胴切りや挿し木でサボテンは増やせる?具体的な増やし方や注意点などをご紹介
トゲをまとった独特のフォルムを持つ多肉植物、サボテン。
他にはないその魅力から、観賞用の植物として人気を集めています。そんなサボテンですが、コツさえ押さえればご家庭でも増やすことが可能です。
今回は、サボテンの増やし方の具体的な方法を4つご紹介します。サボテンを増やす際に必要な道具や注意点などを詳しくご紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
4つの方法をマスターし、愛しのサボテンを増やしてみましょう。
サボテンの増やし方
サボテンの増やし方にはどんな方法があるのでしょうか。
- 胴切り
- 挿し木
- 接ぎ木
- 種まき
以上の代表的な4つの方法について、それぞれ解説します。
胴切りで増やす方法
胴切りを一言で表すと、「サボテンの剪定」です。
名前の通り、サボテンの胴体部分を切ってそこから再スタートさせる方法となっています。一般的な木と同様に、大きくなりすぎてしまった、徒長して形が崩れてしまった場合などに、胴切りによって形を整えることができます。
また、根腐れによって黄色く変色した、胴体部分が柔らかくぶよぶよになってしまった、そんな場面にも元気な胴体部分で胴切りを行い死滅を防ぐことができます。
さらに、胴切りした頭部分を新しい鉢に植え替えることでサボテンを増やすことが可能です。それでは、胴切りによってサボテンを増やす方法を見ていきましょう。
用意するもの
- 胴切りしたいサボテン
- 軍手
- 切れ味の良い刃物
- 消毒用アルコールシート
- 新しい鉢
- 多肉植物用の土
- 鉢底ネット・鉢底石
主な手順
- 刃物を消毒します。ここでは、アルコール消毒液で刃先を拭き取る想定で必要な道具を記載していますが、キッチン用の塩素系漂白剤を100倍に薄めて刃先を数秒付ける方法でも可能です。また、熱湯で煮沸消毒する人もいます。
- サボテンの胴を切ります。この時のコツは、スパッと綺麗な断面になるように切ることです。サボテンを横に倒して体重をかけるとやりやすいです。なお、切る位置については、以下を参考にご自身のサボテンを見て決めてくださいね。
- 徒長している場合:トゲの感覚が詰まっている部分から、空いている部分に変化する境目
- 根腐れしている場合:緑色で、変色しておらず、しっかりとしている胴部分の境目
- 伸びすぎている場合:木のように硬く変化している(木質化)部分を避けた部分
- 切り口を乾燥させます。切った元の部分を日当たりの良い場所に置き、30分ほど乾燥させましょう。しっかり乾燥させることでカビの発生を防ぐことができます。
- 頭部分の形を整え、乾燥させます。その後、土に刺しやすい形状にカットします。鉛筆の先のような形状に整えるイメージです。胴部分と同じように、日当たりの良い場所で30分ほど乾燥させ、明るい日陰に移動させてさらに1週間ほど乾燥させましょう。
- 頭部分を鉢に植えます。新しい鉢に、鉢底ネットと鉢底石を敷き詰め、土を入れます。頭部分の3分の1ほどが土に埋まることを目安に、土に植えましょう。
挿し木で増やす方法
挿し木とは、子株や胴切りで切ったサボテンを土に刺すことで増やす方法です。
サボテンを含む多肉植物において広く利用されています。胴切りした頭部分を挿し木にする方法は前述の通りなので、胴切りの項目をご参照ください。
こちらでは、茎から生えた小さな子株を切って育てる方法を説明します。
用意するもの
- 子株の生えたサボテン
- 軍手
- ピンセット
- 切れ味の良い刃物
- 消毒用アルコールシート
- 新しい鉢
- 多肉植物用の土
- 鉢底ネット・鉢底石
主な手順
