金柑は初心者でも育てられる?おすすめの品種や植える時期などを紹介

金柑はビタミンカラーの明るいオレンジ色の実を付ける樹木です。果実を食して楽しむ他にも、昨今では観賞用としても人気があります。夏に爽やかな香りの白い花を咲かせ、果実は約半年後の2月頃から楽しめますよ。
金柑は比較的育成しやすい果樹ですが、初心者の方はどんな品種をチョイスすればいいのか迷ってしまうかもしれません。そこでこの記事では、育てやすい金柑の種類や植えるメリットや失敗しない育成のコツなど、必要な情報を詳しく説明していきます。ぜひ最後までご覧ください。
金柑ってどんな植物?
金柑はミカンの仲間で、一口サイズで皮ごと食べられる柑橘類です。樹高もそれほど高くないので、家庭でも気軽に育てられる植物と言えます。また夏に爽やかな香りが漂う白い花を咲かせるところも魅力です。
ここからは、金柑の基本情報や特徴などを詳しく解説します。
基本データ
科/属 | ミカン科/ミカン(キンカン)属 |
タイプ | 常緑低木/果樹 |
学名 | Fortunella(フォーチュネラ) |
英名 | Kumquat(カムクワット) |
和名 | 金柑(キンカン) |
別名 | 金橘(キンキツ)/姫橘(ヒメタチバナ) |
原産地 | 中国南部~マレー半島 |
樹高 | 100~300cmくらい |
耐寒性/耐暑性 | 普通/強い |
開花時期 | 6~8月頃/5~10月(四季咲き) |
収穫時期(果実) | 2~5月くらい |
用途 | 観賞用/薬用/食用 |
花言葉 | 感謝/思い出/希望 |
果実言葉 | 健康/健全 |
誕生花 | 1月29日 |
金柑は中国原産の植物で、渡来したのは江戸時代と言われています。
漢字で「金柑」と書くようになったのは、果実が黄色味を含んでおり、太陽の光に当たった際に金色に見えたことが由来だと言う説が有力です。
また中国では新しい年を迎えるのに、金柑の木を飾り、枝に「紅包(ホンパオ)」と呼ばれるご祝儀袋を下げる風習があります。これは日本で言うお年玉に当たるものです。
特徴
金柑の果実は直径2〜3cmで、酸味と甘みのバランスが良いのが特徴です。
収穫時期は1〜5月(最も盛んなのは2〜3月頃)で、ミカンと比較すると小粒で皮ごと食すことができます。またフレッシュな香りには「リモネン」という成分が含まれており、免疫力の向上や血行促進の効果があり、化粧品やアロマテラピーでも活用されています。
このような柑橘系の香りは気分をリフレッシュさせて元気にさせる効能もあり、老若男女問わず人気です。
花が咲くのは7〜10月くらいで、5枚の白い花びらを持ちミカンに似た芳香があります。
金柑の花言葉と由来
金柑の花言葉に秘められた意味は「思い出」「感謝」です。
金柑の「思い出」という花言葉の由来は、金柑は古くから喉の痛みや咳に効能があり、小さな頃に風邪をひいた際、金柑を食べたことを思い出すため、と言われています。
「感謝」に関しては、江戸時代末期に中国の船が難破した際に日本人がそれを助け、そのときに金柑の砂糖漬けが進上されたことから、「感謝」という花言葉が付けられたという説があります。
金柑を育てるメリット
ここではキンカンを育てるメリットを紹介します。その理由も詳しく説明しますので、金柑を育ててみたいと思っている方は参考にしてください。
耐寒性に優れている
キンカンは寒さに強く、-5度までなら耐えることができます。しかし、しっかりと熟した果実を実らすためには霜に当てない方が良いでしょう。
庭木として鑑賞するだけなら、かなり寒い地域でも越冬することが可能です。
氷点下が続く場所では鉢植えで育成して、霜が降りる前にベランダなどに移動させるのがおすすめです。
観賞価値がある
