胡蝶蘭の防寒対策。無事に越冬させるためには?

生命力が強く、育てやすいことで知られる胡蝶蘭ですが、冬の寒さは苦手とするお花です。
日本の冬は氷点下を切ることもありますから、寒さに弱い胡蝶蘭には過酷な季節と言えるでしょう。
今回は、胡蝶蘭が無事に冬を越すために必要な、防寒対策についてご紹介します。
きちんと防寒をして、胡蝶蘭が春を迎えられる手助けをしましょう。
胡蝶蘭の特徴から知ろう
まずは、胡蝶蘭がなぜ寒さに弱いのかというところから知っていきましょう。
お花や観葉植物を育てるうえでは、その植物の特徴を理解することが大切です。
胡蝶蘭本来の生育環境を知れば、日々のお世話や管理にも役立ちますよ。
それでは、胡蝶蘭の基本情報や原産地、特徴などを見ていきましょう。
胡蝶蘭の基本情報
和名 | 胡蝶蘭 |
科目 | ラン科 |
属性 | ファレノプシス属 |
英名 | Phalaenopsis, Moth Orchid |
学名 | Phalaenopsis aphrodite |
原産地 | 東南アジア |
耐暑性 | 強い |
耐寒性 | 弱い |
花色 | 白、ピンク、黄、紫、青、複色 |
熱帯地方原産の胡蝶蘭
胡蝶蘭は、熱帯地方で発見されたラン科の植物です。
発見された原種は、今のような純白色ではなく、茶色い花色でした。
長い時間をかけて行なわれた品種改良や交配により、現在の定番カラーである美しい白や、花径のバリエーションも豊かになったのです。
自生している胡蝶蘭は、東南アジアを中心とする熱帯地域で育つ植物ですので、暑さには強いのですが耐寒性はありません。
数字の目安とすると、気温では15~25℃、湿度は60~80%が胡蝶蘭が快適な環境と言われます。湿り気のある暖かい土地が胡蝶蘭の故郷ですから、低温と乾燥には弱いですね。
ただし暑さに強いとは言えども、直射日光のような強い光は苦手です。うっすらと木漏れ日が差すようなやわらかい日差しの半日陰の場所を好みます。
日本において胡蝶蘭の本来の開花期は4~5月頃ですが、温室栽培での生育がほとんどですので、通年開花した状態で入手できます。
他のラン科の植物と比べても花期が長いのが特徴で、1~3ヶ月は開花を楽しめます。
着生植物である胡蝶蘭
鉢植え姿が馴染み深い胡蝶蘭ですが、土に根付かない「着生植物」であることをご存知でしょうか。
着生植物とは、土に根を下ろさず、他の木や岩の肌に根付いて育つ植物です。
間違われやすいものに寄生植物がありますが、着生植物は寄生植物とは異なり、他の植物に寄生して養分を奪うことはありません。
胡蝶蘭の特徴でもある独特な根は、土に根付かない胡蝶蘭が、空気中などから少しでも水分を確保して、少ない養分でも生き延びられるよう発達した形です。
葉が肉厚であるのも、取り入れた水分や養分を蓄えておくためだとされます。
胡蝶蘭が生まれたときには、周りは他の植物たちで埋め尽くされ、育つスペースがないような環境でした。
しかし胡蝶蘭は、他の植物の栄養や育つ場所を奪うことなく、他の木や岩などの肌に着生して、自身を過酷な環境でも育つよう適用させていったのです。
繊細で育てにくそうに感じる胡蝶蘭ですが、実は過酷な環境下を生き延びてきたパワフルなお花なのです。
そんな生命力の強さを持つ胡蝶蘭の寿命は、長くて50年以上にもなるので驚きですよね。
胡蝶蘭を越冬させるには?
