バオバブの木は観葉植物として育てられる!魅力や育て方のコツ

アフリカ地方に生息するバオバブの木は、その独特な樹形でインパクトが強く、一度見たらなかなか忘れられない樹木です。名作・星の王子さまの挿し絵から、バオバブの姿を記憶している方も多いのではないでしょうか。

観葉植物としてのイメージが薄いバオバブの木ですが、実は手軽に鉢植えで育てられることをご存じですか?

今回は、マダガスカルの観光地としても人気が高いバオバブの木について、特徴やエピソードを交えつつ、基本的な育て方を解説していきます。

 

星の王子さまで有名なバオバブの木

飛行士・小説家であるフランス人のアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ。彼の代表作は1943年にアメリカで出版された「星の王子さま」です。

日本でも、何人もの翻訳家によって訳され、未だに新訳が登場する世界的な作品です。いつの時代でも、サン=テグジュペリが出会った王子さまは世界中で愛されています。

 

巨大に成長するバオバブの木

そんな星の王子さまの作中には、バオバブの木が印象的に登場します。3本のバオバブの木に覆われた、小さい星の挿し絵を覚えている方も多いのではないでしょうか。王子さまは「巨大に成長してしまう」バオバブに星が占領されないよう、毎朝芽を探しては摘み取っていました。

ちょっと衝撃的な挿し絵でもあるので、王子さまの小さな星を占領してしまうほど育つバオバブの木を、幼心に怖いと感じた人もいるかもしれませんね。自生地のバオバブの木は、幹が太くて樹高も高いので、王子さまの小さな星くらいは、たちまち覆ってしまいそうな迫力が感じられます。

 

暮らしを守るバオバブの木

バオバブの木は、夏になるとオレンジ色の花を美しく咲かせて、開花後には大きな果実を実らせます。実った果実は食用や解熱剤として、若くみずみずしい葉は食用として使われてきました。

さらに、バオバブの太い幹は船の材料に使われ、その樹皮は繊維として使われました。余すことなく生活に使えるバオバブの木は、現地の人々の暮らしを助けてきたのです。

樹高が高く、自生するものでは30メートルにまで育つので、人々の家を雨風から守る役割も果たしていたのではないでしょうか。また、幹の中は空洞になっている個体が多いことから、幹の空洞部分が居住地として使われていたようです。

バオバブの木でできたツリーハウスは、現地ではパブとして機能しているものもあるようで、ちょっとしたキャンプ気分のようで楽しそうですね。

 

バオバブの木の基本情報

科・属 アオイ科・バオバブ属
英名 Baobab
学名 Adansonia
別名 さかさまの木、逆さの木、生命の木、ボアブ、ボアボアBottle tree, Monkey-bread tree, Upside-down tree
原産地 アフリカ、オーストラリア
園芸分類 観葉植物
草丈・樹高 20cm〜30m
耐寒性/耐暑性 普通/強い
開花時期 7〜8月

バオバブの木の特徴

マダガスカル地方を原産とするバオバブの木は、幹がどんどん肥大していって太くなり、特殊な樹形を形成していきます。

その樹形は、本来は土の中に生えている根が、上へ上へと伸びているようで、まるで木を逆さにして地面に挿したようです。この独特な形状から、「さかさまの木」や「逆さの木」の別名でも呼ばれています。

天地創造において、神が木を逆さに植えた、巨人が木を抜いて逆さに挿したとも言い伝えられているので、「生命の木」とも呼ばれます。 

樹齢がとても長い木で、その樹齢は2,000年以上にも達する長寿命の樹木です。絶滅危惧種として指定されている希少な植物なので、気軽に観葉植物として育てられるようなイメージがありませんが、アフリカ原産のアダンソニア・ディギタータ(Adansonia digitata)というバオバブは栽培しやすい品種なので、日本国内でも観葉植物として多く流通しています。

バオバブの木の名前の由来

「バオバブ」という特徴的な名前は、いったいどんな由来で名付けられたのでしょう。これには諸説挙げられていますが、有力な説としては、イタリア人の植物学者によって、セネガル語の「一千年の木」という意味の「バ・オバブ」と記されたという説や、アラビア語で「種がたくさんあるもの」を意味する「ブー・フブーブ」が由来だという説があります。

 

バオバブの花と実

バオバブはアオイ科に分類される植物なので、アオイ科らしいやわらかな雰囲気の、大きい花を咲かせます。バオバブの花は日中には開花せず、深夜に花が開いていき、次の日の昼には枯れてしまう短命の花です。

この花が咲き終わると、ヘチマに似たような大きな実を付けていきます。この実には、ビタミンやカルシウムが豊富に含まれており、食用としても用いられています。

さらに、バオバブの種から抽出されるオイルは、さまざまなビタミンが含まれていて、高い保湿力も持っています。現代においては、オイルを精製して保湿剤としても使われていますよ。敏感肌の方や、アレルギー肌の方の保湿剤としても幅広く役立っています。

