梅の花の育て方!剪定のポイントや栽培の注意点とは

春の訪れを告げる花の1つとして親しまれている梅の花。

正月飾りのモチーフや花札、等級を表す言葉として私たちの生活に古くから関わってきました。

そんな梅の花は現在では日本各地で栽培されていますが、自宅の庭で気軽に育てることも可能です。

この記事では、梅の花の特徴から育て方のポイント、栽培にあたっての注意点などをご紹介していきます。

 

梅の花とは

日本人に親しみのある梅の花ですが、その歴史や花言葉はそれほど知られていないものです。まずは、梅の花の基本情報などに触れてみましょう。

 

基本情報

梅の花は、バラ科サクラ属の落葉性の樹木です。

開花期は1〜3月で、この時期になると白や赤などの花をたくさん付け、ほのかな香りを放ちます。

梅の花の樹高は大きなものだと10mを越えることもありますが、日本で一般的に栽培されているものは3〜5m程度までになるように管理されているものがほとんどです。

冬の寒さにも夏の暑さにも強い植物なので、自宅での庭木や盆栽として昔から親しまれています。

 

歴史

梅の原産地は中国ですが、3世紀頃には日本にも伝わったと言われています。また、8世紀頃の書物に梅の花が記されており、奈良時代の「万葉集」にも梅の花を題材とした歌が多く残っているのです。

平安時代には梅干しの原型である「梅の塩漬け」が作られており、鎌倉時代には梅の花の盆栽が楽しむ文化が登場し、その後に登場した梅干しは、保存がきくことから戦国時代の兵士の保存食として活躍しました。

さらに、梅の花の品種改良が進むと、江戸時代には梅干しが庶民の食卓にも出るようになり、明治から昭和にかけて栽培技術が向上して日本各地で栽培されるようになったのです。

梅の花は少しずつ姿を変えながら長く私たちの生活に深く関わりのあった花といえます。

 

種類

梅の花の種類は日本以外のものも含めると1,000種を越えるとも言われており、品種によって開花期や花の色などが変わってきますが、大きく分けると「花を楽しむ品種」と「実を楽しむ品種」の2つに分けられます。

花を楽しむ梅の花は花を鑑賞する目的で品種改良されたものが多く、一重咲きから八重咲きまで、花の色も白やピンク、赤などバリエーション豊かです。果実がつくものもありますが、種が大きく食べられる部分はほとんどありません。

日本においての花梅の種類は約400種と言われており、代表的なものだと「鹿児島紅」や「しだれ梅」などがあります。

実を収穫して楽しむ梅の花は基本的に一重咲きの品種が多く、開花期は少しずれて2〜3月頃。花が咲き終わった後に大きな実をよくつけ、さまざまな食品に加工されて市場に並びます。

実梅の品種は日本で約100種類ほどとされており、「南高」や「豊後」、「白加賀」などが有名です。

 

花言葉

私たちの生活の身近にある梅の花ですが、その花言葉を知っている人は多くはないかもしれません。

梅の花の全般の花言葉は、「忍耐」や「上品」、「忠実」などがあります。

梅の花が冬の寒い気候に耐えながら健気に美しい花を咲かせることからこのような意味合いがつきました。

「忠実」という花言葉は、平安時代、学問の神様として知られている菅原道真が大宰府に左遷された際に、彼がそれまで大事に育てていた梅の花が飛んできたという伝説からきているようです。

いずれにせよ、日本人の真面目で奥ゆかしい精神をあらわしたかのような素敵な花言葉が梅の花にはあります。

 

梅の花を育てる準備

梅の花は日本各地で栽培されており、家庭でも庭や鉢植えで気軽に楽しむことができます。梅の花を育てる前には、植えるスペースを隠し、梅の花に適する用土を用意しましょう。

苗木を購入する際のポイントについても解説します。

 

スペース・鉢の確保

梅の花は、庭に直植えでも鉢植えでも育てることができます。

庭に植えて大きく育てたい場合は、周囲の植物や樹木との距離が狭くなりすぎないようにスペースを確保しておきましょう。

梅の花を鉢植えで育てたい場合は、苗木の根鉢よりも一回り大きな鉢を選んでください。その際、鉢の底に敷く鉢底石をネットに入れたものを用意しておきましょう。

 

苗木の購入

梅の花を初めて育てる際には、園芸店やホームセンターなどで梅の花の苗木を購入するのが一般的です。

花を鑑賞したいのであれば花梅の苗木を、実の収穫も楽しみたいのであれば実梅の苗木を購入しましょう。ほかにも、梅の花と実を両方楽しめる品種などもあるので、好みの梅の花を探してみてください。

ただし、梅には1種類の花粉からは実がつかないという特性があるので、実らせるためには開花期の近い2品種を並べて植え付ける必要があります。

地域によって梅の花や実がつきやすくなる品種がありますので、初めての方はお店の方に相談してみると安心です。

 

用土

梅の花は、水はけと通気性の良い用土でよく育ち、有機質の多い環境にすることも大切です。

庭に直植えする際には、たい肥や腐葉土などを混ぜて栄養たっぷりの土にしておきましょう。

梅の花を鉢植えで育てる場合は、赤玉土や腐葉土などで配合した土や、市販の樹木用の用土を使ってください。

 

