​​胡蝶蘭の花芽ができる時期は?開花サイクルや二度咲きさせる方法

美しい大輪の花で楽しませてくれる胡蝶蘭。花が咲き終わっても、きちんと管理をすればもう一度お花を咲かせてくれます。

そして、胡蝶蘭の二度咲きを楽しむためには、たくさん花芽をつけることが大切です。

 今回は、胡蝶蘭に花芽をつけるためのお手入れ方法や、花芽ができてくる時期、二度咲きまでのお手入れの方法について詳しくご紹介していきたいと思います。

美しく立派な胡蝶蘭の花を、もう一度咲かせてみましょう!

胡蝶蘭の基本情報

科・属 ラン科・ファレノプシス属
和名 胡蝶蘭(こちょうらん)
英名 Phalaenopsis, Moth Orchid
学名 Phalaenopsis aphrodite
原産地 東南アジア

胡蝶蘭は鉢植え姿がおなじみですが、実は土を必要としない植物です。鉢には土ではなく、水苔やバークなどの植え込み材が入っています。

自生地では、土に根付かずに、周囲の木や岩肌に根を絡みつかせて育っているので、鉢内でもなるべく自生環境に近づけようとしているのです。

胡蝶蘭の特徴的なぐねぐねとしている根は、土のない過酷な環境下の中で空気中から水分を取り入れようと発達させてきた姿です。肉厚な花びらや葉も、取り込んだ水分や養分を多く蓄えるために厚みを持っています。

胡蝶蘭の寿命は、長く生きると50年以上にもなると言われるほど、とても生命力の強い植物です。

 

胡蝶蘭の本来の開花時期は?

胡蝶蘭は贈答品としての汎用性が高く、ビジネスシーンでも使いやすいお花なので、通年入手できるように温室栽培が進んでおり開花時期が調整されています。

研究により、胡蝶蘭は高温環境では開花せず低温環境にさらして温度差を経験させることにより開花が促進するというメカニズムが判明しました。

今では一年中開花した美しい姿で買い求めることができますが、本来はいつ頃に開花するお花なのでしょうか。

原産地の熱帯地方での開花時期は、日本では1〜5月にあたります。ただし日本の1月というと、春にはほど遠く寒さが厳しい季節で、氷点下を切る日もしばしばです。

暖かい地域で育つ胡蝶蘭には日本の寒さはとても厳しいので、日本では4〜5月頃が開花期になります。

 

そもそも胡蝶蘭の花芽とは

「花芽(はなめ)」とは、新しく花を咲かせるために伸びてくる茎のことを言います。

生えてきたばかりの花芽は、胡蝶蘭の特徴でもあるぐねぐねとした根に間違われやすいのですが、根は全体的に白っぽく、先端が茶色く色づいていきます。

花芽は緑色をしていて、太陽の光に向けて伸びていく習性を持っていますので、見分ける際のポイントにしましょう。

植物にとって、開花している間はたくさんのエネルギーを消費しています。胡蝶蘭は特に開花期が長い植物で、1〜2ヶ月は花を咲かせていますから、株はかなり消耗しています。

胡蝶蘭の株に十分なエネルギーが蓄えられると、花芽がどんどんついてきますよ。

20度くらいの気温が、胡蝶蘭にとってはいちばん過ごしやすい温度です。春から初夏までの間に花芽が生長して、長い花茎(はなくき)となってくれれば、また新しく美しい花を咲かせてくれるでしょう。

胡蝶蘭の花芽ができるサイクル

では、胡蝶蘭の花芽ができるサイクルを順番に見てみましょう。

 

1.休眠期に花芽ができはじめる

 胡蝶蘭は冬に休眠期を迎えますが、葉の付け根あたりをよく観察していると、11月頃からだんだんと花芽が顔を覗かせはじめます。

新しい根も生やすため、初めは混同しやすいですが、花芽は緑色で、根は白っぽい色をしています。

ただし、花芽が新しく出てきたとしても株は休眠期中ですので、春先まではかなりゆっくり生長していきます。

 

