デンドロビウムはどんな花?花言葉や基本の育て方、植え替え方法などを解説

節のある太い茎にたくさんの可憐な花を咲かせるデンドロビウム。その花姿はどこか胡蝶蘭を思わせる形をしており、上品な雰囲気を演出してくれます。

そんなデンドロビウムの原産地は外国ですが、品種改良が盛んに行われたことにより、日本の気候でも育てることが可能で、現在は非常に多くの品種が出回っています。

今回はデンドロビウムの魅力をはじめ、育て方を詳しくご紹介します。選び方やトラブルへの対処法なども解説していますので、ぜひ最後までご一読ください。

デンドロビウムとは

デンドロビウムとはどのような花なのか、まずは概要をご紹介します。

植物名 デンドロビウム(デンドロビューム)
学名 Dendrobium
科名 ラン科
属目 セッコク属(デンドロビウム属)
原産地 インド、ネパール、ブータン、ミャンマー、タイなど
開花期 2~4月
耐寒性 やや弱い
耐暑性 強い
代表的な品種 ノビル系、デンファレ系、フォーサム系、キングアナム系
花のサイズ 5~8cm
花の色 白、黄、ピンク、紫、赤など

デンドロビウムは、長く伸ばした茎のバルブと呼ばれる節目から短い花茎を伸ばし、その先に可憐な花をつける植物です。1本に複数の花を咲かせる姿はとても華やかで、ラン科の特徴の一つでもある長く花を楽しめるという魅力もあります。

花言葉

そんなデンドロビウムの持つ花言葉は、「天性の華を持つ」「わがままな美人」「思いやり」です。これは花全体の花言葉であり、花の色によっても別の花言葉を持っています。

ご自身で育てる場合はもちろん、大切な方へのギフトにする場合も、花言葉からデンドロビウムを選ぶと素敵ですよね。一部ではありますが、以下にいくつか例を紹介しておきます。

花の色 花言葉
純粋な愛、誘惑に負けない
友達
ピンク 誘惑、官能
愛と美、歓び
情熱と欲望、強烈な愛の願望

歴史

デンドロビウムは、日本でも身近に感じられる花の一つとして多くの品種が流通していますが、もともとはヒマラヤ山脈に自生していた植物です。その歴史をたどると、原種を採取して持ち帰ったとされるのは18世紀の後半頃とされています。ヨーロッパ貴族の間で栽培が始まり、交配によってさまざまな品種が誕生しました。

日本に入ってきたのは明治時代初期です。昭和に入ってからは日本各地で本格的な品種改良が始まり、現在ではさまざまな品種があるのです。

デンドロビウムの育て方

品種改良が盛んに行われてきた歴史を持つデンドロビウムは、日本の気候でも元気に育てることが可能です。もちろん簡単に育つわけではありませんが、以下に取り上げるポイントを押さえておけば、初心者でも毎年きれいな花を楽しむことができますよ。

  • 置き場所と日当たりの管理
  • 水やりと湿度管理
  • 適切な温度管理と換気
  • 適切な肥料の与え方
  • 花がら摘みと茎の管理
  • 休眠期の管理方法

それぞれのポイントについてみていきましょう。

置き場所と日当たりの管理

デンドロビウムは、日の当たる時間を長くすればするほどよく開花する特性を持っています。そのため、置き場所は1日を通してしっかり日の当たる「屋外」を選ぶことが一つのポイントです。開花期間は春から秋の間です。長く日が当たる場所に鉢を置いてあげるようにしてください。この間、雨が降る場合は雨ざらしにならないよう軒下に移動すること、直射日光があたる真夏は40%程度遮光できるネットを被せることに注意してください。

気温が下がる冬の季節には、置き場所を「屋内」に移動させます。デンドロビウムは耐寒性があるものの、寒すぎる環境に長く置くのはよくないため、室内の日当たりのよい場所に移動させてあげましょう。タイミングについては以下の温度管理の項目で紹介していきます。

水やりと湿度管理

デンドロビウムの水やりは、基本的に鉢の中の植え込み材料が乾いたタイミングで行います。水の量は、鉢の下から与えた水が流れ出てくる程たっぷりと与えてください。

初夏から9月にかけては気温が高く、生育が盛んになるため、水分不足に陥らないように注意が必要です。朝に与えても昼にはカラカラになってしまうこともあるので、デンドロビウムの状態をよく観察し、植え込み材料がやや湿っていても水をたっぷりと与えましょう。