品種によっても異なりますが、金柑は年に数回花を咲かせます(5/8/10月頃)。そのため鑑賞価値が高いのもメリットなのです。彩りが少なくなった時期に、白く清潔感がある花を楽しめるのはうれしいポイントですね。
果実に栄養があり、美味しく食べられる
金柑の果実はそのまま食べることができます。しかも栄養価も高く、ジャムやジュースにすることも可能なのです。
ビタミン類も豊富に含まれているため、寒い時期の風邪予防にも大活躍します。
金柑を育てる際の注意点
金柑は明るい色の果実を付けるので、見る人の心を元気にしてくれます。ここではそんな金柑を育てる際の注意点について詳しく説明します。
トゲがある品種が存在する
金柑の中にはトゲがある品種があります。そのため、小さな子供やペットなどを飼っている方は注意する必要があるのです。
また剪定する際や収穫する際に思わぬ怪我をする懸念もあります。ただし、トゲのない種類も多いので心配な場合はショップの方に相談して選ぶようにしましょう。
実が成らないこともある
金柑を種から育成した場合、実が成るまでに7年以上かかると言われています。(接木苗は2~3年)
良い実を付けるためには、色々な条件が必要です。若い木では花が咲いても着果できない場合もあります。
金柑の育て方と気をつけるポイント
金柑はやや黄色味が強いオレンジ色の小さな果実が成る常緑低木です。冬から春にかけて一面に小さな実を付けると、驚くほどに庭が明るい雰囲気になります。
収穫した果実は、私たちに必要な栄養がたっぷりと含まれており、さまざまな料理にも活用できます。ではどうすれば失敗なく金柑を育てることが可能なのでしょうか。ここでは育成の秘訣を紹介します。
適した環境
金柑を栽培するのに適した気温は16度前後です。丈夫にしっかりと育てるためには、充分な日差しと剪定が必須になります。
耐寒性も強いですが、光を浴びることで果実も甘く美味しくなるのです。
地植えにする場合は、水はけが良く少なくても1日の半分以上日差しが当たる場所に植えてください。また、金柑は鉢植えで栽培することもできます。
植え付け
植え付けの適期は、3〜5月です。温暖な地域にお住まいであれば10月頃でも良いでしょう。-5度までの寒さには耐えられる金柑ですが、氷点下が続くと枯れてしまうこともあるため、冷涼地にお住まいであれば鉢植えがおすすめです。
次に植え付けの方法を説明します。
- 金柑を植える場所は通気性が良く日当たりが良好な場所が良いです。
(通気性が良い場所を見分けるには、雨の降った後に庭の様子を観察すればわかります。水はけが悪いと水溜りができやすくなるので、そういうエリアに植えるのは避けましょう)
- 植える場所が決まったら、深さ・広さ50cmくらいの穴を掘ってください。
- 掘り上げた土に腐葉土を混ぜましょう。(土に対して3分の1くらいの量が目安です)水はけが心配な場合は、もう少し深めに土を掘り、腐葉土を多めにすると良いでしょう。
- 次に穴に元肥(緩効性肥料)を入れ、土を少しだけ戻します。
- 根鉢を崩し、優しく根を広げるように植え付けます。
この時、深植えしないように、用土を調節して、接木部分が出るようにしてください。
- 最後に支柱を立て紐でしっかりと縛り、たっぷりと水を与えましょう。
※鉢植えの場合
金柑を鉢植えで育成する場合、大きめの鉢に植えて育てることもできます。しかし、はじめは苗のサイズに合った鉢をチョイスして、段々と大きくしていくのがおすすめです。
植え付ける際にはプランターの真ん中にくぼみを作り、苗木を植え付けてください。
このとき、深植えにならないように注意しましょう。
用土