2.花芽が伸びてつぼみができる

桜が散り終えて、日中の気温が20度前後で安定しはじめると、やっと花芽が生長してきます。花芽が生長していくと長い花茎となっていき、初めのうちは横に伸びていますが、だんだんと上向きに育ち、茎の先端につぼみを作りはじめます。

花芽は太陽のほうへ向かって伸びていくという性質があるので、花芽の上のほうから日の光が降り注ぐよう、明るい窓際などに鉢を移して管理すると良いでしょう。

つぼみを作りはじめた頃は、水が不足しないように注意して管理してください。霧吹きなどを使って葉水を行うのも効果的です。

 

3.花茎が伸びたら支柱で支える 

花茎は、大輪の胡蝶蘭だと70cmほど、小輪の胡蝶蘭だと20cmほどにも伸びていきます。大輪のものは30cmほど、中・小輪のものは10cmほどに花茎が生長してきたら、支柱を使って茎を支えましょう。支柱を使わずにそのまま伸ばしてしまうと、茎の見栄えが悪くなり、花つきがきれいになりません。

洋ラン用の支柱が販売されていますので、茎と同じ長さくらいの目安で支柱を用意し、根を傷めないよう慎重に土へ差し込みましょう。

茎を誘引するために、専用クリップや針金などで、きつくなりすぎないよう軽く括って固定します。茎が折れてしまったり傷ついてしまったりしないよう、十分注意して作業を行なってくださいね。

花茎が伸びていくにつれ、茎が垂れ下がっていきます。

 

4.つぼみが膨らんでいく

つぼみを育てている時期は、湿度が足りていないとつぼみが変色したり、せっかくついたつぼみが落ちてしまったりするため、霧吹きなどで葉水を行い、空気中の湿度管理を怠らないようにしましょう。

この時期は、鉢の置き場所を頻繁に変えてしまわず、管理場所や鉢の向きを一定にするよう意識してください。

太陽に向かって花芽をつける胡蝶蘭の性質を活かして、きれいに揃った花の向きを作ることができますよ。

 

5.いよいよ開花

胡蝶蘭は、冬の寒さにさらすことで開花が促進されます。

低温環境を経験した株は、5〜6月頃に開花してくれます。冬の間、暖かい室内でずっと管理していると開花が進みませんので、ほどよく寒さにさらしておくことがポイントです。

 

二番花を咲かせたいときは

「二番花」とは、通常は年に1度しか咲かない胡蝶蘭の花を、年に2回咲かせるという方法です。

美しい花を2度も楽しめる一方で、株にはかなりの負担が掛かってしまいます。二番花を咲かせたい場合には、株にそのエネルギーが残っているのかどうか、健康な状態なのかどうかが重要になってくるでしょう。

ただし、二番花を咲かせることによって、その次以降の花が咲きづらくなったり、胡蝶蘭の株自体の寿命が縮んでしまうというリスクもあります。

 

葉の様子を観察してみよう

開花できる株かどうかを見極めるには、葉の枚数や様子を確認してみましょう。

葉の枚数が3枚以上あれば、十分な栄養や水分を蓄えられるでしょう。大きめで、健康的な緑色をしており、つやもある葉が理想的な状態です。

株に十分な元気があれば、根から2〜3節ほど残して切り戻しを行います。すると切り口から花茎が生えていき、夏には二番花を咲かせてくれるでしょう。

胡蝶蘭の花芽は、複数生えてくることがありますが、開花には多くのエネルギーが必要です。せっかく花芽が出てきても、株が開花させられるだけのエネルギーを持っていなければ、うまく花が咲きません。

もし葉の健康状態があまり良くなければ、複数出ている花芽を間引く必要があります。せっかく芽を出してくれたのでもったいないのですが、欲張ってすべて咲かせようとして、どれも咲かせられなかったという場合も大いにあり得ます。

