トリネコの育て方。特徴や育てるまでの準備を紹介
トリネコ(シマトリネコ)はシルクジャスミンに似た小さくてかわいい葉が特徴的な観葉植物です。
中国や台湾、フィリピンなどに分布し、日本でも古くから親しまれてきました。
トリネコは、その涼しげで爽やかな見た目から、玄関やバルコニーに飾るのに最適で、近年人気の観葉植物となっています。
今回は、トリネコの育て方のコツや、種類・特徴、害虫・病気の対処法などについて紹介します。
トリネコの特徴・基本データ
トリネコ(シマトリネコ)は、中国、台湾、フィリピン、インド、日本(沖縄)などアジアに広く分布する、モクセイ科トリネコ属の常緑高木です。
トリネコの語源は「戸に塗る木」で、樹皮につくイボタロウムシが分泌する蝋物質を、滑りの悪くなった敷居の溝に塗ることで、滑りをよくしたことからこの名がついたとされています。
玄関やバルコニー、または街路樹として植えられていることも多いトリネコですが、自生地では、その樹液を好みカブトムシがたくさん集まってくるため、カブトムシの木としても知られています。
まっすぐに伸びた細い幹と、明るいグリーンの小さい葉が風にそよぐ姿は爽やかで、丈夫で比較的簡単に育つという特徴からも人気の観葉植物となっています。5月から7月頃には、白くて細長い花を咲かせます。
トリネコの基本データ
原産地…中国、台湾、フィリピン、インド、日本(沖縄)
学名…Fraxinus griffithii
和名…シマトネリコ
別名…タイワンシオジ(タイワントネリコ)
科名…モクセイ科
属名…トネリコ属
トリネコの種類と品種
トリネコの種類として、今回紹介しているシマトリネコの他にトリネコ(本種)、セイヨウトリネコ、アメリカトリネコなどがあります。すべてモクセイ科トリネコ属の樹木ですが、それぞれ原産地や特徴に違いがあります。
北欧の神話にセイヨウトリネコが登場することから、トリネコ属の花言葉は共通して「偉大」「高潔」「荘厳」など、神々しいイメージを有しています。
ここでは、そんなトリネコのそれぞれの品種について解説します。
トリネコ(本種)
トリネコ(本種)は、モクセイ科トリネコ属に属する木本植物で、落葉樹であるところが常緑樹であるシマトリネコとの違いです。
トリネコ(本種)の原産地は日本で、東北から中部地方にかけての山地に自生します。その樹高は15mにも達し、樹皮はなめらかで、葉は羽状複葉です。街路樹として植栽されることも多いため、よく目にすることができます。また、木材として弾力性があることから、野球のバットやテニスのラケットの材料としても使われます。
セイヨウトリネコ
セイヨウトリネコも本種のトリネコと同様、モクセイ科トリネコ属の落葉樹で、ドーム状の樹冠(枝と葉の層)が特徴的です。
樹高は20~35m、幹の直径は太いものでは2mにも達します。
別名称ホワイトアッシュとも呼ばれていますが、心材に茶色の部分がある場合があるため、ブラウンアッシュと呼ばれることもあります。
木材としての特徴は、硬くて重く加工もしやすいため、家具の材料としても大変適しています。原産地はヨーロッパの温暖な地域に分布しています。
アメリカトリネコ
アメリカトリネコはモクセイ科トリネコ属の落葉広葉樹です。別名アメリカタモ、アメリカアッシュ、ホワイトアッシュなどと呼ばれています。原産地はその名のとおり、アメリカ合衆国南部~中西部。樹高はセイヨウトリネコと同様高く、15~30mにもなります。材木としての特徴も、硬く重みがあり加工しやすいため、家具や建築用材、楽器(エレクトリックギター)などに使われ、その他、野球のバットやボートのオールなど、幅広く利用されています。
トリネコを育てるまでの準備
トリネコ(シマトリネコ)は庭木として地植えする他、小さな鉢植えや人の背丈ほどの観葉植物として楽しむことができます。
そこで今回は、鉢植えでトリネコを育てる場合と、庭などに地植えして育てる場合とでそれぞれどのような準備が必要かを紹介します。
肥料や植えつけ方法、水やりの方法など、是非参考にして下さいね。
鉢で育てるための準備
鉢でトリネコを育てるのに必要なものは、「鉢植えされたトリネコ」「緩効性化成肥料」「液体肥料」「剪定バサミ」「ジョウロ等」です。緩効性化成肥料とは、与えたときからある程度の期間が経っても効果が持続する肥料のことをいいます。一方液体肥料はすぐに吸収させることができますが、水やりの際に流れやすいため、効果は持続しにくくなっています。トリネコは寒さにあまり強くありませんが、関東地方よりも南であれば戸外であっても冬超えすることができます。
土の表面が乾いたら、たっぷりと水やりを行います。
庭などに直接育てるための準備
まず、植え付け用のトリネコの選び方ですが、枝ぶりが太くてしっかりしたものを選びます。葉は濃い緑色で、元気のよいトリネコを植え付けると、その後の育て方もうまくいくでしょう。
