梅雨のシンボル・アジサイの花言葉や特徴は?

梅雨の時期は、雨続きで洗濯物が乾きにくくなり、じめじめとした蒸し暑さで気分が下がりがちです。そんな梅雨でも、アジサイの花を見かけると心が明るくなれますね。

雨の日に雨露に濡れているアジサイは、活き活きとしていて美しさが増しています。

今回は、日本の梅雨を代表するアジサイについて、花の特徴や花言葉、人気の品種などをご紹介して、アジサイの魅力をたっぷり掘り下げていきたいと思います。

 

アジサイの基本情報

科・属 アジサイ科・アジサイ属
和名 紫陽花(あじさい)、七変化(しちへんげ)、八仙花(はっせんか)
英名 Hydrangea
学名 Hydrangea macrophylla
原産地 日本
花言葉 「和気あいあい」「家族」「一家団らん」「高嶺の花」「移り気」「浮気」「無常」

アジサイ科アジサイ属のアジサイは、日本を原産とする落葉低木です。

5月の終わり頃から7月にかけて訪れる日本の梅雨の時期は、アジサイの開花期とちょうど重なります。

日本を原産地とするアジサイは「ガクアジサイ」という品種です。

このガクアジサイが輸出され、西洋で品種改良されたものを逆輸入したのが「セイヨウアジサイ」になります。

 

花に見える部分は萼

私たちがアジサイを眺めて、花びらだと思っている部分は実は花びらではなく、葉が変化してできた「萼片(がくへん)」という組織です。

この萼は別名で「装飾花」と呼ばれています。この萼に守られるように「両性花」と呼ばれる本来の花が咲いているのですが、装飾花は両生花が受粉しやすいよう、その美しさで虫を惹きつける役割を持っています。

 

名前の由来

アジサイという名前は、「あづさあい」という呼び方が徐々に変化していき、現在の呼び名になっています。

この「あづさあい」は、「あづ」と「さあい」の2つの言葉に区切って考えると分かりやすいのですが、まず「あづ」は、小さなものが集まる様子を指しており、「さあい」とは藍色を指す「真藍(さあい)」を表しています。

古くから日本に自生していたのは藍色のガクアジサイであったことから、こうした呼ばれ方になったのですね。

アジサイと聞いただけでは分かりにくいですが、小さな藍色の花たちがたくさん集まっているアジサイの姿が、そのまま表されている名前です。

ちなみに、学名や英名にもなっている「ハイドランジア」とは、「水の器」という意味のラテン語が語源となっています。

水を好み、梅雨の時期に活き活きと開花するアジサイにはぴったりな言葉ですね。

 

「紫陽花」と表記される理由

では、いったいなぜ漢字では「紫陽花」と表記されるようになったのでしょうか。この表記は、詩人の白楽天による「白氏文集律詩」の中の漢詩が由来だと考えられています。

由来になった一説によると、白楽天は友人にとある花の名前を聞かれたときに、「陽光に映える紫色の花なので、紫陽花とでもしておこう」と詠んだそうです。しかし、白楽天の生きた唐時代には紫陽花はまだなく、別の花の名前を聞いていたものと思われますが、この漢詩を読んだ歌人兼学者の源順(みなもとのしたごう)がガクアジサイのことだと勘違いをしたために、当て字で「紫陽花」と表記されるようになりました。

 

アジサイは自然のリトマス試験紙

アジサイは、育つ土の性質によって色が変わる花です。

これは土の酸性度(ph)が影響しています。アジサイには、色素であるアントシアニンが含まれており、このアントシアニンはアルミニウムと結合すると、青色に変わる性質を持っています。

アルカリ性の土壌環境だとアルミニウムが溶け出しにくいので、赤色になるのです。つまり、土壌が酸性だと青色に、アルカリ性だと赤色に変化するということですね。理科の実験で使われるリトマス試験紙を思い出します。

日本で咲いているアジサイに青系が多いのは、酸性の土が多いためです。ヨーロッパなどではアルカリ性の土壌が多いため、赤系であるピンク色のアジサイが多く咲きます。

 

