お墓参りで供える花とは?お参りの正しいマナーなども併せて紹介

お盆やお彼岸、命日などで故人を偲ぶためにお墓参りへ行く方は多いのではないでしょうか。しかし、年に数回程度のお墓参りでは、花の選び方やお墓の掃除の方法、お参りの方法などがぼんやりとしてしまい、正しいマナーを守れているかどうか不安という方は少なくありません。

そこで今回は、お墓参りで供える仏花についてやお墓参りの手順とマナー、慎むべきことなどを分かりやすく解説します。

お墓参りとは

お墓参りとは、故人の冥福を祈り、感謝や近況を伝えるためにお墓へ足を運ぶ行為です。日本では古くから受け継がれてきた供養の習慣であり、家族や先祖とのつながりを感じる大切な時間でもあります。お盆やお彼岸、命日などの節目に行われることが多く、花や線香を手向けて故人を偲ぶのが一般的です。

しかし、その一方で現代ではライフスタイルの多様化により、お墓参りの形も変化しています。遠方でなかなか訪れられない人のために「代行サービス」を利用したり、自宅で写真に手を合わせて思いを馳せたりなど、供養の形は人それぞれになりつつあります。

どのような形であっても、故人を敬う気持ちを持つことこそがお墓参りの本質といえるでしょう。

お墓参りの頻度に決まりはない

お墓参りは、多くの人がお盆やお彼岸、命日などの節目に訪れますが、「必ずこの日に行かなければならない」という決まりはありません。大切なのは故人を思う気持ちであり、近くに立ち寄った際に手を合わせたり家族が集まるタイミングで一緒にお墓を訪れたりなど、思い立ったときに足を運ぶだけでも十分意味があります。

最近では、忙しさや距離の問題から頻繁に行けない人も増えていますが、その場合は自宅で手を合わせたり供花やお線香を届けたりといった方法でも心を通わせることができます。お墓参りは、義務ではなく感謝を伝える時間なので、無理のない形で続けていくことが長くご先祖や故人を敬うことにつながるでしょう。

お墓に供える仏花

墓前や仏壇には、「仏花(ぶっか)」と呼ばれるお供え用の花を飾ります。

仏花は、過酷な自然で咲き誇る花を厳しい修行に耐えて悟りを得る仏教の教えになぞらえ、盛りから枯れるまでの花の命を見届けることで花から生命の尊さを学ぶという意味合いもあります。その他にも、「肌で季節を感じられない故人に四季を感じてもらう」「生前好きだった花を飾って喜んでもらう」といった役割もあります。

墓前に供える仏花は故人の好みを優先し、偲ぶ気持ちを大切にして選ぶと良いでしょう。ただし、宗派などによっては独自のしきたりを持つこともあるので、気になる場合は慣習について確認しておくことをおすすめします。

お墓参りに向いている花7選

お墓参りに適している花として、以下の7種類が挙げられます。

  • キク
  • スプレーマム
  • トルコキキョウ
  • カーネーション
  • リンドウ
  • キンセンカ
  • ミソハギ

ここでは、それぞれの花の特徴などについて詳しく見ていきましょう。

キク

キクは日本を象徴する花の1つであり、古くから高貴で清らかな花として親しまれてきました。天皇家の紋章にも用いられるほど格式のある花で、仏花としても欠かせない存在です。

咲き方や色の種類が豊富で、白は清浄、黄は感謝、紫は高貴といったように落ち着いた印象を与える色合いが多いのも特徴です。古くから日本人の心に根づいてきたキクを供えることは、故人への敬意と感謝の気持ちを穏やかに伝える行為といえるでしょう。

スプレーマム

スプレーマムは1本の茎に複数の花を咲かせるキクの一種で、明るくにぎやかな印象を持っています。もともとはアメリカで品種改良されて誕生した「セイヨウギク」と呼ばれる花で、華やかさと可憐さを兼ね備えた姿が特徴です。

