シャクヤクってどんな花?特徴や品種、花言葉、育て方まで徹底解説

美しい女性の振る舞いを例えたことわざに「立てば芍薬(シャクヤク)座れば牡丹、歩く姿は百合の花」というものがあります。

シャクヤクは上品でエレガントな花を咲かせる花で、日本だけでなく世界でも品種改良が進んでいる人気の花。

今回は、そんなシャクヤクについて知識が深められるよう、品種や花言葉、育て方まで解説していきます。

 

シャクヤクとは?

女性の美しさに例えられてきたシャクヤク。

まずは、そんなシャクヤクがどんな花なのかを解説します。

 

基本情報

シャクヤクは中国東北部が原産地のボタン科ボタン属の多年草で、開花期は5~6月頃です。

耐寒性はあるものの、冬になると地上部は枯れ、地中の根や芽のみで冬越しします。

日本では平安時代の頃から薬草として親しまれていましたが、現在では日本はもちろん世界でも園芸用の品種改良が進んでいる人気の花です。

生長すると草丈が60~120cmほどにもなり、赤やピンク、黄色や白などの香りの強い花を咲かせます。

シャクヤクの名前は、しなやかで美しい姿を意味する「綽約(しゃくやく)」から由来しているといわれていますが、ヨーロッパでは花姿が似ていることから「聖母のバラ」や「山のバラ」と呼ばれているようです。

 

花言葉

フラワーギフトを贈る際に、花言葉に注目するのもおすすめです。普段は伝えられない想いや気持ちを花言葉に託して贈ることができますよ。

シャクヤクの花言葉は「恥じらい」や「はにかみ」、「謙虚」など。その由来は、イギリス民話の中で恥ずかしがり屋の妖精がシャクヤクの中に隠れていたことや、シャクヤクが夕方には花を閉じてしまうことなどさまざまな説があります。

ほかにも、シャクヤクの別名が「ピオニー」で、英語の慣用句である「blush like a peony(恥じらっている様子)」からきているともいわれていますよ。

日本でも、古来より美しくおくゆかしい女性のことをシャクヤクに例えていたので、そのようなイメージが定着したのかもしれません。

 

人気の種類

シャクヤクは品種が豊富な花で、色だけでなく一重咲きや八重咲きなど花びらの付き方もさまざまです。

その中でも、特に人気の品種をご紹介します。

 

レッドレッドローズ

鮮やかな真っ赤な花を咲かせるレッドレッドローズは、幾重にも重なる花びらがまるでバラのような美しさを放っています。

花径は12cmとシャクヤクの中ではやや小さめですが、その色味で圧倒的な存在感を放ち、切り花やガーデニングに人気の品種です。

 

クリスタルビューティー

純白で大輪の八重咲きの花を咲かせるクリスタルビューティー。丈夫で育てやすく、夏らしい爽やかな香りを放ちます。

清楚でピュアな雰囲気から、ブライダルシーンでの装花やブーケにも多く使われている品種です。

 

ピーチアンドクリーム

外側はピンク色で、内側に入るほど薄いレモン色の花びらをつけるグラデーションが美しいピーチアンドクリーム。花色がまだ固定されておらず、咲き方に幅があることから、どんな色の花をつけるのか楽しみが持てる花です。

 

イエロークラウン

赤やピンク系が多いシャクヤクの中でも数少ない黄色い花を咲かせるイエロークラウン。中央になるほど黄色が濃くなり、色の変化を楽しめます。

八重咲きでボリューミーなので、開花期には支柱を立てて支えてあげると倒れてしまうのを防げるのでおすすめです。

 

ホワイトキャップ

ローズピンクの花弁と黄色い花芯のコントラストが美しいホワイトキャップ。1色やグラデーションが多いシャクヤクですが、色の違いを楽しみたい方にはおすすめの品種です。

丈夫で育てやすく、花茎が長いので切り花にも向いています。

 

シャクヤクを育てる準備

シャクヤクを育ててみたいという場合は、まずは苗を購入したり用土を準備したりしなければなりません。

現在シャクヤクはさらに品種改良が進み、花色や咲き方などバラエティ豊かです。秋になると比較的安価なポット苗が出回るようになるので、お好みのシャクヤクをじっくり選んでみてください。

 

苗の選び方

ホームセンターや園芸店などでシャクヤクの苗を購入するときには、芽がしっかりと大きく膨らんだものを選ぶようにしましょう。芽が小さいと、最初の夏に花を咲かせられないこともあるようです。

また、芽ができるだけたくさん付いていた方が、株が大きくなって花をたくさん咲かせる可能性が高くなります。

ほかにも、芽をしっかり観察して病気や害虫の被害に遭っていないかも確認しておきましょう。

春になると、開花を目前に控えた立派な株も出回るので、初心者の方はこの時期に購入するのもおすすめです。

 

用土

シャクヤクは水はけの良い土を好みます。鉢で育てる場合は、赤玉土や鹿沼土、腐葉土などを混ぜた有機質の多い土を用意しましょう。また、ホームセンターや園芸店などで購入できる花用の培養土でも構いません。

