節分にまつわる植物は?節分飾りや行事の歴史
節分はいつ?と聞かれれば、皆さん「2月3日」と答えますよね。でもこの節分、実は1年に4回もあることをご存知でしょうか?
今回は、節分の歴史や年4回ある理由、そして最近ではなかなか見かけなくなってきた「節分飾り」に使われている節分の植物について、詳しくご紹介します。
節分と植物には深い関係がある
節分といえば、鬼退治の豆まきだけではなく、近年では恵方巻きを食べて福を呼び込むという習慣も定着していますよね。
一方で、近年では見られなくなってきたのが「節分飾り」です。
時代の移り変わりとともに家で飾る機会の減ってきた節分飾りには、節分にちなんだ植物が使われているので下記で詳しく紹介していきます。
そもそも節分とは
節分とは、「季節を分ける」という意味です。
日本には四季があるため、春・夏・秋・冬の年4回、立春・立夏・立秋・立冬の前日が季節を分ける節目になります。
節分と呼ばれる日は、各季節の最終日。そのため、実は季節ごとの年4回節分があるのです。
季節の終わりの日になると厄災や魔物がやってくると考えられているので、節分の日に厄除けを行なうのが行事の由来になります。
なぜ2月の節分だけが残ったのか
カレンダーやスケジュール帳をめくってみても、「節分」の文字は2月にしかありませんよね。
これは、時代の変化につれて、年4回の節分のうち立春の前日のみが残ったためなのです。
そのため、現在では2月3日の立春前日=節分となりました。
なぜ2月の節分だけが残ったのかというと、立春の前日は旧暦でいうところの、12月31日=大晦日になります。
来たるべき新年に向け、大みそかに厄除けをする行事として、2月3日の節分の日が残ったのです。
節分の日にちは変わることがある
冒頭でお話ししたように、皆さんは節分といえば2月3日と答えますよね。
しかし、2021年の節分は2月2日だったということを覚えていますか?
「今年は節分がずれたのか」とあっさり捉えてしまう方も多いかもしれませんが、節分の日が2月3日から2日にずれるのは、なんと124年ぶりに起きた珍しいことなのです。
それでは、なぜ2021年の節分の日は、3日からずれて2月2日になったのでしょうか。
先述のように、節分は立春の前日となります。
つまり、立春の日付が変わると、節分の日付もセットで変わっていきます。
2021年の節分が2月2日にずれて、124年ぶりに日付が変わった理由には、「うるう年」が関係しています。
うるう年と節分の関係
現在使われている暦は「グレゴリオ暦」です。
グレゴリオ暦は「太陽暦」とも呼ばれ、太陽の周りを地球が1周する時間を1年間=365日とカウントします。
しかし太陽の周りを1周するには、厳密には365日+約6時間かかるのだそうです。
この6時間分の調節のため、24時間÷6時間=4として、4年に一度「うるう年」が設けられています。
しかし、その6時間の誤差も、ぴったり6時間のずれではありません。
そのため、わずかなずれが積み重なっていき、立春が2月3日になったり、2月4日になったりと日にちが変わるのです。
節分の歴史
節分の日が近づくと、お店には豆や鬼のお面が並び出します。
学校給食で豆が出されたり、いろいろな具材の恵方巻が売り出されたりと、すっかりお馴染みの国民的な行事です。
次は、慣れ親しんだ節分の歴史について、詳しくご紹介していきましょう。
なぜ豆を撒くのか
節分では、豆を撒いて鬼を追い払います。
鬼を追い払うために使われる豆ですが、そもそも節分行事に豆を使う理由は、「魔滅=まめ」もしくは「魔目=まめ」という当て字をして、「目をめがけて豆を投げ魔を滅ぼす」という意味をもたせているためです。
節分に豆を撒いて鬼を追い払うのは、本来は中国の風習であり、日本には平安時代に伝わってきたものになります。
平安時代に宮中で行なわれていた行事が、今の節分の由来だと言われてるのです。
「年の数だけ豆を食べる」という風習も、もともとは中国で節分の日が「年取りの日」だとされていたことにちなみます。
中国の一部の地域では、この節分の日に年を取ると考えられていました。
節分で退治する「鬼」とは
鬼を追い払う節分ですが、この「鬼」とは、実は「鬼門(きもん)」という方角のことを指しています。
風水やインテリアに詳しい方は、鬼門と聞くとピンと来るかもしれませんね。
昔から、厄災や病気、飢饉などの恐ろしい事象を起こすのは、鬼の仕業であると考えられ、忌み嫌われていました。
鬼は北東の方角に棲んでいると考えられていたために、北東が「鬼門」となったのですね。
節分と昔話の「桃太郎」
さて、鬼が棲むと言われる北東は「鬼門」と呼ばれています。
一方で、対の位置にある反対方角の南西は「裏鬼門」と呼ばれています。
方角には12方位あり、そのそれぞれの方角に十二支が当てはめられています。
鬼門と対になる裏鬼門も南西には、戌(いぬ)・申(さる)・酉(とり)が配置されています。
さて、犬・猿・鳥と聞くと、とある昔話を思い出しませんか?
