(なでしこあわせ)」という遊びがあり、貴族が左右に分かれて撫子の花の美しさと、歌を詠んで競うという、なんとも風流な遊びだったと言い伝えられています。

 

フジバカマ 

科・属 キク科・ヒヨドリバナ属
和名 藤袴(ふじばかま)、蘭草(らんそう)、香草(こうそう)
英名 Thoroughwort
学名 Eupatorium japonicum, Eupatorium fortunei
原産地 東アジア
花言葉 「あの日を思い出す」「躊躇」「ためらい」「遅れ」

フジバカマの細長い薄紫色の花が密集して咲く様子は、ふんわりとやさしげな綿のようでありながらも、どことなく線香花火を思わせます。

かつてフジバカマは大陸から持ち込まれた帰化植物として国内に自生していましたが、今では絶滅危惧種に指定され、野生のものはほとんど見られません。市場に流通しているのはヒヨドリバナなどと交配して誕生した雑種になります。

フジバカマの名前は、薄紫色の袴を纏った美しい少女が佇んでいた場所に、少女が着ていた袴と同じ色の花が咲いていたことから「藤袴」と名付けられたという説があります。

他にも和名では「蘭草(らんそう)」や「香草(こうそう)」とも呼ばれますが、これはフジバカマの葉から良い芳香がすることに由来します。葉が乾いていく途中がいちばん強く香るので、貴族たちはフジバカマの葉を乾燥させて、香り袋として衣に忍ばせ、桜餅のような甘い芳香を楽しんだと言い伝えられています。

甘く魅惑的な香りを放つフジバカマには多くの蝶が集まってきますが、中でもフジバカマの花の蜜を好むのは「アサギマダラ」という蝶です。

アサギマダラは2,000キロメートルもの距離を旅する蝶で、大きな翅には斑模様があり、涼しげな浅葱色をしています。美しい翅を持つアサギマダラを観察するために、フジバカマを植えている場所も多くあります。

 

クズ 

科・属 マメ科・クズ属
和名 葛(くず)、裏見草(うらみそう)
英名 kudzu
学名 Pueraria lobata
原産地 日本、中国、朝鮮半島
花言葉 「芯の強さ」「快活」

クズの葉の裏側には細かな毛が生えて白っぽく見えるので、「裏見草(うらみそう)」という別名もあったため、平安時代には「裏見」に「恨み」をかけた和歌が多く詠まれました。

雑草扱いされることが多いクズですが、山芋のように育った根からは「葛粉」が作られ、葛切りや葛餅といった和菓子にして食べられています。

薬用としても使われ、風邪のひきはじめに体の調子を整える「葛根湯」の原料でもあります。また、クズの繊維から作られた「葛布」という生地はとても丈夫で、耐久性が高い着物として仕立てられていました。人間の暮らしに寄り添い、役立ってきた植物なのですね。

 

ハギ 

科・属 マメ科・ハギ属
和名 萩(はぎ)
英名 Bush clover
学名 Lespedeza
原産地 北アメリカ
花言葉 「思案」「柔軟な精神」

草冠に秋と書く「萩」の漢字は、日本で創られた国字です。万葉集の中では、梅や松などの定番の樹木を抜いて、いちばん多く詠まれている植物になります。国内に自生するハギの中でも、いちばん有名な品種は「ミヤギノハギ」です。

 

マメ科のハギは、スイートピーなどのようなマメ科特有の蝶形花を咲かせます。色はやや赤みがかった紫色で、7月頃から咲き出します。

真夏になると少し花数が落ちて、涼しくなった秋口に満開となるお花です。満開のハギは、枝がたわむほどにたくさんの花が咲くので、とても見応えがありますよ。

ハギの呼び名は、古い株元から新しい芽が生えるので、「生え木(はえき)」という呼び名がだんだんと変化していったことが由来です。

 

まとめ

今回は、季節の移ろいや秋の訪れを感じるための、「秋の七草」について詳しくご紹介してきました。

食用としてお粥にする春の七草とは異なり、秋の七草は観賞用として挙げられている、日本の秋を代表する7種類の草花です。

秋は気温が涼しくなって散歩にもうってつけの気候ですから、かつての貴族がたしなんだように、秋の七草を愛でる散歩を楽しむのも素敵ですね。

 

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