トリネコは日光を好むため、植え付けは日当たりの良い南向きか東向きの庭などが適しています。
地植えのメリットは根が生長する点にありますので、できるだけ広い場所を選びましょう。根がよく伸びると、枝もよく生長します。あまり枝が伸びすぎるのは困る、という場合には剪定をすれば大丈夫です。
植え付けの時期は4月。初夏にはクリーム色の花を見ることができるでしょう。
トリネコの育て方の基本情報
ここでは、トリネコの育て方について紹介します。
植え付けの仕方や水やりの仕方、肥料のあげ方、剪定の仕方など、初心者の方にも分かりやすいように項目別に解説していきます。
しっかりポイントをおさえることで、失敗することなく育てることができますので、是非参考にしてみて下さいね。
植え付けの仕方
トリネコの植え付けは、植え替えも含め、4月が適しています。
庭植えでは、大きめの穴を掘り、肥料を施して水を入れます。そこへ買ってきた鉢から丁寧にトリネコを抜いて、そのまま植え付けます。
鉢に植え替える場合は、10号のトリネコであれば12号鉢、というふうに一回り大きめの鉢を用意します。鉢の底に肥料を施して、根はほぐさずに植え替えます。土は、赤玉土2に対して腐葉土1、という具合に混ぜたものを使います。ポイントは、根腐れしないために水はけのよい土を使うことです。
水やりの仕方
トリネコは乾燥に弱いため、お水はたっぷりあげましょう。ただし土が常に湿っていると根腐れの原因となりますので注意が必要です。
庭植え、鉢植え共に、春から夏の終わりにかけては土の表面が乾燥しきる前に水やりします。秋から冬が終わる頃までは土の表面が乾燥したら水を与えます。
冬には生長がとまりますのであまり水をあげなくても大丈夫です。ただし、乾燥して葉が落ちるのを防ぐため、葉っぱには霧吹きなどで水を吹きかけるとよいでしょう。
庭植えの場合には、植え付けから2年ほど経ったあとは、水やりしなくてもよいくらいに生長します。
肥料のあげかた
鉢植えのトリネコを買って、そのまま育てるのであれば肥料はすでに鉢に入っていますので与える必要はありません。
植え替えする場合は、緩効性化成肥料を2カ月に1度の頻度(春から秋にかけて)で株元に置き肥します。
庭植えのトリネコの場合、冬の終わり頃に寒肥(かんぴ…冬の間に休眠している木に与える肥料)として株元に埋めます。そうしておけば、春以降には元気に育つでしょう。
剪定の仕方
庭植えのトリネコは生長が速いため、全体の形を整えたり、風通しを良くして害虫の発生を防ぐために定期的な剪定が必要です。剪定の適期は3月から11月で、真冬の寒い時期には生長が止まりますので剪定の必要はありません。
鉢植えのトリネコは、鉢の大きさに合わせて生長しますので、形を整える程度の剪定でよいでしょう。
剪定のコツは、枝が幹から分岐している部分、つまり枝の根元から剪定することです。また、切り落とす枝は、古い枝や、上向き・下向き・内向きにのびた枝で、一気に剪定するのではなく、こまめに少しずつ剪定するのがポイントです。
冬越しさせる方法
トリネコは日本で自生しているのは沖縄であり、寒さにはあまり強いとは言えませんが、関東以南であれば戸外でも冬越しは可能です。ただし、気温0℃を下回るような場合は鉢植えの場合、温かい場所に移動させてあげましょう。庭植えの場合は、霜対策として株元に腐葉土やバークチップ(松などの樹皮を砕いたもの)を敷き詰めます。
常緑樹であるシマトリネコですが、寒い地方では冬に葉を落とします。しかし冬越しが成功すれば、春には新しい葉がはえてきます。
挿し木での増やし方
トリネコは挿し木で増やすことができます。「挿し木」とは、若枝を切り取り、発根(はっこん…根が出ること)を促して苗木を育てる、種子を必要としない繁殖方法です。
適期は5~6月で、若枝を10センチほど切り取り穂木(挿し穂)とします。
穂木はコップに入れた水につけ、1~2時間水揚げします。水揚げとは茎に空気が入らないようにするためと、水をしっかりと吸わせるための方法です。
あとは挿し木用のきれいな土に挿して、直射日光を避けた明るい場所で発根するのを待ちます。発根までには通常2~3か月かかります。
トリネコの育て方のポイント
水やりや肥料の与え方など、トリネコの基本的な育て方を解説してきましたが、つぎに育て方のポイントについてもおさえておきましょう。
ここで紹介する育て方のポイントは以下の3つです。
- 置き場所
- 苗の選び方
- 植え替え時期と方法
ちょっとしたことでもありますが、これらのポイントを理解しているかどうかで、後々の生長に大きな違いが出るでしょう。
置き場所
シマトリネコは日当たりの良い明るい場所に置きましょう。
室内であれば明るい窓際がおすすめです。ただし夏の間、陽射しが強すぎる場合は葉焼けしてしまいますので、レースのカーテンで遮光するなど工夫します。また、夏の間だけ置き場所を変えて直射日光が当たらない処に移動させるのもよいでしょう。
