コーヒーの木の育て方とは?お世話のポイントや害虫対策などを紹介
昨今、観葉植物として人気の高いコーヒーの木。園芸店や100円ショップでも簡単に購入できるため、さまざまな方に選ばれています。
今回は、コーヒーの木の基本情報をはじめ、主な種類や育て方に関するポイント、押さえておくべき注意点などを分かりやすく解説します。
コーヒーの木の基本データ
コーヒーの木は、アカネ科・コーヒーノキ属の観葉植物であり、熱帯アフリカやマダガスカル島、マスカリン諸島などに約100種が自生しています。
高さは4~7mまで成長し、艶のある緑の葉が美しくジャスミンのような白くて香りの良い花をつけるのが特徴的です。
緑色の実ができると徐々に赤くなり、完熟すると赤紫色になります。この熟した実はチェリービーンズと呼ばれ、その中にある2つの半球状の種がコーヒー豆になります。コーヒーの木の種類はいくつかありますが、アラビカコーヒーノキという種類の木から収穫される種子が流通しているコーヒー豆の約7割を占めています。
コーヒーの木は基本的に日光を好みますが強い日差しには弱いため、室内で育てるのがおすすめです。なお、コーヒーの木の株は園芸店やホームセンター、店舗によっては100円ショップなどでも購入できます。
コーヒーの木の主な品種

現在では品種改良も進み、多種多様なコーヒーの木がありますが、コーヒー豆として流通しているものは主にアラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種の3つです。この中でも、一般的なレギュラーコーヒーとして使用されるのがアラビカ種であり、観葉植物として流通しているものもアラビカ種がほとんどです。
ここでは、それぞれの品種の特徴などについて詳しく見ていきましょう。
アラビカ種
アラビカ種はエチオピア原産であり、世界で最も多く栽培されているポピュラーな品種です。アラビカ種の中にもさまざまな品種があり、栽培地域で香りや味が異なります。その多くは高地で栽培されており、収穫には5~6年かかるといわれています。
アラビカ種は病気や害虫に弱く、気温の影響も受けやすいので栽培が難しいのが特徴ですが、その香りや味はどのコーヒーよりも品質が良く、世界中で愛されています。観葉植物として流通しているものも、ほとんどがアラビカ種です。
ロブスタ種
ロブスタ種は、正式にはコンゴ原産のカネフォラ種の変種です。コーヒー豆は酸味や苦みが強いのが特徴で少量の豆でも抽出される量が多く、主にインスタントコーヒーや缶コーヒーの原料になります。
ロブスタ種は成長が早いので収穫量が多く、気温や病害虫にも強いため、場所を問わず世界中で栽培されます。
リベリカ種
西アフリカ原産のリベリカ種は世界中のごく一部の地域でしか栽培されておらず、日本でも馴染みの少ない品種です。コーヒー豆としての品質がアラビア種やロブスタ種と比べて劣るため、3大原種の中では最も生産量が少ない品種ともいわれています。
リベリカ種は天候などによる影響は受けにくいですが、コーヒー栽培の天敵であるサビ病に弱い性質があります。それだけでなく、10m以上の大木に成長して収穫が難しいことや、豆の大きさが均一でないので焙煎しにくいなどの要因も生産量が少ない理由の一つとなっています。
コーヒーの木を育てるまでの準備
コーヒーの木は、屋内外どちらでも育てることが可能です。ただし、根が育ちやすいことや暑さや寒さに弱い性質などがあるため、適切な環境を整える必要があります。
ここでは、コーヒーの木を育てるためにしておきたい前準備について具体的に解説します。
鉢で育てるための準備
コーヒーの木を鉢で育てる場合は、一回り大きいサイズの鉢を選びましょう。そうすることで根詰まりを防ぎ、成長が活発になりやすくなります。
また、鉢底ネットや受け皿、観葉植物用の土、霧吹き道具、土に肥料が入っていない場合は肥料も準備しておくことをおすすめします。室内用の観葉植物であれば、部屋のイメージに合った鉢カバーをするとインテリアにも馴染みます。
庭などに直接育てるための準備
コーヒーの木は一般的に屋外で栽培されていることが多いため、庭などに直接植えることが可能です。しかし、極端な暑さや寒さに弱い性質があるので季節に合った対策が必要になります。
夏の日差しが強い場合は葉焼けしてしまう可能性があるため、遮光ネットなどを使用して直射日光が当たらないようにしてください。一方、冬はビニールや段ボールなどで囲むなどの防寒対策をしっかりとすることが大切です。
コーヒーの木の育て方の基本情報

コーヒーの木の育て方は、基本的には他の観葉植物と変わりませんが、長く元気に楽しむためには適切な環境づくりが必要不可欠です。