- 子株を外します。子株をピンセットでつまみ、前後に揺らして節を外しましょう。なかなか取れない場合は、消毒した刃物で切りましょう。(※刃物の消毒方法については「胴切りで増やす方法 主な手順1」を参照。)
- 切り口を乾かします。半日陰で、1週間ほど乾かします。もし、切り口が大きい場合には、様子を見て多めに乾かしましょう。
- 乾いた用土に挿し、発根を待ちます。この時、切り口が全て土に埋まるように注意しましょう。
- 発根を確認し、新しい鉢に植え替えます。新しい鉢に、鉢底ネットと鉢底石を敷き詰め、土を入れます。発根した子株を植えたら、通常の管理方法で育てます。
接ぎ木で増やす方法
接ぎ木とは、2種類のサボテンをつなぎ合わせて育てる方法です。接ぎ木の土台となる部分は「台木」、上につなげる部分は「穂木」と呼ばれており、穂木を大きく育てたい場合に良く取られる手法です。一見難しそうに思えますが、その手順は意外と簡単です。
用意するもの
- 2種類のサボテン(台木と穂木)
- 軍手
- 切れ味の良い刃物
- 消毒用アルコールシート
- 固定用のテープ(糸でも良い)
主な手順
- 2種類のサボテンをそれぞれ消毒した刃物で、水平に切ります(※刃物の消毒方法については「胴切りで増やす方法 主な手順1」を参照)。胴切りの場合と同様にスパッと綺麗な切り口になるように意識してください。
- 土台となるサボテン(台木)の上に、くっつけたいサボテン(穂木)を載せて固定します。テープや糸などで固定しましょう。成長するにつれて一体化して、テープや糸は不要になります。
種まきで増やす方法
サボテンの花が咲いたら実を収穫し、種まきから増やす方法にチャレンジしてみましょう。他の方法に比べてややコツが必要ですが、一度にたくさんの苗を育てることができます。
また、希少な品種のサボテンでも種ならば手に入ることがあるので、種を購入して栽培に挑戦するのも良いかもしれません。
用意するもの
- プラスチック鉢(底穴が空いているもの)
- 腰水用の容器
- 土(硬質赤玉小粒2〜3mm、種まき用の土など)
- 布巾やガーゼなど
- 殺菌剤
- 熱湯
- 霧吹き
- ラップ
主な手順
- 土を熱湯消毒します。土を入れた容器に熱湯をかけて、数分間待ちます。その後、お湯は捨て、土を冷まします。
- 種を洗います。実から取り出された種には、発芽抑制物質が付いていることがあるので、ガーゼや布巾などを水で浸しもみ洗いしましょう。数回繰り返して、しっかりと発芽抑制物質を落とします。この時、30度を超えるような熱いお湯は使わないように注意してください。水かぬるま湯を使用しましょう。
- 腰水が行えるように土をセットします。まずは、土が冷めたことを確認しましょう。目安は30度以下かどうかです。続いて、腰水用の容器に水を溜め、プラスチック鉢を載せます。鉢底から水を吸えるようになっていれば、大丈夫です。
- 土の表面に種を蒔きます。この時、土は被せません。また、種と種があまりくっつかないように気をつけましょう。
- 土を殺菌します。殺菌剤を商品ごとの指示に従って薄め、霧吹きで種を蒔いた土表面に噴射します。
- ラップをかけ、表面に空気が出入りできるような穴を開けます。針などで開けた小さすぎる穴では、空気が入りづらいのである程度の大きさの穴を開けましょう。
- 強すぎず適度に日光が当たる場所に置き、朝夕に霧吹きをします。この時の水は、殺菌剤ではなく普通の水で大丈夫です。腰水も、可能であれば毎日交換しましょう。
- 芽が生え揃ったら、徐々に霧吹きの回数や腰水の量を減らし、ラップの隙間も広げて外の環境に慣れさせます。
サボテンを増やす際の注意点
ここからは、サボテンを増やす際に注意したいポイントを3つ解説します。
増やす作業は4月~5月に行う
サボテンには、生育期と休眠期があります。
