切ない物語があるワスレナグサ|特徴や花言葉、育て方は?

涼しげで、どこか儚い雰囲気の漂うワスレナグサは、青い小花をたくさん咲かせるお花です。優しい雰囲気のお花は小ぶりな花束にするのも素敵ですし、ガーデニングでお庭に植えるのも素敵ですよ。

 

「忘れな草」という名前からもわかるように、和名でも英名でも「私を忘れないで」の意味が込められているワスレナグサは、花言葉にも同じ意味があります。

今回は、名前や花言葉の由来になった切ない恋人たちの物語から、花言葉や育て方、品種などについて、ワスレナグサの魅力をじっくりとご紹介しましょう。

 

ワスレナグサの基本情報

まずはワスレナグサの基本情報を見ていきましょう。

科・属 ムラサキ科・ワスレナグサ属
和名 勿忘草、忘れな草
英名 forget me not
学名 Myosotis
原産地 ヨーロッパ

和名では「忘れな草」、英名では「forget me not」と、少し切ないイメージの名前ですね。

 

ワスレナグサの特徴

ワスレナグサにはさまざまな花色があるのですが、中でも青紫色の爽やかな花姿がポピュラーです。涼しげでありながらもどこか儚げなその姿には、ワスレナグサという名前がぴったりなように思えます。

夏の涼しげな風景によく似合う可憐な印象のワスレナグサですが、実はこぼれ種でどんどん増えていく生命力の強さも持ち合わせているのです。

横へ横へとどんどん広がっていく性質を持っているので、ガーデニングのグラウンドカバーにも適していますよ。

ひとつひとつはとても小ぶりな花ですが、その繁殖力から地面を埋めるように広がり、10〜50cmほどの花茎をたくさん立ち上げるので、なかなか見応えのある姿になります。

 

自生地であるヨーロッパ地方では多年草なのですが、日本では一年草に分類されています。

これはワスレナグサがとても暑さに弱いため、日本の暑さに耐えられず、3〜6月と比較的長い開花時期が終わった後に、夏越しができずそのまま枯れてしまうためなのです。

 

ワスレナグサと同じムラサキ科の花には、観光名所としても人気の高い「ネモフィラ」も仲間に入ります。青みがかった花色と、繊細で儚げな姿が似ていますよね。

葉を擦るとキュウリの匂いがする「キュウリグサ」も、同じムラサキ科の仲間です。

 

ワスレナグサの名前の由来

ワスレナグサには「forget me not(私を忘れないで)」という英名があり、この英名が訳されて、和名の「忘れな草」や「勿忘草」となりました。

これはワスレナグサの花言葉にもなっており、その由来は中世ドイツの恋人たちの物語にまで遡ります。この話については、後述で詳しくご紹介していきますね。

 

属名である「myosotis(ミオソティス)」は、ギリシャ語でハツカネズミという意味の「myos」と、耳を意味する「otis」が組み合わされた言葉です。

ワスレナグサの葉に生えている柔らかく細長い毛が、ハツカネズミの耳に似ている様子に由来しています。

 

花言葉「私を忘れないで」

ワスレナグサには、「私を忘れないで」という花言葉があります。

これはワスレナグサ全体の花言葉で、実は花の色別にも花言葉があるのです。

全体 「私を忘れないで」
「真実の愛」「誠の愛」
ピンク 「真実の友情」
「私を忘れないで」

青のワスレナグサには、「真実の愛」「誠の愛」という誠実な思いのこもった花言葉があります。大切な人や恋人などへも贈りやすい花言葉ですね。

そしてピンクには「真実の友情」の花言葉があります。華やかなピンク色の雰囲気が、友情への誠実さを物語るようです。

ちなみにヨーロッパでは、ワスレナグサは友情のシンボルとして親しまれており、変わらぬ友情の証として、卒業式に友人同士で贈り合うという習慣もあるそうです。

そして白には、全体と同じく「私を忘れないで」の花言葉があります。

白いワスレナグサは、青やピンクなどの花色と比べると少ないため、そういった意味でも忘れないでという花言葉が合っているかもしれませんね。

 

ワスレナグサには紫の花色もありますが、紫色には色別の花言葉がありませんので、紫色のワスレナグサを贈りたい場合には、全体の花言葉を当てはめるといいでしょう。

紫には青寄りのものやピンク寄りの色味がありますので、色の偏り具合によって花言葉を当てはめて考えてみるのも良いかもしれませんね。

 

ワスレナグサと神話

さて、名前の由来にもなっている切なげな「私を忘れないで」の花言葉は、中世より伝わるドイツの悲しい恋物語に由来しています。

 

若い騎士ルドルフと、その婚約者のベルタが、ある日ドナウ川の湖畔を散歩していました。ふと、ベルタは川辺に咲いた美しい花を見つけます。

ルドルフは愛するベルタを喜ばせようとして、その花を摘むために岸を降りていきますが、足元を滑らせてしまい川へと落ちてしまいます。

ドナウ川の流れはとても早く、ルドルフは鎧を着ていたために身動きが取れません。

川に流されながらも最後の力を振り絞って、手に摘み取った花を必死の思いで岸辺に投げて、ベルタへ「Vergiss-mein-nicht!(僕を忘れないで!)」と叫び、これがルドルフの最期の言葉となります。