ガクアジサイとセイヨウアジサイの違い

同じアジサイでも、ガクアジサイとセイヨウアジサイでは咲き方が異なります。

ガクアジサイは、両性花を囲うようにして周りに萼片があります。その形状が額縁のようであることから、ガクアジサイと名付けられました。

そしてこのガクアジサイが輸出され、品種改良後に逆輸入されたセイヨウアジサイは、手毬のようにころんとしたフォルムをしています。

よく絵葉書やカレンダーなどのイラストとして描かれているような、おなじみのアジサイの姿です。ガクアジサイよりも装飾花のボリュームが多いため、華やかに見えますね。

 

母の日のフラワーギフトにも人気

切り花をはじめ、鉢植えやドライフラワーの花材としても人気の高いアジサイですが、近年では母の日のフラワーギフトとしても人気を博しているお花です。

母の日に贈るお花といえば定番はカーネーションですが、あえて定番のお花ではなく、アジサイの鉢植えを贈る方も多いのです。

鉢植えであれば長く開花を楽しんでもらえますし、お庭があれば花が終わってから地植えをして育てていく楽しみもあります。

 

母親に花の贈り物がしたいと思っている方は、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください。

母の日にピッタリの花言葉を持つ花13選!

 

アジサイは毒を持っている?

以前、料理の添え物として出されたアジサイを食べた方が、中毒症状を訴えたという事例がありました。

アジサイに毒性があるのかどうかは、現段階では明確になってはいませんが、毒性を持つ品種と持たない品種があるのではないかということが調査で判明しています。

すべてのアジサイに毒性があるわけではなく、一部の品種のみ毒を持っているというわけです。

もし毒性のあるアジサイを誤食した場合は、めまいや嘔吐、ふらつきなどの症状が見られますが、2〜3日で症状は回復するそうです。

こうした中毒症状が現れるのはアジサイを口にしたときのみで、普段葉に触れたりお世話したりする分には無害です。

 

アジサイの花言葉

アジサイの花言葉には、あまり良いイメージを持っていない方が多いかもしれません。

先述したように、アジサイの花は土壌によって花の色が変化します。この性質から、「移り気」「浮気」「変節」という花言葉を持っているためです。

ですが、花言葉というものはネガティブな意味とポジティブな意味をどちらも持ち合わせているものです。

こうしたネガティブな花言葉を持ちながらも、アジサイには「和気あいあい」「家族」「一家団らん」といった素敵な花言葉があります。

小ぶりな花が集まって仲良く咲いている姿から、家族の円満が思い浮かべられたのですね。

さらにアジサイには、色別や品種ごとにも花言葉を持っています。

 

 

【アジサイの色別の花言葉】

「知的」「神秘的」「辛抱強い愛」「冷淡」「無情」
ピンク 「元気な女性」「強い愛情」
「謙虚」「清澄」「神秘」
「寛容」「一途な愛」
「ひたむきな愛」

 

それでは、色別の花言葉について、言葉の由来などをひとつずつ見ていきましょう。

 

青色の花言葉

まずはアジサイの代表的な色ともいえる、青色の花言葉です。

青色の持つ雰囲気からか、「知的」や「神秘的」という花言葉があります。他にも、「冷淡」「無常」といった花言葉もありますが、冷たい雨の中でも咲く姿から連想されたのでしょう。

他にも、「辛抱強い愛」の花言葉がありますが、こちらは少し悲しい恋人たちのエピソードが基になっています。

ドイツ人医師のシーボルトは、日本での滞在中に小滝という女性に惹かれて2人は恋仲になります。しかし、シーボルトはスパイの疑いをかけられてしまい、日本国外を追放されてしまうのです。

無実の容疑で最愛の女性から引き離されてしまったシーボルトは、帰国の際に持ち帰ったアジサイに、愛する女性である小滝の名前から「オタクサ」と名付けて、彼女のことを想いました。このエピソードから、「辛抱強い愛」という花言葉が付けられています。

 

ピンク色のアジサイの花言葉

フランスやヨーロッパでは気候的に降雨が少なく、土壌はアルカリ性のものが多くなります。そのため、フランスで咲くアジサイにはピンク色が多いのですが、日本で多く見かける淡いピンク色ではなく、赤に近いような鮮やかな濃いピンク色が見られます。

