胡蝶蘭はなぜ高い?高級な理由を調査
街中でも新しいお店が開店した際などは、店先に美しい胡蝶蘭が並んでいるのを見る機会もあるのではないでしょうか。
新規開店の店先に並ぶ胡蝶蘭は、一本の花茎から大きな美しい白い花を複数数珠つなぎに咲かせていてひときわ目を引く存在です。多くの人がこの美しい花に魅了され、自然と視線を向けてしまっていることでしょう。
しかし、胡蝶蘭を求めてお花屋さんに足を運ぶとその値段に驚く方は多いかもしれません。安いものでも1鉢5,000円程度、高いものであれば30,000円を軽く超えています。
確かに見栄えもよく、花言葉からも縁起の良い花であることはわかりますが、他の花と比べると、なぜ胡蝶蘭は高いのでしょうか。
今回は、その理由についてお伝えしていきます。
胡蝶蘭ってどんな植物?
胡蝶蘭は、学名を「ファレノプシス・アフロディテ」と言います。原産は東南アジアで、熱帯雨林に生息する植物です。学名のファレノプシスを和訳すると「蛾のような」という意味で、白く大きな花がまるで蛾のように見えたことが由来となっています。
一方、アフロディテとはギリシャ神話に出てくる愛と美と性を司る神様の名前です。時にアフロディーテは戦いの神ともされ、強さと美しさを兼ね備えた神様。その神の名前が学名につけられたのは、もちろん胡蝶蘭の花がとても美しいからにほかなりません。
また、胡蝶蘭の花言葉は「幸福が飛んでくる」です。この素敵な花言葉の由来も、胡蝶蘭の花の形状が蝶の羽、翼のように見えることからつけられました。
この縁起のいい花言葉から、これからの飛躍を願う思いを込めた贈り物として、さまざまなお祝い事に贈られるようになったのです。
胡蝶蘭の植物としての分類
胡蝶蘭は、ラン科の植物でコチョウラン属に属する植物です。大きな葉を持つ単軸性の多年生着生植物です。
着生植物とは、他の樹木にくっついて育つ植物を指す総称です。他の植物にくっついて育ちますが、他の植物から栄養分を吸収しているわけではなく、個体ごとに光合成を行います。根は、他の植物に着生するために強くしっかりとしています。
また「単軸性」とは1本の茎を伸ばす植物を指し、「多年生」とは複数年の寿命がある植物を指します。ちなみに、胡蝶蘭の寿命は長いもので50年以上と言われています。
胡蝶蘭の特徴
胡蝶蘭というとやはり白くて大きな花が特徴的ですが、花以外の特徴についても見ていきましょう。
胡蝶蘭は、茎の下部に数枚の葉をつけます。葉は大きく肉厚で、形は楕円形や長楕円形をしています。
着生する植物のため根は太くしっかりとしており、植えられている部分より上部からも根が生えてきます。これは、土壌中の水分を吸収するだけではなく、空気中の水蒸気からも水分を吸収しようとするためです。
胡蝶蘭の育て方
胡蝶蘭を育てる際には、まず置き場所をどこにするか決めましょう。太陽光が当たることはとても大切な要素ですが、直射日光が当たると葉が焼けてしまいます。自生する環境と同じ環境になるよう意識し、ジャングルの木漏れ日のような、半日陰の場所が望ましいです。
また、胡蝶蘭にとっての適温は18℃~25℃です。熱帯原産の植物のため、高温多湿を好みます。エアコンの風が当たるような場所には絶対に置かないようにしましょう。
水やりは、植えられている水苔が乾燥したら、コップ一杯ほどの水を与えます。季節や環境によって異なりますが、2~3日に1回ほどの水やりが必要になります。
水のやりすぎは根腐れの原因にもなるため、水苔が乾燥しているか必ず確認してから水やりしましょう。
胡蝶蘭の一般的な価格と傾向
胡蝶蘭は、他の植物と比べるととても高価ですよね。その価格は5,000円から50,000円、株数によっては500,000円を超えるものもあります。
この価格の差は、一般に花の大きさ、輪数、本数によって異なります。
花は大きければ大きいほど高くなり、輪数も多ければ多いほど高くなります。併せて、本数が多くなれば同様に高価になるのです。