9月以降は徐々に水やり頻度を減らしていきます。10月は3~5日に1回、11月以降の夜の気温が10℃以下になる季節には7~10日に1回の頻度となるように調節していきましょう。鉢の中が湿ったままの状態で10℃以下の環境に置かれると根が傷んでしまい、翌年に花を咲かせなくなるので注意してください。蕾ができる春頃までは、鉢の中の湿度が低くなるよう乾燥気味に育てることがポイントです。

その後、春になり、花を咲かせる時期のデンドロビウムは十分量の水を必要とします。そのため、水やりを再開し、1日に1~2回の頻度でたっぷりと与えましょう。

適切な温度管理と換気

気温に関しては、上は40℃、下は2~3℃でも耐えることができ、すぐに枯れる心配はありません。この特徴から、春から秋にかけて屋外に置いても、温度管理に慌てることはないでしょう。

注意が必要なのは、夜の気温がグッと下がる冬の温度管理です。低い気温の中に置き続けると、鉢の中の水分が凍ったり霜がついたりしてしまい、株が弱ってしまいます。そのため冬の間は屋内に取り入れる必要があるのですが、夜間が冷えるようになったからと慌てて取り込むのも好ましくありません。デンドロビウムは5℃に近い温度をしっかり体験させることでよく花芽をつけるとされているため、10~20日は寒さに当ててあげましょう。

また、デンドロビウムは湿気を苦手とするため、室内に移動させてからは特に風通しに注意し、換気を心がけることが重要です。サーキュレーターを使って風を流してあげるのもおすすめです。

適切な肥料の与え方

肥料は、4月~7月末の間にのみ与えます。置き肥は月に1回ほど、鉢のヘリに規定量を置いてあげましょう。同時に、液体肥料は週に1回ほど、規定量を施します。

8月に入ったらこれらの肥料は与えません。置き肥しているものは取り除きましょう。肥料を与え続けると花付きが悪くなるので注意してください。

花がら摘みと茎の管理

デンドロビウムの花に関して、注意点が一つあります。それは、開花したあとのしぼんだ花を摘まみ取ることです。また、半分以上の花が咲き終わった時点で、すべての花茎をバルブぎりぎりの位置で切り落とす作業も行う必要があります。

これは、翌年も花を咲かせる元気な株を維持するための必須管理ですので、よく覚えておきましょう。そして花芽がなくなった茎の管理ですが、不格好ではありますが、中には栄養が蓄えられているためそのまま放置します。いずれシワシワになるので、その際に根元で切り取ってください。

休眠期の管理方法

デンドロビウムの休眠期は秋から冬にかけてです。水やりや肥料の与え方などで紹介してきた通り、休眠期に関しては水やりは控えて乾燥気味に育てます。また、肥料は与えません。置き場所は室内の日差しが差し込む明るい場所を選び、換気やサーキュレーターを使って風を流してあげる点も忘れないようにしてください。

デンドロビウムの植え替え方法

デンドロビウムは、成長による根詰まりを防ぎ、株をより丈夫にするために、2年に1回のペースで植え替えが必要です。以下に手順を紹介しますので、参考にして植え替えを行ってください。

  1. 株の根元をつかんで鉢から取り出す
  2. 新聞紙などの上に置き、白っぽくなるまで根を乾燥させる
  3. 根をほぐしながら、植え込み材をやさしく取り除く
  4. 変色している根や、すかすかの根、糸状の根を取り除く
  5. ひと回り大きな鉢を用意し、通気性を確保して適した用土で植える

加えて、植え替えの方法について「適した時期と適した用土」と「注意点」についても紹介しておきます。

植え替え時期と適した用土

植え替えを行うのに適した時期は、花が咲き終わって暖かくなる頃です。もし開花が遅くなっている場合は、咲き終わるのを待たずに花を切り、株の状態を落ち着かせて適期に植え替えられるようにしましょう。

用土に関しては、使用する鉢の素材と相性のよいものを選ぶことが大切です。例えば、化粧鉢やプラスチック鉢は通気性が悪いため、植えつけ材にはヤシガラを選びます。素焼き鉢は通気性に優れるため、ミズゴケ+発泡スチロールの組み合わせや、洋ラン用の培養土+鉢底ネットと底石の組み合わせを選ぶとよいでしょう。

