人気の観葉植物!オリーブの木の種類を用途別にご紹介

オリーブの木から収穫できる実は、料理に使うオリーブオイルや、ピクルスや塩漬けとしても加工される、食生活にはなじみ深い存在ですね。

品種が豊富に存在しており、世界各地で栽培されているオリーブですが、家庭で育てる場合にはどの品種を選べば良いものか、豊富な品種があるだけに迷ってしまうこともあるでしょう。

今回は、観賞用以外にも食用として加工できる実を作るオリーブの木について、基本的な特徴や木の性質、歴史をはじめ、実を使う用途別のおすすめ品種をご紹介します。

オリーブの木を育て始めたいと考えている方は、ぜひ参考になさってみてくださいね。

 

オリーブの基本情報 

科・属 モクセイ科・オリーブ属
和名 阿列布(オリーブ)、橄欖(かんらん)
英名 Olive
学名 Olea europaea
原産地 地中海地方、中近東、北アフリカ
花言葉 「平和」「知恵」

 通年美しい葉を眺められる常緑樹であるオリーブは、観葉植物として人気の高い樹木です。

もともとは乾燥地帯に自生している植物ですから、乾燥に強い性質を持っています。

生命力の強いオリーブは、もともとの野生種に他の品種を接ぎ木していき、品種改良を重ねて新しい品種が誕生していきました。

オリーブの主な産地としては、イタリアやスペインなどのからりと乾いた温暖な気候の地域で、世界中で半分以上はイタリアやスペインで作られたオリーブが流通しています。

自生するオリーブは樹高がどんどんと伸びていきますが、室内用の観葉植物として流通しているオリーブは、30センチほどの卓上に飾れるようなサイズから展開されています。

お部屋のシンボルツリーにもなる、人の身長ほどある高さのものもありますので、自分の好みや飾りたいスペースに応じて選べるのが嬉しいですね。

 

日本でのオリーブの歴史

日本には、16世紀頃にキリスト教の宣教師がオリーブの実やオイルを持ち込んだのが初めだと言われており、江戸時代の末期頃に苗木が持ち込まれました。

明治時代には海産物を漬け込んで保存食とするべく、本格的なオリーブオイルの生産がスタートしたそうです。

 

美しい樹形と葉が魅力

オリーブの人気の理由はたくさんあるのですが、そのうちのひとつには見た目の美しさがあります。オリーブはシャープでスタイリッシュな樹形で、インテリアグリーンとして見栄えが良い観葉植物です。

オリーブは葉先が尖っており、触ってみると硬い質感です。表側の葉には光沢がありますが、裏側は銀色がかったアンティークな色合いをしています。その独特な風合いは「オリーブグリーン」と呼ばれることもあり、くすみがかったようなスモーキーなニュアンスカラーを楽しむことができますよ。

品種によって、葉の形は細長い楕円形であったり、へらのような形状のものもあります。よく見ると、葉の裏側には短い毛が生えていることが分かります。

 

樹形には直立型と開帳型がある

樹形が魅力のひとつでもあるオリーブの木ですが、品種によって樹形が大きく2種類に分けられます。

ひとつめは、まっすぐと伸びていくシャープな印象の「直立型品種」、もうひとつは横へと広がって枝を伸ばしていく「開帳型品種」です。

室内で育てる場合には、比較的コンパクトに収まってくれる直立型、スペースを広く確保できる地植えで楽しむ場合には開帳型など、育てる場所や置き場所などに応じて樹形を選ぶと良いでしょう。

【直立型品種】 ミッション、シプレッシーノ、モライオロ、コラティーナなど
【開帳型品種】 ルッカ、ネバディロ・ブロンコ、マンザニロ、フラントイオなど

オリーブの花

オリーブの木は、初夏になると白色や黄白色の小さな花をまとめて咲かせます。花期は約1週間ほどで、この開花中に他の品種のオリーブからの花粉で受粉すると結実です。

結実したオリーブは、料理でおなじみのオリーブオイルや、野菜を調味液に漬け込んだピクルスなどに加工され、食用としても楽しまれます。

 

オリーブは「平和の象徴」

花や植物は神話と深く関係のあるものが多いですが、オリーブの木もギリシャ神話に登場する女神・アテナが造り出した木として、アテナのシンボルツリーになっています。

また、オリーブの木は平和のシンボルとされていますが、これは旧約聖書のエピソードに由来します。

ノアの方舟のエピソードの中で、大洪水後にノアが鳩を遣わせ、戻ったハトがくちばしにオリーブの枝を咥えていたことで洪水が起きたことを知ったという話があります。

他に、バビロンの王・ハンムラビが発布した「ハムラビ法典」にも、オリーブにまつわる記述が確認されているようです。

 

種類が豊富なオリーブの木

神話にも登場する、我々の文明に古くから関わってきたオリーブの木ですが、その品種は1,000種類以上にも及ぶと言われています。樹形や葉の形が異なれば、果実の形も品種によってさまざまです。