 

バオバブには花言葉がない

花言葉が付いているのは、花だけではありません。観葉植物にも、花言葉が付いているものが多くあります。植物の性質や見た目、名前の由来や誕生秘話、神話からの由来や歴史など、花言葉の由来を探ることは、その植物のバックボーンを知ることにもなって楽しいですよね。

バオバブの木は独特な見た目をしている個性的な樹木なので、花言葉も何かおもしろそうな言葉があるのかと思いきや、残念ながらバオバブの木には花言葉が付いていません。

花言葉の代わりとしては、バオバブの木の名前の由来だとも言われている、セネガル語の「一千年の木(バ・オバブ)」や、アラビア語の「種がたくさんあるもの(ブー・フブーブ)」の由来から、「長寿」「健康」「財産」といったように、縁起の良い言葉を当てはめてみるのもいいかもしれません。

物語からも愛されるバオバブの木にはそこまで悪い印象はないので、グリーンギフトとして選んでも失礼にはあたりません。バオバブの木という名前は有名ですが、実物を見たことがある人は少ないので、「これがあのバオバブ……!」と珍しがられるかもしれません。

 

バオバブの木の種類

バオバブの木には、約12種類もの品種があります。最も樹形が美しいバオバブの品種は、マダガスカルに自生する「アダンソニア・グランディディエリ(Adansonia grandidieri)」という、絶滅危惧種に指定されている希少品種です。

観葉植物として流通しているのは、「アダンソニア・ディギタータ(Adansonia digitata)」という品種です。これは「星の王子さま」に登場するバオバブの木のモデルになった品種でもあるそうです。

他にも、小型な種類のバオバブでは、マダガスカル原産の「アダンソニア・フォニー(Adansonia fony)」という、一定の樹高で生長が止まる性質の品種があります。肥大化した幹が途中で枝分かれするのも特徴的です。

オーストラリアに自生する「アダンソニア・グレゴリー(Adansonia gregorii)」は、樹高が20メートルにまで生長し、徳利のように幹の下部分だけ膨らむのが特徴の品種です。同じくマダガスカル原産の「アダンソニア・ザー(Adansonia za)」も、膨らんだボトル型の幹が特徴的です。

 

バオバブの木の基本的な育て方

熱帯地方を原産地とし、希少品種も含まれるバオバブの木ですが、栽培が簡単な品種のアダンソニア・ディギタータは、日本国内の環境下でも育てやすく、鉢植えや種まきからも育てていくことができます。日本の気候では、室内に取り入れて冬越しさせやすい鉢植えでの栽培が適していますが、沖縄地方などの温暖な地域では、庭などに地植えで育てていくことも可能です。

続いては、バオバブの木の基本的な育て方について、水やりや置き場所、日当たりの好みなどそれぞれの項目を解説していきます。

 

日当たり・置き場所

自生地のバオバブは樹高が高く、木の周りに遮るものもないので、日光を一心に受けて育っています。直射日光にも強いバオバブの木は日光が大好きなので、通年の置き場所は日当たりを意識して、鉢植えをよく日光に当てるよう心がけましょう。

日光が足りていないと、幹がひょろひょろと不恰好に育っていってしまうので、天気が良い日はなるべく屋外に出して、たっぷり日光浴をさせてあげてください。日光が足りていないと、見た目が悪くなるだけではなくて、病弱に育ってしまい病気や害虫の被害を受けやすくなります。

また、日本の湿度は苦手なので、梅雨の時期などには、特に風通しを意識して管理するのがポイントです。多少乾燥気味に育てて、根腐れを防止しましょう。

 

水やり

バオバブの木は、春から秋までが生育期で、冬には休眠期を迎えます。一年のうちでいちばん生長する生育期の間は、鉢土が乾いてから、鉢底から水が流れ出るほどにたっぷりと水やりを行いましょう。

乾燥しすぎるのは良くありませんが、やや乾燥気味にして育てていくのがコツです。バオバブの木は乾燥には強い植物なので、神経質に水やりを管理するよりも、ある程度は大雑把な気持ちで育てていきましょう。

そして、水やり後に水が流れ出た受け皿は、水やりの都度こまめに水を捨てて、蒸れを防ぐのを忘れないようにしてください。

 

肥料

バオバブの木には、生育期の間に希釈した液体肥料や、緩効性の化成肥料を2ヵ月に1回程度のペースで与えてください。

生長スピードの遅いバオバブですが、観葉植物の中では肥料を吸収しやすい性質を持っているので、過度に与えすぎると幹ばかりがどんどん生長していって、見た目や樹形が悪くなります。肥料は与える量とペースを守って、ゆるやかに与えていきましょう。

 