地植えする場合は、植える箇所をよく耕し、必要に応じて腐葉土などを混ぜ込んでおいてください。

 

シャクヤクの育て方の基本

シャクヤクの苗と用土が準備できたら、さっそくシャクヤクを育て始めてみましょう。

基本的な流れは、ほかの花とそれほど変わりませんが、環境が整っていなければ花付きが悪くなることもあるので、少しでもたくさんの花を楽しむためには毎日のお世話が大切になります。

シャクヤクは鉢植えでも地植えでも育てることができるので、自宅の環境に合わせてお世話しやすいように栽培してみましょう。

 

植え付け

シャクヤクの植え付けに適している時期は9月下旬~10月頃です。

まずは、ポットから苗を丁寧に取り出し、病害虫を防ぐために根に付いている土を払い落とします。

次に、地植え・鉢植え共に、シャクヤクの芽が付いている方を上にして、芽が5cmほど隠れる深さに植え付け、その後たっぷりと水をやりましょう。

シャクヤクの株を春先に購入したのであれば、購入時と同じくらいの深さで植えて問題ありません。

シャクヤクは生長するにつれて葉が良く茂り、株がどんどん大きくなってくるので、回りの植物と近すぎないようにある程度距離をとって植え付けましょう。

 

置き場所

シャクヤクは日当たりと風通しの良い場所に植えるのが基本です。日光を好む植物ではありますが、夏の強い西日が当たる場所は適していません。日差しが厳しい時期には、大きな樹木の陰になるような場所がおすすめです。

シャクヤクは一度植え付けたら、その後あまり動かさない方が良いので、最初に植え付け場所をよく検討しましょう。

鉢植えの場合は、午前中はしっかり日があたる場所に置き、真夏の午後には木陰に移動させるのがおすすめです。

 

水やり

シャクヤクは乾燥に弱い性質を持っているので、水切れしないように注意してください。

鉢植えの場合は、土の表面が乾いたら、鉢底から水が溢れるまでたっぷりと水を与えましょう。株が生長してくる春以降は、葉や花に水がかからないように株元に静かに水を流すようにします。

夏には特に土が乾燥しやすくなるので、状況に応じて朝・夕の2回水やりしても構いません。

地植えの場合は、根付いてからは雨水などで十分吸水できますが、真夏に晴れた日が続いた際には、土や株の様子を見て乾燥気味であれば水をやりましょう。

 

肥料

シャクヤクは肥料が不足すると花付きが悪くなるので必ず与えるようにしましょう。

まずは植え付け時に緩効性肥料を混ぜておきます。次に、芽が動き出す直前の2~3月頃に芽出し肥を、6月頃の開花後にお礼肥として緩効性化成肥料や油かすなどを与えます。

その後、新芽が伸びてくる9~10月頃にも緩効性化成肥料などを施してください。

このように1年に3回追肥するサイクルを回していくことで、シャクヤクに十分栄養が行き渡り毎年のように美しい花をたくさん咲かせてくれます。

 

病気

シャクヤクは日当たりや風通しが悪くなると「うどん粉病」や「灰色かび病」などにかかることがあります。

うどん粉病は、シャクヤクの葉や茎などに白い粉がふいたようになり、被害が大きくなると株全体を枯らしてしまうこともある病気です。

初期段階であれば、酢を薄めた水をスプレーしたり、その部分を取り除くことで病気の広がりを防げます。

灰色かび病は、葉や茎に褐色の斑点が出るもので、被害が広がるとあっという間に株を枯らしてしまいます。見つけ次第、専用の薬剤などを利用して被害拡大をくいとめましょう。

 

害虫

シャクヤクの蕾が付くころにアブラムシが発生しやすくなります。見つけたら速やかに歯ブラシなどでこすり取り、大量発生している場合は植物用の殺虫剤をふきかけて駆除しましょう。小さくて目に付きにくいので、日頃からよく観察しておくのがポイントです。

また、ネコブセンチュウやコウモリガの幼虫はシャクヤクの根に発生することもあります。花が咲かなくなったら、一度根を掘り起こしてみて、害虫の被害に遭っていないかを確認しましょう。

 

シャクヤクの育て方のポイント

シャクヤクの日常の基本的なお世話の流れを解説しました。

ここからは、季節や花の状態に応じて行う育て方のポイントを解説していきます。

シャクヤクの花付きを良くするため、そして翌年以降も元気に花を咲かせてくれるように、丁寧に育てていきましょう。

 

摘蕾(てきらい)

シャクヤクは1本の茎に複数の蕾を付けます。個人の自宅で楽しむ分にはそのまま自然に任せても楽しめるのですが、より充実した大きな花を咲かせたいのであれば、頂点に付いている蕾のみを残して摘み取っておきましょう。

そうすることで、1つの蕾にエネルギーが集中し、大輪の花を咲かせてくれます。

 