金柑は水はけが良い土に植えると丈夫に育ちます。水はけが良い土とは具体的に言うと、余分な水が残らない土のことです。植物が処理できない水を排出することは、根が正常に呼吸するために大切なことなのです。
水はけを良くするためには、腐葉土を多めに混ぜたり、パーライトなどの排水性が良い資材を使用するのも良いでしょう。鉢植えの場合は市販の果樹専用の培養土が活用できます。
水やり
地植えの場合は水やりの必要はありません。鉢植えの場合は土の表面が乾いたら、あふれるくらい水を与えます。
乾燥には弱いので、必要に応じて夏は朝と夕方に水やりをしてください。
肥料
果実をたくさん付けるためには肥料が必須です。地植えの場合は、実が大きくなる晩秋(10〜11月頃)に追肥として液体肥料を与えてください。
また2月頃寒肥として緩効性肥料を施します。
鉢植えの場合は、2・5・10月を目安に緩効性肥料を施肥してください。
液体肥料の場合は、2週間に1度の割合で与えましょう。
剪定
剪定をする時期は3〜5月が適しています。枝が混み合って日当たりの邪魔になっている場合や、前年に実を付けた金柑は剪定するタイミングです。
混雑した枝は3分の1くらいにカットして、風通しと日当たりを良好にします。
トゲのある金柑がありますので、剪定をする際には充分に注意してください。
気になる場合は、トゲをカットしてしまっても生長に影響はありません。
摘果
摘果とは、未成熟の実を摘み取ることです。この作業を行うことによって、残してある果実に栄養を与え、株への負荷を減らすことができます。
収穫
金柑の収穫は花が咲いてから約150日後を目安としてください。熟した果実をそのまま放置すると、傷んでくるので注意しましょう。
この際たくさん収穫したいために、他の実が熟すのを待っていると株が弱ってしまいます。小さな実や傷が付いた実は、早めに切り取り負担を減らしてください。
金柑は実が成るまでに数年かかると言われています。したがって焦らずゆっくり育てるのがおすすめです。
注意する病害虫
金柑は病気になりにくいので、あまり心配する必要はありません。ただし通気性が悪く湿気が多くなると、カビが原因の病気にかかりやすくなるので注意しましょう。
植え替え
地植えの場合は植え替えの必要はありません。鉢植えの場合は、根詰まりを防ぐために2年に1回の植え替えがおすすめです。大きくしたい場合は、鉢のサイズをひと回り大きくしましょう。また植え替えの適期は3〜5月です。
金柑の種類
金柑には鑑賞することを目的に育てるものと、食用にできるものがあります。
したがって購入する際には、目的に合った金柑を選ぶことが大切です。
ここでは初心者の方でも楽しめる金柑の品種を、特徴なども含めて紹介していきます。
鑑賞用におすすめの金柑の種類
まずは、鑑賞用におすすめの金柑の種類を紹介します。
豆(マメ)金柑
中国〜台湾にかけて分布している金柑です。こちらは枝が細く鋭いトゲがあります。
果実は直径1cmほどと大変小さいため、生食には適していません。日本では盆栽などとして親しまれています。
長寿(チョウジュ)金柑
中国原産の金柑で別名では「福寿(フクジュ)キンカン」とも呼ばれています。果実は大きいのですが酸味が強いので生食には向かず、観賞用として用いられることが多いです。
鉢植え栽培におすすめの金柑の種類
次に、鉢植え栽培におすすめの金柑の種類を紹介します。
ぷちまる金柑
普通の金柑と比較するとやや小粒な「ぷちまる」は、鉢植えでも栽培しやすい品種です。種なしの金柑で、糖度も16度〜21度と高いのも魅力です。
寧波(ネイハ)金柑
育てやすいことから人気のネイハ金柑は、直径3cmほどの酸味の少ない果実を付ける品種です。病害虫にも強いので初心者の方にもおすすめですよ。
トゲの少ない金柑の種類
最後に、トゲの少ない金柑の品種を紹介します。
