うさぎに似た見た目がチャーミング!ウチワサボテンの育て方や人気の種類
ウチワサボテンはサボテンの品種のひとつで、うちわのように平たい茎が特徴です。小さいうちは長い耳を持つうさぎのような形の可愛らしい姿をしています。そんなウチワサボテンですが、たくさんの種類があるんです。今回はウチワサボテンについて、種類や育て方、増やし方などを解説します。
ウチワサボテンはサボテンの品種のひとつで、うちわのように平たい茎が特徴です。小さいうちは長い耳を持つうさぎのような形の可愛らしい姿をしています。
多数の品種が存在するサボテンですが、ウチワサボテンの中でも多数の品種があり、食べられる食用の品種も存在しているんです。
ウチワサボテンはとても生命力の強いサボテンなので、育成方法は難しくありません。
初心者の方でも挑戦しやすいので、多肉植物を育ててみたいと思っている方はチャレンジしてみてくださいね。
今回は、ウチワサボテンの基本的な情報や育て方、人気の品種や増やし方などをご紹介していきます。
ウチワサボテンの基本情報
まずはウチワサボテンの基本情報について見てみましょう。
科・属 | サボテン科・ウチワサボテン亜科・オプンティア属 |
和名 | 団扇仙人掌(うちわさぼてん) |
英名 | Prickly pear |
学名 | Opuntia Mill |
原産地 | アメリカ、タイ、イスラエル |
ウチワサボテンの特徴
ウチワサボテンは、うちわのように平べったく広い茎を持っているサボテンです。
棘には細かい毛のような「刺座(しざ)」が付いています。
苗が小さいうちは、特徴的な平べったい茎がうさぎの耳のように見えて可愛らしく、そのチャーミングなフォルムがインテリアグリーンとして人気です。
ウチワサボテンの生命力は驚異的で、重機などの重い車体でウチワサボテンを潰しても、残った茎から再生するほどの繁殖力を持っています。
そのため、生物の多様性を脅かしてしまう、侵略的外来種のワースト100種にも選ばれてしまうほどです。
ウチワサボテンは食べられる!
ウチワサボテンの茎は栄養価が高く、メキシコなどでは食用としておなじみです。
茎は「ノパル」と呼ばれ、棘が生える前のウチワサボテンを収穫して、茹でたり焼いたりして野菜のように調理されます。
ノパルは野菜に例えるとサヤエンドウに似た味がするそうです。ミネラルやビタミンなどが豊富に含まれ、腸内環境の改善や免疫力の向上などの効果があります。
開花後に作られる実は「カクタスフルーツ」と呼ばれており、貴重な食材とされてきました。一般的なフルーツのように皮を剥いて生で食べることができます。
大きさは8センチほどにもなり、赤や黄色、黄緑色をしていて、味はスイカやナシに似ているそうです。カクタスフルーツには、カルシウムやカリウムが多く含まれています。
ウチワサボテンの花言葉
ウチワサボテンの株が大きく成長すると、赤、ピンク、イエローの愛らしい花を開花させます。夏から秋の間に、茎先に花をたくさん咲かせる姿は鮮やかで見応えがありますよ。
花びらはつやつやと光沢を持っていて、中にはロウバイにも似た透き通った蝋細工のような質感を持つ種類もあります。
そんなウチワサボテンの花言葉は、「燃える心」「枯れない愛」「暖かい心」「偉大」です。いずれも、乾燥地帯の環境下でも育つ強さやたくましさに由来している花言葉です。
サボテンの進化の歴史
多肉植物の代表格でもあるサボテンには200種類以上の属があり、茎の形状によって「コノハサボテン」「ウチワサボテン」「柱サボテン」「玉サボテン」の4種類に分けられます。
もともとのサボテンは、一般的な植物のような長い茎と葉を持っていました。これが「コノハサボテン」です。ぱっと見ただけではサボテンだと分かりにくいですが、よく見ると茎に「刺座」があります。