フランスでも日本と同じく6月から7月頃にかけてアジサイが開花しますが、雨が少なくても晴れ空の下で元気に咲く姿は、日本で見るアジサイとはかなり違った印象を受けそうですね。

青や紫のアジサイとは違った、明るく華やかな雰囲気を持つピンク色のアジサイには「元気な女性」「強い愛情」といった女性の華やかさを感じられる花言葉があります。

近年では母の日のプレゼントとして選ばれる機会の増えたアジサイですが、母の日のフラワーギフトにはこの花言葉からピンク色のアジサイが多く選ばれていますよ。

 

紫色の花言葉

紫色のアジサイには、「清澄」「神秘」の花言葉があります。

古来より、日本では紫色は高貴な色とされてきました。他の国でも同じく、貴族の身につける色として扱われてきたようです。これは、紫色の染色が難しく貴重なものであったため、希少価値があったことに由来します。

そのため、その紫色が持っている高貴なイメージがアジサイにも投影され、紫色のアジサイには「謙虚」「清澄」「神秘」といった花言葉があるのです。

 

白色の花言葉

青やピンクに色を変化させるアジサイですが、街中では白いアジサイを見かけることもありますよね。アジサイが変色するのはアントシアニンを持っているためだと先述しましたが、白いアジサイはこのアントシアニンを持っていません。

そのため、土壌の性質の影響がなく、白色のままでアジサイが咲くのです。

白いアジサイには、「寛容」「一途な愛」の花言葉があります。

白色はブライダルシーンを連想させる色でもありますから、愛を誓い合う結婚式のお花としてもぴったりですね。幸せになれるジューンブライドの時期にも、アジサイは旬のお花なので適しています。

 

緑色の花言葉

アジサイには、緑色の品種があることをご存じでしょうか。

他の色と比べると見かける機会が少ないかもしれませんが、「アナベル」という品種は緑色のアジサイで、ドライフラワーやグリーンを基調にしたナチュラルテイストのブーケに使う花材としても人気です。

緑色のアナベルには「ひたむきな愛」の花言葉があります。

 

英語圏での花言葉

もともと花言葉というのは西洋の文化なので、英語でも花言葉があります。

アジサイの英語の花言葉は、「heartlessness(冷酷)」「boastfulness(高慢)」「You are cold(あなたは冷たい人)」と少しひんやりとした温度感の言葉が並んでいますね。

英語圏においては、アジサイにはやや冷たい印象があるようです。

 

アジサイの人気品種

日本で発見されたアジサイは、西洋へ輸出されてから現在まで、多くの品種改良が行われてきました。現在では2,000種類以上の園芸種が存在すると言われており、品種によって咲き方もさまざまです。

原種となったガクアジサイのようなガク咲きや、セイヨウアジサイの手まり咲き、八重咲きなど、咲き方が違えば雰囲気もがらりと変わり、いろいろなテイストのアジサイを楽しむことができます。

続いては、アジサイの中でも人気のある代表的な品種をご紹介していきましょう。

 

ハイドランジア

「ハイドランジア」とは、ガクアジサイが原種の、西洋で品種改良されたアジサイのことです。つまりはセイヨウアジサイですね。

品種改良によって花色のバリエーションが増えており、咲き方も日本のものよりボリューミーで豪華な印象です。

ハイドランジアの中でもマジカルシリーズという品種は、萼の先が緑色に色づいたバイカラーを楽しめる品種です。アンティークなカラーもあって、色のバリエーションを多く楽しめるのが人気の品種になります。

 

ホンアジサイ

「ホンアジサイ」は、ガクアジサイを原種として品種改良された園芸種になります。

私たちが梅雨の時期によく見かける、手まりのようにこんもりとボリューム多く咲いているアジサイは、ホンアジサイです。

セイヨウアジサイも同じ手まり咲きなので、セイヨウアジサイと区別をつけるためにホンアジサイと呼ばれています。

今では、アジサイといえば一般的にはホンアジサイのことを指し、原種であるガク咲きのアジサイはガクアジサイとして呼び分けられています。

 