植え付け

梅の花の植え付けは、11〜3月の落葉している時期がおすすめです。

もし芽がついていたら株に負担を与えてしまうため植え付けは中止し、花が咲き終わったあとに改めて植え付けましょう。また、この時期であっても特に寒い時期に植え付けるのも避けてください。

梅の花を植え付ける際には、根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、苗木を仮に置いてみて、根鉢の表面と地面の高さが同じになるように調整しましょう。

深さが決まったら隙間ができないように土をしっかり入れ、そのあとたっぷりの水をやってください。

 

梅の花の育て方

ここからは、梅の花の基本的な育て方を解説します。

梅の花の育て方はそれほど難しくなく、適度な日当たりと水やりがあれば他の植物と同じように気軽に育てられる樹木です。

ただし、植え付けてから梅の花がしっかり根付くまでの2〜3年のうちは、水やりや肥料に注意して慎重に育てましょう。

 

置き場所

梅の花は日当たりの良い環境を好みます。日陰であっても育つのですが、花付きが悪くなるので注意しましょう。

また、じめじめしていると株が十分に育たないので風通しの良い場所であることも大切です。

しかし、冬場に冷たい風が吹き付けやすい場所に植えると株が傷んでしまう原因になるので、適度な風よけができる場所がおすすめです。

梅の花を鉢植えで育てる場合は、気候や気温に合わせて日当たりの良い場所や寒すぎない場所に移動させてあげると良いでしょう。

 

水やり

鉢植え、庭植えに関わらず、植え付けから2年以内は土の表面が乾いたら水をたっぷりやりましょう。水やりの回数の目安としては、春と秋は1日1回、夏は1日2回、冬は3日に1回程度がおすすめです。特に、つぼみが開花するまではたくさんの水分を必要とするので、水を切らさないようにしてください。

庭植えの場合、梅の花がしっかりと根付いてくる2年目以降は特に水やりの必要はなく、雨水で補う程度で問題ありません。ただし、夏に雨が降らない時期が続く際には、様子を見て水を与えるようにします。

鉢植えの場合は、2年目以降も土の表面が乾いたら水をやるようにしてください。

 

肥料

梅の花に肥料を与えすぎると、枝が必要以上に間延びして樹形が乱れてしまうので注意してください。

梅の花を庭植えしている場合は3〜4月頃の花が咲き終わった頃と、12〜1月の次の花をつけるための栄養補給として、1年に2回ほど有機質肥料を土に埋め込みます。

鉢植えの場合は、花が終わったあとに化成肥料を株元に与えましょう。

 

植え替え

梅の花を鉢植えで育てている場合は、鉢の中で根がいっぱいにならないように1〜2年ごとにそれまでより一回り大きな鉢に植え替える必要があります。

植え替えの時期は、梅の花が落葉している11〜3月頃が目安になりますが、極端に寒い時期は避けましょう。

植え替える際には株を鉢から静かに取り出し、半分ほど余計な土を落としてから伸びすぎている根や太い根を切り取ります。

その後、新しい土を入れた鉢の中に、植え付けと同じ手順で植え替えましょう。

 

病気・害虫対策

春と秋の気温が低い時期に、梅の葉に白い粉をまぶしたような斑点が出てくることがあります。これは、多くの植物がかかりやすい「うどんこ病」で、枝が混みあい風通しが悪くなることなどが原因で発生する病気です。

うどんこ病が見られたら、被害拡大を防ぐために悪くなっている部分の葉を取り除きましょう。

また、梅の花には開花時期にアブラムシが、5月頃にカイガラムシがつくこともあります。いずれの場合も、発見次第すみやかに駆除して被害を最小限にとどめましょう。

特にカイガラムシは卵を生みつけることもあるので、卵らしきものを見つけたら歯ブラシなどでこすり落としておくと安心です。

 

梅の花の剪定

昔から、「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」ということわざがあるほど、梅の花を育てるにあたって剪定は欠かせない大切な作業です。

梅の花を適度に剪定することで、枝の伸び方を自由に変えられるだけでなく、花や実の付き方も良くなるというメリットもあります。

ここからは、梅の花の剪定方法について解説していきます。

 

剪定の時期

梅の花の剪定は基本的に1年に2回、夏と冬に行います。

まず夏の剪定ですが、樹形を整えて風通しを良くすることが目的になります。風通しを良くすることによって、梅の花が害虫や病気の被害に合うのを予防することができるのです。

6〜7月にかけて、伸びすぎた枝や込み入っている枝を枝元を少し残してカットしましょう。

冬の剪定の目的は、春前に梅の花の育成が旺盛になり、樹形が乱れるのを防ぐことです。また、枝を更新させて花や実付きをよくする狙いもあります。

梅の花の冬の剪定時期は11月中旬〜1月頃で、梅の花を大きくしたい場合は枝先から5分の1ほどを、サイズを維持したい場合は枝先から半分ほどを思い切ってカットしましょう。

 

