秋に旬を迎える花たち|9・10・11月の月ごとにご紹介

「暑さ寒さも彼岸まで」と言われるように、ヒマワリが頭を垂れた頃には徐々に昼夜の気温差が感じられるようになり、秋がやってきます。

夏の眩しい日差しの下で元気に育つ植物も良いですが、涼しげな秋の風に吹かれながら静かに佇む植物たちも趣があって良いものです。

今回は、そんな秋に見ごろを迎える、秋が旬のお花たちをご紹介していきます。

9月から11月までを秋の区切りとして、旬の花を月ごとにお伝えしていきましょう。

 

秋の訪れ、9月が旬の花

夏と秋の境目である9月には、シンボルともいえる秋の訪れを告げる花たちが勢揃いしています。さっそくご紹介していきましょう。

 

ガウラ

科・属 アカバナ科・ガウラ属
和名 白蝶草(はくちょうそう)
英名 White gaura, Bee blossom
学名 Gaura lindheimeri
原産地 北アメリカ
花言葉 「負けず嫌い」「清楚」「行きずりの恋」「繊細な心」「我慢できない」「傷つけない」

ガウラは、5月から咲き出して10月頃まで咲く、開花期の長い花です。ひとつの花は3日ほどしか咲きませんが、どんどん新しい花が開いていくので、にぎやかな様子を長く楽しむことができますよ。

和名に「白蝶草(はくちょうそう)」とあるように、蝶に似た白い小花を穂のように咲かせます。4枚の白い花びらが上側に咲き、その中心から蕊(しべ)が長く伸びる様子は、空を優雅に羽ばたく白鳥の姿に見えます。花色は白以外にも、赤やピンク、複色などがあります。

花言葉の「負けず嫌い」「我慢できない」は、周りの草花に負けじと新しい花をたくさん咲かせていく様子から付けられたものだと言われています。

とても丈夫な性質を持つので、秋のお庭を彩る花としてもおすすめです。

キキョウ

科・属 キキョウ科・キキョウ属
和名 桔梗(ききょう)
英名 Balloon flower
学名 Platycodon grandiflorus
原産地 日本、中国、東アジア
花言葉 「永遠の愛」「変わらぬ愛」「気品」「誠実」

星形に見える青紫色の花を咲かせ、しとやかな姿に風情を感じるキキョウは、秋の七草のひとつでもあります。

花言葉の「気品」は、古来の日本では紫色が貴族や身分の高さを象徴する高貴な色であったことに由来します。他にも「永遠の愛」「変わらぬ愛」という素敵な花言葉がありますが、この花言葉には悲しい逸話があるのです。

ある若い女が、戦へと出兵した愛する夫を10年もの間、健気に待ち続けていました。いよいよ夫が帰還するという日に、女は宴の支度に取り掛かっていたところ、たまたま男性といる姿を見てしまった夫が、「妻は自分を忘れ、他の男性の元へいったのだ」と誤解します。

それを知った女は、夫への変わらぬ愛を証明しようと自害しました。後に誤解だと知った夫も妻を追い、夫婦共々命を落とすことになります。長きにわたって戦争で引き離され、すれ違ってしまった夫婦の愛の話から、「永遠の愛」「変わらぬ愛」の花言葉が託されたのだと言われています。

 

キキョウは「秋の七草」のひとつです。秋の七草について知りたい方は、こちらの記事も読んでみてください。

https://prrr.jp/note/tips/4733/

 

キンモクセイ

科・属 モクセイ科・モクセイ属
和名 金木犀(きんもくせい)、千里香(せんりこう)
英名 Fragrant orange
学名 Osmanthus fragrans var.aurantiacus
原産地 中国
花言葉 「謙虚」「初恋」

キンモクセイの甘い香りが漂いだすと、いよいよ本格的な秋を感じますよね。あちこちから運ばれてくる秋の香りに、散歩も楽しくなってしまう時期です。

秋といえば日本では台風シーズンとなり、雨模様の日が多くなります。雨上がりに歩いていると、昨日までにぎやかに咲いていたキンモクセイの花が散って、オレンジ色の絨毯ができている様子をよく見かけますよね。雨が降るとキンモクセイの小花はすぐに散ってしまいます。その散り方が潔いものと考えられ、「気高い人」の花言葉が付けられました。

