初心者必見!シンビジウムの育て方を四季別に徹底解説

シンビジウムは、耐寒性が強いことでも知られているラン科の花です。
ラン科の植物の中では特にタフで、適切な手入れを行うことで長期間鑑賞することができます。
また他の洋ランと比較すると落ち着いた花色が多いこともシンビジウムの特徴と言えるでしょう。
本記事では、初心者でも簡単に育成できるシンビジウムの育て方にスポットを当ててご紹介します。
シンビジウムの魅力
淡くくすんだような花色が魅力的なシンビジウムは、その優雅な佇まいから贈り物としても大変人気です。
胡蝶蘭などと比較すると控えめに見えるかもしれませんが、その美しい姿は「世界四大洋ラン」の一つとしても知られており、大小さまざまな種類があることや優しい色合いから愛好者も増えています。
まずは、そんなシンビジウムの魅力について見ていきましょう。
耐寒性に優れている
シンビジウムは12月~4月にかけて開花する冬を代表する花の一つです。寒さには強く、最低気温が5℃までなら耐えることができます。
昼間はなるべく日光が当たる窓際などに移動させてあげると丈夫に育てることができます。寒いからと言って暖房の効いた部屋に置きっぱなしにすると、蕾が咲かずに終わってしまうことがあるため注意してください。
長く鑑賞できる
シンビジウムは栽培に適した環境で育成することでたくさんの花を咲かせてくれますし、花持ちも良いです。開花期が長く、長く鑑賞できるのもシンビジウムの魅力でしょう。
開花してから1カ月〜2ヶ月は美しい花を鑑賞することができます。
ただし長い間花をそのままにしておくと株の体力を消耗してしまうため、2度咲きを楽しみたいのであれば、花が咲いたらカットして切り花として楽しむのがおすすめです。
手入れが楽
シンビジウムはコツさえ押さえてしまえば、手入れが楽です。ランを育てるのが初めての方でも比較的簡単に育成することができるでしょう。
育てる上で一番重要なのは直射日光に当てないことです。また、定期的な植え替えも必須です。このような点に気をつければ、すくすくと丈夫に育ってくれますよ。
育て方については以下で詳しくご紹介するので、最後までぜひご覧ください。
シンビジウムの基本データ
学名 | Cymbidium(シンビジウム) |
科/属 | ラン科/シュンラン(シンビジウム)属 |
英名 | Cymbidium |
和名 | 霓裳蘭(ゲイショウラン) |
原産地 | 東南アジア/オーストラリア |
開花期 | 12月~4月頃 |
誕生花 | 12月5日/12月18日/1月14日/2月28日
シンビジウムという名前はギリシャ語の「kymbes(舟)」「eidos(姿)」を組み合わせた言葉が語源です。これはリップと呼ばれている花弁の形状が船に似ていることが由来になっていると言われています。 |
また、和名になっている「霓裳蘭」は、「霓」が虹を意味しており、「裳」は女性が身に着ける美しい衣装を意味しています。
このことから、美しい虹のような衣装を花に例えたというロマンチックな説もあるようです。
シンビジウムの歴史
シンビジウムは東南アジアなどに自生していた原種を品種改良して、観賞用として栽培されるようになりました。
日本に入ってきたのは1859年で、商人のトーマス・ブレーク・グラバー(1838-1911)によって上海(シャンハイ)から長崎に運ばれたという説があります。
この時持ち込まれたのが「tracyanum(トラキアナム)」で、日本では最も古い洋ランとも言われていますよ。
当時の株は現在でも株分けなどで残っており、「グラバーさん」の愛称で親しまれています。
特徴
シンビジウムは、胡蝶蘭に次いで贈答用として人気がある植物です。
色味も淡く優しいイメージがあることから、切り花やアレンジメントとしても広く活用されています。
また、花茎がまっすぐ伸びるタイプ、両端が外側に反り返った弓状タイプ、垂れ下がるタイプなどがあり、花の大きさも3cmから10cmくらいまで大小さまざまです。
一般的には、花弁が10cm以上あり葉が1m以上のシンビジウムを大型種、花弁が5〜6cmで葉が短い品種を小型種と呼んでいます。
また、花弁が垂れ下がっているシンビジウムは「キャスケードタイプ」と呼ばれ、昨今人気の品種です。
色別の花言葉
シンビジウムには色別の花言葉があります。
全体 | 華やかな恋/高貴な美人/誠実な愛情/飾らない心 |
白 | 深窓の麗人 |
ピンク | 気品のある女性/素朴 |
黄色 | 誠実な愛情/飾らない心 |
緑色 | 野心 |
白には「深窓の麗人」という花言葉は、高級感あふれる純白のシンビジウムにぴったりの花言葉ですね。
ピンクの「気品のある女性」は、パステル調のやわらかい花色がたくさんの人に愛されていることに因んで付けられたと言われています。