乾燥地帯で生きるコノハサボテンは、より水分を蓄えやすくするために、平たいうちわ型の「ウチワサボテン」へと進化を遂げました。
ウチワサボテンの棘には「返し」が付いているので、刺さるとなかなか抜けない厄介な棘になっています。これも、外敵から身を守るために発達した器官のひとつです。
平たいウチワサボテンの茎が厚みを持ったものが「柱サボテン」です。西部劇などの荒野で相対するガンマン達の側に生えているイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。
「サボテンの絵を描いてみて」と言われたら、多くの人が両手を上げているようなユニークな姿の柱サボテンを描くでしょう。
ウチワサボテンよりも茎に厚みがあることで、より多くの水分を蓄えておけるようになりました。さらに柱サボテンはさまざまな形状を持っており、茎の分岐も根元で分岐している種類と上部で分岐している種類があり、ほふく状に茎を伸ばしていく種類や、つるのように垂れ下がる種類もあります。
大きなものでは、生長すると10メートル以上になるものもあります。
ウチワサボテンの種類
さて、ウチワサボテンは食用としても親しまれているとお話ししましたが、食用と観賞用の2種類が存在します。
100円ショップやホームセンターなどの身近な場所でよく見かける品種や人気の種類などをご紹介していきますので、ウチワサボテン選びの参考にしてみてくださいね。
金烏帽子
「金烏帽子(きんえぼし)」は、別名では「金小判(きんこばん)」とも呼ばれており、ウチワサボテンの中でも最も有名な品種です。
親株から作られていく子株が、ウサギの耳のように2つ並んで生えてくるので、「ゴールデンバニー」というチャーミングな別名もあります。
全体的なフォルムが烏帽子(えぼし)に似ていて、棘が金色をしているのが最大の特徴です。この棘が赤いものは「赤烏帽子」、緑色のものは「緑烏帽子」と呼ばれています。
金烏帽子は、成長すると可愛らしい黄色い花を咲かせてくれます。
白桃扇
「白桃扇(はくとうせん)」は先述した金烏帽子の変異種です。
金烏帽子と同じく黄色い花を咲かせるのですが、棘は白色をしています。
和名では「象牙団扇(ぞうげうちわ)」の別名もあります。
棘がふわふわとした見た目なので柔らかい印象があり、サボテンらしい刺々しさがなくインテリアグリーンとして人気です。英名では「バニーカクタス」「バニーイヤーズ」とも呼ばれています。
大丸盆
「大丸盆(おおまるぼん)」は、「オプンティア・ロブスタ」の名前で多く流通しており、楕円形や円形の茎をたくさん生やしているのが特徴です。
「大きな丸い盆」という名前のとおりに、茎節の直径が30cmを超えるものが多く、草丈は1〜3メートルほどにも育つため存在感があります。
全体的に見て、茎の色がやや青みがかっているような、シルバー味のある緑色なので、「silver dollar(シルバーダラー)」の英名でも呼ばれています。他にも、「ホイールサボテン」「ノーパルタポン」の呼び方もあります。
仙人サボテン
「仙人サボテン」は「オプンチアストリクタ」の名前でも呼ばれており、とにかく繁殖力が強く、侵略的外来種のワースト100に入っている品種。日本でも要注意外来生物として指定されているサボテンになります。
仙人サボテンの実を食べた鳥によって種が運ばれていき、世界の各国に分布している品種です。
古来、仙人サボテンに寄生するカイガラムシから採取できる色素・コチニールを確保するために植えられていましたが、持ち前の生命力によって爆発的に繁殖してしまったそうです。
サボテンならではの枯れにくいという特徴を持ち、茎節が折れても折れた茎からどんどん増えていきます。
ノパル・トゥナ(食用)