さて、胡蝶蘭が見た目にそぐわぬパワフルさを持ち合わせている植物だということが分かりました。
植物の生態や適した環境が分かってくると、越冬に必要な条件がおのずと見えてきますよね。胡蝶蘭の越冬を成功させるためには、温度・湿度・通気性が重要ということになります。主なポイントは3つです。
- 胡蝶蘭の周囲の気温を10℃以上に保つ
- 胡蝶蘭の周囲の湿度を50%以上に保つ
- 根腐れ防止のため乾燥気味に保つ
この3つのポイントを守れば、胡蝶蘭は冬を越しやすくなります。
胡蝶蘭にとっては日本の冬の寒さは大敵ですが、少しでも過ごしやすい環境づくりをして、一緒に暖かい春を迎えられるといいですね。
それではさっそく、温度・湿度・水やりの頻度について、詳しく見ていきましょう。
①温度管理
胡蝶蘭にとっての快適な温度は15~25℃だと先述しましたが、これは人間にとっても快適な温度だと言えるでしょう。
人間もそのくらいの気温であれば動きやすいですし、お出掛けしたり散歩したりと、アクティブな気持ちになれますよね。人間の過ごしやすい環境や温度は、胡蝶蘭にも過ごしやすい環境です。
寒さに関しては、5℃までは何とか耐えられますが、耐えられるとは頑張って耐えているということで、胡蝶蘭の株にはかなりの負荷がかかっています。
この負荷が長く続くと、株が凍傷に晒される危険性が高まるので、胡蝶蘭の鉢は、寒い冬場にはできるだけ暖かい室内に入れて管理することをおすすめします。
②湿度管理
湿り気のある土地で育った胡蝶蘭ですから、乾燥はいちばん苦手とします。
もともと日本の冬の乾燥する季節ですが、室内ではさらに暖房器具などを使うため、湿度がぐんぐん下がって乾燥してしまいますよね。
湿度を保つことは人間にとっても風邪の予防などに効果的で良いことです。
加湿器などを持っていれば、こまめに使って室内の保湿を心がけましょう。
もし加湿器がなければ、胡蝶蘭の近くに濡れタオルを干しておいたり、水を張った容器を置いたりするのも効果的です。
胡蝶蘭の鉢の周りに、霧吹きなどで空気中に水分を噴射するのも良いでしょう。
③水やりの頻度
胡蝶蘭の冬場の水やりは、春から秋と比べて乾燥気味に管理するのがキーポイントです。
とにかく水をあげすぎないことを念頭に置いてください。
冬以外の季節では、植え込み材が乾燥したのを確認してから水やりしていましたよね。
しかし冬場の胡蝶蘭においては、植え込み材の乾燥を確認してから、さらに2~3日後に水やりをする程度がちょうどいいでしょう。
また、冬季は水道水などが冷え切っているため、水やりの前に少し置いて、常温に戻してから水を与えてください。
冷たすぎる水を株に与えると、根が上手く水分を吸収できずに鉢内で長く滞ってしまいます。水やりがそこまで必要ない冬場には、いつまでも鉢内に水分があると、蒸れてしまい根腐れの原因にもなるのです。
胡蝶蘭の越冬前にしてはNGなこと
胡蝶蘭の本来の環境から考えると、日本の冬はとても厳しい季節だということが分かりましたね。
無事に冬を越すための3つのポイントについてご紹介してきました。
それにあわせて、胡蝶蘭を冬越しさせる前に控えておきたいポイントがあります。
厳しい冬を越えるためには、秋の終わりからは下記の点に注意しておくと、越冬できる可能性が上がります。
肥料を与えない
もともと胡蝶蘭は土を必要としない着生植物ですし、生命力が強いため、肥料がなくても充分に育ちます。
生長を助けるために、生育期の間に肥料を与えるのは良いですが、もし肥料を与えたままであれば冬を迎える前に必ず取り除いておきましょう。
株の生長が止まる休眠期にも肥料があるままだと、根が栄養過多を起こして根詰まりを起こしてしまいます。
根が詰まることで、結果的に根腐れに繋がり、株全体の健康に関わる致命的な状態にもなります。冬を迎える前には、胡蝶蘭に肥料を与えないよう注意しておいてください。
植え替えをしない
冬を迎える前に植え替えを行なうのが良くない理由としては、秋の終わり頃から胡蝶蘭の生育がほぼ止まってしまうためです。
