正月飾りはいつから飾る?飾り方や込められた意味

年末になると正月飾りとして、門松やしめ飾り、鏡餅を飾る人も多いのではないでしょうか。最近では雑貨屋さんや花屋さんでも、おしゃれなインテリアに馴染むしめ飾りを見かけることが多くなりました。

毎年のことなので、なんとなく飾っているという人も多い正月飾りですが、それぞれの飾りには意味があり、実は飾る時期にも決まりがあります。

今回の記事では、新しい年をより良い1年にするために、正月飾りの正しい飾り方と込められた意味について解説します。

正月飾りとは?

日本のお正月には、その年の神様である「年神様(としがみさま)」が各家庭を訪れ、幸福をもたらしてくれるという言い伝えがあります。

年神様は、その年の豊穣を司る神様でもあり、冬でも緑色の葉を付ける松の枝を頼りにやってくると考えられていることから、松飾りやしめ飾りを家の入り口に飾る風習が生まれました。

門松

冬でも緑を絶やさない常緑の松は、「わが家は年神様を迎える準備ができています」という目印になります。最近では門の前に飾る人が少なくなりましたが、本来は家の入り口(玄関)の両脇に飾るのが習わしです。

門松には縁起の良い実物や花を一緒に飾る場合もあります。一緒に飾ることの多い、松、竹、梅の3つの植物は、寒い冬の時期でも美しい葉を付けたり、花を咲かせたりすることから、不老長寿や子孫繁栄など、縁起の良い意味を込めて飾られます。

マンションなどで玄関に飾るのが難しい場合は、リビングに置いたり、入り口のドアに小さな松飾りを飾っても良いでしょう。

しめ飾り

神社などで、稲わらで作られたしめ縄を見たことがある方もいるかと思います。しめ飾りは、そのしめ縄に縁起物の飾りを付けたもののことです。しめ縄は、神様のいる場所とその外の世界を区別するための、境界線のような役割をになっていて、飾られた場所が神聖な場所であることを表します。

お正月に年神様を迎える準備ができているので、安心して神聖な場所に降りてこられるように、という意味でしめ飾りを飾るのです。

本来は、豊穣を願って稲わらで作るのが習わしですが、最近では伝統的なしめ縄をリース風にアレンジしたしたり、インテリアにも馴染むおしゃれなスタイルのしめ飾りが増えています。

鏡餅

鏡餅は、年神様へのお供えものです。鏡餅という名前は、弥生時代から使われていた三種の神器の1つである鏡に由来しています。

古くから鏡は、日の光を反射して光ることから神様が宿る神聖なものと考えられていました。そのため、年神様にお供えするお餅を神様が宿る丸い鏡に見立てて、鏡餅と呼ぶようになったそうです。

また、丸いお餅が2つ重なった姿には、「かさねがさね」で「円満に年を重ねる」という意味が込められています。本来は三方と呼ばれる台に半紙を敷き、昆布やゆずり葉の上にお餅を置いて、さらに橙(だいだい)を置く、というのが正式な供え方です。

しかし近年は、簡易的に半紙の上にお餅を置き、橙の代わりにみかんや金柑を飾るという家庭が増えています。

年神様にお供えした鏡餅には神様の力が宿り、お餅を食べることでその力を分けてもらえると考えられています。そのためお正月を過ぎたころにお餅を家族で食べ、その年の無病息災を願うのが鏡開きの風習です。

正月飾りはいつから?飾る時期と場所

本来の正月事始め(しょうがつことはじめ)は、12月13日(鬼祝日と呼ばれる最上の吉日)とされていました。しかし現在では、クリスマスを祝う家庭が多いため、クリスマスの25日を過ぎてから正月飾りを飾るというのが一般的です。

正月飾りを飾るのに縁起の良い日

正月飾りは12月26日以降、末広がりとして縁起が良い28日、あるいはキリの良い30日に飾るという人が多いです。29日は「二重苦」となり縁起が悪いとされ、31日に飾るのは「一夜飾り」となり年神様に失礼に当たるとされているので避けましょう。

ただし30日は、旧暦では大みそかに当たるため一夜飾りになってしまうという考え方もあります。気になる人は、28日に飾ると良いでしょう。

また、正月飾りを飾る前には大掃除(本来は煤払い)を行い、家の中を清め、厄を落としてから飾るのが本来の習わしです。

それぞれ正月飾りを飾る場所は?

門松は年神様を迎える目印となるため、本来は2つで1つとして、門や玄関など入り口の近くに飾ります。マンションであれば、ドアにかけられるタイプのものや玄関に置くことができる小ぶりのものがおすすめです。

しめ飾りは年神様が降りてくる神聖な場所を表すので、玄関に飾るのが一般的ですが、人が集まるリビングに飾ることもできます。年神様への敬意を表すために、大人の目線よりも高い位置に飾りましょう。

玄関に飾る場合は、分かりやすい場所であれば、ドアの中央やインターフォンの下など、特に場所にこだわる必要はありません。同様の理由で、年神様へのお供えものである鏡餅もリビングや玄関の少し高い位置に飾ります。

お正月に花を飾るときの決まりはある?