「ノパル」とは、主にメキシコで食用として使われているウチワサボテンを総称する呼び名です。ノパルの中でも、さらに50種類ほどの食用品種があり、「ハルバ」「ミルバアルタ」などの品種が主に栽培されます。実を食べるウチワサボテンの品種は「トゥナ」という総称で呼ばれており、トゥナの中でも10種類ほどに分けられます。
ウチワサボテンの基本的な育て方
ウサギの耳のようなユニークな姿が人気のウチワサボテン。とても強い生命力を持っていて、初心者の方でも育てやすい植物だということが分かりましたね。
ウチワサボテンにはさまざまな種類があり、鑑賞価値の高いインテリアグリーン向けの品種もあります。さらに観賞用と食用の品種に分けられ、食用のものは茎と実を食べることができます。
そんな魅力たっぷりのウチワサボテンを育てるには、どんなお世話をしていけば良いのでしょうか。
続いては、ウチワサボテンの基本的な育て方やお手入れ方法について説明していきましょう。
苗の選び方
ウチワサボテンの苗を購入する際は、茎の形に歪みがなく、変色していない健康的な色の株を選びましょう。
また、株を軽く触ってみてぐらついておらず、根が丈夫でどっしりとしている株がおすすめです。
購入前には虫がついていないかどうか必ずチェックしてから購入してください。
土の選び方
ウチワサボテンをはじめ、サボテンを育てるうえでは、排水性に優れている土が欠かせません。土の配合などに慣れないうちは、市販されているサボテン用の土を使用すれば問題ありません。
自分で土を配合する場合には、排水性と通気性の良い配合で土を作りましょう。
川砂7:腐葉土2:くん炭1の配合や、赤玉土6:腐葉土2:川砂2の配合がおすすめです。緩効性肥料を混ぜ込んでも良いでしょう。
置き場所
ウチワサボテンは、日光が不足すると茎がひょろひょろと間伸びしてしまうので、十分に日光浴させるようにしましょう。日中家を留守にする時間が長い方は、庭やベランダなどで管理するのもおすすめです。
ただし、直射日光に当て過ぎてしまうと茎が「葉焼け」を起こします。
葉焼けとは、人間で例えるのなら肌が日焼けして色が変わっている状態ですが、植物にとってはかなり深刻です。葉焼けによって、光合成を行うための組織が破壊されてしまうので、葉焼けの範囲が広いと光合成によって得られるエネルギーが減少し、株全体の健康に関わるのです。
一度破壊された組織は再生しませんので、強すぎる日光に当たらないよう注意してくださいね。
置き場所の風通しが悪いと、病気や害虫が発生する原因となるので、できるだけ風通しのよい場所で管理しましょう。
水やり
ウチワサボテンの水やりは、土が乾いたらたっぷりと水やりをするのがポイントです。
生育期である5〜10月頃には、土が乾いたことを確認して鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと水を与えますが、夏の間は生長スピードが緩やかになりますので、水は少量で構いません。生長速度が落ちている期間に水を与えすぎると株が枯れてしまう恐れもありますので、加減に注意しましょう。
10月以降からはウチワサボテンが徐々に休眠期へ入っていきますので、水やりの頻度を徐々に減らしていきます。生育期と休眠期でメリハリのある水やりをするのが、お世話のポイントです。冬季はほとんど断水気味にして管理してもちょうど良いくらいです。
夏場の水やりは、気温の高い日中に行うと根がダメージを受けてしまうこともあるので、気温が下がった夕方から夜の間に行いましょう。
反対に冬場に水を与える場合には、なるべく暖かい日中に、常温に戻した水を与えてください。冬場は水道水がかなり冷たいので、そのまま与えてしまうと株が凍結してしまう恐れもあります。
冬越し
ウチワサボテンは暖かい地域で育つ植物なので、日本の寒さには弱いです。冬季は必ず室内で管理するようにしましょう。