誰しも一度は聞いたことがある昔話、「犬猿雉を連れて鬼退治」で馴染み深い、桃太郎のお話です。
この桃太郎の物語、実は節分の話について小さな子どもにも伝えやすくするためにできた話だということをご存知でしょうか。
桃太郎が、犬・猿・雉の仲間たちを率いて鬼退治に向かう「鬼ヶ島」というのは、鬼門の方角にあります。
鬼門は、十二支を方角に当てはめたときに、丑(うし)・寅(とら)を示す方角です。
昔話などに出てくる鬼のコミカルなイメージといえば、頭に生えた角と虎柄のパンツ姿ですよね。
この鬼の定番ともいえるイメージ像は、それぞれ、「角=丑」「虎柄=寅」からイメージされた鬼の姿なのです。
さて、いったいなぜ鬼退治のお供が犬・猿・雉であったかについてですが、これは桃太郎の住んでいる村の位置に関係しています。
おじいさんおばあさん、そして桃太郎の住んでいる村は、南西、つまり裏鬼門にあるとされています。
その南西から時計回りに鬼門の方角へと向かっていくと、申(さる)・酉(とり)・戌(いぬ)の順の方角になるため、猿・雉・犬が鬼退治の仲間となったのです。
節分行事にまつわる植物
有名な昔話である桃太郎が、節分の由来を分かりやすく伝えるものだとは驚きでしたね。
桃太郎の話は多くの人が知っていますが、この事実を知る人はなかなかいないでしょう。
さて、節分の歴史や由来が分かったところで、次は節分にまつわる植物についてご紹介していきましょう。
節分の時期には、チャーミングな鬼のイラストと一緒に、ヒイラギの絵が描き添えられているのを見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。
節分の行事には、飾り物として「ヒイラギ」と「トベラ」という植物が使われています。
なぜこの植物が使われるようになったのか、その由来や植物の特徴、花言葉などをご紹介していきたいと思います。
ヒイラギ
科・属 | モクセイ科・モクセイ属 |
和名 | 柊(ひいらぎ) |
英名 | Chinese-holly |
学名 | Osmanthus heterophyllus |
原産地 | 東アジア |
ヒイラギは、モクセイ科・モクセイ属でキンモクセイの仲間です。
常緑高木ですので、一年を通して緑色の葉がきれいに茂っています。
秋の終わりから初冬にかけて花を咲かせるので、「木」と「冬」を組み合わせたことが「柊」の漢字の成り立ちだと言われています。
ヒイラギの呼び名は、尖ったぎざぎざの葉に触れると痛いため、ひりひり痛むことを意味する「疼ぐ(ひいらぐ)」が語源になったという説もあります。
ヒイラギの花言葉
ヒイラギは、キンモクセイの黄色い花を小さくしたような白い花を、花びらを反り返らせて咲かせます。
キンモクセイほど強く香りませんが、顔を近づけると優しくて甘い香りを楽しめますよ。
そんなヒイラギの花言葉には「用心深さ」と「先見の明」があります。
ギザギザした葉から、簡単には人を寄せ付けないような用心深さを思い浮かべたのでしょうか。
ヒイラギと西洋ヒイラギの違い
ヒイラギというと「ひいらぎかざろう」のクリスマスソングなど、クリスマスを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
クリスマスホーリーやイングリッシュホーリーとも呼ばれる、赤い実でお馴染みのヒイラギは「西洋ヒイラギ」という種類です。
クリスマス飾りにもよく使われる西洋ヒイラギですが、ヒイラギとは別の種類になります。
ヒイラギはモクセイ科でキンモクセイの仲間ですが、西洋ヒイラギはモチノキ科です。
ヒイラギの葉に形状が大変よく似ていたため、「西洋ヒイラギ」と名付けられました。
西洋ヒイラギもギザギザした葉を持っていますが、この尖りは生長につれて丸みを帯びていき、先がとがった卵のような形状の葉になるのです。
秋に開花するヒイラギとは異なり、西洋ヒイラギは春に花を咲かせるという違いもあります。
節分飾りの「柊鰯」
節分には、「柊鰯(ひいらぎいわし)」という飾り物があります。
これは、ヒイラギの枝に焼いたイワシの頭を刺して玄関に飾るもので、地域によっては「節分鰯」や「焼嗅(やいかがし)」とも呼ばれます。
なかなか怖い飾り物ですが、ヒイラギとイワシを使うのには理由があります。
まずヒイラギやマツの葉などのギザギザと尖っている葉には、厄除け効果があるとされています。
また、イワシを焼くとたくさんの煙が出てきますが、イワシを焼いた匂いは鬼が苦手な香りだと考えられているのです。
家中に鬼の嫌いな匂いを充満させることで、厄除けになるとも言われています。
一方、焼いたイワシの匂いで鬼をおびき出し、鬼の目をヒイラギの棘でつつくという説もあります。
イワシの名前には「弱し(よわし)」「卑し(いやし)」という語源もあるので、焼いたときに独特の匂いがするイワシを食べて、陰の気を消し去るという意味合いもあるようです。
柊鰯の作り方
柊鰯は簡単に作ることができます。
準備するものはヒイラギの枝と焼きイワシだけです。今年の節分は柊鰯を作ってみませんか?