大晦日からお正月にかけて、自宅の玄関やリビングに花を準備するという人も多いですよね。正月飾り以外に飾る花にも、特に飾り方や飾る時期に明確な決まりはありません。選ぶ花に関しては、今回の記事の最後で紹介しているような縁起の良いとされる花や実物を中心に飾るのが一般的です。

最近では、お正月のイメージにとらわれず、好きな花を自由にアレンジして楽しむ人が増えています。自宅にある花瓶や、使っていない和食器などを取り入れて、花を生けるゆったりとした時間を楽しんでみてはいかがでしょうか。

気温が下がるこの時期は、1年でもっとも花持ちが良い時期です。花であれば1週間〜10日、松などの葉物であれば長いと1ヶ月ほど楽しむことが可能な種類もあります。年末に花を購入して年始を迎え、少しずつ生け直したり、花を足しながら美しい状態をできるだけ長く楽しめると良いでしょう。

クリスマスよりも前に正月飾りを飾るには?

正月事始めである、12月13日以降であれば正月飾りを飾れます。しかし、間にクリスマスを挟むので、クリスマスのタイミングに正月飾りが飾られていることに違和感を感じるという人も多いかもしれません。

せっかくお気に入りの正月飾りに出会ったとしても、クリスマスを過ぎた26日からの短期間に飾るのはなんだかもったいない気もしますよね。

なるべく早い時期から、正月飾りを飾って準備をしておきたいという人には、モチーフを変えて長く飾れるリースタイプの正月飾りを選んだり、リボンを外すだけでクリスマスの雰囲気からイメージを変えられるスワッグタイプの正月飾りを選ぶのがおすすめです。

リースタイプの正月飾り

切れ目のないリースの輪の形には「永遠」という意味が込められています。生命や幸福が永遠に続きますようにという願いを込めて飾られるリースタイプの正月飾りであれば、クリスマスシーズンからお正月まで、モチーフを変えるだけで長く楽しむことができるアイテムです。

通年飾ることを想定して選ぶ場合、リース本体はシンプルなデザインやナチュラルな素材で作られたものを選ぶと良いでしょう。

クリスマスまでの間はクリスマスカラーのリボンやオーナメントなどのモチーフを添えて、クリスマスが終われば、水引きやお正月の花や実物に飾りを変えることで長い期間楽しむことができます。

また、最近はしめ縄で作られたリースも数多く販売されています。しめ縄でつくられたリースは、逆にお正月の雰囲気のモチーフを控えめにすることでクリスマスの時期から年始までの長い間楽しめるでしょう。

スワッグタイプの正月飾り

スワッグとは、花を束ねた壁飾りのことで、花束を逆さまにしたような形をしています。

松やお正月の花や実物を使えば、自宅でも簡単に作ることができ、リースよりもカジュアルな雰囲気の正月飾りに仕上がるのが特徴です。

 

クリスマスからお正月にかけて長く飾れるスワッグなら、大きめの松をベースに冬の香りも感じられるヒムロスギやコニファー、松ぼっくりやコットンフラワーなどの実物を束ねた、ナチュラルなスワッグはいかがでしょうか。

こちらもリース同様、クリスマスまでの間はリボンを添えたり、お正月になったら水引きなどのアイテムを加えるだけで長く楽しむことができるのが魅力です。自宅で手作りする場合はスワッグもリース同様、水に浸けない状態で飾るため、なるべく水分量が少なく、ドライにしやすい素材を選んで束ねましょう。

正月飾りを片付ける時期

新年の縁起物である正月飾りは、無事に年が明けたら外して、神社に持っていき処分してもらうのが一般的です。「松の内(門松を飾る時期)」と呼ばれる1月7日の早朝までに外すのが良いとされていますが、松の内の時期は関東と関西で異なり、さらに地域によっても差があります。

正月飾りはいつ外す?

関東では1月7日まで、関西では1月15日までに外すのが一般的です。1月15日に「どんど焼き」や「お焚き上げ」と言って、神社で正月飾りを燃やして処分する習わしがあるので、それまでに神社に持っていくと良いでしょう。

お正月のモチーフを外して飾り続けることができるようなリースやスワッグであれば、外さずにそのまま飾っておいても問題ありません。幸福がいつまでも続きますようにという願いを込めて、リビングなど人の集まる場所に飾ると良いでしょう。

鏡餅は、1月11日に「鏡開き」を行い、そのまま食べたりお汁粉やお雑煮にして、神様からの祝福を分かち合います。

処分する場合はどうする?