ここでは、コーヒーの木を育てるための基本情報を紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
植え付け
コーヒーの木は比較的寒さに弱いので、育て始めるのは暖かい時期がおすすめです。冬の購入を避けて、4~9月の暖かい時期に購入するようにしましょう。
植え付ける際は、鉢底に石やネットを敷いて通気性を良くし、水はけの良いものを選びます。観葉植物用の土に赤玉や鹿沼土を混ぜて、水はけの様子を調整してするのがポイントです。
鉢に1/3程度まで土を入れ、コーヒーの木の苗をバランス良く配置し、周りに土を入れていきます。植え付けが完了したら水をたっぷり与え、1週間程度は直射日光の当たらない場所に置いておきましょう。
水やり
コーヒーの木の水やりのタイミングは土の表面が乾いてからであり、鉢の受け皿に水が出るくらいまでしっかりと水を与えましょう。コーヒーの幼木は水切れに弱いため、乾燥した状態が続かないように、こまめに土の状態をチェックしてください。
ただし、コーヒーの木が休眠期に入る冬場の水やりは1週間に1~2回程度で問題ありません。水を与えすぎると、根腐れを起こす原因になるので注意しましょう。
また、毎日霧吹きで葉っぱに水をかけることで乾燥を防ぎ、害虫の発生も抑制することができるのでおすすめです。葉の表面だけでなく裏側も忘れず水をかけるのがポイントです。
肥料
コーヒーの木に肥料を与える時期は、生育期の5~9月の暖かいタイミングです。置き肥を2ヶ月に1回程度のペース、もしくは液体肥料を10日に1回程度与えるのがおすすめです。
コーヒーの木を庭などに植えている場合は、根が成長していることを考えて幹から少し離した場所に肥料をまいてください。
また、コーヒーの木の葉が色褪せている場合は、栄養不足が考えられるので水やりの代わりに即効性のある液体肥料を与えると良いでしょう。
ただし、冬の時期に肥料を与えると逆効果になる可能性が高く、肥料焼けを起こすことがあるので注意してください。
剪定
コーヒーの木は、放置しておいても枝や葉がきれいに広がるので、定期的な剪定は必要ありません。しかし、大きくなりすぎたり葉が多くなりすぎた場合は、風通しを良くして病害虫を防ぐためにも適度に剪定しましょう。
剪定は、生育期の4~5月に行うと植物へのダメージが少なく抑えられます。外に伸びすぎている枝や絡み合っている枝を生え際から切り落とし、土の表面から細い枝が生えてきたらその枝も切り落としておきましょう。
冬越し
コーヒーの木は比較的寒さに弱く、耐寒性は5℃程度です。さらに、小苗は弱いので10℃以上に保っておくと安心です。特に、コーヒーの木を庭などの屋外で栽培している場合は、しっかりとした防寒対策が必要となります。
室内で冬越しさせる場合は、日当たりの良い窓際に置いておきましょう。ただし、気温が下がる夜間や早朝は窓際の温度も下がるので、厚手のカーテンを閉めたり部屋の中央に移動させたりしてください。
また、エアコンを稼働させると室内が乾燥しやすいので、適度に葉水を与えるのがおすすめです。
増やし方
「コーヒーの木を他の場所にも飾りたい」といったときは、挿し木で増やすことができます。挿し木の時期は、コーヒーの木が育ちやすい5~8月がおすすめです。
元になる木から枝を先端から10cm程度の長さに切り、葉を2~3枚残してコップの水に数時間つけておきます。
次に鉢を用意し、鉢底にネットや石を敷いて土を入れます。枝の切り口に発根促進剤をつけて土に挿したら、たっぷりと水をやりましょう。
根が十分に生えたら一回り大きな鉢に植え替え、あとは通常通りのお世話をすることで増やすことができます。
コーヒーの木の育て方のポイント
コーヒーの木を上手に育てるには、育て方のポイントを押さえておくことが大切です。ここでは、コーヒーの木を育てるのに大切な3つのポイントについて具体的に解説します。
置き場所
コーヒーの木は、小苗とある程度成長した株では耐陰性が異なります。小苗は耐陰性が高いので、あまり日の当たらない室内でも育つことができますが、成長した株は耐陰性が低いのでできるだけ明るい場所に置いてください。
コーヒーの木の置き場所として最もおすすめなのが、レースカーテン越しの窓際です。直射日光が当たりにくく、やわらかい光が差し込むのでコーヒーの木が成長しやすい環境になります。
ただし、寒さが厳しくなる冬場は窓際の温度が下がるため、夜間は部屋の中央に移動させ、天気の良い日中に日光浴をさせるようにしましょう。
また、室内ではエアコンの風やカーテンが直接当たると葉っぱに傷がつく原因になるので、なるべくそういったものが当たらない場所に置くようにしてください。
苗の選び方
コーヒーの木を健康に育てるためには、最初に選ぶ苗の状態が重要です。苗を購入する際は、まず葉の色と艶に注目してみてください。