室内であってもエアコンの風が直接あたる場所なども、葉の乾燥を防ぐため避けるようにします。
季節による置き場所
4月~6月…気候がよいため、屋外、または室内の窓際
7月~9月…強い日光による葉焼けを防ぐため、カーテン越しの窓際、または直射日光を避けた明るめの日陰
10月~3月…室内の日当たりの良い窓際
苗の選び方
トリネコの苗を選ぶ時には、葉の色が濃くつやが良いものを選びましょう。逆に葉が黄色っぽくなっているものは、弱っている可能性がありますので注意が必要です。
鉢植えのトリネコを購入する場合には、大きさや樹形を好みで選ぶと良いでしょう。
剪定が面倒な場合はコンパクトなサイズのものを、逆にシンボルツリーにしたいという方は、2メートル近い立派なものがおすすめです。
ただし、自分の身長よりも大きくて剪定に苦労する場合もありますので、剪定のしやすさも考慮に入れて選びましょう。
植え替え時期の方法
シマトリネコは生長が早いため、鉢植えで育てている期間が1~2年以上になると、植え替えの時期です。鉢の中で根が伸び根詰まりをおこすと、水をうまく吸いあげることができなくなり、枯れてしまいます。
また、鉢の底の穴から根が出てきている場合にも植え替えが必要です。
植え替えの方法
1.一回り大きめの鉢を用意して、鉢底ネットと鉢底石を入れる。
2.培養土を鉢の3分の1程度入れる。
3.古い鉢からトリネコを抜き、根をもみほぐし土を丁寧に落とす。腐った根があれば切る。
4.鉢を変えたくない場合には、鉢の大きさに合うように根を適量切ってもよい。
5.植えかえる鉢にシマトリネコを置き、残りの培養土を入れる。
6.水を与えて、しっかりとトリネコを固定する。
トリネコにつく害虫・病気とその対処法
シマトリネコは常緑樹で、基本的に害虫や病気に強いのですが、それでもまれに害虫がついてしまったり、病気で枯れてしまうこともあります。害虫や病気の種類によって対策法も違ってきますので、適切に対処しましょう。
ここでは、シマトリネコにつく害虫や病気の種類、対処法・予防法について紹介します。
カイガラムシ
カイガラムシはその名のとおり、成虫になると貝殻のような殻に覆われる、体長3mmくらいの害虫です。
カイガラムシはトリネコの樹液を吸って生長を妨げ、枯らしてしまうことさえあります。
カイガラムシが成虫になるとその固い殻のせいで、殺虫剤が効かないという厄介な性質があるため、できるだけ成虫になる前に殺虫剤で駆除する必要があります。
成虫になってしまったときは、歯ブラシなどを使って削るように駆除しましょう。
ハマキムシ
ハマキムシは、ハマキガという蛾の幼虫です。その名が示すとおり、トリネコの葉を巻いてその中に巣をつくるという性質があります。葉や新芽を食べるので、光合成を妨げ生長を阻害するだけでなく、木の外観も悪くなってしまいます。
ハマキムシが発生するのは4月から11月なので、みつけたら箸などでつまんで駆除しましょう。寒い時期には巻いた葉の中で越冬しますので、春に活動をはじめる前に葉を確認して見つけたら駆除しておきます。箸でつまむのに抵抗がある場合などは、殺虫剤を使いましょう。
うどんこ病
うどんこ病とは、葉全体に白っぽいうどん粉をまぶしたような状態になる植物の病気です。この白っぽい斑点の正体はカビです。うどんこ病に寄生されると、葉が変色したり縮れてしまい、生育が阻害されます。最悪の場合枯れてしまうことにもなりかねません。うどんこ病が発生しているのを見つけた時の対処法は、発生した葉が小範囲であれば、その葉を切り取ってしまいましょう。症状がひろがっている場合には、水で薄めた重曹や酢などをスプレーしてやれば、効果があります。重曹スプレーは重曹1に対して水1000の割合、お酢は酢1に対して水20の割合です。
すす病
すす病とは、植物の葉がすすのような黒い粉で覆われる病気です。すす病が発生する原因は、カイガラムシやアブラムシのような害虫の甘露という排泄物です。この甘露は糖分を含んだベトベトしたもので、放置しておくことにより、すす病の原因となる菌が付着してすすのように黒ずんできます。ただ、すす病は「病」と言っても、植物に直接寄生しているわけではなく、甘露に付着しているものなので、厳密には植物の病気とは言えませんが、このすす状の菌に覆われることにより、光合成が妨げられて、成長が阻害されることになります。対処法としては、黒ずんだすすを水で洗いながらティッシュペーパーなどでふき取ると良いでしょう。
まとめ
今回は、トリネコの育て方のコツや、病害虫の対策などについて紹介しました。
トリネコは、基本的に丈夫で病害虫にも強い植物ですので、あまり神経質にならず育てることができます。
また、見た目も爽やかで、5月から7月に咲く白い小さな花は香りを楽しむこともできます。
シンボルツリーとして購入するのも良いですし、また、グリーンギフトとしても喜ばれるでしょう。