それでは、胡蝶蘭の価格が高い理由についてもう少し詳しくご紹介していきます。
- 花の大きさ
- 一株につく花の数
- 株の数
花の大きさ
胡蝶蘭の花の大きさは、直径で7cmほどが基準です。この7cmを超えると、値段は高くなります。大きいものだと10cm、15cmほどの胡蝶蘭や、5cmから6cmほどの小ぶりの胡蝶蘭もあります。特別なお祝い事にはもちろん、小さいものは一般家庭用のちょっとしたお祝いにも最適ですよ。
10cmを超える大きさの胡蝶蘭の花が連なって咲く様は圧巻です。
一株につく花の数
胡蝶蘭は、1本の花茎に6、8個、多ければ12個ほどの花をつけます。この花の数は当然のことですが個体差が生じ、ネットショップやお花屋さんで売られている場合は輪数が明記されているので、しっかり確認しておきましょう。
胡蝶蘭の花は「輪」と数え、例えば「33輪3本立」のように表記されていれば、3株の胡蝶蘭で構成され、花の総数が33輪であることを表します。
花の数が多ければ多いほどボリュームが増し、とても豪華になります。基本的に、一株の花の数が10輪を超えると値段が高くなる傾向にあります。
株の数
胡蝶蘭は、一株につき花をつける花茎が1本ついているのが一般的です。稀に分岐することもありますが、栄養が分割され花の大きさに影響を与えてしまうので、市場で目にするのは1本の花茎をつけた胡蝶蘭が一般的です。
胡蝶蘭は多ければ10輪を超える花をつけますが、1株で10輪より、3株を合わせて30輪とした方が迫力が出て、見た目の豪華さや美しさが増します。
そのため、3本立て、5本立てと株数が増えるごとに値段が高くなるのです。
なぜ胡蝶蘭は高いのか
胡蝶蘭の価格を平均すると、1株で約10輪の花をつけたものは5,000円から10,000円ほどします。これが一株の値段なわけですから、胡蝶蘭は高いと言わざるを得ません。
このように、フラワーギフトとして贈られる他の花と比べると高い値段設定ですが、それは単にお祝い事のご祝儀相場というわけではないのです。
- 胡蝶蘭の育成
- 胡蝶蘭の育成環境
- 胡蝶蘭の花茎の管理はプロの技が必要
- 優良な株には使用権がある
それでは、胡蝶蘭が高額である理由について確認していくことにしましょう。
胡蝶蘭が高い理由①胡蝶蘭の育成
植物は花を咲かせ、その後に種子を作ります。この種子で子孫を残す事となるのが一般的です。胡蝶蘭も他の植物同様に種子で子孫を残す植物となっています。しかし、胡蝶蘭の種子の発芽率は高くなく種子からの育成は効率的ではないのです。
さらに胡蝶蘭も種を発芽させ育成させるのですが、この育成には非常に時間がかかります。花をつけられるまでに約5年の時間を要するため、種から育成を始めると市場に出せるまで5年以上の歳月がかかるのです。
したがって、その期間の育成費用が価格に反映されることとなり、これが胡蝶蘭が高価である要因の一つです。
多くの胡蝶蘭を育成する業者は苗の状態から育成を始めていますが、それでも3年から4年ほどの時間を要します。
胡蝶蘭が高い理由②胡蝶蘭の育成環境
胡蝶蘭は、原産が東南アジアの熱帯雨林の環境の植物です。そのため、寒さには非常に弱いという特性を持っています。
胡蝶蘭の育成環境として適切な温度は18℃から25℃といわれており、この環境を年間を通じて維持するためには、もちろん費用が掛かりますよね。
四季がある日本では平均気温が18℃以下になる期間も多く、その期間は18℃以上を維持した温室で胡蝶蘭を育てなければなりません。
さらに、胡蝶蘭は多湿を好むため育成においては湿度管理も必要となります。湿度をコントロールする費用もかかるため、胡蝶蘭の育成環境も胡蝶蘭が高価である要因となります。
胡蝶蘭が高い理由③胡蝶蘭の花茎の管理はプロの技が必要
胡蝶蘭の最大の魅力は1本の花茎に連なるように咲かせる大輪の花にあります。大輪であるがゆえに重さもありますから、花茎に大きな負担となることは確かです。それ故に花茎の管理は非常に重要な要素となり、胡蝶蘭の価値を左右する要因となります。
