アガベの育て方|害虫や病気の予防法と対策を解説
人気の観葉植物の一つ、アガベという多肉植物をご存知でしょうか。
多肉植物らしいエキゾチックな風貌が魅力的で、コレクターも存在する程です。とても丈夫な植物なので、特徴を理解すれば、育て方も難しくなく誰でも元気に育てることが出来ます。アガベの特徴と、基本的な育て方や注意点についてご紹介しますので、ぜひご覧ください。
アガベの特徴基本データ
アガベは多年草の多肉植物で、メキシコが主な原産地です。
暑い乾燥地帯に生育する植物なので、日光が好きで、少ない水でも枯れずに育ちます。
さらに寒さや日陰にも耐えられる、とても丈夫な植物です。
初心者でも枯れさせずに育てることが出来る、おすすめの植物です。
形状に関する特徴としては、葉の縁には棘があることが多く、先端は鋭く尖るなどワイルドな風貌をしています。斑が入る品種もあります。
日本では、葉の形が龍の舌のようだという理由で、龍舌蘭とも呼ばれます。
ロゼット状という放射状に葉が並び、形状と相まって見栄えがするので、観葉植物やプレゼント用としても人気があります。
葉が地面から直接生えているような見た目も特徴的ですが、種類によっては茎が伸びて木のような形になるものもあります。
サイズは小振りのものから5m以上の大きさに育つものなど様々です。
花は葉の中央から茎をまっすぐ伸ばした先に咲かせますが、開花に数十年かかり、その後に株は枯れてしまいます。
アガベの種類と品種
アガベのような多肉植物に共通する特徴の一つが、様々な種類があることです。
アガベもとても種類が多く、300種以上もの品種があると言われています。
品種によって、見た目や性質も異なってくるので、育て方も少しずつ違ってくる点には注意が必要です。それでも、品種によって違った良さがあるので、好みの品種を探したり、違いを楽しめることもアガベの魅力ではないでしょうか。
数ある品種の中でも、特にポピュラーな品種を3点、ご紹介します。
①アオノリュウゼツラン
別名アメリカーナとも呼ばれる、メキシコ東部原産のアガベです。
最も一般的な品種で「アガベ」や「リュウゼツラン」の名前で流通している場合、この品種であることが多いです。
名前の通り、青みを帯びた、光沢のない質感の葉が印象的です。
棘はありますが、斑はありません。
大きく育つ品種で、1〜2m程に生長します。
アガベの中では寒さに強い方で、日本でも霜に当たらなければ、屋外で冬越しができるので、庭植えしたい場合は候補に出来るでしょう。
②アテナータ
特に人気の高い品種の一つで、広く流通しているためアガベの中では入手しやすい品種です。
ライムグリーンの色味をした、白粉に覆われた棘の無い葉が特徴的です。
茎が伸びるタイプなので、生長すると形状が木のようになります。
アガベとしては珍しく、葉が柔らかいので、堅い葉のアガベよりも葉焼けには注意が必要です。明るくても夏の直射日光には当たらないような場所が生育環境として適しています。
冬は室内に取り込んだ方が、元気に育てられます。
③ポタトルム
別名、雷神とも呼ばれています。
アガベの中でも入手が難しい方なので、多肉植物愛好家の人気が高い品種です。
葉の色味はシルバーグリーンで、形状が波打つようなのが印象的です。
棘は葉の先端だけでなく縁にもあり、斑も入ります。
斑入りのアガベは直射日光に弱いので、日差しは当たらない明るい場所が必要です。
小型のタイプで、生長しても直径20cm〜25cm程の大きさのままです。
子株が出やすいので、増殖させて楽しむことが出来る品種です。
アガベを育てるまでの準備
まず購入予定の品種、もしくは育てることが可能な品種を調べることが大切です。自分に用意できる環境でも、育てることが出来る品種を選びましょう。アガベは品種によって特徴が異なり、手入れ方法も変わってきます。