①イワシを焼いて、身を美味しくいただいたら、頭の部分を取っておきます。
②イワシの頭を刺すので、刺しやすいように前もってヒイラギの枝の先にある葉を取り除いておきましょう。
③イワシの口、もしくは目からヒイラギの枝が出るように刺せば、節分飾りの完成です。
この独特とも言える風習は、平安時代に正月飾りとして、ヒイラギの枝にボラの頭を刺して、しめ縄に飾っていたことが由来していると言われます。
現代では、匂いの問題や見た目のインパクトからか、この節分飾りを見かけることは少なくなりました。
柊鰯を飾る期間
柊鰯は、基本的には節分から立春まで飾るのが一般的ですが、地域の風習によっては小正月の翌日に飾ることもあります。
飾りを外す時期もさまざまで、「節分の翌日まで」「2月が終わるまで」「ひな祭りまで」「カラスが持っていくまで」など、いろいろなケースがあります。
柊鰯の片付け方
厄除け飾りの柊鰯は、厄を祓ってくれる縁起物であるため、丁寧に片付けます。
本来は、神社へ持っていきお焚き上げをしていただき、燃やした灰を玄関前に盛り、玄関先に埋めるという方法がほとんどでした。
現在では住まいの関係もあり、灰を飾ったり埋めたりするのは難しいですよね。
現代的な暮らしにあわせた片付け方としては、外した柊鰯を塩で清め、半紙に包んで捨てるという方法があります。
神社へ行くことや、灰を盛るのが大変な場合には、こちらの方法で片付けるのがベターでしょう。
トベラ
ヒイラギほどポピュラーではありませんが、トベラも節分行事に使われる植物です。
科・属 | トベラ科・トベラ属 |
和名 | 扉(とべら) |
英名 | Japanese Cheesewood |
学名 | Pittosporum tobira |
原産地 | 日本、台湾 |
トベラの特徴は、何といっても光沢のある丸みのある葉です。
乾燥に強い丈夫な植物なので、海岸沿いや街路樹などに植えられる木でもあります。
漢字で「扉」と書くのは、節分の厄除け飾りとして、家の扉に飾られていたためです。
「扉の木」とも呼ばれており、「とびら」が訛って「トベラ」になったのではないかと言われています。
強烈な臭いがするトベラ
トベラの木からは、チーズのような強烈な臭いがすることがあります。
何もしていない状態では無臭なのですが、トベラの茎や葉が傷つくと、瞬く間に強い臭いが辺りへ広がるのです。
トベラは、葉や茎からだけ臭いを出し、花や実には臭いがありません。植物が臭いを放つ場合、大抵は鳥などの食害から身を守るためです。
おそらくトベラが臭いを放つ理由も、そうなのではないかと考えられています。
実際、鳥などが実を食べる際に、くちばしや足などで葉や茎を傷つけることで臭いが漂うため、トベラの実を好物とする鳥はほとんどいません。
この独特な匂いから、「Japanese Cheesewood(日本のチーズの木)」という英名が付けられました。
トベラの花言葉
トベラは、4〜6月頃に小さい星形の白い花をつけ、その花からはほのかな良い香りが漂います。
反り返った葉が花を包み込むようにしており、花を守っています。葉や茎の独特な匂いとは異なり、その花姿から「慈しみ」の花言葉が付けられました。
トベラには、実にも花言葉が付いており、こちらには「偏愛」があります。
花が終わると赤い実をつけますが、実は完熟しても無味無臭です。
中身は粘着質な成分でできているため、粘液のついた種が実をつついた鳥たちにくっついて運ばれていきます。
基本的には害虫に強いトベラですが、都会に自生するトベラは「トベラキジラミ」という虫がつきやすく、放っておくと大量発生に繋がってしまいます。
トベラの節分飾り
チーズのような強烈な臭いを放つトベラですが、火で燃やすことでも強く臭いが立ちこめます。
また、トベラの葉を燃やすと、バチバチと爆ぜるような大きな音を立てて燃えます。
この大きな音が鬼を脅かして祓ってくれるとして、トベラを燃やして強い臭いと音で鬼退治をする風習もあるのです。柊鰯と同様に、玄関扉に飾る節分飾りとなっています。
まとめ
今回は、節分にまつわる植物や、節分の歴史、飾り物についてご紹介してきました。
当たり前のように慣れ親しんできた節分行事ですが、実はこのような由来や風習があったのですね。
最近では、節分飾りは見かけなくなり、代わりに恵方巻という新しい風習が定着しつつありますが、昔からの風習に従って、節分飾りを玄関に飾ってみてはいかがでしょうか。