植え替え時の注意点

植え替えを行ったあとは株の根が傷んで体力も落ちているため、2週間程度は静養させることが大切です。また、デンドロビウムは日光を好む植物ですが、植え替え直後は直射日光を避け、日陰やレースのカーテン越しのやわらかい光が当たる場所を選び、約1カ月間様子をみてあげましょう。

デンドロビウムの増やし方

デンドロビウムは、以下の2つの方法で増やすことができます。

  • 株分け
  • 挿し木

手順や注意点を紹介しますので、挑戦する際の参考にしてください。

株分け

デンドロビウムは、上手に育ててあげると株の横から次々に新芽を伸ばします。植え替えを繰り返しながら、たくさんの茎が出そろったときが株分けに適したタイミングです。植え替えに適した時期=株分けに適した時期を待ち、以下の手順で株分けに挑戦しましょう。

  1. 株の根元をつかんで鉢から取り出す
  2. 根を乾燥させて植え込み材を取り除く
  3. 傷んだ根を切り落とす
  4. 3本以上残るように株をハサミで切り分ける
  5. 適した大きさの鉢に植えつける
  6. 2週間は水やりを控え、1カ月間はやわらかい光が当たる場所で様子をみる

ちなみに、デンドロビウムは1株に3本以上の茎がある状態がベストとされるので、6本以上茎が出ている場合に株分けを検討するのがおすすめです。

挿し木

デンドロビウムは一つの特性として、花茎を付ける部分に「高芽」と呼ばれる新芽を出すことがあります。この高芽はデンドロビウムの小さな株ですので、ある程度茎と根が伸びてきたら取り除き、ミズゴケや用土に挿して育てることが可能です。

高めの取り除き方については、手で根元を持ってはがしても構いませんが、茎との接点にハサミを入れて切り取るとよいでしょう。高値は親株と違ってとても小さいので、植えつけるために小さな鉢を用意しておく点には注意してください。

デンドロビウムの選び方

デンドロビウムは身近な園芸店で手に入りやすい植物ですが、たくさんの株を目の当たりにすると「選び方」に悩むことが多いです。調子の悪い株を持ち帰ってしまうと、正しい方法で育てても思うように成長せず、満足に花を咲かせられないかもしれません。

そこで、ここからは初心者におすすめしたい品種をはじめ、購入時のポイントと注意点を紹介しておきます。

初心者向けのおすすめ品種

初心者向けのおすすめ品種は、ノビル系と呼ばれる品種です。この品種はデンドロビウムの中でも流通量の多い品種で、手に入りやすく丈夫で育てやすいのが特徴です。また、育てている方が多いため、情報を得やすいという魅力もあります。

ノビル系といっても以下に取り上げるように種類はさまざま。黄色や赤紫など、色とりどりの花を楽しむことができますよ。

名前 花の色
イエロー・ペニー マーチ 黄色
セカンドラブ トキメキ
セカンドラブ キラメキ 白/ピンク
スーパースター オリエント ピンク
コメットキング アカツキ 濃い赤紫
スター・サファイア ルビー 濃いピンク色

購入時のポイントと注意点

デンドロビウムの購入時のポイントをいくつか紹介しておきます。

  • 入荷して間もない新しい株を選ぶ
  • 茎にシワがなくハリとツヤがある
  • 茎が太っている
  • 茎の数が多い
  • 葉の緑が鮮やか

購入する際に花や蕾がついている場合は、水分不足に注意してください。開花時期のデンドロビウムは水を多く必要とするため、家に持ち帰ったあとは鉢の環境を確認し、すぐに適した状態に整えてあげましょう。

9月以降に購入する場合は、デンドロビウムが休眠期に入っているので、鉢の中が湿っている場合はまずポットから取り出し、日陰で乾燥させましょう。そのあと、適度な頻度で水やりを再開してください。

このように、購入したあとは、すぐにその時期に適した環境を整えてあげる点に注意してくださいね。

デンドロビウムのよくある問題と対処法

デンドロビウムは初心者でも育てやすい植物ですが、状況によっては思わぬトラブルが起きることがあります。以下に、デンドロビウムによくある問題と原因、対処法をご紹介します。

病気の予防と初期症状の見分け方

デンドロビウムがかかる可能性がある病気は以下の3つです。

  • 灰色かび病
  • 褐斑病
  • モザイク病

灰色かび病は花びらに褐色のはん点、褐斑病は葉に褐色のはん点がでる病気です。モザイク病は葉に黄色い模様がでます。

このうち、灰色かび病と褐斑病は、はん点を見つけた時点で早急に患部を取り除くことで蔓延を防ぎ、株全体が病気におかされるのを防ぐことができます。モザイク病に関しては、ウイルスが原因なので防ぎようがありません。そのため、症状を見つけたら株ごと処分してしまいましょう。