サボテンの自生地の多くには乾季と雨季があるので、雨季に水をたくさん吸収して成長し、乾季には成長スピードをゆるめて水の消費を減らすためです。
日本では、春から秋が生育期にあたり、冬は休眠期にあたります。サボテンを増やす作業は、生育期が始まる4〜5月頃に行うのが最適です。生育期であれば、他の時期でも可能ですが、根腐れが起きやすい梅雨の時期と、根の成長が鈍る真夏は避けてください。
春頃、生育期のはじめに作業を行うことで、休眠期の前にはしっかり根付いてくれるでしょう。
清潔な道具を使用する
胴切りや子株を切り分ける際に使用する刃物などは、清潔な状態で使用するように意識しましょう。消毒ができていない場合には、切り口から病原菌が入る可能性があります。増やそうと思っていたのに、切り口から病原菌が入って、親株も子株も枯れてしまった、なんてことになっては元も子もないですよね。
大切なサボテンを守るためにも、使用する道具はアルコールや塩素系漂白剤での消毒、または煮沸消毒をしっかり行いましょう。
発根するまでは水を与えない
胴切りや挿し木を行う場合、発根前の水やりはNGです。
根が張る前に水を与えてしまうと、切り口から病原菌が入る恐れがあり、根腐れを起こす原因となります。早くお世話を開始したい気持ちをグッと抑えて、我慢しましょう。
サボテンを増やしたあとの育て方
無事増やすことに成功したサボテンは、どのように育てれば良いのでしょうか。
ここからは、サボテンを増やし終えた後の通常管理についてお話します。
- 水はけの良い土を選ぶ
- 日当たりや風通しが良いところに置く
- 害虫に注意を払う
以上のポイントに注意してみましょう。
水はけの良い土を選ぶ
乾燥した地域の植物であるサボテンには、水はけの良い土が必須となります。
ホームセンターなどでは、多肉植物用やサボテン専用の土が売られています。土の配合に慣れていない方や初心者のうちは、このようにプロの手によって配合された土を使うと安心です。
慣れてきたら、土の配合にチャレンジしてみましょう。この時に注意するポイントは、排水性を高くしつつ、適度な保水性のある土にすることです。一見矛盾しているようですが、小さな固まりになった土を上手く使うことで実現することができます。
代表的な配合例は「小粒赤玉土4:鹿沼土2:軽石2:腐葉土2」です。ご自身のサボテンに合わせて工夫してみると良いでしょう。
日当たりや風通しが良いところに置く
サボテンの自生地は、砂漠や高地です。そのため、たっぷりと日光に当てる必要があります。一方、強すぎる直射日光は、葉焼けの原因になることも。
理想的な置き場所は、午前中の日当たりが良く、午後には日陰になる場所です。適した場所が見当たらない場合には、ご自宅にあるものを使い日陰を作ってあげると良いでしょう。
また、サボテンは乾燥には強いものの、湿度には弱い一面があります。ジメジメとしないよう、風通しの良い場所を選ぶことも意識してみてください。
害虫に注意を払う
サボテンにも害虫が付くことがあります。代表的な害虫は、カイガラムシ、コナカイガラムシ、ワタムシ、ネジラミ、ハダニです。トゲの根本や、根の周りに白い物質を見かけた場合、それは害虫である可能性が高いです。殺虫剤を巻いたり、薬液に浸すなど、適切に対応しましょう。そもそもの対策としては、風通しの良い場所に置くことが重要です。
サボテンを増やすのに向いている品種
上記では、サボテンを増やす方法を4つご紹介しました。
ここからは、それぞれの方法に適した品種について見ていきましょう。
胴切りに向いている品種
竜神木
短いトゲに薄緑色が特徴的なサボテンです。成長が早く、丈夫です。
柱サボテン
名前の通り、柱のような形状に成長するサボテンです。大きく生長しやすいので、大きくなりすぎたら胴切りに挑戦してみると良いでしょう。