また、品種によってオイルが多く採取できるもの、ピクルスなど実の塩漬け用として栽培されるもの、主に他の木の受粉用として使われるものなど、種類によって栽培用途が異なります。

 

用途別に見るオリーブの木の種類

せっかくオリーブの木を育てるのであれば、実の収穫まで楽しんで、オイルやピクルス作りも経験してみたいですよね。

しかし、オリーブは種類があまりにたくさんありすぎて、どれを育て始めれば良いのか戸惑ってしまうこともあると思います。

ここからは、豊富にあるオリーブの木の品種を、オリーブオイル作りに適している品種と、ピクルスなどの漬物として適している品種の大きく2つに分けてご紹介していきたいと思います。

 

オリーブオイル向きの品種

健康に良いとして昨今の健康ブームに欠かせないのがオリーブオイルです。

「飲む黄金」とも言われているオリーブオイルには、オレイン酸という成分が豊富に含まれており、悪玉コレステロールを減少させ、高血圧や動脈硬化といった生活習慣病予防にも効果的なのです。他にも、体内の酸化を防ぐ効能があり、老化対策や美容効果も期待できます。

そんな頼もしい存在であるオリーブオイルとして向いている、オイルが多く採取できるオイル向きの品種をご紹介していきましょう。

 

ルッカ

開帳型の「オリーブ・ルッカ」は、イタリアの都市名・ルッカが名前の由来になっています。

日本にはアメリカから輸入され、オイルの含量が大変高く、高品質でフルーティーなオイルが抽出できる品種として栽培されています。

ルッカは自家結実性があり、他の品種と一緒に育てなくても、自家受粉が成功する確率が高い品種です。オイル用としても優秀なルッカの実は、塩漬けにしても深みのある美味しい塩漬けができます。

 

フラントイオ

イタリアのトスカーナ地方を原産地とする「オリーブ・フラントイオ」は、環境への適応能力がとても高い品種です。原産地以外にもアメリカやオーストラリアといった世界各地の環境に適応して、広く栽培されています。

実は卵のような楕円型をしていて、オイル含有量が高いことが特徴です。

 

モライオロ

フラントイオと同じく、トスカーナ地方が原産の「オリーブ・モライオロ」は、直立型の樹形なので室内用のシンボルツリーとしてもおすすめの品種です。

フラントイオと並んで、高品質のオイルが採れる品種として栽培されています。

自家結実性が高い品種ですが、やや病気にかかりやすいという難点もあります。生長速度がそこまで速くないので、剪定の手間もあまりかからずに育てていくことができますよ。

 

コロネイキ

主にギリシャで生産されているのが「オリーブ・コロネイキ」という、小さめな実ができる品種です。

実が小さいために、ひとつの実から採れるオイルは少量ですが、高品質でフルーティーなオイルであることから高級オリーブオイルとして有名です。

花粉が多い品種であることから、他のオリーブと一緒に育てる受粉樹としても使われます。

 

ネバディロ・ブランコ

スペインを原産とするのが「オリーブ・ネバディロ・ブランコ」です。

結実した実は小ぶりで柔らかいため傷つきやすく、ピクルス用としては向いていません。

花粉量が多く花期が長いという特徴があるため、他のオリーブの木の受粉樹として栽培されます。

他のオリーブの葉と比較すると、ネバディロ・ブランコの葉は緑色に縁取られています。樹形は直立型と開帳型の中間くらいで、適度なボリュームのある樹形です。

 

ピクルス向きの品種

ピクルスとは、酢をベースにしたピクルス液に漬け込んだ野菜のことです。オリーブの実もピクルスに向いていて、日持ちがするので古くから保存食として作られてきました。料理にも幅広く使われており、お酒のお供にもぴったりです。

続いては、ピクルスに向いている実が収穫できるオリーブの木の種類をご紹介しましょう。

 

マンザニロ

スペイン産の「オリーブ・マンザニロ」は、世界各地で食用として生産されている有名な品種です。

リンゴの形によく似た実ができ、主にピクルスとして加工されています。オイル含量は少なめですが、オリーブオイルとしても使われています。丈夫な性質を持っている品種なので、初心者向けのオリーブとも言えるでしょう。

 

ミッション

アメリカのカリフォルニアで発見された「オリーブ・ミッション」は、日本でも多く栽培されているオリーブです。

長円形の実を作り、主にピクルス用として使われていますが、オリーブオイルとしても加工されます。

直立型のミッションは尖ったシルバーグリーンの葉を持ち、オリーブらしい姿であるのも人気の理由です。そこそこ耐寒性があるので、日本でも育てやすい品種になります。

ミッションには自家結実性がありますが、先ほどご紹介した「マンザニロ」との相性が良いので、この2種類がよく一緒に育てられています。

 