日本では仏花として使われることも多く、和ギクよりもカラーバリエーションが豊富なため、供花に彩りを添えたいときに選ばれます。鮮やかな色合いでありながら落ち着きのある印象を持つスプレーマムは、故人への感謝とあたたかな思いを華やかに表現できる花といえます。

トルコキキョウ

トルコキキョウはやわらかな花びらと優雅な佇まいが魅力の花で、仏花としてもよく用いられます。八重咲きの品種はまるでバラのように華やかでありながら、落ち着いた気品を感じさせるため、故人をしとやかに偲ぶ供花として人気です。

仏花としては、白や淡い紫を基調としたものが一般的で、清らかさや穏やかさを表現します。上品でやさしい印象を持つトルコキキョウは、お墓を明るく彩りながらも落ち着いた雰囲気を保てる存在です。

カーネーション

カーネーションは母の日の花として知られていますが、仏花としてもよく活用されている花です。白いカーネーションには「私の愛は生きています」という花言葉があり、故人への変わらぬ愛情や感謝の気持ちを表すのにふさわしいとされています。

花持ちが良く、扱いやすいカーネーションは季節を問わず入手できるため、お墓参りにも重宝されます。やさしさと安らぎを感じさせるその姿は、故人への思いを静かに伝える供花として最適です。

リンドウ

釣鐘状の小花を咲かせるリンドウは、古くから親しまれているしとやかな佇まいの花です。「あなたの悲しみに寄り添う」といった花言葉を持っているため、お悔やみの花や仏花としてもふさわしい花として有名です。

気品漂う高貴な雰囲気を持つリンドウは年配の方に好まれる傾向にあるので、格式や雰囲気を重視する場合は墓前を彩ってみてはいかがでしょうか。なお、供える前は雄しべの葯をピンセットなどで取り除いておくと、きれいな状態がより長持ちしやすくなるのでおすすめです。

キンセンカ

キンセンカは、鮮やかなオレンジや黄色の花を咲かせるキク科の植物であり、太陽のように明るく前向きな印象を与える花です。花言葉には「別れの悲しみ」といった意味合いがあり、故人を偲びながらも穏やかに見送る気持ちを表現するのにふさわしい花とされています。

キンセンカはオレンジや黄色の他に、淡いクリーム色やレモン色などの落ち着いた色合いの品種もあり、季節や他の花との組み合わせで印象を変えることもできます。キンセンカが持つ明るい色合いは、故人とのあたたかな思い出を象徴するようにお墓をやさしく照らし、訪れる人の心を和ませてくれるでしょう。

ミソハギ

ミソハギは、お盆の供花として古くから親しまれている花です。細くまっすぐに伸びる茎の先に紫がかった小さな花をいくつも咲かせる姿は、凛とした美しさの中にやさしさを感じさせます。

フリルのように波打つ花びらが風に揺れる様子もどこか涼やかで、夏の供花として季節感を添えてくれるでしょう。見た目の華やかさだけでなく、故人を静かに偲んで心を鎮める意味を持つミソハギは、お盆のお墓参りにふさわしい伝統的な花の1つです。

お墓参りで避けるべき花の特徴

お墓参りでは、以下のような特徴を持つ花は避けたほうが良いとされています。

  • 棘がある花
  • 毒性がある花
  • 香りが強く花粉が多い花

ここでは、避けるべき花の特徴について具体的に解説します。

棘がある花

棘のある花は、お墓参りや仏前に供える花としては避けたほうが良いとされています。これは、仏教の教えの1つである「不殺生戒(ふせっしょうかい)」に由来し、命を傷つけたり奪ったりする行為を戒める考え方に基づいています。棘は傷つけるものという象徴的な意味を持つため、供花としては不適切とされてきました