害虫の防除と駆除方法

デンドロビウムにつきやすい害虫は、以下の3種類です。屋外で育てる期間が長いため、つきやすい害虫を把握し、対処法を把握してくことがとても大切です。

  • アブラムシ
  • カイガラムシ
  • ナメクジ

このうち最も注意したい害虫はアブラムシです。ウイルス性の病気を媒介する虫なので、すぐに駆除をしないと株ごと処分することになってしまいます。薬を使いたくない場合は、ピンセットでつまみ取るか水で洗い流す方法を試してみてください。確実に駆除をする場合は、アブラムシを駆除できる薬を使用しましょう。

カイガラムシはブラシではき落とす、ナメクジはつまみ取るという方法で駆除できますが、薬を使用すれば駆除の手間を省くことができ、スピーディーにデンドロビウムを守ることができます。ご自身にとって好ましい方法で駆除や予防を試してみてください。

育て方の失敗例と改善策

デンドロビウムを育てるにあたって、起こりやすい失敗と原因をいくつか取り上げて紹介しておきますね。

失敗例 原因
高芽ができる 肥料や水の与えすぎ、害虫に新芽を食べられている
花が咲かない 水の与えすぎによる根腐れ

低温にしっかり当てていない

蕾が黄変して枯れる 極度の乾燥を経験させている

強い日光を浴びすぎている

花が小さく色も好ましくない 湿度や温度の管理が適切ではない
新しい茎が出てこない 鉢に育つための十分なスペースがない

これらの失敗例は、基本的な育て方を実践できていれば、大抵の場合改善が可能です。ここで取り上げた失敗例と原因を参考に、育て方を振り返ってデンドロビウムの元気を取り戻してあげましょう。

デンドロビウムを長く楽しむためのお手入れ方法

デンドロビウムは多年草で、長く楽しめる植物です。毎年花を楽しめるのはもちろん、株分けによって鉢を増やしていくこともできます。

このように聞くと魅力的に感じるものですが、生き物なので上手に育ててあげないと長く楽しむことはできません。そこで、デンドロビウムを育てる際に知っておきたいお手入れ方法を2つ紹介しておきます。

  • 花後の管理と来年の花づくり
  • 冬越しの方法と注意点

それぞれについてみていきましょう。

花後の管理と来年の花づくり

デンドロビウムは、花がら摘みといって咲き終わった花を摘み取る作業を行わなければいけません。というのも、自然に落ちるのを待つとかびが生えやすくなり病気の原因になるほか、種ができて株が弱る可能性があるためです。花びらが薄くなり、表面に脈のような線が見えてきた頃を目安に、摘み取ってしまいましょう。

また、来年も花芽がつきやすくなるように、半分以上の花が終わった段階で花芽をすべて切り取る作業も忘れないようにしましょう。花や葉がなくなった茎は不格好ですが、栄養が蓄えられているため、切らずにシワシワになるまで(2~3年)残しておいてください。

冬越しの方法と注意点

デンドロビウムの冬越しは、水やり頻度を少なくし、乾燥気味にしてあげることが大切です。秋の10月以降は休眠期に入るため、水やりは3~5日に1回、11月以降は7~10日に1回の頻度で構いません。

また、上記の育て方でも紹介した通り、デンドロビウムが花芽をつけるためには、冬の寒い気温に一定期間さらす必要があります。具体的には、11月~12月にかけて、5~10℃の気温を10~20日間体験させるとよいでしょう。

これらは上記の育て方でも紹介していますが、デンドロビウムを長く楽しむための重要なポイントとなるので、よく覚えておくようにしてください。

まとめ

デンドロビウムは洋ランの仲間で、胡蝶蘭のような、形の整った美しい花を楽しませてくれます。非常に多くの品種が流通しており、白や黄色、濃い赤紫など、さまざまな花色のデンドロビウムを選んで育てることが可能です。

大きな魅力は、初心者でも育てやすく、多年草で長く楽しめることです。コツさえ押さえれば、毎年デンドロビウムが咲き誇る素敵な空間づくりができますよ。

ここで紹介した選び方を参考に元気なデンドロビウムを迎え入れ、花を楽しむだけでなく、株分けなども試して栽培を楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

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