最愛の恋人を亡くしたベルタは、この花を髪に飾って、生涯ルドルフを想い続けました。

人々はこの花を「vergissmeinnicht」と呼んで、切ない恋人たちの物語を語り継いだそうです。

 

おそらくベルタは、自分が花に気付かなければ……と生涯後悔し続けたに違いありません。

そんな自分への戒めの気持ちもありつつ、恋人を忘れたくない想いから、ワスレナグサを髪に飾り続けたのでしょうか。

なんとも切ないお話ですが、この中世ドイツの恋人たちのお話から、ワスレナグサは世界各国で「私を忘れないで」という意味の名前が付けられています。

「真実の愛」や「誠の愛」といった花言葉も、この物語に由来しているのですね。

 

ワスレナグサの品種

そんな切ないストーリーを持つワスレナグサですが、ヨーロッパをはじめとする地域に、約50種類以上自生しているそうです。

世界では一般的に「スコルピオイデス(Myosotis scorpioides)」が、本来のワスレナグサとして呼ばれています。

しかし日本では、園芸品種として親しまれる「エゾムラサキ(M. sylvatica)」や「ノハラワスレナグサ(Myosotis alpestris)」がワスレナグサとして多く流通しているようです。

次は、ワスレナグサの品種について、代表的な種類をご紹介したいと思います。

 

ノハラワスレナグサ

白い軟毛が生えている「ノハラワスレナグサ」は、日本の園芸界でワスレナグサとして流通している品種になります。

学名は「Myosotis alpestris」で、「alpestris(アルペストリス)」とは「亜高山の」という意味になります。

ヨーロッパのアルペン山脈やピレネー山脈など、標高の高い草原などに自生しています。

卵形の丸みを帯びた葉には柔らかな毛が生えてふわふわしており、薄い青や濃い青色の花が美しい品種です。

英名では「alpine forget-me-not」と、こちらにも「私を忘れないで」の英語が含まれていますね。

 

シンワスレナグサ

シンワスレナグサは、淡くみずみずしいブルーの小ぶりな花を咲かせる可愛らしい品種です。

学名は「Myosotis scorpioides」で、「scorpioides(スコルピオイデス)」とは「蠍の尾のような形」という意味を指します。シンワスレナグサの花序の様子が蠍の尾のように見えることが由来です。

英名では、他のワスレナグサの品種と分けるために「true forget-me-not」と付けられており、西洋においてはこのシンワスレナグサが一般的な品種であるため、「true」と名付けられています。

花の見映えなどから園芸品種としては普及していないので流通はかなり少ないです。

国内では野生化したシンワスレナグサを見ることができるので、探してみてくださいね。

 

ワスレナグサの育て方

小さな青い花がたくさん開花する様子はとてもきれいで見応えがあります。

ワスレナグサは比較的育て方が簡単ですので、ガーデニングに取り入れてみてはいかがでしょうか。

ここからは、ワスレナグサの基本的な育て方をご紹介していきます。

 

苗の選び方

ワスレナグサの苗は、新年度を迎えてからだんだんと流通数が増えてきます。

花の色や草丈などが品種によって異なりますので、自分のイメージに近い品種を選びましょう。

苗を選ぶときは、葉が茶色く変色していたり、葉がしなびて元気のなさそうな株は、水切れを起こしている可能性がありますので、購入を避けます。

葉が健康的な緑色で生き生きとしており、これから花が咲き出すような若い元気な苗を選べば、根が張りやすいので多くの花が咲く様子を楽しめますよ。

 

置き場所

ワスレナグサは、風通しと日当たりの良い場所を好むので、明るい日なたで管理しましょう。すでに花が咲き始めている苗から育てるのであれば、半日陰くらいの場所でも育ってくれます。

水辺や湿潤を好むワスレナグサですが、水はけが悪い花壇だと株が傷んで腐りやすいため、排水性にすぐれており、かつ水保ちも良い環境が理想です。通気性の良い土を選び、過湿状態や蒸れを予防しましょう。

水切れもしやすいため、乾燥しすぎないようにそこそこの水保ちも必要になってきます。

鉢植えの場合には、市販されている草花用の培養土を使用してください。

 

日本の夏には弱いワスレナグサですが、寒さには強いため、霜が降りる場所では管理しないようにすれば、特別に冬越しを意識しなくても問題ないでしょう。

 

水やり

ワスレナグサは湿地に自生している草花なので、水切れを起こすと傷んでしまいます。

鉢植えの場合には、土の表面が乾いていたら、鉢底からたっぷり流れ出てくるほど水を与えてください。

地植えの場合には、根付いてから水やりをせず降雨に任せていても構いませんが、土がとても乾いているときには、水切れを起こして株にダメージが及ぶ前に水を与えましょう。

 