植え替えは、植物にとってかなりの負担が掛かる作業にあたります。
生育期である春から秋の間が植え替えに適した時期であるのは、植え替えてから株が回復するまでに、充分なエネルギーが備わっている時期だからです。
胡蝶蘭が休眠期に入る冬の手前である、秋の終わり頃に植え替え作業をしてしまうと、すぐに休眠期に入ってしまうため、充分に回復するエネルギーが足りずに、株が弱ってしまう可能性があります。
冬を越させる前には、植え替え作業を行なわず、生育期が訪れる春から植え替えを行ないましょう。
冬の寒さから胡蝶蘭を守る
冬を迎える前に行うと良くないお手入れについてご紹介しました。
秋の終わり頃から、胡蝶蘭の負担となるような作業は避けて、冬に備えておく必要があります。
ここからは、胡蝶蘭を厳しい冬の寒さや乾燥から守る、効果的な防寒対策方法をご紹介します。
昼は窓際に、夜は部屋の奥に置く
冬季は、日中と夜間の温度差が大きく開きます。
日の入りが早まって日照時間が減ってしまうのも、光合成が重要な植物には影響するポイントです。
その対策として、気温が上がる日中は、直射日光を避けてレースカーテン越しやブラインド越しになる窓際に置いて管理して、冷え込む夜には窓際から部屋の奥や中央に移動させましょう。
そのまま窓際に置いておくと、窓から入り込む冷気で胡蝶蘭が冷え切ってしまいます。
寒くなる廊下なども避けて、窓から離れた部屋の奥や中央などで管理すれば、温度差を少しでも縮められるでしょう。
段ボールや毛布で保温する
就寝時には、乾燥するため暖房器具などを切って眠る人も多いと思います。
あまりに冷える夜中には、部屋の中央などに移動させたとしても、室内の気温が10℃を切ってしまう可能性がり、低温に長く晒された胡蝶蘭の株は、凍傷を起こして枯れてしまう恐れがあるので、注意が必要です。
部屋が冷え込んでしまうお家では、眠る前に胡蝶蘭の鉢を段ボールや毛布で多い、防寒対策をしましょう。
鉢の上から衣装ケースを被せたり、ビニール袋で覆うのも有効な対策方法です。
ただし、密閉してしまうと植物の呼吸が苦しくなってしまうので、ある程度通気性を持たせてあげてくださいね。
温かい時間帯に葉水をかける
お花や観葉植物の葉の表面に、霧吹きなどで水を吹きかけることを「葉水」といいます。
乾燥しがちな冬場には葉水によって、胡蝶蘭に葉からも水分を吸収させてあげることがとても効果的です。
最低でも1日に1度、特に乾燥を感じる日には何度か葉水すると、胡蝶蘭は喜びます。
室内で暖房器具を使っていると、知らぬ間に湿度がぐっと下がってしまいますから、注意してあげてください。
また、エアコンなどの風が直接当たらない場所で管理することも非常に重要です。
エアコンの風は、胡蝶蘭の肉厚な葉などに蓄えている水分を、瞬時に奪っていきます。
暖かい場所に置くのはとても良いですが、風当たりに注意しましょう。
防寒しない選択もある
もしご自宅に床暖房がある、高気密・高断熱されているなどのお家でしたら、あえて防寒対策をしないという選択もあるでしょう。
胡蝶蘭は気温が7℃を切ると株に負担が掛かりますが、一日を通して室内の温度にあまり変化のないお家であれば、防寒対策をしないというのも手段でしょう。
ただし、これは夜間の最低室温をきちんと確認してから取るべき方法です。
また注意点として、花の数が減ってしまう可能性もあります。
胡蝶蘭は、日中と夜間の温度差によって生育が促進されていきます。
温室栽培している胡蝶蘭はこの温度差による性質を利用して、開花のタイミングを調節しているのです。
つまり、温度差があまり生じなければ枯れることはないのですが、生長が促進されることによって、花の数が少なくなってしまうということになります。
胡蝶蘭の越冬に失敗してしまったら
厳しい冬を何とか切り抜けた胡蝶蘭。
でも、様子がなんだかおかしい気がする……ということがあるでしょう。
もし胡蝶蘭に下記のような異常があれば、冬の寒さによる負荷が掛かってしまい、元気をなくしている可能性があります。