また、遠くまで強く香りながらも、花自体は小さく控えめである様子から、「謙虚」という花言葉も持っています。

キンモクセイは常緑樹なので、きれいな花が散って冬になっても、その美しい葉を楽しむことができますよ。

 

ヒガンバナ 

科・属 ヒガンバナ科・ヒガンバナ属(リコリス属)
和名 彼岸花(ひがんばな)、曼殊沙華(まんじゅしゃげ)
英名 Red spider lily
学名 Lycoris radiata
原産地 中国
花言葉 「情熱」「思うはあなた一人」「また会う日を楽しみに」

情熱的な赤色の花を咲かせるヒガンバナは、漢字で「彼岸花」と書くように、彼岸の頃に咲きだす秋の花です。

球根植物のヒガンバナは、葉が出るよりも前に花茎を伸ばしていき、花を咲かせるのが特徴的な花です。国内ではあちこちに自生しており、一面が燃えるように赤く染まったヒガンバナ畑は、その鮮やかさに感嘆の声が漏れてしまう美しさです。

球根にアルカロイド系の毒性があり、お墓の近くに咲いている印象が強いことから「怖い」「不吉」といったイメージを持たれがちなヒガンバナですが、これには理由があります。

ヒガンバナ毒を摂取してしまうと中毒症状があらわれます。この性質を利用して、故人が安らかに眠る墓地や、大切に育てた作物のある畑を、ネズミやモグラなどに荒らされないようにするため多く植えられていたのです。

 

実りの季節、10月が旬の花

10月は実りの季節であり、食欲の秋でもあります。本格的に秋らしい気候となる季節ですね。コートの用意や衣替えを始めて、徐々に冬へと備えはじめる時期でもあります。

続いては、そんな10月に旬を迎える秋の花たちをご紹介していきましょう。

 

クジャクソウ 

科・属 キク科・シオン属
和名 孔雀草(くじゃくそう)、孔雀アスター、宿根アスター、木立紺菊(きだちこんぎく)
英名 Frost aster
学名 Aster
原産地 北アメリカ
花言葉 「いつも愉快」「ひとめぼれ」

クジャクソウは、長細い茎が多数に枝分かれしていき、その先にいくつも花を咲かせることから、全体的なシルエットを孔雀が羽を広げた様子に見立てたのが名前の由来です。

別名では「孔雀アスター」や「宿根アスター」とも呼ばれます。

孔雀アスターとして呼ばれているものは、園芸品種である「アスター・エリコイデス」「木立紺菊(きだちこんぎく)」と交配種などがメインです。

学名の「Aster(アスター)」とは、ギリシャ語で「星」を意味しており、花の咲き方が星のようであることに由来しています。

 

コスモス 

科・属 キク科・コスモス属
和名 秋桜(あきざくら)
英名 Cosmos
学名 Cosmos bipinnatus
原産地 メキシコ
花言葉 「調和」「乙女の純真」

夏を代表する花がヒマワリだとすると、秋を代表する花として多く名前が挙がるのはコスモスでしょうか。コスモスが秋風に揺れていると、少し物悲しい気持ちになるという方も多いかもしれませんね。

桜のような形の花を群生して秋に咲かせることから、和名では「秋桜」とも呼ばれています。ちなみに英名の「cosmos」は、ギリシャ語の「kosmos(美しい)」に由来しています。

群生しているコスモス畑などは、秋の観光スポットとしても人気です。生命力の強いお花で、環境に適応していればぐんぐん育っていきます。

コスモスには全体の花言葉以外にも色別の花言葉があり、白には「優美」「美麗」、赤には「乙女の愛情」、ピンクは「乙女の純潔」、黄色は「野生の美しさ 」があります。

 

ダイモンジソウ

科・属 ユキノシタ科・ ユキノシタ属
和名 大文字草(だいもんじそう)、岩蕗(いわぶき)、庭蕗(にわぶき)
英名 Saxifraga fortunei
学名 Saxifraga fortunei
原産地 日本、中国、朝鮮半島
花言葉 「恋の訪れ」「自由」「好意」「情熱」「 節度」

