秋のお彼岸に手向けるお花、贈り方やお供えのマナーは?
お彼岸は、先祖を供養する機会として日本人に馴染みのある行事です。
毎年、春分の日と秋分の日を基準にして、その前後3日間を合わせた計7日間をお彼岸と呼びます。
本来は仏教行事なので、寺院では彼岸会が開催され、先祖のお墓参りを行う風習がありましたが、現在ではあまり宗教とは関係なく、先祖を供養する期間として広く認識されています。
お彼岸の時期には、先祖のお墓参りに出向いたり、お墓のある実家にお花を贈ったりする人が多いでしょう。
しかし、お彼岸の花贈りのマナーに関しては「お供え花と同じマナーで手配したほうが良いのだろうか」「使ってはいけないお花はあるだろうか」と悩む人も多いはず。
今回の記事では、秋のお彼岸に贈りたいお花と、お彼岸の花贈りのマナーについて解説します。
お彼岸とはどのような行事?
仏教では私たちが生きている世界のことを「此岸(しがん)」といいます。
此岸は、煩悩や迷いに満ちた世界であるとされており、それに対して生死を超越した理想の世界のことを「彼岸(ひがん)」と呼びます。
春分の日と秋分の日、太陽は真東から昇り、真西に沈みます。
彼岸は西、此岸は東にあると考えられていることから、春分の日と秋分の日は、1年で最も此岸と彼岸が近づく日とされているのです。
お彼岸には先祖供養が行われる
お彼岸は、此岸と彼岸が1年で最も近づくとされることから、先祖とも通じやすいと考えられており、先祖に感謝し供養する風習が生まれました。
国の定める国民の休日にも指定されており、春分の日は「自然をたたえ、生物をいつくしむ日」、秋分の日は「祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ日」として記載されています。
お彼岸の時期、ご遺影の前やお墓の前にはお花が欠かせません。寺院でもこの時期には、仏像や仏壇、お墓の前にお花を供えます。
実家に帰ってお墓参りはできない場合でも、お彼岸の時期に合わせてお花を贈るという人も多いのではないでしょうか。
お彼岸に贈るお花はいつ届ける?仏花が良い?
お墓参りに出向けず、お彼岸にお花を贈る場合は、彼岸入りの前日か当日の午前中に配送で手配するのが良いでしょう。
生花の配送は、相手が不在の場合、お店に持ち戻ってしまうケースも考えられるので、事前にお花を贈りたい旨を伝え、日程の調整をしておくと安心です。
亡くなってから間もない場合以外は、あまりお供えの雰囲気を感じない、華やかな雰囲気のお花を選んでも問題ありません。
お彼岸にはどのようなスタイルのお花を贈る?
お彼岸の花贈りに最も選ばれるお花のスタイルは、フラワーアレンジメントです。
お彼岸に飾るお花というと、仏壇やお墓の前に供える対のご仏花を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、ご自宅にフラワーギフトとして贈る際には、そのまま飾ることができてお手入れのしやすいフラワーアレンジメントがおすすめです。
身近な親族に贈る場合など、仏壇やお墓の両サイドに供えるお花を花束として手配したい場合は、対の花束を用意します。
対の花束、フラワーアレンジメント以外では、卓上に飾れるサイズのミディ胡蝶蘭も人気があります。
秋のお彼岸に贈るフラワーアレンジメント
亡くなってから日が浅い場合は、白を基調にしたアレンジメントが基本です。
淡い色味であれば、紫系やグリーン系のお花を混ぜても問題ないとされ、淡い色を混ぜることでより気品が感じられるアレンジメントになります。
亡くなってから年月が経ったお彼岸に贈る場合は、明るい色味のお花を選んでも問題ありません。
お彼岸に贈るお花は、命日やお盆に贈るお花に比べると、あまり花色やお花の種類は気にされない傾向にあります。故人が好きだったお花や色味があれば、ぜひお花屋さんで希望を伝えてみてください。
お彼岸に贈るフラワーアレンジメントは、ご仏壇周りに飾ることが多いので、3,000円〜5,000円程度の卓上に飾りやすいサイズを選ぶと良いでしょう。
秋のお彼岸に贈る花束
花束を贈る場合は、お仏壇やお墓の前の花立(花瓶)に生けることが想定されます。
日本古来のお墓は、墓石も左右対称の形をしており、花立が2つ用意されていることが多いです。
しかし最近では洋型墓石やデザイン墓石のお墓も増えており、その場合花立は1つしかないケースも考えられます。
見た目の美しさから、同じお花を一対で手配することがほとんどですが、対でないとマナー違反というわけではありません。
対の花束であれば、2つで3,000円〜5,000円程度、花束1つの場合も同額程度の金額で手配すると良いでしょう。
また、墓前の花立にお花を飾る際には、お花は自分の方に向けて飾ります。これには「生花という命あるものを通して、故人から命の大切さや尊さを学ぶ」という意味が込められているといわれています。
