サボテンの接ぎ木を初心者でも簡単にできる方法とは

サボテンを育てていると園芸店などで様々なサボテンが販売されていることに気づきます。その中で別々の種類のサボテンがくっついている株を見かけたことはありませんか?これはサボテンの接ぎ木というものです。今回はサボテンの接ぎ木するメリットやどのような方法で接ぎ木をすることができるのかを中心にご紹介します。

 

サボテンの接ぎ木とは

サボテンの接ぎ木は別々の種類のサボテンと人の手でくっつけて、ひとつの個体にして栽培する方法です。園芸店などで下の部分と上の頭のような部分が明らかに別のサボテン、という株を見かけたことはありませんか。それは人の手により接ぎ木という方法で生み出された新しいサボテンなのです。全く別のサボテン同士をくっつけて栽培することができるなんて、驚かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

サボテンを接ぎ木する理由

ではなぜサボテンの接ぎ木をするのでしょうか。サボテンには色々な種類があり、成長がとてもゆっくりな種類や花を付けるようになるまでに何年もの年数を有する種類もあります。そのような種類のサボテンを接ぎ木によって生育を活性化することにより、花芽を付けるのが早くなったり、根が弱い種類でも成長が活発になるという特徴があります。また上級者の中には希少価値のある種類のサボテンを接ぎ木することによって、種子を採取する目的の方もいらっしゃるようです。また接ぎ木でしか生育できない緋牡丹という種類のサボテンも存在したりととても奥が深いです。さらに根腐れを起こして弱ってしまった個体を接ぎ木によって復活させる目的で挑戦される方もいるようです。

 

接ぎ木するメリット

サボテンを接ぎ木する一番のメリットを2つご紹介します。1つ目は自分だけのマイサボテンが作れることです。サボテンは観賞価値が高く育てていくと個性的な特徴が目立ってきます。自分のお気に入りのサボテン同士を接ぎ木することによって、自分だけのマイサボテンが誕生するなんてとても素敵ですよね。2つ目のメリットは生育が遅く栽培が難しい個体を接ぎ木することにより、個体によっては通常の倍以上のスピードで生育ができることです。普通のサボテン栽培で物足りなくなってしまった方にはぜひ挑戦していただきたいです。

サボテンの接ぎ木は自分でできる?

手順や細かい注意をすれば、どなたでも接ぎ木に挑戦することができます。接ぎ木の手順は順番にご紹介しますので、慣れないうちは焦らずゆっくりとやってみてください。細かな注意とはくっつけるサボテン同士の相性や、そもそも接ぎ木に向いているものとそうでない種類のサボテンがあります。サボテンの接ぎ木はとても奥が深いので、失敗しないためにも事前の準備はしっかりしたいものです。次からは接ぎ木が可能な種類や手順もご紹介していきますよ。

 

サボテンの接ぎ木には台木が重要

さっそく接ぎ木の準備をしてきます、サボテンの接ぎ木の下の部分を台木と呼び、上の部分を穂木と呼びます。台木は穂木に必要な水分や栄養分を、土から吸い上げてもらわなくてはいけません。穂木の生育に関わってくるので、台木の選定はとても重要です。台木に向いている種類のサボテンをいくつかご紹介します。

 

竜神木

竜神木は穂木に対する安定性がとてもよい種類です。また寿命が長いため穂木と一生をともにすることも多いようで、このことから永久台木と呼ばれています。他の台木と比較すると成長するスピードがゆっくりです。どのような穂木との相性も良いので、永久台木としてよく用いられています。丈夫なので初心者の方が挑戦するのにも向いています。

三角柱

三角柱はどの穂木との相性も良いので、よく台木として活躍しています。成長スピードも早いので穂木により多くの水分や栄養分を運んでくれます。しかし成長するスピードたとても早いので、穂木よりも先に寿命が尽きてしまいます。そのため永久台木になることはできません。一度接ぎ木をしても再度穂木を別の台木へ接ぎ木するという手間が必要になります。また湿度が高い環境に弱く、湿度の高い土で栽培すると数年で腐ってしまうため注意が必要です。

 

袖ヶ浦

袖ヶ浦も台木としてはとてもよく知られている種類です。袖ヶ浦は冬は休眠、春先から秋口までが成長期なので接ぎ木を成功させるためには、5月から7月くらいが適している時期のようです。竜神木と比較すると成長スピードが早いのですが、寿命は長いもので10年と言われています。また寒さにも非常に強いので頼りになる台木です。

 

短毛丸

短毛丸は玉サボテンという全体が棘に覆われたサボテンです。そのため接ぎ木をするときにはそのままの状態でするのではなく、接ぎ木がしやすいように棘の部分をカットしなければいけません。また子株がたくさん出てくるので子株の処理も必要です。しかし短毛丸は成長スピードも早く、接ぎ木の後の安定性も比較的保ちやすいことから台木としてよく用いられています。またどのような穂木とでも接ぎ木できるため、台木としてマルチに活躍できると言えます。

 