シンビジウムの育て方
洋ランは育てるのが難しいと言われていますが、コツさえ掴めば初心者でも育成できます。
植え付けから開花までの目安は、
植え付けの時期は3月〜5月。植え替えをする場合は4月〜5月に行いましょう。
花が咲く時期は環境によって異なるものの、だいたい11月〜4月までとされています。
ここからはシンビジウムの管理のポイントを季節別に紹介するので、ぜひ参考にしてください。
冬の管理
・置き場所
シンビジウムの生育に適した気温は、10℃〜25℃くらいです。
部屋の中で最良の置き場所は日当たりの良い窓際です。直射日光に当たると葉焼けしたり花が色あせてしまうことがあるので注意しましょう。日差しが強いときはカーテンを引くようにすれば問題ありません。蕾がある間は、日によく当てることで美しい色の花を咲かせることができます。
シンビウムは冬に開花するので、花が満開になったら、少し暗い場所に移動させても問題ないでしょう。
・水やり
冬は気温が低いので、土が乾いてから1日〜2日経ってから水を与えます。
蕾がある場合は、霧吹きを使って葉水すると湿度を保つことができるので活用してみてください。
水やりをする時間帯は、基本的には午前中がおすすめです。基準としては、10℃の気温の部屋の場合は1週間に1度。5℃の場合は10日に1度の割合で水やりをしましょう。水を与え過ぎると根腐れの原因にもなるので、やや控えめに与えるのがベストです。
・肥料
冬は育成が止まっていて、たくさんの栄養を必要としていないため、肥料は与えません。
春になり新芽が出たら、洋ラン専用の肥料を与えるようにしましょう。市販のものを与えるときは、リン酸を多く含むものがおすすめです。
・花後の管理
シンビジウムの花は長期間楽しむことができます。しかし来年以降もきれいな花を咲かせたい場合は、花茎切りを行ってください。
花にあまり多くの養分を摂られてしまうと株が弱ってしまうためです。花を1ヶ月くらい観賞したら、花茎を根元から切り取りましょう。切り取った花は花瓶に挿して楽しむこともできますよ。切り花は5℃くらいの部屋に置いた場合、1ヶ月以上楽しむことができます。
春の管理
春になるとシンビジウムは生長期に入り、お手入れが忙しい季節に入ります。来年以降もきれいな花を鑑賞するためには、とても大切な時期です。
・置き場所
4月下旬になったらシンビジウムを積極的に外に出すようにしましょう。
ただし、いきなり明るいところに出すと弱るので少しずつ慣らしていきます。できるだけ風通しが良い場所に置くのがポイントです。
また、日差しが強くなってきたら遮光ネットなどを活用すると良いでしょう。もし遮光ネットが使えない場合は、葉焼けの具合によって置き場所を変えてください。
・肥料
春になると新芽が出てきます。栄養もたくさん必要になるので、7月頃までは欠かさず肥料を与えてください。
固形の緩効性肥料はゆっくりと効いていくので、1ヶ月に1度位が目安です。このとき肥料焼けを防ぐために、できるだけ新芽から離して置くようにします。
・植え替え
シンビジウムは、2年〜3年に1度植え替えが必要です。
植え替えをする時には、今まで植えてあった鉢よりも2号ほど大きい鉢を選びましょう。根腐れしている部分はしっかりと切り取って植え付けてください。細菌性の病気を発症させないために、植え替え時に使用するハサミやカッターを消毒しておくと安心ですよ。
また、シンビジウムは水はけの良い環境で丈夫に育つので、市販の洋ラン用の土がおすすめです。
・株分け
シンビジウムには「バルブ」と呼ばれる部位があります。
これは葉の下側にある球根のような部分のことで、ここには生長に必要な栄養や水分を溜めておくことができるようになっています。
春になり植え替えを行う際に、このバルブが増えて大きくなっていたら株分を行いましょう。
基本的にはバルブ3つ以上で1株として植え付けます。
この時、新芽が出ているものと古いバルブを組み合わせても大丈夫ですが、触ってみて中身がスカスカのものは使わないようにしてください。
・芽かき
美しい花を咲かせるために、最も大切な「芽かき」も春に行いましょう。
芽かきは、1番新しいバルブから出た芽を1、2個残して間引いていく作業です。これは芽に十分栄養を行き渡らせるために必須になります。
夏の管理
6月になり梅雨に入ると日照不足が心配になるので、晴れた日にはできるだけ日光に当てるのがおすすめです。
ただし日差しが弱くても、葉焼けを起こすことがあるので注意してください。
・置き場所
日差しが強くなってくる真夏は50%ほどの遮光が必要になります。ネットなどを活用して葉焼けを防ぎましょう。
1日5時間ほど日差しに当てる(直射日光は避ける)ことで、たくましく育ってくれます。
・水やり