神社に持って行かずに自宅で処分することもできます。その場合は、お塩で清めてから白い紙や新聞紙で包むなどして、他のゴミとは区別して処分するのが良いとされています。

正月飾りは、その年の年神様を迎える準備に使うものなので、毎年新しい飾りを準備するのが本来の習わしです。しかし、最近では通年使えるようなデザインのものも多く、使い捨ての風習は時代にそぐわないと考える人もいるでしょう。

正月飾りを飾る意味を理解して本人が納得していれば、新しいものにこだわらずに繰り返し使っても良い、心を込めてお正月の準備をすることに意味がある、と考える人も増えています。

お正月に飾る花と意味

伝統的な正月飾り以外にも、年神様やお客さまを迎える準備として花を飾るという人も多いですよね。大掃除で綺麗に片付いたお部屋には、美しい花が良く似合います。年末からお正月にかけて花屋さんに並ぶ花の中には、縁起の良い意味を持つ種類もあるので、幸せな1年になることを願って選んでみてはいかがでしょうか。

門松にも使われる松は、1年中緑色の葉を付ける常緑樹であることから「不老不死」や「長寿」の象徴です。また、「神を待つ(まつ)、祭る(まつる)」という意味で神が宿る木として崇められることもあります。

この時期、花屋さんで見かけることの多い松の切り枝は「若松」と呼ばれ、自宅にも飾りやすいサイズで出回ります。実は大きな門松と、切り枝で販売されるサイズの若松はどちらもクロマツという同じ種類の松ですが、大きさや仕立てによって呼び名が変わります。

縁起の良い植物とされる、松竹梅の1つである竹は、成長の早さと真っすぐに伸びる姿から「未来」や「成長」を象徴します。ショッピングモールなどに飾られる大きな門松の軸に使用されているのも竹ですよね。新芽がどんどんと伸びる姿は「子孫繁栄」を表し、とても縁起の良い植物とされています。

剣道の竹刀や伝統細工など、古くから日本人の生活に馴染みのある植物なので、伝統を大切にしたお正月のシーンに飾るにもふさわしいと言えるでしょう。

厳しい寒さを乗り越えて花開く梅は、春の訪れを告げる花です。他の花よりも早い時期に咲くことから「開運」や「出世」の象徴とされています。寒い冬が終わりを告げ、暖かい春がやってくる、そんな風景を思い起こさせる梅は、新しい年の希望で満ちた未来を感じさせてくれる花です。

また、梅の実に含まれるクエン酸は疲労回復効果があり、江戸時代、強い香りを放つ梅の木は鬼が嫌うという理由で、魔よけの意味で神社や寺社に植えるようになったとも言われています。厄や災いを遠ざけてくれる縁起の良い植物として正月飾りに飾られる代表的な花です。

天皇の御紋にも使用される、高貴な花です。中国では、菊を不老不死の薬として使用されていたことから、日本でも「長寿」の象徴とされています。正月飾りとして生けるのであれば、華やかなピンポンマムや、おしゃれなスプレーマムなど花合わせのアクセントになるような色合いの菊がおすすめです。

花の中でも長持ちするので、年末から年明けまで美しい状態で飾ることができるのも魅力的です。

葉牡丹(はぼたん)

キャベツのような見た目をしている葉牡丹は実は花ではなく多年草の植物です。2色に分かれた見た目を紅白に見立て、縁起が良い花としてお正月に飾られます。葉が何層にも重なることから、「吉事が重なる」と言われており、「祝福」や「愛を包む」という花言葉が付けられました。

葉牡丹の名前の由来にもなっている牡丹の花は、日本で古くから不老不死の象徴として高貴な花として扱われ、本来、お正月には牡丹の花を飾るのが風習でした。しかし、後に牡丹の花に似た見た目で、尚且つ安価で日持ちのする葉牡丹が飾られるようになり、現在でもお正月に飾る花の定番になっています。

千両・万両・南天

どれも同じ時期に実を付ける赤い実です。千両・万両は、どちらもたくさんのお金を思い起こさせることから縁起が良いとされ、特に「商売繁盛」の縁起物として扱われています。南天の実や葉には殺菌効果があり、「難を転ずる」ことからこちらも縁起の良い実物として、お正月に飾られます。

どれも赤く小さな実を付けるので見分けづらそうですが、実の付き方と葉の形にそれぞれ違いがあります。

他の2つの実と違って、上向きに実を付け、葉の淵がギザギザしているのが千両の特徴です。万両はさくらんぼのように下向きに実を付け、葉は波打つような形をしています。南天は、1つの枝の先にたくさん実を付け、つるんとした葉の形をしている植物です。

お正月の花飾りとして生ける場合には、あまり区別せずに赤い実として扱われることが多いですが、お店の正月飾りなど、特に「商売繁盛」を願って飾りたいときには千両、あるいは万両を選ぶと良いでしょう。

正月飾りを飾って気持ちよく新しい年を迎えよう

正月飾りを飾る時期と由来、飾る植物に込められた意味について紹介しました。現在の正月飾りの風習は、日本の古くからの伝統を引き継ぎながらも、各家庭や地域の風習が混ざり合い、新たな独自の文化になりつつあります。

正しい知識を心得ておくことで、時代の新しい風を取り入れつつ、年神様を迎えるのにふさわしい準備ができることでしょう。今年も新しい年の幸せを願って新年を迎える準備をし、気持ちの良い1年をスタートできると良いですね。

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