花がら摘み

シャクヤクの花は5~6頃に咲き終わるので、その後は早めに花茎部分からカットしておきましょう。秋まで放置してしまうと、種を作ろうとして株が消耗してしまいます。

また、シャクヤクの茎は真っすぐ高く伸びるので、切り花として楽しむのもおすすめです。その場合は、蕾が膨らんで色づいた花弁が出てくる頃に、株元に2~3枚の葉を残してカットしましょう。花瓶などに挿しておくと、室内でも開花を楽しめます。

 

切り戻し

シャクヤクは冬になると地上部の茎や葉が枯れてしまいます。園芸用ハサミなどで地際から刈り取って整理し、根にエネルギーを温存させましょう。

初めてシャクヤクを育てる方は、シャクヤクが完全に枯れてしまったと勘違いして根から抜いてしまうこともありますが、根は生きているので処分してしまわないように注意してください。

 

植え替え

シャクヤクはどんどん生長して株を大きくしていきます。鉢植えで育てている場合は、根が鉢の中に回りきってしまわないよう、2~3年に1回を目安にそれまでより一回り大きな鉢に植え替えましょう。

植え替えに適している時期は9~10月頃です。新しい鉢に植え替える際には、土も新鮮なものを用意してリフレッシュさせてあげるようにしてください。

 

夏越し

シャクヤクは日当たりを好む植物ですが、日本の厳しい夏の日差しを嫌い、株が弱ってしまいます。夏を元気に過ごさせるためには、時間帯によって日陰になる大きな樹木の側などに植えると安心です。

日光がよけきれないのであれば、寒冷紗などで日差し対策をするのもおすすめです。

また、夏場は特に乾燥しやすいので水切れをおこさないようこまめに水をやりましょう。

 

冬越し

比較的寒い土地が原産であるシャクヤクは、屋外でも冬越しできます。ただし、地上部は枯れてしまうのですっきり刈り取っておきましょう。

特に寒さが厳しい時期には、ワラやウッドチップを株元にかけて少しでも保温性を高めてあげると効果的です。

 

シャクヤクの増やし方

シャクヤクは、毎年どんどん生長して大きな株に育っていきますが、何年も植えっぱなしにしているとだんだんと花付きが悪くなっていきます。

その際には、株分けをしてシャクヤクを増やすと同時に株を整理してあげましょう。

時期としては9~10月の地下部での活動が始まる前が適切です。株を傷つけないように掘り上げて余計な土を落とし、それぞれの株に3つ以上の芽が残るようにハサミなどで切り分けます。このとき、切り口から菌が入り込まないように殺菌剤に漬けて消毒するのがおすすめです。

あとは、植え付けと同様に栄養のある土に植えて育てていきましょう。

 

シャクヤクの使われ方

シャクヤクはガーデニング以外にもギフトやブライダルで活躍する人気の花です。また、昔から漢方薬としても親しまれており、現在でも市販されている漢方薬に原料として含まれていることもあるのです。

ここからは、シャクヤクが私たちの日常でどのように活躍しているかをご紹介します。

 

フラワーギフト

幾重にも重なる花弁を付けて咲くシャクヤクは豪華で見栄えも良いのでフラワーギフトにも多く用いられています。

茎が長くて真っすぐなので切り花としても扱いやすく、花束やアレンジメントにするとボリューミーなギフトになることでしょう。

バラよりも柔らかい印象になるので、優しいイメージのフラワーギフトを贈りたいときにおすすめの花です。

 

ブライダル

豪華で見栄えの良いシャクヤクは、ブライダルシーンでも会場装花やブーケに多く用いられています。昔から美しい人の代名詞であることや、おくゆかしいイメージの花言葉なども相まって、花嫁さんから人気を集めているのです。

白や紫、ピンク色のシャクヤクでまとめると、カラフルながらもエレガントで品のある仕上がりになりますよ。

 

漢方(生薬)

かつてシャクヤクは、中国より薬草として日本に伝わりました。現代の漢方医学においても生薬として用いられており、消炎や鎮痛、止血、抗けいれんなどの効果があるとされています。

みなさんの身近にある漢方薬の中にも、原材料にシャクヤクが含まれれているものがあるかもしれません。

 

シャクヤクとボタンとの違い

ボタン科ボタン属のシャクヤクなので、ボタンと間違われることが多いのですが、実はこの2つは別物です。その違いは、木か草なのかという根本的なもので、シャクヤクは草花に、ボタンは低木に分類されるのです。

ちなみに英語名では、シャクヤクは「chinese piony」、ボタンは「tree piony」と呼ばれていますよ。

一番見分けやすいのが葉の形で、シャクヤクの葉は艶があって丸みを帯びているのに対し、ボタンの葉は艶がなく、ギザギザになっているのが特徴です。

 

まとめ

シャクヤクは、私たちの日常に深く根差している美しい花です。毎年のように品種改良が進み、現在ではさまざまなバリエーションを見せてくれるようになりました。

シャクヤクはそれほど育て方が難しくないので、ガーデニング初心者の方にもおすすめですよ。また、美しさと可愛らしさと兼ね備えた花姿は、贈り物にも最適です。フラワーギフトに悩んだ際には、ぜひシャクヤクを選んでみてください。

大切なあの人にお花を送ってみませんか?