ダイモンジソウの花びらは5枚あり、そのうち2枚だけが長くなっていることから、「大」の漢字に見えるのが名前の由来です。広い地域に分布しており、主な自生地は山地の岩場などですが、園芸品種も豊富なのでガーデニング用として自宅でも育てられますよ。

 

サフラン 

科・属 アヤメ科・クロッカス属
和名 サフラン
英名 Saffron crocus
学名 Crocus sativus
原産地 地中海沿岸
花言葉 「喜び」「陽気」「歓喜」

サフランは、クロッカスに大変よく似た淡い紫色の花を咲かせます。草丈は10〜15cmと小さくまとまるので、花壇の前面やコンテナの縁取りなどにおすすめです。

原産地は地中海沿岸で、寒さには強いものの、暑さには弱い性質を持っています。水はけの悪い土壌が苦手なので、水やりのしすぎに注意。

初夏には地上部を枯らして休眠するので、掘り上げて涼しい場所で管理し、秋に植え直します。

花言葉である「節度の美」は、サフランを過度に使いすぎると危険なことがあると言われているため、それが由来になっています。

 

ミズヒキ 

科・属 タデ科・ミズヒキ属
和名 水引(みずひき)
英名 Jumpseed
学名 Persicaria filiformis
原産地 中国、日本
花言葉 「慶事」「祭礼」「感謝の気持ち」「寿」

「水引き」というと、のしの飾りやお正月の飾り紐を思い浮かべると思います。その名前のとおり、飾り紐である水引きに似ていることから名前が付けられました。

花序は細く小花をぽつぽつと咲かせるミズヒキは、主な花色は赤か白ですが、黄色い花を咲かせる「キンミズヒキ」や、白い花を咲かせる「ギンミズヒキ」もあります。紅白に金銀と縁起の良い花色が揃い踏みですね。ただし、キンミズヒキはバラ科の仲間ですので、タデ科のミズヒキとは別の植物です。

英名では「Jumpseed」と呼ばれることから分かるように、ミズヒキは驚異的な繁殖力を持ち、こぼれ種でどんどん増えていきます。動物などに付着して繁殖範囲を増やしていくので、予期せぬ場所からミズヒキが生えているときは、どこか遠くから運ばれてきたか、出かけ先などで服に付着した種を持ってきた可能性もあります。

 

リンドウ

科・属 リンドウ科・リンドウ属
和名 竜胆(りんどう)、疫病草・瘧草(えやみぐさ)
英名 Gentian
学名 Gentiana scabra
原産地 日本、中国
花言葉 「正義」「勝利」「高貴」「悲しんでいるあなたを愛する」

リンドウの花は、宮沢賢治の著作「銀河鉄道の夜」に、列車から見える景色として印象的な描写がされている花です。ジョバンニとカムパネルラが旅する不思議な道中に登場する花らしく、どことなく幻想的な雰囲気も感じられます。

漢字では「竜胆」と書きますが、これは中国での呼び方である「竜胆(リュウタン)」が元になっています。このリュウタンの呼び方がだんだんと変化して、「リンドウ」と呼ばれるようになったそうです。

古来では「疫病草(えやみぐさ)」とも呼ばれていましたが、これはリンドウの葉が疫病に効果のある薬草として使われていたことに由来します。

釣鐘状の花は深みのある落ち着いた青紫色で、しとやかな佇まいです。リンドウは「あなたの悲しみに寄り添う」という花言葉があるので、お悔やみのお花としても用いられてきました。

深みのあるシックな青紫色以外にも、薄い青や淡い紫、ピンクや白などの花色があります。花の色が違うと印象ががらりと変わるので新鮮ですよ。

 