そして鉢植えか庭植えかでも、育て方が変わってきます。
植え場所は鉢か庭か、品種と掛け合わせて確認して決めておきましょう。
鉢で育てるための準備
アガベを鉢で育てる場合の注意点として、アガベは根が良く成長し、下方向に深く伸びていく性質があることです。
鉢は株よりも一回りか二回り程大きいものを準備しましょう。
深さがあるタイプの鉢がよりおすすめです。
乾燥に強い一方、過湿や蒸れには弱いので、用土は水はけの良い土を準備します。
多肉植物、もしくはサボテン用の土がありますので、市販されているもので十分です。
もし用土を自分で配合するならば、おすすめは、5:3:2の割合で小粒軽石、小粒赤玉土、腐葉土を混ぜた用土です。
鉢底に敷く軽石も準備しておきましょう。
庭などに直接育てるための準備
庭に直接植える場合は、鉢のように移動ができないので、植え場所の選定がとても重要になります。
特に冬の環境について確認が必要です。
アガベの中でも寒さに強い品種ならば、冬でもマイナスの気温にならず、霜に当たらないという条件が揃えば、庭植えでも大丈夫です。入手予定の品種も調べて、生育環境と品種の両方を確認して、庭植えするか決めましょう。どちらで条件が欠けるようならば、鉢植えを検討しましょう。
その他に必要なのは、アガベが好むような、日当たりと風通しの良さです。
水はけを調整するために赤玉土も準備すると良いでしょう。
アガベの育て方の基本情報
品種によって違いがあるとは言え、基本的には暑い地域の植物なので、日光、高温、乾燥を好むのが共通点と言えるでしょう。
鉢と庭、どちらに植えた場合でも、日当たりと風通しの良い場所を用意するのが基本です。
条件に合う場所があれば、庭植えの方が楽かもしれませんが、臨機応変な対応が可能で越冬も考えると、鉢植えの方が育てやすいかもしれませんね。
植え付けの仕方
春から初夏の間で、暖かい日が適しています。
大事なのは、根を傷つけないことで、白い根は特に気をつけましょう。
植え付け前に、根についた土を軽く落として乾燥させておきますが、あまりいじらないようにしましょう。
植え付け場所に3分の1程まで用土を入れた時点で株を入れ、隙間を土で埋めるようにします。
慎重に行ったとしても、植え付けすると根には負荷がかかってしまいます。
鉢植えの場合、水やりは2〜3日後にしましょう。
そして保管場所も、植え付け後数日間は明るい日陰に保管します。少しずつ明るい場所に移していきます。どちらも地植えの場合は不要です。
水やりの仕方
庭植えならば、水やりは基本的に不要です。
乾燥地域が原産であるアガベは、葉に水分を貯められる性質もあり、水が不足して枯れる心配よりも、水の与えすぎによる根腐れに注意が必要です。
基本的な水やりの方法としては、土が乾いたら、鉢底から流れる程たっぷり与えましょう。
葉は避けて土に直接水を注ぎます。
水やりの時間帯は、季節ごとに異なります。
春、秋であれば午前中、夏は気温の高い日中は避けて、夕方から夜にかけて行います。
冬は日中に行いますが、休眠期なので、根腐れが特に心配な時期です。
水やりは月に1〜2回程度に控えましょう。
肥料のあげかた
アガベのような多肉植物は、元々丈夫でもあり、あまり肥料を必要としない植物です。
肥料焼けを起こして根を痛めてしまうことがあるので、むしろ与え過ぎないように注意が必要です。
肥料のあげ方としては、植え替えの時に用土に混ぜ込んでおきます。
追加する場合は、アガベの生育期である春から秋にかけて行います。
ただし真夏の気温が高い時期は、株が弱りがちになるので、肥料を与えるのも止めておきましょう。休眠時期の冬も、肥料は必要ありません。
肥料の追加は、緩効性肥料ならば2ヶ月に1回程度、即効性肥料の場合は2週間に1回程度で十分です。
剪定の仕方