剪定

バオバブの木は生長スピードがゆっくりしているので、頻繁に剪定して整える必要はありませんが、自分の好みの大きさで仕立てたい場合には、適宜整えていきましょう。

葉がないところをカットしてしまっても、生育期の間は萌芽してくれるので安心です。ただし、1枚目の本葉の位置から下を剪定しないようにだけ注意しましょう。

剪定時には、必ず切れ味の良い清潔なハサミを使って、切り口から雑菌が侵入しないようにしてください。菌が侵入して株が弱ってしまうと、病気や枯れの原因所なってしまいます。

 

植え替え

生長速度がゆったりとしているバオバブの木は、植え替えも頻繁に行わなくて済む観葉植物です。長く育てて鉢と株のバランスが不釣り合いになってきたり、鉢から根が飛び出していたりしたら、植え替えを行いましょう。

できるだけ生育期の春から秋の間に植え替え作業を済ませて、冬季には行わないのがベストですが、常に暖かい室内環境であれば問題ないでしょう。ただし、休眠期に行う植え替え作業は、植え替え時に根に受けたダメージが回復し切らない可能性もあるので注意してくださいね。

 

注意すべき害虫

バオバブの木には、アブラムシやカイガラムシ、ナメクジなどがつきやすいので、もし発見したら速やかに駆除しておきます。殺虫剤などはなるべく使わずないほうが、株の健康には良いのですが、もし被害が想像以上に深刻なようでしたら、しかるべき薬剤で速やかに駆除するのが望ましいです。

日頃から風通しを意識して、通気性の良い場所で鉢植えを管理して、湿度に気を配りつつ日光浴もきちんとさせておけば、株が強く育って、害虫の予防対策にも繋がります。

 

冬越し

バオバブの木は寒さに弱そうですが、実は5度程度であれば耐えられるほどの耐寒性を持っています。秋の終わり頃から、だんだんと水やりの頻度を減らして乾かし気味に管理していき、冷え込むにつれて落葉してからは、完全に水を与えないか、月に1回水やりをするかしないか程度で十分です。

冬季にあえて乾燥させて管理することによって、樹液の密度が高まり、耐寒性をさらに鍛える効果があるのです。注意点として、管理温度が5度を下回らないように注意して、冬場は必ず室内で管理するようにしてください。

 

バオバブの木の増やし方

バオバブの木の基本的な育て方がお分かりいただけたでしょうか。難しそうに感じられて、実は育てやすいバオバブの木は、いつの世代も愛される星の王子さまの存在も加わり、人気のある観葉植物です。

観葉植物の株の増やし方には、挿し木、葉挿し、株分けなどの方法に加えて、種から育てていく実生があります。バオバブの木は、苗から育てていくよりも、種からじっくり育てるのが最も楽しいと言われている観葉植物です。

種から育てることによって、双葉の頃から植物が育つ様子を観察できる楽しみもあります。ぜひ一度、種まきからチャレンジしてみてくださいね。

 

バオバブの種まき

バオバブの種は、オンラインショップなどから購入可能です。バオバブの種の売り上げの一部は、アフリカの途上国を支援するNPO法人団体から支援金として現地に送られるので、種を購入してバオバブの育ったアフリカの地を応援しながら、種まきにトライしてみましょう。

バオバブの種まきの適期は、気温が25〜30度以上で、最低気温が20度以上であることが必須条件です。20度以上を確保できない場合、発芽しないままで種が腐ってしまう可能性が高くなります。初夏や盛夏頃に種まきを行うのがベストです。

バオバブの種は、動物達から自分の身を守るため、殻がとても固く、その殻の中で種を守っています。そのため、「種皮削剥」と「熱湯浸漬」という方法で、発芽を促さなければなりません。

「種皮削剥」とは、鉄やすりなどで種を削って、丸一日水に漬けておく方法で、「熱湯浸漬」は、沸騰させた80度ほどのお湯に、2日間浸しておく方法です。あくまで浸しておくだけで、沸騰したお湯で種をぐつぐつ煮るわけではありませんので注意してくださいね。

 

【種まきの手順】

(1)まず固い殻を一部分だけ削り、発芽しやすく育ちやすい状態を作ります。

(2)種まき前に、沸騰させた80度ほどのお湯に2日間浸しておきます。

(3)2~3週間で発芽したら、小さい鉢植えポットへ植え替えましょう。

 

まとめ

今回は、マダガスカルなどの熱帯地域で愛されているバオバブの木について、特徴や魅力、育て方などを解説してきました。

名作・星の王子さまに登場するバオバブの木は、古くから現地の人々の生活に寄り添い、衣食住を支えてきた偉大な樹木です。最も美しいとされる品種は、残念ながら絶滅危惧種に指定されていますが、栽培しやすい品種のバオバブは、栽培用の観葉植物として流通しています。

バオバブは種から育てるのも楽しい植物です。この記事でバオバブに興味を持ってもらえたら、鉢植えでの栽培や、実生からの栽培にもチャレンジしてみてくださいね。

大切なあの人にお花を送ってみませんか?