ですが、早めに適切な対処をしてあげれば、胡蝶蘭はきっと元気を取り戻します。
それぞれの対処方法についてご紹介するので、該当する症状がある場合には、試してみてくださいね。
葉がすべて落ちてしまったら
胡蝶蘭の葉がすべて落ちて、茎だけの寂しい姿になってしまった…
このような場合には、株が元気をなくして弱っている状態だと思われます。
まずは、株全体の状態を整えて、生育期に新芽が出るのを待ちましょう。
冬を越した3月には、水やりをストップします。葉が落ちた部分と、鉢内の植え込み材を乾燥させることがとにかく大切です。
そして、4月から5月にかけては、植え込み材だけを霧吹きなどで湿らせて、噴射した水分から徐々に水を取り込ませるようにします。
6月を迎えた頃に新芽が芽吹いていたら、きちんと株が回復してくれた状態です。
もしこの時点で回復が難しそうであれば、大変残念ではありますが、株の処分を検討する必要があるかもしれません。
次の冬に胡蝶蘭を越冬させるときには、この失敗を活かして充分な防寒対策を行ないましょう。
葉が萎びていたら
葉が萎びて元気がなかったり、しわしわになっていたりしたら、鉢内が過湿状態であり、上手に水分を吸い上げられていないかもしれません。
これは、冬の間に水を与え過ぎていたり、冷たい水を与えていたりするのが原因です。
根から充分に水分を吸収できず、葉まで届いていないため、根腐れの一歩手前の状態であることも考えられます。
まずは水やりをストップして、霧吹きなどで鉢の周りを湿らせましょう。
そして、ビニール袋などで鉢を覆い、暖かい室内で管理して保湿します。
1~2ヶ月はその状態をキープして、葉が健康的になり、色つやが戻ってくれば、回復してくれたサインです。
もし、その間にカビが生えてしまったり、鉢から腐臭がしたりといった異変があれば、鉢内で根腐れが起きています。
根腐れの対処法については、次で詳しくご説明します。
根腐れしていたら春に植え替えを
胡蝶蘭の植え替え目安は2年ごとですが、冬越しが上手くいかずに根腐れしているようでしたら、2年が経過していなくても植え替え作業を行なってください。
植え込み材に古い水苔を使っていると、カビの発生が進行する可能性もあります。
植え替えは、春を迎えた生育期に行なうのがベストですが、20℃以上を保てる暖かい室内であれば、適期以外に行なっても構いません。
それでは、胡蝶蘭の植え替え手順についてご説明していきます。
①根をほぐして剪定
胡蝶蘭の株を慎重に取り出し、根をやさしくほぐします。
寄せ植えの胡蝶蘭は1株ずつ分けて、古い植え込み材を取り除きましょう。
根を傷つけないよう慎重に広げ、黒い部分や傷んだ根はカットしていきます。
根が健康的な色をしていれば剪定不要です。
剪定作業時には、必ず消毒した切れ味の良い刃物でカットしてください。
根は大変デリケートな部分であり、健康な根が傷つき雑菌が繁殖すると、株が弱ってしまいます。
②植え込み材を入れて株を包む
鉢に鉢底石などを敷いたら、新しい植え込み材を入れます。
水苔などの植え込み材料は、湿らせて鉢の大きさに合わせましょう。
広げた水苔の上に根を被せ、植え込み材を整えます。
③植え替え後は乾燥気味に
植え替えてから10日~2週間ほどは、水やりをせずに管理します。
風通しが良く明るい日陰に置いて、新しい根の生育を助けるために養生させてください。
それ以降は、植え込み材の乾燥を確認してからの水やりを通常どおり行ないます。
まとめ
今回は、胡蝶蘭を越冬させるための防寒対策方法についてご紹介してきました。
近年の住居では密閉性が高まりましたが、熱帯地方が原産である胡蝶蘭にとっては、日本の冬は厳しいものです。
ですが、胡蝶蘭の持つ生命力の強さに、ほんの少し手助けをしてあげれば冬を無事に越すことができるでしょう。
冬の寒さを乗り越えて春先に花開く胡蝶蘭を見ると、さらに愛情が湧いてきますね。
胡蝶蘭と共に暖かい春を迎えられるよう、ご紹介した対策方法が参考になれば幸いです。