アナベル

花言葉の項目で簡単にご紹介しましたが、緑色のナチュラルな雰囲気を持つアジサイが「アナベル」です。

アナベルは「アメリカアジサイ」とも「セイヨウアジサイ」とも呼ばれていて、日本原産のアジサイとは区別されます。

ホンアジサイやガクアジサイと比較して葉の枚数が少ないことが特徴です。開花したばかりの頃は萼が緑色ですが、徐々に白色へと変わっていく変化が楽しめる品種です。

アナベルの名前の由来には諸説ありますが、アメリカの田園地帯で発見されたことにちなみ、町の名前の「アンナ」と、美しいという意味を持つ「ベラ」から、アナベルと名付けられたという説があります。他にも、古代ローマで使われていた「愛すべき女性」という意味の「Amabel(アマベル)」が語源になっているという説もあります。

 

カシワバアジサイ

庭先や街中などで、突き出すように咲いている細長いアジサイを見かけたことはないでしょうか。

このようにピラミッド型になって密に咲いているアジサイは「カシワバアジサイ」といって、葉の形がカシワの葉に似ていることから名付けられ、漢字では「柏葉紫陽花」と書きます。

花の集まりがひとつひとつとても大きいので、いくつも花を咲かせているカシワバアジサイは迫力があります。花がにょきにょきと生えているようで、少しユニークな見た目でもありますね。

このカシワバアジサイは、秋になると紅葉が楽しめます。カシワのような葉が深みのあるワインレッドに色づく姿は美しく、とても見応えがありますよ。

 

ヤマアジサイ

「ヤマアジサイ」の自生地は水の多い沢地や渓谷などが主であることから「沢紫陽花(さわあじさい)」とも呼ばれています。

ガクアジサイのようなガク咲きの品種で、葉や花の大きさは小ぶりです。ただし、独立したひとつの品種としてではなく、ガクアジサイの亜種として分類されます。

 

てまりてまり

可愛らしい名前の「てまりてまり」は、日本で品種改良されたオリジナル品種になります。てまりてまりは両性花を持っておらず、咲くのは装飾花だけです。

一般的なセイヨウアジサイと比較すると装飾花が小さいのですが、八重咲きの小さな装飾花がたくさん集まって咲く姿は可愛らしく、ころんと小さな手まりがいくつも集まっているようです。

 

隅田の花火

「隅田の花火」はガクアジサイの品種です。

八重咲きの萼がうっすらとあおみがかった淡い色合いで、両性花を囲っている八重咲きの装飾花は、まるで打ち上げ花火が夜空で広がっているような姿をしています。

 

ダンスパーティー

星形の八重咲きが美しい「ダンスパーティー」は、装飾花の数が多いことと、萼片が細長いため華やかに見えるのが特徴的な品種です。

土壌の性質で色が変わるアジサイですが、ピンク色のダンスパーティーはとても華やかで、風に花が揺れている様子は、まさしく優雅なダンスを楽しんでいるようにも見えます。

 

秋色アジサイの魅力

皆さんは「秋色アジサイ」という名前を聞いたことがあるでしょうか?

この秋色アジサイとは、正式な品種名ではなく、夏の初め頃に咲いたアジサイの花が、気温の変化とともにだんだんと色褪せていき、アンティークな風合いになっているアジサイのことを指しています。

この秋色アジサイと呼ばれるアンティーク調のアジサイは、ドライフラワーとしてリース作りやスワッグなどの花材用に人気があります。

秋色アジサイをドライフラワーとして乾燥させる際には、新鮮な切り花をすばやく乾燥させていくのが美しく仕上げるコツです。

 

まとめ

今回は、梅雨のシンボルでもあるアジサイについて、花の特徴や性質、花言葉や人気の品種などを詳しくご紹介してきました。

鬱陶しい気分になってしまいがちな梅雨も、アジサイの花が咲いてくれるからこそ、少し待ち遠しくなれる気がします。

街中には、アジサイの定番ともいえるホンアジサイ以外にも、さまざまな種類のアジサイが咲いていますよ。レインブーツを履いて散歩をしながら、嬉しそうに咲いているアジサイを眺めてみてくださいね。

 

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