アガベは多年生の植物で、ゆっくりとした生長で形が乱れることもなく、姿を整えるための剪定は必要としません。
アガベで剪定が必要になるのは、古い葉を落とす時と、病気になった葉を処理する時です。
その場合には、消毒したノコギリ、ハサミ、ナイフなどで綺麗に切り取りましょう。
アガベの葉は古くなると枯れていき、枯れたまま放置していると、カビや病気が発生する原因となるので、剪定して取り除く必要があります。
またサビ病など、元に戻らずにどんどん広がっていく病気になった場合は、症状が出ている部分を剪定して取り除きます。
冬越しさせる方法
室内で保管した方が元気に育てられます。
品種によっては寒さにも強いので、冬の気温が0度を切らず、霜も降りないのであれば、
庭植えでも冬越し可能です。
そうでなければ、庭植えでも冬だけ室内に取り込むのがおすすめです。
気温の高い日には、外に出して光を浴びせると効果的です。
アガベは気温が5度を切ると休眠するので、気温が低い冬は、水のやり過ぎによる根腐れに特に注意が必要です。月に1〜2度程度に抑え、日中に行いましょう。
乾燥と風通しの良さが好みですが、エアコンの風が当たると弱ってしまうので、直接当たらない場所で保管しましょう。
挿し木での増やし方
アガベの挿し木は一般的なものとは少し違い、株から子株が生えてくる習性を利用します。
茎が短い品種は、子株も根が生えるので、親株から離したらすぐ植えられます。
茎が伸びる品種は、親株を切った所から生えてくる子株を、挿し木にします。
切断する場所は、親株の中央部分です。
根元側の切り口から子株が生えてくるまで、雨風を避けられる場所で保管しましょう。
子株が生えたら、親株から取って挿し木として土に置き、発根を待ちます。
切断した親株の上部分も、同じ方法で発根します。
土はよく乾燥させたものを使いましょう。発根するまで水やりは要りません。
アガベの育て方のポイント
明るくて風通しの良い環境を用意してあげること、水と肥料は控えめにすることが大切です。根の生長が良いため、鉢植えの場合は植え替えの必要がありますが、増やして楽しむことも出来ます。
鉢植えは手入れの手間が増えるけれど、確実に育てられることが出来、庭植えは条件が揃えられれば、手間は少ないと言えるかもしれませんね。
置き場所
アガベが好むのは日光と乾燥で、反対に低温や湿気は嫌いです。
そのため置き場所として適切なのは、日当たりと風通しの両方が良い場所となります。
雨が当たらないことも大切です。
ただし、明るい場所が好きとは言え、直射日光に長時間当たると、葉焼けを起こすことがあります。特に午後の日差しには注意が必要です。
午後は場所を移動するか、レースカーテンなどで日除けをするなどの対応が必要です。
冬の気温がマイナスになる地域は、室内へ取り込んで管理するのがおすすめです。
室内でも、エアコンの風が直接当たらない場所を選びましょう。
苗の選び方
苗の健康状態が良いものを選びましょう。目安がいくつかあります。
全体的、部分的にでも形に歪みが無いかを確認します。変色部分がなく、色艶の良いものを選びましょう。
鉢と株のバランスが取れていることも大切です。株を触ってグラグラする場合、根がしっかりと張っていないかもしれません。
ハダニなどの害虫がついていないかも、確認しましょう。
アガベは品種によって耐寒性、耐陰性、耐暑性が微妙に異なります。
生育環境を確認して合う品種を選ぶのが大切です。
適切な環境を用意できるのならば、自分好みの形状を選んで楽しみましょう。
植え替え時期と方法
根の生長が良いので2年に1回、植え替えが必要です。
成長前の4月から5月か、成長が落ち着く秋に実施します。
今よりも一回りか二回り大きな鉢を準備します。
株を鉢から抜いて、根に付いた土を軽く落とし、乾燥させておきます。