秋のお彼岸に贈るミディ胡蝶蘭
胡蝶蘭はお花の大きさによって、大輪、中大輪、ミディサイズと分けられています。
ミディ胡蝶蘭とは、胡蝶蘭の中でもサイズの小さい、お花の大きさが3〜6cm程度のものをいいます。
胡蝶蘭と聞くと、高級花のイメージがありますが、ミディ胡蝶蘭であれば3,000円程度から購入できるのが魅力です。
切り花に比べて日持ちが長く、簡単なお手入れをしてあげれば1カ月〜2カ月程度、美しい状態を楽しむことができます。
花の色も白、ピンク系、黄色系と豊富なので、故人のイメージに合わせた胡蝶蘭を選ぶことができるでしょう。
秋のお彼岸に花を贈る際のマナー
命日やお盆などに比べると、お彼岸の花贈りに特別な決まりはありません。
故人が好きだったお花や色味で好きなものを選び、墓前に飾るのが望ましいでしょう。
しかし、お花を贈るときのマナーとして、以下の種類は避けた方が無難です。
・香りの強いお花
・毒や棘のあるお花
・ツルのあるお花
それぞれについて、詳しく解説していきます。
香りの強いお花は避ける
お彼岸には線香を焚き、その線香の煙や香りが私たちと故人との想いをつないでくれる、という言い伝えがあります。そのため、線香の香りを消してしまうほどの強い香りを放つお花を選ぶのは避けましょう。
またお彼岸に贈ったお花は、ご仏壇の前など、お部屋の中に飾ることが想定されます。中には、強い香りを苦手とする人もいるので配慮が必要です。
特にお供えのお花として人気のあるユリの中には、香りの強い品種も存在します。ユリを使用する場合には、香りの強さについても配慮した花選びが大切です。
香りの強いお花
ユリ・ヒヤシンス・バラ・ハーブ類(ラベンダー・ゼラニウムなど)など
毒や棘のあるお花を避ける
お彼岸のお供え花は、ご先祖様への捧げものです。
触ると痛みを伴う棘を持つお花は、ご先祖様を供養するためには適さないとするのが一般的です。毒に関しても、棘同様、ご先祖様にお供えするお花には適さないので避けた方が良いでしょう。
特にこの時期に鮮やかに咲き誇るヒガンバナも、真っ赤な色が血や火事を連想させるなどの理由から縁起の悪いイメージを持つ人もいるので、お供えには適さないと考えられるケースも多いので注意が必要です。
ただし、故人がバラのお花が好きだった場合など、故人を想って特定のお花を選ぶ場合はその限りではありません。バラに関しては、棘を処理していれば問題ないというケースもあります。亡くなってから年月が経った方へ贈る場合は、選んでも問題ないとされることがほとんどです。
毒や棘のあるお花
バラ・アザミ・ヒガンバナ・スイセン・スズラン・チューリップなど
ツルのあるお花には注意する
ツルが絡みつく様子が、絡まって成仏できない姿を連想させるため、お供え花にはふさわしくないと考えるケースもあります。
気にされない人も多いですが、マイナスなイメージを持つ人がいることも覚えておきましょう。
ツルのあるお花
スイトピー・クレマチス・ツルバラなど
秋のお彼岸に贈るお花はどんな色を選ぶ?
秋のお彼岸は、故人をお迎えするためのお花です。
他の行事に比べるとお花の色や種類などの制約はあまり気にされない傾向にあります。
基本的には白を基調として、故人が好きだったお花や色味に合わせたお花を選びましょう。
ただし、亡くなってから日が浅い場合に限り、白をメインにまとめたお花を贈るのがマナーです。また、地域や家庭によっては墓前に鮮やかな色や派手な色を飾ることをタブーと考えることもあります。
墓前に出向けずにお花を手配する際には、そのお花を選んだ理由や故人への想いを合わせて届けると、周囲の人も受け入れやすくなるかもしれません。
亡くなってから日が浅い場合の色選び
四十九日を迎えるまでは、白を基調し、他の色味は入れないのが基本です。
四十九日以降であれば、明るい色味も混じったお花を贈っても良いとされています。
最近ではあまり気にされませんが、本来仏壇に供えるお花の色は3色か5色と決まっています。5色の場合は、白・黄・紫・ピンク・赤。3色の場合は、白・黄・紫の組み合わせで花選びをするのが、本来の習わしです。
しかし、最近は故人の好きだった色味やお花を尊重し、従来ではあまり仏花には使用しなかったお花も取り入れられるようになりました。
使用するお花に関しては、信仰する宗教や、その土地、家族ならではのしきたりがあるケースもあるので、不安なことがあれば親族に相談しておくのが安心です。
亡くなってから年月が経っている場合の色選び
1つ前の項目で紹介した基本的な仏花のマナーを踏まえて、故人の好きだった色味やお花を選ぶのが基本です。
亡くなってから年月が経っている場合は、明るい色味のお花を選んでも問題ないとされています。しかし親族や地域によっては、大切な人が亡くなった墓前やお仏壇に派手なお花を飾るのは非常識だと捉えられることもあります。