温度の目安としては、ウチワサボテンの置き場所が5度以下にならないように注意して管理します。
秋以降、水やりの頻度を控えめにして育てていくことで、ウチワサボテンの耐寒性を高めて寒さに強い株になりますよ。
肥料
ウチワサボテンは、もともと養分の少ない過酷な環境下で育つ植物ですので、肥料がなくても丈夫に育ってくれます。もし肥料を与えたい場合には、夏を除いた生育期の間に与えてください。固形の緩効性肥料を与えて、株の成長を助けましょう。
休眠期を迎える冬季に肥料を与えると、養分過多によって株がダメージを受けてしまいますので、冬越しの前に置いてある肥料を取り除くことを忘れないようにしてください。
剪定(胴切り)
生長しすぎた株や、元気をなくしている株は、「胴切り」という剪定作業によって整えていきます。
植物にとって、剪定や植え替えといった作業は大きな負担になります。剪定後は株を回復させる十分なエネルギーが必要になりますので、ウチワサボテンの生育期前である3〜4月頃に剪定を行えるとベストです。
あまり湿度が高くなく、からりとよく晴れた午前中に作業を済ませましょう。
胴切りの手順はとても簡単で、カッターなどの清潔な刃物を用意して、野菜を切るような要領でウチワサボテンサボテンの胴をすっぱりと水平にカットするだけです。切断した茎の切り口はよく乾燥させておきましょう。
ウチワサボテンには棘がありますから、作業の際には厚い手袋などを着用して、怪我に注意して行ってくださいね。
植え替え
鉢植えで育てている植物は、2〜3年に1回ほど植え替え作業が必要になります。
これは、鉢内で根が生長しすぎて根詰まりを起こしてしまうのを防ぐためです。また、ずっと同じ土で育て続けていると土の養分が足りなくなってしまうので、新しく清潔な土に植え替えることで養分を補給するといった意味合いもあります。
ウチワサボテンの植え替えに適している時期は、剪定と同じく、生育期の前にあたる3〜4月頃です。
【植え替えの手順】
(1)植え替え前は水やりを1週間ほど控えて、鉢土を乾燥させておきます。
(2)株を取り出して根をやさしくほぐしながら、古い土を落としましょう。
(3)伸びている根を3分の2〜2分の1ほどカットします。傷んでいる根などもここで切り落とします。
(4)株を日陰に置きしばらく乾燥させてから、新しい鉢へと植え替えます。
(5)植え替え後は半日陰で管理して、10日〜1週間ほど経ってから水やりを始めましょう。
ウチワサボテンは「挿し木」で増やそう
ウチワサボテンなどの観葉植物は、枝や株を使って増やしていくことができます。
ウチワサボテンの場合は、子株を利用した「挿し木」の方法で増やすのがポピュラーです。繁殖力の強いウチワサボテンは挿し木の成功率が高いので、初心者の方でもチャレンジしやすいのがポイントです。
お世話に慣れてきたら、次は挿し木でウチワサボテンを増やしてみましょう。
【挿し木の手順】
(1)親株から、棘がきちんと生えている子株を切り取ります。
(2)子株を1週間〜10日ほど日影に置き、切り口を乾燥させましょう。
(3)乾燥させたら、植え付け用の清潔な土に、子株の切り口を挿します。
(4)2週間ほどで発根するので、それまで水やりを控えて管理します。
(5)子株がきちんと根付いて安定してきたら、親株と同じ管理方法に切り替えていきます。
まとめ
今回は、ウチワサボテンの特徴や品種、育て方やお世話のポイントについてご紹介してきました。
過酷な環境下で育ってきたウチワサボテンは、時として生態系を脅かす危険があるほどの繁殖力を持っています。
それほど生命力が強いということは、裏を返せば植物のお世話に不慣れな方が育てても枯らしてしまう心配が少ないということです。
挿し木で株を増やして、ウチワサボテンの育成をもっと楽しんでみてくださいね。