また、見た目の印象としても棘のある花は少し攻撃的な印象を与え、故人を穏やかに偲ぶというお墓参りの目的にはそぐわない場合があります。お墓参りで供える花は丸みのあるやさしい印象の花を選び、落ち着いた雰囲気を保ちながら感謝や敬意の気持ちを穏やかに表すことが肝心です。

毒性がある花

毒性のある花も、仏事やお墓参りにおいて避けるべき花とされています。毒を持つ花は「命を脅かす存在」を象徴すると考えられ、仏教の根本にある「生きとし生けるものを尊ぶ」という教えに反しています。

特に、彼岸花は強い毒性を持つことで知られており、「死人花」や「幽霊花」といった別名から死や不吉さを連想させる花としてタブー視されてきました。お墓に供える際は、見た目の美しさだけでなく、意味や象徴性にも配慮し、穏やかで清らかな印象を与える花を選ぶようにしましょう。

香りが強く花粉が多い花

香りが強い花や花粉の多い花も、お墓参りや仏前に供える花としては避けるのが望ましいです。仏教において、仏様はお供え物の「香り」を通して食事を楽しまれると考えられています。そのため、花の香りが強すぎると本来のお供えの香りを打ち消してしまう恐れがあり、控えたほうが良いとされてきました。

また、花粉の多い花は墓石や供物を汚してしまったり、参拝者のアレルギーを引き起こしたりする可能性もあるので注意しなければなりません。お墓参りの際は、見た目の華やかさよりも清らかさと落ち着きを重視し、香りが穏やかで花粉の少ない花を選ぶことが大切です。

お墓参りの主な手順

ここでは、お墓参りの主な手順について紹介します。宗派によって異なる場合もありますが、一般的な流れとして参考にしてみてください。

1.お墓掃除

お墓に到着したらまずは合掌して、お墓の掃除から始めましょう。周りに落ち葉などがあれば箒で掃き、周りの雑草取りや目立つ大きなゴミなどを拾います。

その他にも、墓石に水をかけてやわらかいスポンジやタワシ、雑巾などで拭き掃除をします。使い古した歯ブラシなどを持参すると、墓石の細かい部分まで汚れが落としやすくなるのでおすすめです。

最後に水をかけて、きれいなタオルなどで水気を拭き取りましょう。墓石に敷かれている玉砂利が沈んでしまっている場合は、園芸用シャベルなどで玉砂利を掘り起こし、ザルなどに入れて水洗いして敷き直してください。

2.花立に花をお供えする

花立とは、お墓の左右に1つずつ用意されている花瓶のことです。花立が2つある場合は、供える花が左右対称になるようバランスを整えます。花立てには多くの花は入らないので、1束の本数は少なめにしておきましょう。

古代の中国では奇数を陽数、偶数を陰数とした風習があり、日本でも古くから奇数は縁起の良い数だと考えられてきています。そのため、墓前に供える仏花も3本・5本・7本の奇数で2束で1対の花を供えるのが基本です。

色合いに関しては白や紫の仏花が一般的ですが、故人が喜んでくれるような色合いでも問題ないとされています

3.お参りする方に花を向ける

仏花の供え方には、「仏様に向ける」「八方に向ける」「お参りする方へ向ける」という3種類がありますが、一般的にはお参りする方に花を向けています。お供えする花は故人に向けたものですが、お参りするご遺族の心を癒す意味もあります。

飾る際は、神事で祀られる榊の形状のように花束をひし形に整えます。あらかじめ輪ゴムや紐などで茎を束ねておくと花立へ供えやすくなります。

4.水鉢の水を換える

水鉢は「水受け」とも呼ばれることがあり、お墓にある水を入れておくくぼみのことをいいます。水鉢は、故人の飲み水を入れておく場所だと考えられています。

水鉢に入っている水をきれいな水へと取り替えることで、お参りをする人の心を清める意味があります。水鉢がないお墓の場合は、湯呑などに水をお供えすると良いでしょう。

5.五供をお供えする

お墓を清めたあとは、故人への感謝を込めてお供えをします。お供えの基本は「五供(ごく)」と呼ばれるもので、花・香・灯・水・飲食の五つを意味します。故人の好物だったお菓子や果物などを持参した場合は、このタイミングで供えると良いでしょう。