株から伸びた花茎を見て、何輪ほどの花を咲かせるかを予測し、その花を維持するための補助の添え木を添えるには、熟練した技術が必要になります。
プロが一株一株丁寧に対応しなければならないことも、胡蝶蘭が高価であることの要因です。
胡蝶蘭が高い理由④優良な株には使用権がある
胡蝶蘭は、より大きく美しい花を咲かせるために品種の改良が日々進められています。このように品種改良が進んだ株には「使用権」が発生するのです。つまりは美しい花を咲かせる胡蝶蘭ほど使用権分の費用が上乗せされることとなります。
技術の進歩でより美しい花を手に入れることができるようになりましたが、その反面、価格を押し上げる要因の一つにもなっています。
珍しい胡蝶蘭の品種について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
胡蝶蘭が高い理由⑤その他の要因
育成に時間がかかる事、育成環境を維持するのにコストがかかる事、丹念に花茎の管理をしなければならないことなどの要因を挙げてきましたが、この他にも胡蝶蘭の価格を上げている要因があります。
その一つが「輸送コスト」です。一般の物品の輸送と異なり、胡蝶蘭は重ねて輸送することは不可能です。花に触れることなく空間を十分に確保した輸送をしなければならないため、輸送コストも割高になります。また、輸送する際も環境の維持は欠かせませんから、この状況も価格に上乗せされることとなってしまうのです。
なぜ胡蝶蘭は高いのに多くの人に選ばれる?
胡蝶蘭はとても美しいお花ですが、美しさで言えば他の花も引けを取りません。それでも多くの方がお祝いの意を添えて胡蝶蘭を選ぶのはなぜなのでしょうか。
その理由について、ご紹介していきたいと思います。
縁起の良い花言葉
胡蝶蘭が人気な理由は、花の美しさはもちろんですが、併せて花言葉も後押しをしています。
胡蝶蘭の花言葉は先程もお伝えしましたが、「幸福が飛んでくる」です。
この花言葉は、これからの未来に期待をはせる新規開店、事業所の開所、移転などの折に理想的な意味を添えることができるため、お祝い事にぴったりなのです。
さらに、胡蝶蘭には別の花ことばもあります。それは「純粋な愛」という花言葉。この花言葉から、結婚式や家族への愛を伝えるための贈り物としても好んで贈られるようになりました。
花の寿命が長い
胡蝶蘭が選ばれる理由に花言葉が大きく貢献していることは確かです。しかし、花言葉以上に胡蝶蘭が選ばれる理由の一つとなっているのが、「花の寿命」です。
大半の花の寿命は数日から長くても1週間ほどですが、胡蝶蘭の花は通常約1か月、しっかりと手入れをしていれば2か月もの長期間にわたって美しい白い大輪を咲かせ続けます。
1か月以上も咲き続けて人目を引いてくれるのであれば、むしろコストパフォーマンスは良いともいえるのではないでしょうか。
このような理由によって、多くの人が胡蝶蘭を選ぶのです。
初心者でも育てやすい
植物は生き物ですからお世話を必要とします。切り花であれば定期的に水を変える必要がありますし、鉢植えの植物でも水やりは欠かせません。
しかし、胡蝶蘭は耐水性が強いので数日おきに1株当たりコップ1杯程度の水を与えれば充分です。
寒さには耐性がないため、寒い時期には寒さを防ぐ対処が必要となりますが、寒い時期を除けば手間いらずの花ともいえることも胡蝶蘭が選ばれる理由となっています。
まとめ
今回は、胡蝶蘭が高い理由についてご紹介しました。
胡蝶蘭が高価な理由は、一言でいえば育成に手間と時間を要するからです。逆に言えば、丹精込めて育てなければ美しい花を咲かせることはありません。
お祝いの意味を添えて送られる胡蝶蘭は非常に艶やかで魅力的な花です。胡蝶蘭の持つ花言葉「幸福が飛んでくる」にあやかり、贈り主はさらなる発展、さらなる幸せを願って胡蝶蘭を贈ってみませんか?