肥料

ワスレナグサは肥料を多く与え過ぎてしまうと、葉の量がかなり増えて花つきが悪くなってしまいます。

生長具合を観察しつつ、説明書に書かれている適量よりもやや薄めに希釈して与えるくらいがちょうど良いかもしれません。

鉢植えの場合、植え付ける際に元肥として緩効性化成肥料を混ぜ込んでいたら、草花用の肥料を追肥するか、液体肥料を与えていきます。

 

剪定

夏越しができないワスレナグサには剪定は必要ありませんが、咲き終わったワスレナグサの花がらは、こまめに摘み取っておくことで、より長く花を楽しむことができますよ。

ただし、花がらを摘んでしまうと種ができず、こぼれ種による繁殖が期待できませんので、こぼれ種によって増やしていきたい場合には花をそのままにしておき、自然に枯れていくのを待ちましょう。

夏前にはぐんぐんと茎が伸びますので、ハサミなどで茎を切り、お家で切り花として活けても良いですね。

 

病気や害虫

風通しが悪い環境で管理していると、春にアブラムシが寄生する場合があります。

若い芽や茎、葉の裏などを好んで寄生しているので、発見次第、すみやかに駆除しましょう。

アブラムシは、植物を吸汁して養分を奪い取り、だんだん株を弱らせていきます。放置して大量発生してしまうと、アブラムシの排泄物による二次被害も考えられますし、最悪の場合は養分が足りなくなって株が枯れてしまうこともあるのです。

 

また、病気では灰色カビ病に注意が必要です。

カビ(糸状菌)によって引き起こされる病気で、感染した部分から広がっていくため、病気にかかった葉は取り除いて捨てましょう。

病気の葉を近くに置いておくと、他の植物に感染したり、まだ健康な葉にもカビが移ってしまったりするので、離れた場所で始末します。

 

アブラムシ同様に、風通しが悪く湿度の高い環境下で起こりやすい病気なので、葉に付着した水滴が乾かないままだと感染リスクが高まります。

水やりの際には、株の根元に直接水を与えるよう注意すると、リスクを軽減できるでしょう。

アブラムシも灰色カビ病も、適度に日光に当てて風通しの良い場所で管理することにより、寄生や発症を予防することができますよ。

 

ワスレナグサの増やし方

ワスレナグサは、基本的には種まきで増やしていくのが主流です。

好きな品種の市販の種を選んだら、9月〜10月下旬頃に種まきを行ないましょう。

ワスレナグサは生命力の強い花なので、もし苗から育てている場合には、開花後にこぼれ種によって増やしていくこともできます。

こぼれ種で増やす場合には、咲き終えた花を摘み取らず、枯れるまで放置しておけば大丈夫です。

ワスレナグサの種は、さやがはじけたところで発芽してしまうほど繁殖力が強いので、放置していても勝手に育っていってくれますよ。

 

種まき

ポット植えの場合でも花壇に直接植える場合でも、種まきの前にはしばらく吸水させるのを忘れないようにしてくださいね。

 

【種まきの手順】

  1. 種まきの前に、種を半日ほど水に浸けて吸水させておき、発芽しやすくします。
  2. ポットに数粒ずつ並べる場合には20〜30cmほどの間隔を空けておきます。
  3. 種子は発芽に光が必要ない嫌光性なので、3cmほど土を被せて日光を遮りましょう。
  4. 株が生長して春頃に花つきが悪くなったら、茎の付け根から切り戻します。

※お庭の花壇や鉢などに直接種まきしても発芽します。

 

冬越しさせた種まきで発芽した苗は、春に植え付けましょう。

ワスレナグサは、生長していくにつれて横にボリュームアップしていく植物なので、株同士の間隔は20〜30cmは空けておくとベストです。

若い苗をなるべく早く植え付けるのが、根付きやすくなるポイントとなっています。植え付ける際には、根を傷つけないように丁寧に取り出して植え付けてください。

 

寄せ植えやアレンジにワスレナグサを使おう

ワスレナグサは、近年では切り花としても人気が高いので、多く流通しています。

横に広がって繁殖していく性質を利用して、ボーダー花壇のグラウンドカバーとしても優秀なお花ですよ。

お庭や花壇を彩るガーデニングの仲間としてはもちろん、寄せ植えにもおすすめの草花です。

品種によって草丈が異なりますので、寄せ植えのバランスに合う品種を選んで配置するとぴったりはまってくれるでしょう。

寄せ植えでは、同じカラートーンでまとめれば落ち着いたシックな雰囲気を、色とりどりの花をバランスよく配置すれば、花畑のようなにぎやかな印象になります。

ぜひあなた好みの寄せ植え作りに、ワスレナグサを取り入れてみてくださいね。

 

まとめ

今回は、儚げな名前が印象的な花、ワスレナグサの花言葉や育て方、アレンジなどについてご紹介してきました。

ドイツの恋人たちの悲しい物語があるワスレナグサですが、花色が変わると花自体の雰囲気もだいぶ変わります。ワスレナグサの花言葉には怖い意味はありませんので、花束にして贈るのもおすすめですよ。

繁殖力の強いワスレナグサは、ガーデニング植物としてもおすすめです。この機会にぜひ、あなたもワスレナグサを育ててみませんか?

大切なあの人にお花を送ってみませんか?