挿し木に向いている品種
バニーカクタス(うさぎ耳サボテン)
ウチワサボテンの仲間で、小型のサボテンです。子株が生えた様子がうさぎの様に見えることから名付けられました。
銀手毬
硬いトゲを持ち、手毬の様な形をしたサボテンです。群生しやすい特徴があります。
セレウス
電磁波を吸収するとの謳い文句で売られていることも多い品種です。細長い茎が特徴的です。
老楽
ふわふわとした毛が特徴的なサボテンです。一見するとトゲはなさそうですが、ふわふわの下に鋭いトゲを隠し持っているので要注意です。挿し木の作業をする際には、手にトゲが刺さらないよう軍手などを着用して作業しましょう。
月世界
丸みを帯びたフォルムが特徴的なサボテンです。トゲは柔らかく、触ってしまっても痛くないことが人気の理由の一つです。
白檀
地面を這うように成長するサボテンです。トゲはやわらかく、危険が少ない品種だと言えるでしょう。
接ぎ木に向いている品種
竜神木
胴切りに向いている品種にも挙げられていた、短いトゲに薄緑色が特徴的なサボテンです。成長が早く、丈夫なので穂木(接ぎ木で増やすために台木につがれる部分)にも向いています。
三角柱
その名の通り、三角柱の形に成長するサボテンです。成長するスピードがとても早いため、接ぎ木よりも先に寿命が尽きてしまう可能性があるため注意してください。
般若
丸みを帯びた形に、8本の稜線が特徴的なサボテンです。比較的丈夫で、大きく育つ種もあります。
短毛丸
いわゆる球サボテンと呼ばれる形の、日本でとてもポピュラーなサボテンです。
ウチワサボテン
うちわのような形状が特徴的なサボテンです。丈夫なので、穂木にする品種が弱い場合にも向いています。
種まきに向いている品種
金鯱
直径100センチ以上に育つこともある、大型のサボテンです。
野生では絶滅危惧種として指定されていますが、栽培されたものの入手は難しくないようです。
兜丸
肌にある星の様な白斑(星点)が特徴的なサボテンです。見た目の美しさからファンが多く、美しい株が流通しています。
オプンチア
オプンチアは多くのサボテンが属する属名です。実は、先ほど挿し木に向いている品種でご紹介したバニーカクタスもオプンチアの1種です。色んな種類があり、比較的栽培が簡単なので初心者にもおすすめです。
サボテンは自然に増える場合がある
挿し木をやらずとも、増えた子株が自然に落ちて根を張ることがあります。この場合は、親株とは別にもう1株増えた状態なので、別の鉢に植え替えても、そのまま同じ鉢で育てても大丈夫です。
特に、地植えのサボテンは鉢による制限がない分、増えやすい傾向にあります。
サボテンの子株が増えた際の対処法
サボテンの子株が増えたけど、落ちずに親株にくっついたままの場合もあると思います。この場合の対策も確認しましょう。
- 親株から切り離す
- 挿し木として活用する
それぞれの方法を詳しく解説します。
親株から切り離す
そのまま放置しても親株を枯らしてしまう可能性は低いものの、子株がついたままだと親株の負担にはなります。それだけではなく、見栄えも悪くなってしまいます。そうならないためにも、なるべく子株は取り外しましょう。
おおよそ2cm程のサイズがあれば、取り外しに適した状態だと言えます。
挿し木として活用する
親株から取り外した子株は、挿し木に活用することができます。
捨ててしまうのはもったいないので、是非挿し木に挑戦してみましょう。詳しい手順は、前述の「挿し木で増やす方法」を参考にしてください。
まとめ
今回は、サボテンの増やし方について幅広く解説しました。
サボテンの代表的な増やし方は、胴切り、挿し木、接ぎ木、種まきから増やす方法の4種類です。増やす際には、作業時期、道具の消毒、水を与えるタイミングに注意しましょう。