剪定のポイント

梅の花の剪定では、空に向かって真っすぐ上に伸びている「立ち枝」をカットすることがポイントです。

梅の花に限らず、植物には上に伸びている茎や枝に優先的に養分を送る性質があります。立ち枝を放置していると上にばかり伸びて樹形が崩れてしまったり、枝が混みあって風通しが悪くなったりしてしまうのです。

立ち枝にはよく葉がつくのですが、花や実の付き方はそれほど良くないので、思い切って根元から切ってしまいましょう。

立ち枝さえカットすれば、他の枝はそれほど重要ではないのですが、どの枝にも日当たりがよくなるようにスッキリと剪定してあげるのがポイントです。

 

剪定の注意点

梅の花を剪定する際に、先端に残る芽が外側を向いていることが重要です。梅の花には、先端の芽に養分が集中しやすい性質があるので、上向きの芽を残してしまうと枝が上に伸びていき、樹形が乱れてしまいます。

剪定する際に、どの芽を先端に残すかで枝の伸び方が決まってくるので、梅の花の成長した姿を想像しながら計画的に剪定していきましょう。

 

梅の花の増やし方

梅の花は以下の3つの方法で増やすことができます。梅の花の栽培に慣れている方であれば問題ないかもしれませんが、育て始めたばかりの方にとっては少々難しく感じることもあるでしょう。

梅の花の育て方に慣れてきたら、ぜひ挿し木や種まき、接ぎ木などにも挑戦してみてください。

 

挿し木

挿し木とは、切り取った枝を土に挿して初根を促し、新たな株に育てることです。しかし、梅の花は基本的に挿し木に向いていないので、初根しやすい品種から選ぶのがおすすめです。

梅の花の挿し木の方法は、「休眠枝ざし」と「緑枝ざし」の2種類があります。

まず休眠枝ざしですが、2月上旬に休眠中の昨年度の枝をカットし、湿らせた水苔などで包み、ビニール袋に入れて冷蔵庫で保管し、3月頃に植え付けます。

対して緑枝ざしは、5月下旬から7月上旬にかけて伸びた新しい枝の先端を切り取って、挿し木用の土に挿してビニールで覆い、乾燥しないように数時間ほど置きましょう。

 

種まき

実梅を育てるのであれば、収穫した種から梅の花を増やすことも可能です。種まき用の種は、7〜8月頃に完熟して自然に落ちた実から取り出しましょう。

果実を取り除きながら種をよく洗い、乾燥しないようビニール袋で密閉して冷蔵庫でしばらく休ませます。そして11月頃に、もう一度種をよく洗い、深めの鉢などに種まき用の土を入れてから種を埋めましょう。

ただし、自宅で採取した梅の花の種からは、交配に使用した品種の花が咲くことが多いので、購入時と同じ種類の花が咲くとは限りません。

 

接ぎ木

接ぎ木は、梅の花の増やし方として最も一般的な方法です。多くの梅の花の品種で行うことができ、手順もそれほど難しくないのでチャレンジしやすいでしょう。

方法としては、3〜4月頃に前年の枝を5cmほどカットし、台木の切り口に合わせてビニールテープなどを巻いて固定させます。その後、乾燥を防ぐために鉢ごと大きなビニール袋に入れて半日陰に置き、土の表面が乾いたら水をやりましょう。

接ぎ木した梅の花が成長してきたら安定してきた印なので、ビニール袋から出して通常通りの栽培を始めてください。

 

梅の花に関する疑問

ここまで、梅の花の特性や育て方を解説してきました。最後に、梅の花に関して多く寄せられる疑問点にお答えします。

梅の花は、長年かけて育てるものであることを念頭に置き、育てる際には将来のこともよく考えておくと安心です。

実がなるまで何年?

梅の花を育て始めたけど、なかなか実が付かないと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。実は、梅の花はすぐに実をつけるわけではなく、鉢植え、庭植えともに3〜4年ほどかかると言われています。

品種や生育環境によってはさらに時間がかかることもあるでしょう。

なかなか実が付かないからといって枯れているわけではないので、様子を見ながらじっくりと育ててみてください。

 

寿命はどのくらい?

日本に現存する梅の木で、最も古いものは樹齢200年を越えているとも言われています。上手に育てれば長寿の梅の木を育てることもできるでしょう。

しかし、実の収穫を目的とした農作物としての梅の木の寿命は、一般的に25年くらいで、それ以降は実の付き方が悪くなります。

対して、花を鑑賞する梅花の場合は、家庭の庭木であっても70〜100年ほどは楽しむことが可能です。親から子へ、そしてそのまた子へ。何代にも渡って梅の花を受け継いでいくこともできるでしょう。

 

まとめ

今回は梅の花について詳しくご紹介しました。梅の花は日本を象徴する花の1つで、私たちの生活にも寄り添ってくれている花です。

梅の花は剪定方法に多少のコツが必要ですが、基本的な育て方はそれほど難しくありません。ホームセンターや園芸店などで気軽に購入できるので、お気に入りの品種を見つけて育ててみてくださいね。梅の花を育てて日本の風情を楽しみましょう。

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