この時期は土が乾いたら、たっぷりと水をあげるようにしましょう。
真夏は朝に水を与えても、夕方には乾いてしまうことがあります。その際には夕方にも水やりを行ってください。その際には周囲にも打ち水をすることで、気温を下げる効果もあります。
・肥料
真夏の暑さは植物にとって大変なストレスになります。したがって、7月下旬以降の肥料は与えるのを避けてください。
固形肥料を使う場合は、8月には肥料が切れるように調節しましょう。
・害虫対策
梅雨の時期はジメジメしているので、カタツムリやナメクジなどが発生しやすくなります。
見つけたら早めに駆除しないと、新芽を食べられてしまうので注意してください。
予防法としては、鉢をフラワースタンドの上などに置き風通しを良くすることがおすすめです。殺虫剤の散布なども有効ですよ。
秋の管理
シンビジウムにとって、秋は過ごしやすい季節になります。
しかし台風の多い時期なので、大型のシンビジウムや屋外に置いている場合は風で倒れないような対策も必要になるでしょう。
・置き場所
遮光ネットを使用している場合は取り除いてかまいません。太陽の光にたんさんあてることで、美しい花を咲かせることができるでしょう。
ただし台風シーズンになるので、被害を受けないように気をつけてください。台風が近づいているときは、あらかじめ室内に取り込むか、横向きにして固定しておくと良いでしょう。
10月後半になり夜の気温が10℃以下になったら、室内で管理します。ただし日中は気温が高くなるので、寒暖差には注意しましょう。
・水やり
気温が下がり始めるため、水やりも控えめにしましょう。
基本的には乾いてからたっぷりと与えるのがおすすめです。
・肥料
真夏の時期はストップしていた肥料ですが、株の様子を見ながら9月までにもう一度追肥をおすすめします。ただし花芽が伸びてきているシンビジウムには肥料は与えないでください。
シンビジウムの人気種類5選
シンビジウムは色々な種類の掛け合わせによって、毎年新しい品種が次々に誕生しています。
大型で優しい花色を持つ昔ながらの種類をはじめ、飾りやすいテーブルタイプのシンビジウムは、葉っぱが細くしなやかで支柱なしでも育成できると評判です。
また、東洋ランとの交配によって生まれた和蘭シリーズも人気。
ここからは、花持ちも良く、プレゼントにも人気のシンビジウムを5種類紹介していきましょう。
さくらむーす
丸い花弁とやわらかなピンク色が可愛らしい「さくらむーす」は、草丈が60〜70cmのコンパクトな品種になります。
直立仕立てだけではなく、アーチ仕立てができる点も魅力でしょう。
開花時期は他のシンビジウムと比較するとやや早く、11月頃から花屋さんに出回ります。
花の美しさに加えて、葉とのバランスが良いのも人気の秘密です。フォーマルなギフトにもおすすめですよ。
シャルテ レッドハート
「シャルテレッドハート」は、ペタル及びセパル共にワインレッド色の華やかな品種です。
淡い色合いが多いシンビジウムの中では珍しく、鮮やかな色が見る人の心を元気づけてくれます。深みのあるワインレッドなので、インテリアの主役にもぴったりです。
サラジーン アイスキャスケード
垂れ下がって咲くタイプの「サラジーン アイスキャスケード」は、乳白色に咲く中型のシンビジウムです。
開花時期には、株元から小さな花弁を鈴なりに咲かせる姿が鑑賞できますよ。花付きが良く、優雅でありながら可憐な品種なので昨今とても人気があります。
トラシアナム
「トラシアナム」は、大輪の花を咲かせる原種のシンビジウムです。
100年以上も前に日本に渡って来た品種が現在でも残っているなんて神秘的ですね。
この品種はグリーン系やブラウン系までさまざまあり、サイズも大小豊富に展開されています。強い柑橘系の香りを持つのもトラシアナムの特徴です。
スプリングソング
「スプリングソング」は、テーブルの上に飾れるほどコンパクトなサイズ感が魅力です。
葉っぱも細くしなやかで、花弁とのバランスも抜群になります。自立するので、支柱なしでも育てられる点も特徴です。玄関やリビングのインテリアとしても最適ですよ。
シンビジウムの育て方は簡単!
洋ランと聞くと、初心者でもうまく育てられるのか、翌年も花を咲かせられるのかと不安になってしまう方も多いのではないでしょうか。
しかし、シンビジウムはコツさえおさえれば育てることはそれほど難しくありません。
花の色やサイズも豊富で、最近では仕立て方も直立型以外に、アーチ型・下垂型と選ぶことができます。
もしも鉢で購入する際には、蕾が多いものよりある程度花が咲いている鉢がおすすめです。株元のバルブという球根のような部分が太くがっしりしているものを選びましょう。
四季それぞれのお手入れをしっかり行えば、毎年きれいな花を咲かせてくれますよ。