長実(ナガミ)金柑
果実は長方形をしており、枝にはトゲがほとんどありません。別名では「金橘(キンキツ)」とも呼ばれます。酸味が強いのが特徴です。
金柑の栄養素
金柑はミニサイズのミカンのような外見で、色々な楽しみ方ができる果物です。そして小さな実には私たちの体に必要な栄養がギュッと詰まっています。
ここでは、金柑に豊富に含まれる栄養素をチェックしていきましょう。
ビタミン類
金柑はビタミンB群・ビタミンC・βカロテンなどのビタミンを含有しています。
ビタミンの多くは体内では形成できないため、食品から摂取しなければいけません。
ちなみに、金柑には100g辺りにビタミンCが約49mg含まれています。この栄養素は強い抗酸化作用があることで知られており、生活習慣病のリスクを減少させる効果があると言われています。
ミネラル類
金柑にはカリウムやリン、カルシウムなどミネラル類もふんだんに含まれています。
これらの栄養素は血液や骨、また神経や筋肉などの維持に必要なものです。
カルシウムは100g辺りに約80mg含まれており、ミカンの約3倍もあります。
ヘスペリジン
ヘスペリジンは柑橘類の皮やスジに含まれている栄養素で、ポリフェノールの一種です。金柑は皮ごと食べることが可能なので、効率良く摂ることができますよ。
ヘスペリジンには高血圧を予防したり、血流を良くしたりする効果があると言われています。
金柑を使ったおすすめのレシピを紹介
金柑は皮ごと食べるのが一般的です。その理由は、果肉には酸味が強く皮に甘みや苦みがあるため、いっしょに食べた方が美味しいからです。
柑橘類は皮の部分にビタミン類が豊富に含まれているため、金柑は栄養を余すところなく頂ける果物と言えるでしょう。ここでは金柑を使ったおすすめのレシピを紹介します。
金柑ジャム
金柑をたくさん収穫したら金柑ジャムを作るのがおすすめです。
品種によって苦みや酸味が異なりますので、甘さは煮詰めながらお好みで調節してください。またジャムの日持ちは冷蔵庫で2週間くらいです。
材料として金柑250gに対して、水100㏄とレモン汁大さじ1、砂糖100〜150gを目安にしてください。
作り方
①金柑はヘタを取りきれいに水洗いします。
②鍋に金柑とたっぷりの水を入れて、火にかけて灰汁を取りましょう。
このとき必ず水の状態から茹でてください。数分経ち皮に亀裂が入ったら、金柑をザルにあげます。
③金柑を半分にカットして、種を取り除いてください。種をすべて取り除いたら、包丁で粗くカットしましょう。
④カットした金柑、砂糖、レモン汁を鍋に入れて中火でとろみがつくまで煮詰めます。
⑤煮沸消毒をした瓶などに入れたら出来上がりです。
完成したジャムはパンに塗る他にも、クッキー生地やパン生地に混ぜて焼いても美味しく頂けます。またヨーグルトにプラスしてもオシャレです。砂糖の代わりにハチミツを使うと、また違った味わいになりますよ。
金柑ジャムの冷凍保存方法
①ジャムは1回分ずつに分割して、ラップに包みます。
②アルミホイルに包み冷凍します。
③小分けにした金柑ジャムは、まとめてジップロックなどに入れて、しっかり空気を抜き冷凍しましょう。
フレッシュな状態で冷凍したジャムは、約半年〜1年くらい保存が可能です。
酸化を防ぐために、保存袋に入れる場合は必ず空気を抜いてください。
金柑を自宅で栽培してみよう
金柑は目で見て楽しむだけではなく、食用にしても栄養価が高い果実です。
実が成ったら、そのまま食べることもでき、ジャムを作ったりハチミツに漬けて長期保存することも可能です。
夏に可愛い花を咲かせ、春先に鮮やかな黄色の実をつける金柑を植えるだけで、季節を感じることができますよ。あなたもぜひ地植えや鉢植えにして、金柑を栽培してみてください。