冬はすぐそこ、11月が旬の花

冷たく風が吹く日が増え、コートやマフラーを着込み始める11月には、冬はもうすぐそこまで来ています。

そろそろ秋も終わりという頃に旬を迎える花には、どんな種類があるのでしょうか。代表的な11月の花たちを見てみましょう。

サザンカ

科・属 ツバキ科・ツバキ属(カメリア属)
和名 山茶花(さざんか)、岩花火(いわはなび)
英名 Sasanqua (camellia)
学名 Camellia sasanqua
原産地 日本
花言葉 「ひたむきさ」「困難に打ち勝つ」

生垣の植物としてもおなじみのサザンカは、漢字では「山茶花」と書きます。これは中国名が由来になっており、この名前が「山茶花(さんさか)」 から「茶山花(ささんか)」へと徐々に変化していき、サザンカの呼ばれ方になったという説もあります。

サザンカは葉の香りが大変良いのですが、害虫である毛虫のチャドクガがつきやすいので、触ったり香りを嗅いだりする際には注意してください。

万が一チャドクガの毛に触れてしまうと、夜も眠れないほどの激しい痒みと湿疹などの症状があらわれます。チャドクガがいない葉でも、残っている毛や脱皮した後の皮に触れるだけでも痒みなどの症状が引き起こされます。サザンカの葉に虫が食べたような痕が残っていたら、誤って触れることがないよう注意しましょう。

 

シクラメン 

科・属 サクラソウ科・シクラメン属
和名 篝火花(かがりびばな)、豚の饅頭(ぶたのまんじゅう)
英名 Cyclamen
学名 Cyclamen persicum
原産地 地中海沿岸
花言葉 「内気」「はにかみ」「清純」「絆」「愛情」「思いやり」

長く伸びた茎先にひとつずつ花を咲かせるシクラメンは、クリスマス前の生花店などで鉢植えをよく見かけるようになりますよね。

この花姿から、和名では「篝火花(かがりびばな)」とも呼ばれています。冬に向けてだんだんと花々が少なくなる中で、ぽっと火が灯るように咲く明るいシクラメンの花は、見かけると明るい気持ちになれるようです。

実は、シクラメンには「豚の饅頭(ぶたのまんじゅう)」という別名もあります。ちょっと悪く聞こえてしまうようなネーミングですが、これは英名の「sow bread(豚のパン)」が由来です。シクラメンの球根には、水分や養分がたっぷりと含まれていますが、この球根を掘り出して飼育している豚が食べていたことから付けられました。この英名が日本風に訳されて、パンが饅頭になってしまったため、聞くと驚く和名になったのです。

ツバキ

科・属 ツバキ科・ツバキ属
和名 椿、海柘榴(つばき)
英名 Camellia
学名 Camellia japonica
原産地 日本、中国、東南アジア
花言葉 「控えめな優しさ」「誇り」

常緑樹であるツバキは、どの季節でもつやつやとした光沢のある美しい葉を眺められるため、庭木として人気があります。日本原産であることから国内の環境に適していて育てやすく、耐陰性があるのも扱いやすいポイントです。

ただし、先ほどご紹介したサザンカ同様、ツバキ科の花にはチャドクガがつきやすいので、お世話の際には十分に注意して取り扱ってくださいね。

ツバキには「控えめな優しさ」「誇り」という奥ゆかしさを感じる花言葉がありますが、色別にも花言葉を持っています。赤は「気取らない優美さ」「謙虚な美徳」、ピンクは「控えめな美」「慎み深い」、白は「至上の愛らしさ」「完全なる美しさ」です。いずれも素敵な花言葉ばかりで、ツバキの持つ気高さや艶やかさが見事に表されています。

 

まとめ

今回は、秋に旬を迎える花について、月ごとに分けて見ごろの品種をご紹介してきました。

夏の花は暑さにも負けないようなエネルギッシュさを感じる花が多いですが、秋になると繊細な印象や落ち着いた佇まいのある花が増えていきます。

道端の花を眺めるよう意識すると、咲く花の姿や雰囲気からも季節の移ろいを感じられるようですね。

秋は過ごしやすい気温になり、散歩やレジャー、スポーツにも適している季節です。出かけ先ではぜひ咲いている花に目を向けてみて、秋らしさを視覚や嗅覚からも感じ取ってみましょう。

大切なあの人にお花を送ってみませんか?