ひとつの花芽に絞り、きちんと咲かせてあげられるようお世話していきましょう。

 

肥料で生長を助ける

花芽が出てきた頃に肥料を与えると、生長が促進されて花が咲きやすくなります。

胡蝶蘭には、洋ラン用に販売されている肥料を希釈して与えるのがおすすめです。

肥料が濃すぎたり、適量以上を与えてしまったりすると、反対に株が枯れてしまうこともありますので、用量を守って与えてください。

水で薄めて与えるタイプの液体肥料は、霧吹きなどで水やりも兼ねて与えると良いでしょう。

花芽の出てきた5月頃から肥料を与えて、9月頃には肥料を中止します。10月以降は株がだんだんと休眠期に移行していきますので、水やりの頻度も減っていきます。

休眠期に肥料を与えていると、栄養過多による肥料焼けを起こしてしまうので、与えないよう注意してくださいね。

 

水やりの頻度を調節

胡蝶蘭に花芽がついてきた頃には、水やりの頻度を増やしてお世話していきましょう。だんだんと水苔などが早く乾燥するようになってきますので、こまめに観察して乾燥していれば水を与えるようにします。

一方で、胡蝶蘭が開花している間は、水をあげすぎると花期が短くなる傾向があります。これは、葉に水分を蓄えようとして、開花にまで手が回らなくなってしまうためです。

なるべく長く花を咲かせたい場合には、水やりの頻度は少なめにするよう心がけてお世話してください。

 

胡蝶蘭に花芽をつける準備をしよう

最初の花を楽しんだ後や二番花を満喫した後には、しっかりと株が養分を蓄えられるように手助けをしなければなりません。ここで株をきちんと休ませることで、次の春にはまた美しく花を咲かせてくれます。

続いては、胡蝶蘭の花をもう一度咲かせるために、どんなお手入れが必要なのかをご紹介していきましょう。

 

根元からカットして株を休ませる

まずは、新しい花芽をつけるために株を休ませる準備を整えていきます。

清潔なハサミや刃物を用意して、節を残さずに根元から花茎を切り落として、株を葉だけの状態にしましょう。

茎や花に栄養を行き渡らせる必要がない分、株に栄養を回しやすくなり、回復が早まります。

 

株ごとに植え替える

基本的には、胡蝶蘭は1つの株に1本の花茎をつける植物です。

贈答品として販売されている胡蝶蘭は、いくつかの株をひとつの鉢に寄せ植えて売られています。3本立てなら3株、5本立てなら5株といった具合です。

寄せ植えされている状態だと、風通しも悪くなりますし、栄養がすみずみまで行き渡りにくくなってしまいます。

じっくりと株を休ませるためにも、1株ずつ新しい鉢へ植え替えましょう。

植え替え作業は植物にとって負荷がかかりますので、生育期の間に行うのがおすすめです。胡蝶蘭の植え替えは真夏や真冬を避け、4〜6月頃に行うのが適期でしょう。

遅くとも6月までには植え替え作業を終えて、株が回復できるようにします。

 

【植え替え手順】

  1. 寄せ植えされた鉢から、全部の株を取り出してポリポッドなどを外します。
  2. 根に付いた植え込み材などを丁寧に取り除き、根を整理します。
  3. 変色している根や黒ずんでいる根、腐っている根があれば切り落としましょう。
  4. それぞれの根を新しい植え込み材で巻き付けて、別々の鉢へ植え替えます。
  5. 10日〜2週間ほどは水やりを控えて、以降は普段どおりにお世話していきます。

 

胡蝶蘭の花芽が出ない…その原因は?