特に住んでいる地域が異なる場合、風習や考え方に違いがあることは大いに考えられます。親族に許可を取った上で手配するなど、配慮することも大切です。
秋のお彼岸の花贈りにおすすめのお花5選
お彼岸の花贈りには、マナーをふまえて、故人を想ったお花選びができると良いですね。
お供えするお花の種類には、進行する宗教や地域、その家の風習によって、独自の伝統や考え方がある場合もあります。
悩んだ場合は、事前に周囲の家族などに確認を取った上で手配すると安心です。
仏花の定番ともいわれる菊の花も、最近では西洋マムと呼ばれる洋菊など、おしゃれな品種が増えています。
ここからは、秋のお彼岸におすすめしたいお花の種類について見ていきましょう。
キク
お供え花といえば、キクをイメージする人も多いかもしれません。
キクは、日本の国花であり、家紋などにも使用されるとても格式の高いお花です。
お花の中でも日持ちがとても長く、お墓の前にお供えしても長持ちすることから仏花としてもよく選ばれています。
キクといってもその品種はさまざまで、多くの人が思い浮かべる一重咲きのキク以外に、スプレーマムやピンポンマムなど、お花のサイズも小ぶりでかわいらいいものなど、バラエティ豊かです。中にはアナスタシアという、一見キクには見えない美しい、細い花びらを四方八方に伸ばしたキクもあります。
またキクは、生命力の強さから、中国では古来より邪気を払うお花として信じられています。
白い菊には「ご冥福をお祈りします、あなたを慕う」という花言葉もあるので、大切な人のお供えには贈るお花として最適です。
リンドウ
リンドウは、秋の訪れを感じる、鮮やかな青色の小花をたくさんつけるお花。古くからお彼岸にお供えするお花として親しまれている、秋を代表するお花の一つです。
濃い青色が良く知られていますが、青以外にも白色、ピンク、紫などがありますよ。
秋のお彼岸の花束やアレンジメントに入れると、一気に秋の雰囲気が感じられる贈り物になるお花です。
季節のお花であると同時に、お彼岸のお花として選んでも派手になりすぎないので、仏花としてもよく選ばれています。
ユリ
一部の品種は香りが強くお線香の香りを打ち消してしまうため、お供えには適さないとされますが、小ぶりな品種や香りのないユリは、秋のお彼岸にもよく選ばれます。
大輪で美しいカサブランカは香りがかなり強いので、贈る相手には配慮が必要ですが、テッポウユリやスカシユリであれば、お花が小ぶりで香りも強くないため、お彼岸のお供え花として選んでも問題ありません。
お花の中でも高貴なイメージがあり、気品のある咲き姿は、故人を迎えるお彼岸に贈るお花としてもぴったりと言えるでしょう。
トルコキキョウ(リシアンサス)
お花の中でも日持ちが良く、1本にたくさんのお花がついているのでお供えの花束やアレンジメントに華やかさを添えてくれるお花です。
お彼岸のお供えにふさわしい、白、淡いパープル系、グリーン系の色味もそろっていて、バラよりも控えめでありながらも、ボリュームたっぷりの存在感を放ちます。
亡くなってから日数が経っている場合のお供え花であれば、白グリーンを基調に淡いパープル系の色味を足した花束、アレンジメントが人気です。
花びらが柔らかく、花束やアレンジメントに入れても優しい雰囲気の仕上がりになるトルコキキョウは、秋のお彼岸に故人への気持ちを託すお花として、派手過ぎず明るい雰囲気を演出できるため多くのシーンで選ばれています。
デンファレ
現在の日本では、秋のお彼岸の頃でも、まだ暑い日が続くようになってきました。
デンファレはもともと東南アジアの暑い国が原産のお花で、気温の高い時期でも日持ちの良いのが特徴です。
胡蝶蘭に似た、肉厚の花びらは高級感も感じられ、菊やリンドウなど秋のお花と一緒に共に束ねると、全体をフレッシュな雰囲気に仕立ててくれるお花。
細長い茎の先まで蕾がついており、上手に管理すれば最後まで蕾が開く姿を楽しむことができますよ。
秋のお彼岸のお供え花に多く使われるのは白ですが、他にもピンク系、黄色系、グリーン系と色味のバリエーションが豊富なので、故人が好きだった色に合わせて好みの品種を選んでみてください。
秋のお彼岸には、故人を想った花贈りを
今回は秋のお彼岸の花贈りのマナーとお花の選び方に関して紹介しました。
お彼岸の風習は、住んでいる地域の各家庭によって独自の習わしがあることも多いです。中にはマナーや風習を大切にする人もいるでしょう。
お墓のある場所に出向けないときは、どんな気持ちでお花を選んだのか、あなたの想いを添えて贈ると周囲の人にも、あなたから故人への想いが伝わるはずです。
マナーを踏まえて、大切な故人を思い浮かべながら素敵なお花選びができると良いですね。