チプレッシーノ

「オリーブ・チプレッシーノ」はイタリアのシチリア島を原産地とする品種です。

本来は防風林として栽培されていたため、雨風に強い丈夫な品種になります。

持ち前の丈夫な性質と花粉量が多いことから、受粉樹としても多く育てられています。耐寒性に優れており、マイナス10度までは耐えられると言われているため、日本の冬の寒さの中でも育てられる品種です。樹高が低めであること、耐風性・対雨性・防寒性があることから、庭木としても適していますね。

チプレッシーノの実はピクルス向きですが、オイルにも加工されています。味わいはフルーティーな中にもぴりりとした辛味を感じられます。

チプレッシーノは自家不結実性であるため、結実させたい場合には必ず他のオリーブと一緒に栽培しましょう。

 

セラビノ

「オリーブ・セラビノ」は、種が小さいにも関わらず果実がとても大きくできるので、塩漬けとしてとても人気のある品種です。味も美味しいので、ご家庭で自家製ピクルスを作る際にはセラビノを育てるのもおすすめ。

ただし、セラビノは寒さに弱いので、できれば室内で管理できるのが望ましいでしょう。

自家結実性を持ってはいますが成功率はあまり高くないため、花粉量の多い他のオリーブと一緒に栽培することをおすすめします。

 

オリーブの木は鉢植え・地植えで育てられる

オリーブの木は「温暖で爽やかな気候の地域で育つ木」というイメージが強いため、日本の環境でも育てられるのかどうかが心配ですよね。しかし、寒さに強い品種や雨風に強い品種など、育てる環境に適したものを選べば、鉢植えとして室内で、寒冷地に住んでいない人は庭などに地植えをして育てていくことができます。

ただし、オリーブの木は積雪や霜などにさらされることにはめっぽう弱い植物なので、東北地方や甲信越地方にお住まいの方は鉢植えでの栽培をおすすめします。

オリーブの木を地植えで植え付けるときは、かなり大きく生長していくことを視野に入れて、スペースに余裕を持って植え付ける場所を決めていきましょう。植え付けの手順については下記のとおりです。

 

【植え付け手順】

  1. 植え付ける位置を決めたら、腐葉土や堆肥を混ぜて土を耕していきます。
  2. 庭土が粘土質の場合は、排水性を上げるため深く広く耕しましょう。
  3. 植え付けるオリーブの苗木に合わせて穴を掘ります。
  4. 周囲よりも少し高く土を盛り、中心にくぼみを作って苗木を植え付けます。
  5. 株を押さえつつ、周囲の土を戻して苗木を安定させます。
  6. まだ根が浅いうちは強い風で倒れやすいため、支柱で固定します。
  7. たっぷりと水を与えて、しっかり根付くのを待ちましょう。

 

オリーブの花が咲く条件

オリーブの実を収穫するためには、まずは花を咲かせなければなりませんよね。

オリーブの花は、寒さにさらすことで開花が促されるという性質があります。そのため、開花の条件として、気温10度以下の状態を10日以上経験させることが必要です。

鉢植えを室内で管理している場合は、この条件を満たすことはなかなか難しいでしょう。

そのため、なるべく天気が良い暖かい日に鉢植えを外に出し、10度以下の状態を株に経験させて開花を促進させてあげてください。

とはいえ、暖かい室内からいきなり寒すぎる環境にさらすと、温度差に適応できない株が枯れてしまうこともありますので、少しずつ外気に慣れさせていく根気が必要になります。

 

オリーブの実を収穫するには

オリーブの木は、同じ品種の花粉のDNAでは、なかなか受粉しないという性質を持つ品種が多いため、そのような品種を育てる場合には、花粉量が多い受粉用の受粉樹を近くで一緒に育てることがほとんどです。

自家結実性がある品種でも、成功率を高めるために他の品種と育てられています。オリーブの花は、花期が1週間ほどですので、なるべく開花時期が重なり合う品種を植える必要があり、開花期以外にも品種ごとの相性もあります。

ただし、花粉を運んでくれる虫が入ってこず、風も吹かない室内では受粉の成功率が低いです。室内で育てているオリーブの木には、人工的に受粉を促しましょう。

オリーブの花粉は午前中に最も多く出ると言われているので、人工授粉は午前中に行うと良いでしょう。

 

【人工授粉の手順】

  1. まず初めに、ひとつの品種の花粉をコップなどに採取しましょう。
  2. 綿棒や筆などの柔らかい道具を用意して、採取した花粉を付着させます。
  3. 受粉させたい品種の花へ、花粉を付けて受粉させます。

 

まとめ

今回は、世界各地で栽培されているオリーブの木について、特徴や性質、用途別のおすすめ品種などをご紹介してきました。

オリーブの木は、観葉植物として緑を眺める以外にも、花を咲かせて実を作り、自家製のピクルスや塩漬けを楽しめる植物です。

実を作るには、2種類以上のオリーブを一緒に育てていく必要がありますが、丈夫な性質を持つオリーブは育てやすく、一気に2鉢あってもそこまでの手間はかからないでしょう。

アンティークな風合いのある味わい深いオリーブを育てて、実の収穫まで楽しんでみてくださいね。

 

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