濃い緑色で艶やかな葉をつけている苗は十分に日光と栄養を受けて育った証拠で、丈夫で元気な株である可能性が高いです。一方、葉が部分的に茶色くなっていたり乾燥したように傷んだりしている苗は、病害虫の影響や環境ストレスを受けている場合があります。
また、葉の表面だけでなく、裏側に小さな虫や白い粉状の汚れが付着していないかも忘れずに確認しましょう。株元がぐらついていないか、幹がしっかりしているかなどもチェックするとより良い苗を見極められます。
植え替え時期
コーヒーの木は根の成長が旺盛なので、最低でも2年に1度は一回り大きいサイズの鉢に植え替える必要があります。その他にも、コーヒーの木の下葉が枯れていたり、水を与えても土に染み込んでいかなくなったりしたときも植え替えのタイミングです。
根が成長しすぎると、根腐れや鉢の底から根が飛び出て鉢が割れてしまう恐れがあるので、できるだけ早めに植え替えを行うことをおすすめします。
植え替える方法は簡単であり、根の周りについている土を払い落し、根を軽くほぐして一回り大きい鉢に入れれば植え替えは終了です。その際、幹や茎に傷がつかないように注意し、植え替えたらたっぷりと水を与えるようにしましょう。
コーヒーの木につく病害虫と対処法
コーヒーの木は、害虫や病気の被害を受けやすいといわれています。気づかずに放っておくと、コーヒーの木が枯れてしまったり家の中に虫が発生してしまったりする可能性があるため、毎日細かいところまでチェックして健康状態を保っておくことがポイントです。
最後に、コーヒーの木につきやすい害虫や発生しやすい病気の特徴と対処法を紹介するので、育てる際に役立ててください。
カイガラムシ
カイガラムシは3mmほどの小さな虫で、綿毛を背負っているような見た目が特徴です。5~7月ごろに多く発生し、木の養分を吸って弱らせてしまう厄介な害虫です。
カイガラムシは成虫になると、体からワックスのようなものを分泌するので、殺虫剤が効きにくくなります。そのため、幼虫のうちに駆除しておくことが大切です。
もし、すでに成虫になっている場合は歯ブラシなどで擦って落とすか、熱めのお湯をつけて絞った布などでふき取ると良いでしょう。
そのまま放置しておくと、カイガラムシの排泄物によってスス病にかかってしまう恐れがあるので、見つけたらできるだけ早く駆除するようにしてください。
アブラムシ
アブラムシは、2~4mmほどの非常に小さな虫です。黄緑色をしているので見つけにくく、幼虫も成虫も葉や蕾から汁を吸って寄生します。
さらに、アブラムシは体内にスス病などのウイルスを持っている場合が多いので、汁を吸われただけで病気にかかったり汁を吸われることで枯れてしまったりすることもあります。
アブラムシは植物に寄生する害虫として有名であり、アブラムシ専用の殺虫剤なども多く販売されているので、発見した場合はそういった商品を使用すると良いでしょう。少量の場合は、セロハンテープなどでくっつけて取り除くと葉を傷める心配がありません。
うどんこ病
うどんこ病は、スス病と同様に葉や茎を脅かすカビ性の病気です。スス病がアブラムシなどの害虫の排泄物を介して感染するのに対し、うどんこ病は飛来した胞子によって感染します。
若い葉が被害を受けやすく、感染すると白い粉をまぶしたような状態になることからこの名がついきました。
うどんこ病の厄介なところは、他の植物にまで感染してしまうことです。他の植物への感染を止めるためにも、コーヒーの木がうどんこ病にかかってしまったらすぐに防除してください。
うどんこ病を発症したら、殺虫殺菌剤などの市販の農薬を使う他、感染した葉や枝を切り落とすことが有効です。
炭疽(そ)病
いちごや柿などに甚大な被害をもたらすといわれる炭疽病ですが、コーヒーの木にも感染することがあります。
その原因は炭措疽病菌というカビであり、感染すると褐色の斑点の内側に灰白色の病斑が表れます。症状が進むと病斑部の中心から穴が空き、葉っぱの先から枯れていくのが特徴です。炭疽病のカビ菌は高温多湿の環境を好むため、雨季時期に特に多く発病する傾向にあります。
炭疽病もうどんこ病同様に他の植物に感染しやすく、カビ胞子が室内に漂うので衛生的にも注意が必要です。さらに、炭疽病が感染した場所は回復が見込めないため、発見したら切除するしかありません。
まとめ
農家でしか栽培できないイメージのコーヒーの木ですが、自宅でも簡単に育てることが可能です。気温や水やりに気をつけることで、コーヒーの木はぐんぐん成長していきます。
さらに、適切な育て方ができていれば、種を収穫して自家製のコーヒーを飲むこともできるかもしれません。ぜひ本記事を参考に、コーヒーの木の育成を楽しんでみてはいかがでしょうか。