ウチワサボテン

ウチワサボテンは花サボテンの種類を接ぎ木するときにとても頼りになる台木です。またもともと乾燥している土地や高山など他の植物の生育が困難な過酷な環境でも生きていけるように、葉に水分と栄養分を豊富に蓄えることができる種類としても有名です。ウチワサボテンの種類は目には見えにくい細かな棘が生えているので、扱いには注意が必要です。平べったい形状なので接ぎ木をするときにはテクニックが必要ですが、丈夫な種類なので安心して台木にすることができますよ。

 

キリンウチワ

キリンウチワは今までご紹介したものとは形状がちがい、普通の多肉植物のように茎と葉がしっかりと区別できるものです。こんな細い茎を台木にできるのかと思われがちですが、穂木に小さめのものを選ぶことで解消します。また高温多湿な環境下での成長スピードがとても早いので、穂木も同じくらい元気良く成長してくれます。そのため接ぎ木からも脇芽がたくさん出てくるのですが、穂木の成長のために脇芽はこまめにカットしてあげることもポイントです。

 

サボテンの接ぎ木に必要なもの

さっそくサボテンの接ぎ木に必要なものをご紹介します。台木用のサボテン、穂木用のサボテン、カッターナイフ(できれば新品)、消毒用のエタノール、台木と穂木を固定させるための粘着テープや包帯、ハサミなどです。カッターナイフは台木用と穂木用に2本用意します。消毒用エタノールはカッターナイフを消毒するために使用します。粘着テープや包帯は台木と穂木をしっかりと固定させてよりはやく結合させるために使用します。接ぎ木が安定している場合はなくても構いません。またキリンウチワを台木として使用する場合は茎が細いため、安定するまでは園芸用の支柱があるとさらに安心です。

 

サボテンの接ぎ木する手順

いよいよサボテンの接ぎ木をする手順をご紹介していきます。サボテンを扱うときは大きな棘はもちろん、目に見えにくい細かな棘を持っている種類もあるので手袋をして作業をしましょう。また接ぎ木の時期は一般的に春の暖かい時期から初夏くらいと言われています。サボテンの休眠期に接ぎ木をすると失敗の原因にもなるので、季節のよい時期に行いましょう。

 

道具を消毒

まずは台木と穂木をカットするカッターナイフを消毒用エタノールで消毒します。カッターナイフを消毒しないと雑菌などで大事なサボテンを傷つけてしまうことがあります。最悪の場合は雑菌が切り口からサボテン内に入り込み、枯れてしまうこともあります。ライターなどで刃先を炙って消毒する方法もありますが、エタノールは消毒用として幅広く用いられているため使用した方が安心して作業できますよ。

 

台木と穂木を切る

いよいよ接ぎ木の作業に入ります。まずは台木をカットしますが、一番注意することはカット面が水平になっているかということです。水平になっておらずガタガタしている面では穂木の安定が悪くなるので注意します。一度水平にカットした後で側面の綾を斜めにカットし、もう一度上部を水平にカットします。こうすることで水分の蒸散による台木上部分の陥没を防ぐことができます。違うカッターナイフに替えてから穂木をカットします。実生苗の根元から3分の1くらいの部分でカットします。台木と穂木を同じくらいの大きさに揃えましょう。

 

台木に穂木を合わせて固定

台木と穂木のそれぞれのカット面の維管束を合わせるようにして、穂木をセットします。セットした向きからずれないように粘着テープや包帯などを上から被せて固定します。被せるときには両手の力が均等になるようにして行ってください。また包帯を使う場合は台木の棘に引っかけて固定できるようにするため、適当な長さに包帯をカットします。固定しにくい場合は粘着テープを2重にしてもよいですしゴムバンドなどを棘に引っかけて固定する方法もあります。

 

一定期間を置いてからテープなどを外す

台木と穂木を固定したあとは、明るく風通しのよい場所に置きます。この期間は直射日光は避けておいたほうが安心です。およそ1週間~10日くらいはそっとしておきましょう。その後固定するために使っていた粘着テープや包帯を外します。完全に結合していない場合もあり、また結合部は繊細なので固定に使った道具はそっと外しましょう。よく棘にひっかかって結合部が外れてしまうことがあるので、ハサミなども使用しながら慎重にしてくださいね。

 

接ぎ木の注意点

接ぎ木の手順をご紹介しました。これなら挑戦できそうと思っていただけたのではないでしょうか。接ぎ木の作業自体はゆっくり落ち着いてすることで問題なくできます。しかし接ぎ木は違う種類のサボテン同士を組み合わせるという、サボテン自身にとってはびっくりするようなことをしています。少しでもサボテンの負担を減らして元気に育ってくれるように、注意したいことをご紹介します。

 

刃物は必ず消毒する

使用する前のカッターナイフが必ず消毒しましょう。他の植物のお手入れに使っている場合、その植物がもっているウイルスが付着している可能性もあります。またサボテンにもウイルスがあり樹液で他の植物に感染します。ウイルスを他の植物に感染させないためにもエタノールなどで消毒します。またカッターナイフを植物以外のものに使っている場合、同様に雑菌が付着している可能性がとても高いです。消毒していないカッターナイフを使うということは、傷口に直接雑菌をたっぷり塗り込むようなものなので必ず消毒しましょう。不安な場合は熱湯などで煮沸消毒していればばっちりです。