供える際は墓石の上に直接置かず、半紙や懐紙などを敷いて丁寧に置くのが作法です。さらに、食品はそのままにせず、お参りを終えたら持ち帰るのがマナーとされています。これは墓地を清潔に保つための配慮でもあり、次に訪れる人への思いやりにもつながります。

6.線香をあげて合掌

五供などをお供えしたら、線香をあげて合掌します。お線香の香りは心身を清めると考えられていますが、一説では仏様がご飯として香りを召し上がるという考え方もあります。

線香をあげる順番は、お墓に眠る故人と近い間柄の人からお参りをします。ろうそく立てがあるお墓の場合は、ろうそくを持参してきましょう。なお、線香の火は息で吹き消さずに、手で扇いで消すようにするのがマナーです。

お墓参りにおける注意点・マナー

お墓参りにおいて、避けるべき行為や押さえておくべきマナーが存在します。最後に、お墓参りする前に知っておきたい注意点やマナーなどについて解説します。

墓石にお酒やジュースはかけない

故人が好きだったお酒やよく飲んでいたジュースを味わってほしいからという思いで墓石にかける方がいますが、これは周りの方に迷惑をかける行為です。飲料の成分によっては、墓石の劣化やシミができる原因になるので良くありません。

また、糖分を多く含むジュースなどは虫を誘き寄せる原因にもなるため、故人への飲み物のお供えは缶や瓶に入ったままで供えるようにしてください。

お供え物は持ち帰る

お菓子や食品、果物などのお供え物はお参り後に必ず持ち帰りましょう。食品類はカラスなどが餌として食べに来ることが多く、お墓が荒れてしまって周りのお墓にも被害が及ぶ可能性もあります。

また、放置したままで腐敗するとハエなどがたかってしまうなど、衛生的にも良くありません。花はそのままにして帰っても問題ありませんが、食品類のお供えに関しては必ず持ち帰るようにしましょう。

お寺や霊園の規則に従う

お墓参りの際は、お寺や霊園ごとに定められた規則を守ることが大切です。霊園や管理者によっては供花やお供え物に関するルール、清掃やゴミの処理方法などが細かく決められている場合があります。さらに、火気の使用が禁止されている場所では線香の使用にも制限があることがあります。

お墓参りは故人だけでなく、同じ場所を訪れる人たちへの思いやりを表す場でもあります。訪れる前に掲示板や案内を確認し、現地の決まりに従って静かに行動することで敬意と礼節のあるお参りができるでしょう。

奇抜な服や露出の多い服は避ける

お墓参りだからといって、スーツや礼服できちんと身なりを整えなければいけないわけではありません。しかし、あまりに奇抜で悪目立ちする服装や露出の激しすぎる服装は控えるのがマナーです。

また、夏場などの暑い日ではサンダルを履いている方が多いかもしれませんが、本堂に入ることがある場合は裸足だと失礼にあたります。本堂に入る際は靴下を持参しておき、履いてから入るようにしましょう。

まとめ

お墓参りは故人を偲び、感謝の気持ちを伝える大切な時間です。供える花にはそれぞれ意味があり、キクやトルコキキョウ、スプレーマムなどの落ち着いた花を選ぶことで、清らかで穏やかな印象を保つことができます。一方、棘のある花や毒性のある花、香りが強い花などは避け、故人と参拝者の双方にやさしい花を選ぶことが大切です。

また、お供えや掃除などの手順にも心を込め、霊園やお寺の規則に従って丁寧に行うことが、お墓を清めるだけでなく心を整える時間にもつながります。季節の花に彩られたお墓参りは故人とのつながりを感じさせ、日々の暮らしの中で心を穏やかにする大切なひとときとなるでしょう。

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