「また胡蝶蘭の花を楽しみたい!でも、花芽がなかなか出てこない……」とお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。

そこで、胡蝶蘭の花芽が出てこないときに考えられる原因を、3つほど挙げてみました。

どれか思い当たる原因がある場合には、ぜひ改善の参考になさってみてください。

 

株に養分が足りない

まずいちばん考えられる原因が、株全体に養分が足りておらず、育成不足になっているケースです。

この場合、株には全体的に元気がなく、葉の枚数が少なかったり、葉が垂れてしまっていたりします。胡蝶蘭の根元が開いてしまっているときも、株が少しでも水分や養分を吸収しようとしている状態です。

元気な胡蝶蘭の株は、全体的に引き締まっていて、葉が5枚以上ついていてどれも色つやが良く、フレッシュな印象です。

株を元気にさせるためには、風通しが良く直射日光の当たらない場所に鉢を置き、管理温度が20度前後になるように調整します。また、霧吹きなどで葉水をこまめに行なったり、湿度を調整してあげたりするのも効果的です。

 

生育環境が適していない

胡蝶蘭はとても生命力が強くたくましい植物で、環境が適していれば10年以上も育つ植物ですが、もともとは熱帯地域が自生地であるため、日本の環境は苦手です。

本来の自生環境では、胡蝶蘭はうっそうとしたジャングルなどで、木の枝や岩肌などに絡みついて着生して育ちます。そのため、木漏れ日が差すような柔らかい日差しを好む植物なのです。

室内の窓際などで育てる場合には、レースカーテン越しやブラインド越しに日光が当たるように調節して鉢を管理しましょう。強すぎる日光は、胡蝶蘭の葉が葉焼けを起こす原因になります。葉焼けを起こしてしまうと、葉の葉緑体組織が壊死してしまい、光合成を行うことができなくなります。そして、葉焼けによって破壊された組織は再生できません。

植物にとって、光合成はエネルギーを作る大切な生命活動です。光合成のできる葉の枚数が減る分、作られるエネルギーも減ってしまい株に必要な栄養分が足りなくなってしまいますから、葉焼けには十分注意してくださいね。

 

軟腐病になっている

胡蝶蘭は基本的には丈夫で育てやすい観葉植物ですが、かかりやすい病気として「軟腐病(なんぷびょう)」が挙げられます。

軟腐病とは、葉がふにゃふにゃと柔らかくなってしまい、独特の不快な匂いを漂わせます。葉が腐っている状態ですので、このままでは花芽が出てきません。

胡蝶蘭が軟腐病になってしまっていたら、病気にかかった葉を早く取り除き、多湿環境を避けた風通しの良い場所でしばらく管理していると、株が回復してくれるケースもあります。

 

また、葉に黒色の斑点が表れて、徐々に葉が黒ずんでいく「炭そ病」という病気もあります。これはカビの胞子が飛散することでかかってしまう病気で、株が弱っていたり、直射日光に当てたことによる葉焼けなどで葉が弱っている場合にかかりやすい病気です。

発病した葉の部分は、清潔なハサミなどで切り取りましょう。

黒ずんでいる範囲が狭ければ、切り取った箇所に薬剤を塗布しておきますが、変色が広範囲に及んでいる場合には、葉ごと切除してください。

カビが原因による病気の場合は、胞子が飛散することで他の健康な植物にも被害が及びます。病気にかかっている鉢植えは隔離して、他の健康な鉢植えに二次被害が及ばないよう注意しましょう。

 

まとめ

今回は、胡蝶蘭の花芽ができる時期や、花茎を育てていく方法、二度咲きさせる方法など、胡蝶蘭の開花のお手入れについてご紹介してきました。

熱帯地域が原産地の胡蝶蘭は、乾燥と低温にさらされる日本の冬が苦手です。しかし、丈夫に冬越しさせることができれば、また春には新しい花を咲かせて楽しませてくれることでしょう。

自分できちんとお手入れして咲いてくれた花には、喜びや感動もひとしおですよね。

ぜひお手持ちの胡蝶蘭を、愛情のこもったお世話で長く楽しんでくださいね。

大切なあの人にお花を送ってみませんか?