 

接ぎ木をした後の環境に気をつける

接ぎ木をした後のサボテンはとても環境の変化に敏感です。特に気をつけたいのが湿度と風通しです。湿度が高く風通しが悪い場所だと雑菌が繁殖しやすく、結合部が一気に弱ってしまいますのでとても気をつける必要があります。また気温が朝と晩で急激に上昇する場所で保管することも避けましょう。じっくりと休ませることが重要です。結合部は気になり触りたくなる気持ちもわかりますが、ぐっと我慢して見守ってあげましょうね。

 

水は上からかけない

固定するための粘着テープや包帯を外した後のサボテンに、水やりをする瞬間もとても待ち遠しいですよね。接ぎ木をしたサボテンに初めて水やりをするときは、サボテンの上から水をかけることは厳禁です。結合部が濡れることのないように注意しましょう。まだ傷口にかさぶたができているような状態で、傷口を修復している最中です。傷口に水がかかるとそれだけで傷口の湿度が上がるので、雑菌の繁殖も心配ですし最悪の場合はせっかく結合していた穂木は外れてしまうかもしれません。水やりはできるだけサボテンを濡らさないように、土に直接かけるように気をつけてあげましょう。

 

サボテンの接ぎ木Q&A

サボテンの接ぎ木をしたとき、初めてだと見た目では判断が難しかったり、迷ってしまうこともあります。サボテンの接ぎ木に限らず、植物には自ら声をあげてSOSを出しません。私たちの日々の観察が何よりも大事なので、しっかりと見守って声にならないSOSを感じ取ってあげたいものです。サボテンの接ぎ木でよく聞かれる質問をまとめてみました。

接ぎ木が失敗したらどうなる?

接ぎ木が失敗するとどのような状態になるのでしょうか。よくあるのが穂木が外れてしまってうまく結合しなかったという事例です。このときの穂木の切り口を見てみると、根が生えてしまっている場合があります。こうなると接ぎ木は失敗で相性が悪かったことなども考えられます。次に多いのが台木が痛んでしまって失敗するというものです。これは台木の切り口が悪い場合が考えられ、水分が必要以上に蒸散してしまったために陥没してしまったり、台木自らの傷口の修復に水分と栄養分を取られたため穂木まで栄養や水分が届かなかった場合が考えられます。

 

接ぎ木したサボテンの寿命は?

接ぎ木をしたサボテンの寿命は台木の寿命にも左右されます。永久台木と言われる竜神木や袖ケ浦などは上手くいけば10年以上元気に成長するものもあります。反対に三角柱などは1~2年で台木が弱り腐ってしまうため、穂木の部分を違う株に接ぎ木してあげることが必要です。しかし台木が弱ってしまっても違う株に接ぎ木をすることにより、末永く楽しめるので台木が弱る前兆〈台木が黄色くなる、しわが寄って保水しにくくなるなど)を見逃さずにお世話をすることもポイントです。

 

接ぎ木したサボテンは外せる?

接ぎ木した穂木の部分は外すことができますよ。弱ってしまった台木から穂木を外して違う株に接ぎ木をすることもできますし、大きく成長した穂木を直接土に植える方法もあります。これを接ぎ降ろしと呼びます。穂木のサボテンが大きく成長した後は台木の部分を少し残してカットし乾燥させます。それから土に植えるという方法で大きくなった穂木を楽しむことができますよ。

 

接ぎ木のサボテンの台木が痛んでしまったら?

接ぎ木の台木が傷んでしまうこともあります。台木にするときの切り口のダメージから痛む場合もありますし、単に寿命がきて痛む場合もあります。台木が痛んでいるのがわかったらすぐに穂木を外してあげることが大事です。そのままにしておくと台木も穂木も助からないので、気づいたらできるだけ早めに外します。接ぎ木をしたときと同じように道具を準備して弱った台木から穂木を丁寧に外し、別の株に接ぎ木をしてあげましょう。

 

台木と穂木に相性はある?

台木と穂木は植物学の分類において、近い種類のものは相性がよいとされています。台木として幅広い種類のサボテンと相性がよいとされている竜神木は翁丸などの毛柱類、弁慶などの強刺類を避けた方が上手くいくようです。また袖ケ浦は宝山丸に代表されるレブチア類、緋盛丸などのロビビア類と相性がよいとされています。三角柱は万能で大抵の種類のサボテンの台木として使えますよ。またウチワサボテンは好みがはっきりとしているので注意が必要です。

 

まとめ

今回はサボテンの接ぎ木についてご紹介しました。ゆっくり成長するサボテンも見ていて楽しいですが、接ぎ木にすると全く違った姿を見ることができますよね。接ぎ木にして成長するにつれて変化するフォルムを見るのも楽しいですし、穂木が急速に成長して花が咲くととてもうれしいものです。新しいサボテンの楽しみ方のひとつとして、挑戦してみてはいかがでしょうか。

 

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