根への負荷を抑えることが大切なので、根をいじらないようにしますが、自然に取れる根は取り除きます。
枯れた葉があれば、株を傷つけないように除去します。
新しい鉢の3分の1程の高さまで土を入れたら、株を移し替えます。
植え替え後は、一週間程度は強い風の当たらない、明るい日陰で管理します。
水やりも2〜3日後まで控えましょう。
アガベにつく害虫病気とその対処法
アガベは丈夫な植物なので、害虫や病気が発生することは比較的少ないですが、もし発生した場合には、早めの対処が大切です。
アガベに発生しやすい害虫、病気について、その対処法も併せていくつかご紹介します。
多湿状態が発生を招くことが多いので、害虫や病気を防ぐためにも、日当たりを良くして、乾燥状態を保つことが大切です。
カイガラムシ
カイガラムシが好む環境はアガベと同じで、乾燥を好み過湿を嫌います。
そのためアガベなどの多肉植物は被害を受けやすい害虫です。
あまり動かず、名前の通り殻のような見た目で、一見虫のように見えません。
カイガラムシがつくと、液を吸い取られる吸汁という被害を受けます。
吸汁された場所は病原菌が入り込みやすくなり、様々な病気にかかる原因となります。
発見したら、他の葉につかないようにして取り除き、殺虫剤を噴きます。
小さな虫なのでピンセットや爪楊枝などに消毒液をつけて使いましょう。
たくさん発生しているならばブラシが便利です。
アブラムシ
アブラムシは多くの植物で見られる身近な害虫で、植物の汁を吸って弱らせる他、病気を媒介することもあります。大量のアブラムシが発生した植物は、放置していると枯れてしまいます。
アブラムシの増殖スピードは非常に早いので、対処法として大切なのは、少しでも早く発見すること、すぐに取り除くことです。
アブラムシの取り除きはとても簡単で、水をかければ落とすことができます。
セロハンテープなどの粘着シートを使って捉え、捕殺する方法もあります。
取り除いた後は、殺虫剤を散布するとより効果的です。
日頃の観察とお手入れで発生を防ぎましょう。
うどんこ病
カビが原因の病気の一種で、うどん粉のように白い粉が葉にまぶされたような状態になることが、病名の由来です。
白くなった部分は光合成が出来なくなり、植物を弱らせます。
放置すれば白い部分がどんどん増えていくので、もし葉全体に広がってしまった場合には、回復することは出来ません。
致死性の高い病気ではありませんが、早めに見つけて対処することが大切です。
うどんこ病に対処するには、重曹やお酢の散布が有効です。
いずれも水で薄めたものを、葉にスプレーして、広がる前に対処しましょう。
全体に広まった場合は、除去以外の対処法はありません。
炭疽病
ウイルス感染によりカビが発生する病気です。
症状としては、葉から色が抜け始め、次第に茶色や黒に変色していきます。この病気が発生すると、元の状態に戻る術がありません。
他の株に感染して広まっていく特徴があるので、他の株に移る前に対処する必要があります。
対処法としては、症状が見られる部分を除去して処分し、取り除いた後に殺虫剤を噴いておきます。
もし症状の進行が激しい場合には、株の根元だけを残して、他は全て切断してしまいます。
切り口からいずれ子株が出てくるので、そちらを新たに育てていきましょう。
まとめ
以上、アガベの特徴と育て方についてのご紹介でした。
熱帯地方原産のアガベは暑さと乾燥に強く、寒さにも耐えられる丈夫な植物です。
日当たりを確保して、風通しを良くして加湿状態にならないように気をつければ、少ない手間で長く楽しめることが出来ます。
病害虫の心配も少なく、日頃の手入れで十分防ぐことが出来ます。
多品種ですがそれぞれに違う魅力があるので、お気に入りを探すのも良いですし、種類の違うアガベを揃えても楽しめそうですね。